モンスターボールから出したポケモン達は、誠司はワンリキー、ハジメはイーブイ、ユエはシャンデラ、シアはホルビーだ。それぞれポケモンを一体ずつ出して戦うのには理由がある。
全てのポケモン達を一度に出して戦えばその分、戦力は増えるだろう。しかし、手持ちのポケモンが多ければ多い程、意識が分散されてしまって危険だ。
ましてやここは何が起こるか分からない大迷宮。意識の分散はポケモン達にとっても自分にとっても命取りになる。誠司達は奈落の底でのサザンドラ戦でそれを学んだ。
「よーし! まずは第一幕だよ! 名付けるなら……そうだねぇ……『太陽と月の
そう言ってミレディは大きく距離を取る。まずは誠司達の実力を確認するために傍観するつもりのようだ。そうはさせじと誠司はワンリキーに指示を出す。
「傍観の隙なんて与えるかよ! ワンリキー、あのゴーレムに“バレットパンチ”!」
「リキィッ!」
ワンリキーは持ち前の身体能力を活かして空中に浮遊するブロックを渡って行く。そして、拳を硬化させて素早く“バレットパンチ”を放とうとするが、ワンリキーの前にソルロックが現れた。
「ノンノン! 甘いね! “しねんのずつき”!」
「ソルルゥ!」
ソルロックがワンリキーに念の籠もった頭突きを食らわせる。
「リ、リキィッ!」
「しまった……! ワンリキー!」
技をモロに受けたワンリキーは吹っ飛ばされ、近くのブロックに激突する。誠司は急いでブロックを渡ってワンリキーを確認した。目を回して気絶している。
(くそっ! エスパー技は効果抜群だからな。油断した……)
誠司はひとまずワンリキーが生きていることに安堵するが、自分の判断ミスに歯噛みする。急いでワンリキーをモンスターボールに戻し、ハジメ達を確認すると、ハジメ達はルナトーンを相手していた。
「イーブイ、“でんこうせっか”!」
「イーーブッ!」
イーブイは素早い動きでルナトーンの真上まで移動し、そのスピードを活かして体当たりを仕掛けようとするが……
「そうはさせないよ! ルナトーン、“サイコキネシス”!」
「ルナナッ!」
「イブッ!?」
ルナトーンが目から青白い光線を放ち、イーブイを捕らえる。この光景にハジメだけでなく、誠司達も目を疑った。ルナトーンはそのままイーブイを振り回して近くのブロックにぶつける。
「イ……ブ……」
イーブイは目を回して気絶してしまった。ハジメは急いでイーブイの元に駆け寄り、悲痛な顔を浮かべる。そして、一言謝ってイーブイをモンスターボールに戻した。誠司が思わずミレディに怒鳴った。
「おい、ミレディ! どうなってるんだ! このライセン大迷宮、いやライセン大峡谷ではポケモン達の特殊技や変化技は殆ど使えない筈だぞ! 何でルナトーンは使えるんだ!?」
誠司の問いにミレディはフフンと愉快そうに笑った。
「あはははっ! これは説明しなければならないねぇ! よし! 説明しよう!」
ミレディはどこかで聞いたことのある台詞を吐いて、芳ばしいポーズを取る。それにイラッとする誠司達。そんな誠司達に構わず、ミレディは得意げに解説する。
「確かにここ、ライセン大迷宮はライセン大峡谷に位置するから、その影響で魔法やそれに近い特殊技は殆ど使えない。でもね……例外があるんだよ」
「……例外だと?」
「そう。飛行属性だったり空中を浮かぶポケモンなんかにはその影響を全く受けないのだ! そして私の相棒、ソルロックとルナトーンの特性は“ふゆう”! 空中を自在に浮かぶこの子達には全く影響が無いのだよ!!」
それを聞いて誠司達は絶句した。つまり、誠司達にのみ不利な状況下ということだ。数はこちらが有利ではあるが、戦い辛くなっている。
足場は空中に浮かぶブロックだけなため、自然と動きが制限される。それに対してソルロックやルナトーンは浮かんでいる分、自在に動くことが出来て技の制限も無い。それに、飛行属性のポケモンが大峡谷の影響を受けないと言っても、相手は岩属性を持つポケモン達だ。簡単に返り討ちにされてしまうだろう。
誠司は内心、舌を巻いていた。ミレディ・ライセン、ふざけた態度ばかり取っているが、彼女は紛れもなく実力者だ。自分のポケモン達を徹底的に活かして戦っている。
その時、シャンデラがルナトーンの影から現れた。ルナトーンが気付いた時にはもう遅かった。
「……シャンデラ、“はいよるいちげき”!」
「シャシャン!」
「ルナッ!」
奇襲を受けたルナトーンは思わず怯んでしまう。その隙にシャンデラが更に攻撃を重ねようとするが、突如ルナトーンの姿が消えてソルロックが現れた。これにはユエもシャンデラも驚く。
「なっ!? 何でソルロックが……」
「味方の位置を入れ換える技、“サイドチェンジ”だよ! さぁソルロック、“ロックブラスト”!」
「ソールッルッルッ!」
ソルロックは連続で岩の塊を発射する。ユエがすかさず躱すように指示を出すも、全部は防ぎ切れずに何発か食らってしまう。
「……シャ、シャン……」
ソルロックがトドメを刺そうとした瞬間、今度は別方向からホルビーが飛び掛かる。シアが指示を出す。
「ホルビー、“いわくだき”ですぅ!」
「ホッビ!」
しかし、ホルビーの身体は途中で止まってしまった。先程のイーブイを倒した時と同じ青白い光線に包まれていた。光線を辿ると、ルナトーンがいた。元々ソルロックがいた位置から的確にホルビーを捕らえていた。
「ルーナッ!」
「よーし。ルナトーン、そのまま投げ飛ばしちゃって!」
「ルナァァン!」
「ホ、ホビィィィ!」
「ああ、ホルビー!」
ホルビーはルナトーンの“サイコキネシス”によって近くを浮遊するブロックに投げ飛ばされてしまった。戦闘不能にはなっていないが、かなりのダメージだ。
この時点で誠司達のポケモン達は大ダメージを負ったり戦闘不能になったりしているのに対して、ミレディのポケモン達は殆どダメージが無い。各々の戦闘能力もだが、2体の連携がかなりのものだ。ミレディは離れた場所でガンガン煽る。
「あれあれ〜? どうしたのかなぁ〜? このままじゃ神代魔法も攻略の証もあげられないよぉ〜?」
ミレディの煽りにイラッとする誠司だが、なんとか冷静さを取り戻す。今のままでは確実に負ける。だからこそ、誠司はミレディにあることを叫んだ。
「ミレディ! 作戦ターイム!!」
「認める!」
ダメ元で言ってみたのだが、意外と通じるものだ。誠司は急いで、唖然とするハジメ達に呼び掛けて一つのブロックの上に集まってもらった。ハジメ達は少し呆れた表情を浮かべつつも誠司の元に集まる。その間、ミレディとソルロックとルナトーンは少し距離を置いて、傍観の姿勢を取る。攻撃の素振りは一切無い。本当に作戦タイムを認めてくれているようだ。
「ねぇ、それで……どうする、誠司? このままじゃ勝ち目が無いよ」
「ん…… ミレディ、性格はともかく……かなりの実力者。特に連携がすごい」
「このままじゃジリ貧です……」
「ああ。だからこそ、相手の連携を崩す必要がある。俺が立てた作戦はこうだ……」
誠司は作戦をハジメ達に教える。先程まではバラバラに攻撃していたが、今度はお互いに息を合わせて戦う必要がある。作戦を共有した四人は強く頷き合った。モンスターボールの中にいるポケモン達もボール越しに頷く。
「「「「よし!!」」」」
ユエとシアはシャンデラとホルビーをボールに戻す。そして、4人はそれぞれ新たに別のポケモンを出した。誠司はヘラクロス、ハジメはグレッグル、ユエはモクロー、シアはゴーゴートだ。
「ほほう? 作戦タイムは終わったかい? じゃあ、どんな作戦か見せてもらおうじゃないの!」
ミレディがそう言うとソルロックとルナトーンが攻撃の体制に入った。誠司達はお互いを見て頷く。
「作戦通り行くぞ、シア! ヘラクロス、ルナトーンに“メガホーン”だ!」
「ヘラクロッ!」
「分かりました! ゴーゴート、ソルロックに“ウッドホーン”ですぅ!」
「ゴーッ!」
ヘラクロスとゴーゴートが同時に攻撃を仕掛けに向かう。ブロックごとの距離はそれなりにあるが、翅を持つヘラクロスと強靭な脚力を持つゴーゴートに不可能は無い。どちらの攻撃も真っ直ぐ、ソルロックとルナトーンに向かう。だが、ミレディは余裕の表情だ。
「ふふん、無駄だよ! ルナトーン、サイドチェ「“ねこだまし”!」……え?」
「ッ! ル、ルナ?」
グレッグルはルナトーンの目前で強く手を叩いてルナトーンを一瞬怯ませた。そして、怯ませると即座にルナトーンの後ろに張り付いて動けないように抑え込む。それによってルナトーンは殆ど無防備の状態でヘラクロスの“メガホーン”をモロに食らってしまう。
「ラクロゥッ!」
「ルナアアァァ!」
ルナトーンもミレディも気付いていなかったが、既にグレッグルはルナトーンの真下まで接近していた。グレッグルもワンリキーやエリキテルと同様、ライセン大峡谷で育ったポケモンだ。つまり、身体能力は非常に高いのだ。ルナトーンに気付かれないように近付くなどグレッグルにとって朝飯前だった。
そして、相手に気付かれずに移動出来るポケモンはもう一体いる。モクローだ。モクローは音を立てずに相手の懐に潜り込むことが出来るポケモンである。それによってソルロックの死角に潜んでいた。ユエは静かにモクローに指示を出す。ルナトーンに気を取られていてミレディが気付いた時にはもう遅かった。
「確か飛行属性のモクローは特殊技を使える…… モクロー、“エナジーボール”」
「モフゥ!」
「なっ!? ソルロック、後ろ後ろ!」
「ッ! ソルゥ?」
ミレディの切羽詰まった声に危機感を抱いたソルロックが慌てて振り返ったその瞬間、モクローの“エナジーボール”が顔を直撃する。そして、一拍遅れてゴーゴートの“ウッドホーン”がソルロックに命中する。
「ソルウゥゥゥ!」
効果抜群の攻撃を受けた二体は仲良く吹っ飛ばされて近くのブロックに激突する。それを見た誠司とハジメ、ユエとシアはそれぞれハイタッチをする。これには流石のミレディも驚愕する。
「くぅっ……まさかここまでやるとはね…… よし! ここまで来たら私も本気の本気でやっちゃうよ!」
ミレディがそう言うと、上空の天井の星々が光り輝き始めた。
独自設定ですが、ミレディは演劇好きという感じにしています。原作でも意外と演技派だったりするので。なので演劇風の用語を結構出します。
誠司達もポケモントレーナーとしてはまだまだ未熟です。こういう大迷宮攻略等を通して成長させていこうと思います。