天井にある無数の星々は輝きが強くなったかと思うと、突然部屋全体が激しく揺れる。低い地鳴りのような音が響き、天井の星々の輝きが増す。
何事かと表情を強ばらせる誠司達。その直後、それは起こった。
ズガーーンッ!!
轟音と共に、空中を浮遊するブロックの一つに
どうやら、天井の星々の正体はブロックの残骸だったものらしい。しかし、残骸と言えど、数百キロはありそうな岩の塊だ。当たればタダでは済まないだろう。現に衝突したブロックには亀裂が入ってしまっている。
しかも、それが無数に天井にあるのだ。誠司達の顔に戦慄が浮かぶ。
「おいおい……まさか……」
「ふっふっふ……そのまさかだよん。ここからは急転直下の第二幕! 『星降る夜』をご堪能あれぇ!」
ミレディがそう言うと、吹っ飛ばされたはずのソルロックとルナトーンが現れた。2体は同時に壁のようなものを自分やミレディに何重にも展開していく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
次の瞬間、凄まじい轟音を立てながら、大量の
「まだまだ試作段階だったんだけど…… 頼むよ、『オルカン』!」
そう言ってハジメは引き金を引く。ハジメが叫んだ。
「皆、耳を塞いで!」
誠司達は初めて見る異様な兵器に目を見張るものの、言われた通りに耳を塞ぐ。
次の瞬間、バシュウウ!という打ち上げ花火のような音と共に、複数のロケット弾が発射され、巨大な爆発を起こしながら上空の星々を消し飛ばしていく。
だが、全て破壊出来た訳ではない。まだ大量の星々が落下して来る。
誠司はモンスターボールから他のポケモン達を出していく。元々ボールから出ていたヘラクロスと新たに出したヌマクロー、チゴラス、エリキテルに指示を出す。
「皆、上空のブロックを壊してくれ!」
誠司の簡潔な指示にポケモン 達は頷いた。それを見てハジメやユエ、シアもブロックを砕けるポケモン達を出して同様に指示を出す。
ポケモン達は自分の持てる力で上空に降り注ぐブロックを次々と破壊していく。それを見て愉快そうに笑うミレディ。
「ウヒャヒャ、凄いねぇ。頑張れ頑張れ」
ミレディ達にもブロックの星が降り注いでいるのだが、余裕の表情だ。それというのも、ミレディ・ゴーレムの体の装甲にはアザンチウム鉱石をふんだんに使っているからだ。
アザンチウム鉱石とは世界最高硬度と靭性を誇る鉱石だ。それを装甲として装備して防御している。そのため、ポケモンの技でもちょっとやそっとでは倒せない。しかも、ソルロックとルナトーンによって“リフレクター”を貼ってもらっているのでブロックの雨など怖くもなんともないのだ。
ポケモンの技でブロックを壊しているが、段々とポケモン達も限界になっていく。やがて、ポケモン達は一体、また一体と力が尽きて倒れていった。ハジメもドンナーやシュラークでブロックを撃ち抜いたり、シアが身体強化で近くのブロックを投げ飛ばして破壊したりしているのだが、降り注ぐブロックの数は増えていくばかりだ。
追い詰められそうになったその時、ラビフットが地面に手を付いてある技を発動させた。それを見てハジメは怪訝な顔を浮かべる。
「ラビフット! どうしたの?」
「ラッビッ……ビィィィ!!」
その瞬間、全体が光に包まれたと同時に、誠司達もポケモン達も限界が来たのかブロックの星々に呑み込まれてしまった。
それを見てミレディは僅かな落胆と共に天井の星々にかけていた“落下”を解いた。誠司達が乗っていたブロックはあちこちに亀裂が走り、今にも崩れそうだ。落下の解除がもう少し遅れればブロックは粉々に崩れて、誠司達を呑み込んだブロックの山は奈落の底に落ちていただろう。ミレディは落胆混じりに呟いた。傍らのソルロックとルナトーンはどこか元気が無い。
「う〜ん…… やっぱり無理だったかぁ〜」
「ソルルゥ……」
「え? やりすぎだって? でもねぇ〜、これくらいは何とか出来ないと、あのクソ野郎共には勝てないし……」
「ルナアン?」
「まぁ、確かに見込みはあったんだけど……ホント惜しいなぁ。仕方ない。せめてもの情けだ。死体を捜して供養してあげるかぁ」
そう呟きながら、誠司達の死体を捜すためにブロックの山に近付くミレディ達。その時ーーーー
「「「「ぶはあぁっ!!」」」」
「あいえええっ!?」
なんと誠司達がブロックの山から現れたのだ。血が出たりしているが、命に別状は無いようだ。ポケモン達も同様にブロックの山から這い出て来る。これには流石のミレディ達も驚愕しており、ゴーレムでなかったらギャグ漫画のように目玉を飛び出していただろう。
しかし、次の瞬間、誠司達が乗っているブロックに限界が来たのか崩れてしまい、誠司達はそのまま奈落の底へ落下しそうになる。
「「「「う、うわああぁぁっ……あれ?」」」」
ソルロックとルナトーンが間一髪で“サイコキネシス”で誠司達を捕らえると、別の無傷だったブロックへ移動させる。誠司達の無事を確認したミレディが思わず疑問の声を上げる。だが、分からないのは誠司達も同じだった。
「それで……あなた達、どうやって助かったの?」
「俺もよくは分からないが、ブロックに呑み込まれる直前にラビフットが何かしていたような……」
そう言って誠司がラビフットを見ると、当のラビフットは目を回して気絶していた。その時、ミレディはあることに気が付いた。
自分の体の、装甲が着いていない部分に無数の凹みが出来ていることを。よく見ると、ソルロックとルナトーンも元気が無いし、技にどこかキレが無かった。
まさかと思い、確認してみると無かった。自分達に貼ったはずの“リフレクター”が。
「えっ、えっ、えっ? 何で無いの? “リフレクター”、ちゃんと貼ってたはずなのに……」
誠司達の身体に何か壁みたいなのが光った。それを見てミレディは何が起きたのか理解した。そして、愉快そうに笑う。
「ああ……なるほど……そういうことか…… ぷっ! あははは!」
「あれ? どうしたんだろ、ミレディ……」
「おかしくなっちゃいましたねぇ」
「……ボケた?」
「失礼な! あのねぇ、君達はそのラビフットに助けられたんだよぉ」
「え? どういうこと?」
「ブロックに呑み込まれる直前にラビフットが使った技はねぇ……“コートチェンジ”って技なんだよ」
ミレディのその言葉を聞いて誠司は有り得ないと言いたげに首を横に振る。
「いやいや……“コートチェンジ”って確か、ラビフットの進化系のエースバーンしか使えない技のはずだぞ。何でラビフットが……」
「ん〜、それは……」
「あのー、誠司さん。“コートチェンジ”ってどんな技なんですか?」
誠司とミレディの話に付いていけないシアが質問する。ハジメやユエも同様のようだ。頭上にハテナマークが浮かんでいるのが見える。シアの質問にミレディが答えた。
「“コートチェンジ”ってのはねぇ……自分と相手の場の状態を入れ換える技なんだよぉ〜。私達は“リフレクター”を貼っていたから、その効果が入れ換わって君達に“リフレクター”が付与された状態になったってこと。だからブロックの雨にも君達は生き残れたってわけ」
「ああ……なるほど……」
「ん……凄い技」
「だがな……この“コートチェンジ”って技はラビフットの進化系のエースバーンってポケモンにしか使えないはずなんだよ」
誠司は不思議そうにラビフットを見つめる。ハジメはラビフットを心配そうに抱き抱えていた。そこでミレディが考察を入れる。
「う〜ん……多分だけど、火事場の馬鹿力ってヤツじゃないの? “コートチェンジ”って場の状態を入れ換えるとんでもない技だからまだ身体が成長し切っていないラビフットが使うと身体に強い負担が掛かっちゃうんだ。しかも、ここは変化技を使うにも体力を大きく消費しちゃうし。仲間を助けるために随分と無理して技を出したみたいだね。凄く感動的だよぉ〜」
恐らく、ミレディの言っていることが正しいのだろう。誠司達もポケモン達も感謝と敬意の籠もった視線を気絶中のラビフットに向ける。ハジメはラビフットをボールに戻した。ちゃんと労いの言葉を忘れずに。
「さーてさて。予想外の展開だったけど君達にはもう残りの手持ちはいないんじゃない? ここまでやれたのならもう十分合格ラインなんだけどねぇ〜」
誠司はハジメ達にどうするか視線で尋ねる。ハジメ達やポケモン達の目に諦めの色は無い。そして、それは誠司も同じだった。
「冗談! あんたを超えて俺達は先を進ませてもらう!」
「ふっふーん! そう言うと思ったよ! その意気やよし! これより第三幕! 終幕の開始だよぉ!」
最初はラビフットがエースバーンに進化して“コートチェンジ”を覚える……みたいな流れを考えていましたが、進化するのが早すぎて違和感があったため、この流れにしました。余計違和感が強くなった気が……マーイーカ。
咄嗟に使った感じなので技を覚えたって訳ではありません。