魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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誠司達、退場する

「あのねぇ……君達はいつまでここにいるつもりなのさ!?」

 

ミレディが怒鳴った。だが、怒鳴られている当の本人達(誠司達)はどこ吹く風だ。誠司のモンスターボールの中にいるキュウコンは申し訳無さそうな顔をしているが。

 

「ケチ臭いなぁ……俺達は次の大迷宮攻略に向けて準備やらポケモン達の鍛錬やらをしているんだぞ。別に良いじゃないか」

「いやね、準備自体が駄目と言っているわけじゃないんよ。でもね……何事にも限度があるの。今日でもう何日目だと思ってんの?」

「まだ三日目だろ?」

「もう三日目なんだよ! もう良い加減、帰って欲しいんだよ! 人の隠れ家を何で自分の家みたいにくつろいでんの!」

 

時が経つのは早いものでライセン大迷宮を攻略してからもう既に三日が経っているのだが、未だに誠司達はミレディの隠れ家にいた。ポケモン達の鍛錬や新しいアーティファクトの開発やらで色々やることがあったからだ。ちなみにユエやシアは別の部屋でグースカ寝ている。昨日はポケモンや魔法の特訓で遅くまでやっていたからだ。

 

ミレディの隠れ家で過ごして早三日だが、大きな収穫があった。ソルロックから貰った太陽の石でエリキテルを進化させることが出来たのだ。エレザードに進化したことで発電器官の不調も解消されて、ようやく電気技が使えるようになった。これでバトルの幅が広がるだろう。

 

プリプリと怒るミレディにハジメが宥める。

 

「まぁまぁ……ちゃんと大迷宮の修復の手伝いなんかもしたんだから、良いじゃない」

「いや……修復を手伝ってくれたのは本当に有り難いよ? でもねぇ、流石にそろそろ次の大迷宮に向かったらどうなの?」

「……だそうだけど、どうするの?」

 

ハジメが誠司に尋ねる。

 

ハジメはアーティファクトの開発の傍ら、ミレディの大迷宮修復を手伝ったりもしていた。その分、ミレディに気付かれないよう色々な鉱石類をこっそり失敬しているが。ミレディは大迷宮を修復してくれたハジメに対してほんの少し甘い。ハジメに尋ねられて、誠司は肩をすくめながら答える。

 

「そうは言ってもなぁ…… 今回の大迷宮攻略でまだまだ力不足なことを学んだからな。俺もトレーナーとしての力量とか色々な部分が未熟だ。他の大迷宮はここよりずっと難易度が高いだろうし。攻略するにしても、もう少し勉強してからにしたいんだ」

「確かに。樹海の大迷宮とかはここよりずっと難易度が高いだろうしね……」

 

誠司とハジメの会話を聞いてミレディは頭を抱えた。

 

(はぁ……やりすぎたなぁ…… 初めての攻略者だったから、嬉しくてつい張り切ったのが仇になった……)

 

仕方がないのでミレディは奥の手を使うことにした。早速ミレディは何処かへ走って行った。そして、すぐに戻って来ると、誠司とハジメにあるものを渡す。水晶のようで青く光っており、水晶には不思議な模様が浮かんでいる。

 

「えっと……ミレディ、これは?」

「これは『メガストーン』だよ。君達、『キーストーン』を持っているんだからこれでもっと強くなれる」

「メガ……ストーン……?」

 

ハジメは聞き覚えのない単語に困惑するが、誠司は納得したように頷く。ネクタイに付いているアクセサリーを弄る。

 

「なるほどな…… なんか見覚えのある模様だと思ってたけどこれがキーストーンだったのか……ってことはメガシンカさせることが出来るってことか?」

「その通り。ちなみに包帯君が持っているのはラグラージナイト、白髪ちゃんの持っているのはメタグロスナイトだよん」

「ねぇ、誠司、ミレディ。メガシンカって何?」

 

ハジメは訳が分からずに誠司とミレディに尋ねる。

 

「ああ。メガシンカってのは特定のポケモン達にのみ使える一時的なパワーアップ現象のことだ」

「そうそう。普通の進化とはまた少し違ったものでね。ヌマクローの進化系のラグラージやメタングの進化系のメタグロスはメガシンカが出来るとされているの」

「え? そんな凄いものをくれるの?」

「まぁ、私が持っていても無用の長物だしね。というか、それをあげるからサッサと出て行って欲しいんだよ」

「そんなに出て行って欲しいのかよ」

「三日も人の隠れ家を自分の家のように占領されたら、誰だって出て行って欲しいと思うわ!!」

 

その大声にユエとシアもやって来た。眠そうな目を擦る。

 

「ふわぁ〜、どうしたんですか?」

「……うるさい。ゆっくり寝させて」

 

そんな二人の態度はミレディの怒りの炎にシンナーを大量に注ぐようなものだった。

 

「もう昼だわ! そして、ここはあんたらの家じゃなーい!!」

 

ミレディの絶叫が隠れ家中に響く。

 

 

しばらくして、少し冷静になったミレディはほとほと呆れたように誠司達に告げた。

 

「はぁ〜……初めての攻略者がこんなに図々しい奴らなんて……もう、いいや。本当は穏便に事を済ませたかったけど、君達を強制的に外に出すからねぇ! もう戻って来ないでね!」

 

そう言うとミレディは傍らに浮かぶルナトーンのサイコキネシスで空に浮かぶと天井にぶら下がっている紐を掴み、グイッと下に引っ張った。

 

「「「「??」」」」

 

一瞬、何をしているんだと首を傾げる誠司達だったが、攻略中に嫌と言うほど聞いたあの音が聞こえた。

 

ガコンッ!

 

「「「「!?」」」」

 

そう、トラップの作動音だ。その次の瞬間、轟音と共に四方の壁から大量の水が流れ込んできた。たちまち、部屋は激流で満たされた。そして、部屋の中央部分に大きな穴が開き、吸い込まれていく。

 

「なっ!? ミレディ、お前!」

「ちょっとミレディ! 人を汚物みたいに流すことないでしょ!」

「いや〜、君達がさっさと出て行ってくれたらこんな真似しないで済んだのに。私だって心苦しいんだよ」

「嘘つけ! 笑いながら言っても説得力ないぞ! 声が笑ってんだよ! ごぽっ……」

 

カナヅチな誠司は急いでモンスターボールからヌマクローを出す。ヌマクローに掴まるとホッと安堵の息を吐く。

 

「それじゃあね〜、残りの迷宮攻略頑張りなよぉ〜」

「ちょっ! 待っ! ごぽぽぅ……」

「ごぷっ……僕達はトイレの汚物かっ! この怨み晴らさでおくべきか!」

「ケホッ……許さない」

「いつか殺ってやるですぅ! ふがっ」

 

誠司達はそう捨て台詞を吐くが、なすすべもなく、激流に呑まれて穴に吸い込まれていった。誠司達が穴に流されると水はあっという間に引いて、穴も消えて元の部屋に戻った。先程までの喧騒が嘘のような静けさだ。

 

静かになった部屋を見渡し、ミレディはソルロック、ルナトーンと共に溜息を吐く。

 

「ふぅ〜、それにしても濃い連中だったねぇ〜。あそこまでの適応力があればどこでもやっていけそうだよ」

「ソルソルゥ」

「ルナアァン」

 

そんなことを言いながら、ミレディはローブのポケットから一枚の写真を取り出した。その写真にはミレディを含め、七人の解放者が映っている。写真の中の皆はどこか楽しそうだった。いつもは過去を懐かしむために見ていたが、今回は違う。

 

「でも本当に現れたんだね…… 私達の試練を乗り越えた者が…… あれからどれくらい経ったか分からないけど……」

 

嬉しそうに写真に語り掛けるミレディの声はいつの間にか震えていた。傍らのソルロックとルナトーンも目が潤んでいる。

 

「皆……ようやく、ようやく動き出したんだよ。それにね……攻略者の包帯君が言ってたんだ。『元々地上に道は無い。歩いた人が多ければ多いほどそれが道になるんだ』って」

 

ミレディの写真を持つ手は少し震える。声音には歓喜以外の感情が混ざっている。

 

「それを聞いて物凄く嬉しかった。私達が進んだ道は……確かに未来に……繋がってたってことが……分かってさ」

 

ニコちゃんマーク顔のゴーレムであるミレディに涙を流すことは出来ない。だが、それでもミレディは泣いていた。声が途切れ途切れになっているのが証拠だ。

 

「だから感謝してるし、彼らの今後に応援してる。だよね、ソルロック、ルナトーン?」

「ルナァ!」

「ソルゥ!」

 

ミレディとソルロックとルナトーンは笑い合った。

 

 

一方その頃、ミレディに流された誠司達は激流でトンネルのような空間を猛スピードで流されていた。誠司達が流されている場所は他の川や湖とも繋がっている地下水脈らしく、魚や水属性のポケモン達も泳いでいる。そのうちの一体のポケモンがハジメに近寄って来た。

 

オレンジ色のイタチのようなポケモン、ブイゼルだ。

 

誠司を乗せているヌマクローがブイゼルに出口の案内をお願いすると、ブイゼルは快く了承してくれた。そして、ブイゼルの案内で誠司達は出口を目指した。

 

その時、必死に息を止めながらヌマクローに掴まっている誠司はふと横を泳いでいるポケモンに視線を向ける。

 

そこには緑色の体に白いラインが入った魚型のポケモンが泳いでいた。魔獣図鑑で誠司の頭にそのポケモンの情報が入る。

 

(これがバスラオ……? 俺が知ってるのと少し違うような……)

 

誠司がバスラオを見ながらそんなことを考えていると、バスラオは自分を見つめる誠司に気付き顔を嫌そうに顰めた。そして、こう言った。

 

「チッ、何見てんだよ」

 

舌打ち付きだった。しかも驚くべきことに意思疎通の技能によるものではなく、人間の言葉だったのだ。

 

誠司は驚愕のあまり、水中でブフォア!と盛大に息を吐き出して気絶してしまった。幸い、ヌマクローを掴む手は離さなかったため、ヌマクローから離れることは無かったが。当のバスラオはそのままスイスイと激流の中を泳いで先へ行ってしまった。ヌマクローも誠司が意識を失っていることに気付かずにスイスイと泳いでいく。

 

 

「ブイブイッーーー!!」

「どぅわぁあああーー!!」

「んっーーーーー!!」

「うっひゃぁああーーー!!」

「マクロゥッーー!!」

「………………」

 

噴き上がる水の勢いのままに四人と二体が飛び出して、そのまま近くの泉に落下した。

 

「ゲホッ! ゴホッ! はぁ〜っ、酷い目にあった。あの木偶人形めぇ、いつか絶対に破壊してやる。誠司、ユエ、シア。無事?」

「ケホッコホッ……んっ、なんとか……」

「死ぬかと思いました……」

 

なんとか水面に上がってお互いに安否確認するハジメ達。しかし、誠司の声は返ってこない。

 

慌てて周囲を確認するハジメ達。すると、水面にうつ伏せで浮かんでいる誠司の姿を見つけた。トランクが浮き輪代わりになっているようで誠司は沈まずに済んだようだ。

 

「誠司!!」

 

ハジメ達は誠司をなんとか岸まで引っ張り上げて仰向けにさせる。寝かせた誠司は顔面蒼白で白目を剥いている。ヌマクローは半泣きで誠司の身体を揺さぶるが反応が無い。心臓の鼓動や脈を確認するが動いておらず、ハジメは顔を強ばらせる。

 

「マズい! ユエ、心肺蘇生を!」

「しん…え……なに……?」

「え〜と、だから、まずは気道を確保して……」

「???」

 

誠司の容態を見て心肺蘇生を試みようと近くのユエに指示を出すが、ユエは頭上にハテナマークを浮かべている。シアに至っては目を点にして固まっていた。

 

「ああ〜、もう!」

 

要領を得ない説明に自分でも苛立つハジメ。いつから誠司が意識を失っているかは分からないが、今は一刻を争う事態なのは確かだ。

 

ハジメは意を決して誠司に心肺蘇生を行った。所謂人工呼吸である。そうなると当然、“まうすとぅーまうす”になるわけで……

 

それを見たユエとシアは驚きの表情を浮かべ、「「あ……」」という声が漏れる。ヌマクローとブイゼルも驚きの表情だ。ハジメは極力、友人2人の視線を無視して心肺蘇生を繰り返した。

 

(ホントに。誠司とのキスがこんな形でなんて……)

 

ハジメが何度目かの人工呼吸を行うと、遂に誠司が水を吐き出した。水が気道に入らないように顔を横に向けてやる。

 

「ケホッ、カハッ……」

 

誠司は水を吐き出し、むせながら何とか起き上がる。ぼんやりした様子で周囲を見渡すと、目の前には顔を赤らめつつも、どこかホッとした表情のハジメがいた。

 

「はぁっ、はぁっ……た、助かったのか? 俺は……」

「うん。本当に危なかったんだからね。心配させて……」

「ハジメ…… ああ、悪い。助かったよ。ありがとう」

 

誠司はハジメにお礼を言う。ハジメは顔を赤くしてそっぽを向く。すると、ユエとシア、ヌマクローやブイゼルも近付いて来た。どこかニヤニヤした表情で。

 

「わっわっ、何!? 何ですか、この状況!? お外でキ、キスなんて……」

 

そこに聞き覚えのある声が聞こえてきた。声のした方に目を向けると、以前誠司達が泊まったマサカの宿の看板娘や、服屋でお世話になったクリスタベル店長、冒険者の男女がいた。

 

看板娘のソーナ・マサカは顔を真っ赤にして何か妄想しており、クリスタベルは肩に乗っているクルミルと一緒に誠司達に温かい目をしている。そして、男冒険者達は誠司に嫉妬の目を向け、女冒険者はそんな男連中に冷めた目を向けている。

 

誠司は冒険者やソーナを軽く無視してクリスタベルに近付いた。ソーナは「どうぞごゆっくり」と頓珍漢なことを言って踵を返そうとするが、クリスタベルが首根っこを掴む。

 

「えっと……お久しぶりです、クリスタベルさん。クルミルも元気そうだな。それにしても……どうしてここに?」

「私は元々服の素材の仕入れに来たのよん。このクルミルちゃんと一緒にね。ここのソーナちゃんや冒険者達はその帰りに一緒になったから同行してるのよ」

「クルルゥ」

 

肩に乗っているクルミルが元気そうに相槌を打つ。クリスタベルは愛おしそうにクルミルの頬を指で撫でる。譲渡してから随分と良い関係を築けているようだ。

 

「それにしても……驚いたわぁ〜ん。ちょっと休憩してたらいきなりあなた達が出てくるんだもの。しかもお熱い展開もあったしぃ〜ん」

「へ? お熱い……展開? どういうことだ?」

 

思わず聞き返す誠司にクリスタベルは「あらん?」と首を傾げる。

 

「もしかして覚えてないの? そこの白髪ちゃんが熱〜いキッスをして助けてくれたんじゃないのぉ。ロマンチックよねぇ、お姫様がキッスをして起こすなんて……」

「あの……クリスタベルさん、恥ずかしいからあまり言わないでください…… それに、あれはただの救命行為ですから……」

 

クリスタベルの言い方にハジメが顔を赤くして反論する。それを見て誠司もようやく事態を飲み込めた。すると、誠司も少し顔が赤くなる。救命行為とはいえ、キスには変わりはない。それを見て益々、クリスタベルの顔に笑みが広がった。

 

「あらあらあら……初々しいわねぇん。若いって良いわぁ」

「クルクルゥ」

 

 

それから、誠司達はクリスタベルの馬車に便乗させてもらうことにした。しかし、馬車の中の居心地は誠司にとって、あまり良くなかった。

 

ユエやシア、クリスタベルからはニヤニヤした目で見られるし、男冒険者達からは嫉妬の目を向けられるし、それに何より……ハジメと気まずい感じになってしまったからだ。

 

ブルックの町に着くまでこれが続くのか……

 

誠司は人知れず溜息を吐いた。




構想段階から書きたいと思っていたシーンが書けました。閑話を何話か書いて第2章は終わりになると思います。
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