魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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今回は独自設定が幾つかあります。ご了承下さい。キリの良いところまで書いていたら少し長くなってしまいました。


支部長直々の依頼

「本当に君達は何もやっていないんですね?」

「ええ、だからやっていませんよ。さっきから何度もそう言っているじゃないですか」

 

フューレンに着いた誠司達は早速、ギルドで取り調べを受けていた。同じような質問を繰り返してくるギルド職員に対して、最初は穏便な対応を心がけていた誠司達もうんざりしていた。

 

 

何故このような事態になったのか。それは一時間前まで遡る。

 

モットーと別れてから誠司達は冒険者ギルド内にあるカフェに立ち寄っていた。そこにいる案内人の女性にオススメの宿の場所を尋ねていた所、デブ貴族に絡まれたのだ。

 

デブ貴族曰く、シアを差し出せだの、ユエやハジメは自分の妾に相応しいだの言い出して来たのだ。当然誠司は丁重にお断りしたのだが、デブ貴族は自分の命令が断られると思っていなかったのか今度は顔を真っ赤にして恫喝し始めた。自分の家の力を以てすれば貴様など簡単に潰せるだの聞くに耐えない暴言を吐いてくる。

 

なので黙らせることにした。ユエがシャンデラに指示してボール越しからデブ貴族の魂を吸い取ってもらったのだ。とはいえ、殺すのは流石にまずいので死ぬギリギリまでに留めてもらう。

 

そして、極限まで魂を吸い取られたデブ貴族はそのまま顔を真っ青にしてぶっ倒れてしまった。周囲にはデブ貴族が怒鳴っている最中に突然ぶっ倒れたように見えたようだ。

 

一瞬、何が起こったか分からず沈黙が流れるが、すぐに「坊ちゃん!?」という悲鳴で破られた。一人のがっしりした体格の大男がデブ貴族に向かって駆け出し、必死の形相でデブ貴族の身体を揺らしている。「坊ちゃんが死んだら俺の報酬はどうなるんだ」とか言っていることから、そのデブ貴族自身を心配しての行動ではないようだが。

 

その後、再び案内人に話し掛けていると、ギルド職員達に囲まれ現在に至るという訳だ。

 

彼らはデブ貴族が何の前触れも無くぶっ倒れたことで、誠司達が何かしたのではないかと疑っているようだ。まぁ、間違ってはいないのだが、誠司達は頑なに否定する。

 

そんな調子でお互いに埒があかず、延々と問答を繰り返していると一人の男性職員がやって来た。

 

「何事ですか? 随分騒がしいですが」

「ドット秘書長! 良いところに! 実は……」

 

ドットと呼ばれた男が他の職員から話を聞くと、誠司達に鋭い視線を向ける。随分頭の固そうな人がやって来たと誠司達は溜息を吐く。

 

 

「……事情は分かりました。案内人のリシーさんや周囲の証言からミン男爵が突然倒れたようですし、あなた方が何かした訳では無いようです。大勢の人の前で誰にも気付かれずにやるのは不可能に近いですしね」

 

意外にもドット秘書長は話の分かる人だった。人は見かけに寄らないものである。

 

「分かって貰えて良かった。あの男爵は随分不健康な生活をされていたようなので、恐らくそれが原因の病気か何かだと思いますが……」

 

誠司はついでにあの貴族が倒れたのは何かの病気ということにさせてもらった。あいにく、この世界には脳溢血や心筋梗塞といった生活習慣病の言葉は無い。なので説明が少し難しかったが、名前は無くともこの世界にもそういった病気は実在するらしい。ドットは少し考え込むと納得したように頷いた。

 

「ふむ……確かにそういう病があるのは私も聞いたことがあります。有り得ないことではないでしょう。しかし、何かトラブルが起きた際は双方に事情聴取を行うのがギルドの規則ですのでミン男爵が目覚め次第、そちらの話も一応聞いておかなければいけません。それまではフューレンに滞在して頂き、身分証明と連絡先は伺っておきたいのですが、構いませんよね?」

「ええ、構いませんよ。ああ、それと……念のために言っておきますが、相手が貴族だからと言って公平性の欠く判決はしないでくださいね」

「もちろんです」

 

誠司の言葉にドットは苦笑いを浮かべつつも強く頷いた。誠司とハジメは自身のステータスプレートをドットに手渡す。連絡先についてはハジメが提案した。

 

「あと連絡先についてなんですが、僕達は泊まる宿を探している途中だったのでギルドの方で融通して頂ければ、お互いに手間が省けるんですが」

「なるほど……確かにその方が効率が良さそうですね。えっと……赤ランクですか。そちらの方達のステータスプレートはどうしましたか?」

 

痛い所を突かれて誠司もハジメも一瞬だけ顔を顰めるが、すぐに誤魔化す。

 

「えっと……彼女達のは旅の途中で紛失してしまってね……再発行するにしても金銭的にキツイのでつい先送りに……」

 

もちろん、大嘘だ。現在、誠司やハジメのステータスプレートは神代魔法などの技能を手に入れてからは殆ど伏せるようにしている。ユエやシアの場合、ステータスプレートが無くとも並外れたステータスや技能になっているのは目に見えていたので今まで発行は避けてきたのだ。発行すれば必ず人に見られて大騒ぎになるからだ。

 

「しかし、身元は明確にしてもらわないと。記録をとっておき、君達が頻繁にギルド内で問題を起こすようなら、加害者・被害者のどちらかに関係なくブラックリストに載せることになりますからね。よければギルドで立て替えますが?」

 

どうやってもステータスプレートの発行は必要なようだ。面倒なことになり、どうしたものかと誠司とハジメは顔を見合わせていると、先程まで黙っていたユエが何か思い出したかのようにクイクイと二人の服の袖を引っ張る。

 

「……二人とも手紙は?」

「「……あ」」

 

ユエの言葉に二人はキャサリンから手紙を受け取っていたことを思い出した。誠司は懐から手紙を取り出すとそれをドットに提出する。どうなるかは分からないが、彼女の「少しは役に立つ」という言葉に賭けてみることにした。

 

「実はフューレンに来る前、別の町で知り合いのギルド職員から、困った時にこれをお偉いさんから渡すように言われたんですが。これが身分証明の代わりになりませんかね……?」

「……? 知り合いのギルド職員ですか? ……拝見します」

 

低ランクの赤とは言え、特にお金に困っている様子の無い誠司達が頑なにステータスプレートの発行を拒んでいるのにドットは疑問に感じているようだった。ドットは訝しげな様子で手紙の封を切り、中身を流し読みし始める。

 

すると、ギョッと目を見開き、目を皿のようにして繰り返し読み込んでいく。おそらく、手紙の真贋を見定めているのか。やがて、ドットは手紙を折りたたむと丁寧に便箋に入れ直し、誠司達に視線を戻した。

 

「この手紙が本当なら確かな身分証明になりますが…… この手紙が差出人本人のものか私一人では少々判断が付きかねます。支部長に確認を取りますから少し別室で待っていてもらえますか? そうお時間は取らせません。十分、十五分程度で済みます」

「……? ええ、それくらいなら」

「別室へは職員に案内させます。では、後ほど」

 

誠司達が応接室に案内されてからきっかり十分後、扉にノックの音が聞こえた。返事をすると、扉が開き、先程のドットと金髪をオールバックにした鋭い目付きの三十代後半くらいの男性が入って来た。

 

「初めまして。冒険者ギルド、フューレン支部支部長のイルワ・チャングだ。君達は誠司君、ハジメ君、ユエ君、シア君……でいいかな?」

 

簡潔な自己紹介の後、誠司達の名前の確認がてらに握手を求める支部長イルワ。誠司達の方も握手を返しながら返事をする。

 

「ええ、そうです。でも、俺達はともかく、ユエ達の名前はどこから…………ってさっきの手紙か」

「ご名答。先生からの手紙に書いてあったよ。随分と目をかけられている……というより注目されているようだね。将来有望、ただしトラブル体質なので、出来れば目をかけてやって欲しいという旨の内容だったよ」

「トラブル体質……まぁ、あながち間違いではないな……」

「それで、イルワさん。僕達の身分証明はその手紙で大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない。先生が問題のある人物ではないと手紙に書いているし、あの人の人を見る目は確かだ。この手紙を以て君達の身分証明とさせてもらう」

 

イルワの言葉にホッと胸を撫で下ろす誠司達。キャサリンのお陰で助かった。そこに、「先生」という言葉に疑問を覚えたシアが思わずおずおずと尋ねた。

 

「あの〜、キャサリンさんって何者なんですか?」

「ん? 聞いていないのかい? あの人は王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には今も頭が上がらなくてね。その美しさと人柄の良さから、当時は、私達にとってマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。そしてその後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤したんだよ。子供を育てるにも田舎の方がいいって言ってね。彼女の結婚発表は青天の霹靂だったから荒れたよ。ギルドどころか、王都全体で」

 

昔を懐かしむようなイルワの言葉に誠司達は驚きを露わにする。只者ではないと思っていたがこれ程とは。

 

「はえ〜、そんなにすごい人だったんですね〜」

「……キャサリンすごい」

「うわぁ、只者じゃないとは思ってたけど思いきり中枢の人だったとはね……」

「人に歴史あり……だな」

 

そんな風に口々に感想を溢すと、誠司達は身分証明が済んだのでお暇することにした。しかし、イルワが誠司達を呼び止める。

 

「少し待ってくれるかい?」

「……何ですか?」

 

嫌な予感がするが、呼び止められた以上、無視は出来ない。誠司達は振り返って返事をする。

 

「君達に依頼をお願いしたいのだが……」

「「お断りします」」

「まぁそう言わず、話だけでも聞いてくれないかな? ()()使()()の中西誠司君、南雲ハジメ君?」

 

『神の使徒』という単語が出た瞬間、ビリッと部屋全体に殺気が漂う。飄々とした様子のイルワと彼を強く睨み付ける誠司達。ドットはギョッとした表情で彼らを交互に目を向けている。その様子から察するにドットは何も知らないようだ。

 

「……どこでそれを?」

 

底冷えのする誠司の声にイルワは肩をすくめる。

 

「そんな怖い顔をしないでくれるかい? どこで……と言われてもこれは私の憶測でしか無いからね」

 

それを聞いて、誠司達はほんの少しだけ殺気を弱める。だが、変わらずイルワを睨んだままだ。イルワは話を続けた。

 

「数ヶ月前、神の使徒二人がオルクス大迷宮での訓練の途中で魔獣と一緒に奈落に落ちた。その神の使徒の天職は『魔獣使い』と『錬成師』だったと聞いているよ。丁度、君達の天職も同じだったね。それに……君達の名前はこの世界では珍しい。少なくとも……私は君達と同じような名前の人間は見たことも聞いたことも無いよ」

 

流石はキャサリンの教え子にして、若干三十代でこの大都市のギルド支部長を務めているだけのことはある。かなり頭の切れる人物のようだ。

 

そのまま惚け通しても良かったが、その後に教会関係に報告されたりでもしたら、そっちの方が面倒だ。そう考えた誠司達は嫌そうな顔をしつつも席に座り直した。それを見てイルワは満足げに頷く。

 

「聞いてくれるようだね、ありがとう」

「あなた、性格が悪いと言われませんか?」

「ふふっ、言われるかもね。それで依頼というのは……ドット君、依頼書を」

「は、はい……」

 

イルワに言われてドットはおずおずと一枚の依頼書を誠司達の前に差し出した。

 

イルワが言うには、最近、北の山脈地帯で魔獣の群れを見たという目撃例が何件か寄せられ、ギルドに調査依頼が出されたらしい。北の山脈地帯は、一つ山を超えるとほとんど未開の地域となっており、大迷宮にいる魔獣程ではないがそれなりに強力な魔獣が出没するので、高ランクの冒険者がこれを引き受けた。ただ、この冒険者パーティーに本来のメンバー以外の人物がいささか強引に同行を申し込み、紆余曲折あって最終的に臨時パーティーを組むことになったのだ。

 

この飛び入りが、クデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物らしい。クデタ伯爵は、家出同然に冒険者になると飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後、息子に付けていた連絡員も消息が不明となり、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。

 

「伯爵は家の力で独自の捜索隊も出しているようだけど、手数は多い方がいいとギルドにも捜索願を出した。それがつい昨日のことだ。最初に調査依頼を引き受けたパーティーはかなりの手練でね。彼等に対処できない何かがあったとすれば、並みの冒険者じゃあ二次災害だ。相応以上の実力者に引き受けてもらわないといけない。だが、現在この依頼を任せられる冒険者は皆、出払っていてね。そこへ、君達がタイミングよく来たものだから、こうして依頼しているというわけだ」

「だけど、俺達はまだ赤ランクですよ?」

「ん? ああ、そうか。君達は知らないかもしれないが、キャサリン先生の昇格の基準は結構厳しいんだよ」

 

イルワ曰く、ブルックでの冒険者の昇格基準はかなり厳しいことで有名らしい。

 

当然、低ランクの青から赤の場合と最高ランクの銀から金の場合では昇格難易度は天と地ほどの差があるが、それでも青から赤になるのは他の町と比べて難しい。逆に、昇格すれば仲間内から一目置かれるようになる。それに、冒険者になってから短期間でランク上げしたということは冒険者としての能力が非常に高いということである。

 

イルワに言われて思い返してみれば、元金ランクのクリスタベルを除いて、高ランク冒険者はブルックの町に居なかった。それにキャサリンから昇格の知らせを聞いた時、ギルド内がやけに騒がしかった。そういった点もイルワの話が本当なら辻褄が合う。それらを思い出して誠司もハジメも納得したように頷いた。

 

「君達の依頼実績はこちらでも確認させてもらったけど、どの依頼も結果は優良。さっきのユンケル商会のモットー氏の依頼も含めてね。正直驚いたよ。先生が昇格を認めたのも頷けるレベルだ。それに……ライセン大峡谷を余裕で探索出来る者を相応以上と言わずして何と言うのかな?」

「……ん? ちょっと待って下さい。ライセン大峡谷の下りはもしかして手紙に? だけどあの人にそんなことを話した覚えは……」

 

ハジメがそう言いながら、誠司の顔を見るが誠司も首を横に振る。次にユエとシアを見ると二人は揃って気まずげな顔をしている。

 

「えっと……つい話が弾みまして……てへ?」

「……悪いと思ってる。でも反省も後悔もしていない」

「はぁ……ユエ、シア…………」

 

思わず片手で顔を覆って溜息を吐くハジメ。それに苦笑いを浮かべつつイルワは話を再開した。

 

「生存は絶望的だが、可能性はゼロではない。伯爵は個人的にも友人でね、出来る限り早く捜索したいと考えている。どうかな? 今は君達しかいないんだ。引き受けてはもらえないだろうか?」

「そう言われてもな……俺達にも旅の目的地があるんです。ここは通り道だったから寄っただけであって、依頼を受けるためじゃない。正直、北の山脈地帯は回り道だ。なので依頼は断らせてもらいます」

 

そう言って誠司は断るが、イルワも引かない。今度は報酬の提示をする。

 

「もちろん報酬は弾ませて貰うよ。そこの依頼書にある通りの値段を支払おう」

 

イルワに言われて誠司達は依頼書の報酬金額に目を向けると、思わず目を見開いた。

 

そこには人捜しの依頼にしては破格の値段が記載されていた。ゼロを二つ程、付け間違えたのではないかと疑うレベルだ。それにイルワは報酬を付け足していく。

 

「それにランクの昇格も約束しよう。君達レベルの冒険者なら私の裁量で黒にしても良い」

「そりゃあ、金は有るに越したことは無いが、過ぎた金は身を滅ぼす。地位も同様ですよ」

「なるほど、正論だね……ならば今後、ギルド関連で揉め事が起きたときは私が直接、君達の後ろ盾になるというのはどうかな? フューレンのギルド支部長の後ろ盾だ、これでもギルド内でも相当の影響力はあると自負しているよ? 君達は揉め事とは仲が良さそうだからね。悪くない報酬ではないかな?」

「あの……どうしてそこまで必死なんですか? いくら貴族で友人の息子だからってこれは流石に……」

 

そんなハジメの疑問にイルワは初めて表情を崩した。その表情は後悔を多分に含んでいる。

 

「彼に……ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね…… だが、残念ながら彼にその資質はなかった。だからこそ、強力な冒険者の傍でそこそこ危険な場所へ行って悟って欲しかった。自分に冒険者は無理だと。昔から私には懐いてくれていて…… だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに……」

 

イルワの独白を聞いて思わず顔を見合わせる誠司達。どうやらイルワと伯爵の繋がりは深いようだ。誠司は少し考え込んだ。

 

(魔獣の大発生……ね。ポケモンがそれほどいるのなら戦力強化には丁度良いか……)

 

そこまで考えた誠司はハジメ達に視線を向ける。彼女達も誠司の意見に従うというように頷いた。

 

「話は分かりました。受けましょう。しかし、報酬金額の他に二つ条件があります」

「条件……?」

「ええ。まず一つ目はユエとシアのステータスプレートを発行し、そこに表示された内容を絶対に口外しないこと。そして二つ目は、必要な時にあなたのコネをフル活用して俺達の要望に応えて便宜を図ること。この二つです」

 

今後、ユエとシアのステータスプレートが必要なのは確かだ。これからもこういったゴタゴタが起こっていちいち足止めされたら敵わない。ステータスプレートを発行し、その内容を口止めして貰えば安心して旅を続けられる。

 

キャサリンの手紙を身分証明書代わりに使うという方法があるが、それも心もとない。先程イルワの言っていたことを逆手に取れば、四、五割の支部長はキャサリンの教え子ではないからだ。今後を考えればステータスプレートとギルド支部長の便宜は非常に役に立つ。

 

「それは流石に……」

 

誠司の出す条件に難色を示すイルワ。無理もない。実質、フューレンのギルド支部長が一介の冒険者の手足になるようなものだ。責任ある立場として、おいそれと許容することは出来ない。誠司もそれは理解しているので説明する。

 

「もちろん、犯罪行為に加担するといったギルド支部長の肩書きを穢すようなことはしませんよ。俺達は遠くないうちに教会から目を付けられる可能性が高い。もしも指名手配された時に施設の利用とかが出来ればそれで問題ありませんよ」

「ふむ。指名手配は確実なのかい? まぁ、君達が神の使徒だったとすれば……有り得なくはないか。それで便宜……という訳か」

 

イルワはそう言うと、少し考え込む。ついでに誠司は付け足した。

 

「もしも、それらの条件を認めて貰えれば、報酬金額はこれだけで結構です」

 

誠司は机にあるペンを手に取ると、依頼書に書かれた金額の後ろのゼロを二つ二重線で消した。二桁消えたことで相場の報酬金額より若干安くなってしまったが、誠司の言った条件が認められれば、誠司達にとって遥かに価値がある。

 

「…………分かった。その条件で呑もう。だが、君達の要望を詳細に聞かせて貰い、その上で便宜を図るかどうかは私自身が判断する。そして、君達の要望は極力応えるが、犯罪に加担するような倫理にもとる行為・要望には絶対に応えない。……これで良いかな?」

「十分です。報酬は依頼達成後に貰うとして、ウィル・クデタ本人及び彼の遺品を持って来れば良いんですよね?」

「ああ、それで構わないよ。どんな形であれウィルの痕跡を見つけてもらいたい……よろしく頼む」

 

そう言ってイルワは真剣な表情で頭を下げる。

 

「しかるべく」

「分かりました」

「んっ」

「はいっ」

 

誠司達はそれぞれ返事を返して書類にサインをして依頼の契約を交わした。その後、ドットから支度金や北の山脈地帯の麓にある湖畔の町への紹介状、件の冒険者達が引き受けた調査依頼の資料を受け取る。

 

こうして、誠司達は湖畔の町、ウルを目指して応接室を後にする。




誠司達が貴族に対して暴力行為を振るっていないのでこのような展開になりました……

イルワの切れ物感が凄い……まぁ原作でもハジメが神の使徒だと勘づいていたし大丈夫でしょう。そもそもハジメとかの名前なんて異世界の人からしたら結構、違和感が有りそうだし勘付かれない方がおかしい。
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