魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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何か、キリの良い所まで書こうとするとどうしても長くなってしまう……


深夜の会話

誠司がニルシッシルの最後の一口を食べ終え、スプーンを皿の上に置く。ハジメやユエやシアも食べ終えたらしく、ナプキンで口を拭ったり、満足そうにお腹を摩ったりしている。

 

そんな誠司達を見て愛子は再び話しかけて来た。

 

「あの……中西君達は本当に戻って来ないつもりなんですか?」

「ええ、そのつもりは無いですね。元々この町に来たのも仕事の都合で来たからであって、依頼を終えたらそのまま出て行きます」

「僕も誠司と同じ意見です」

「どうして……」

 

愛子は悲しげに誠司達を見やり、理由を尋ねようとするが、誠司達がそれより早く席を立つ。愛子は引き止めようとするが、誠司達は無視して二階の階段へ向かった。その時、ハジメは何かを思い出したように、立ち止まって愛子達の方に振り返った。

 

考えを改めてくれるのかと一瞬だけ期待するが、その期待はハジメの質問で打ち砕かれる。

 

「そういえば聞き忘れてた…… ところで、あの時の魔法は結局誰の魔法だったんですか?」

「え……?」

 

愛子は何を聞かれているのか分からないという表情だ。

 

「だから、あの時……僕達が奈落に落ちる原因になった魔法は誰が放ったんですか?」

『っ!?』

 

ハジメの言葉に愛子の顔が強張る。クラスメイト達も同様で、顔色が悪くなる。

 

「え、えっと……一部の魔法が制御を離れて誤爆したと……」

「それで、結局、誰の、魔法だったんですか?」

「そ、それは……その……」

 

愛子の要領を得ない回答にハジメは改めて強調しながら質問を繰り返す。だが、相変わらず要領を得た回答は返ってこず、ただ言い淀むだけだった。

 

今度はクラスメイト達に視線を向ける。ハジメと目が合った優花達は気まずそうに目を逸らす。それだけで自分達が奈落に落ちた後、どのようなことがあったのか何となく察した。

 

正直、自分達が奈落に落ちたのは事故だということにされているのは、イルワとの会話やクラスメイト達の反応から察しがついていた。本当は明らかに自分達を狙って攻撃してきたものだったのだが、まぁ、それについては別に良い。仲間に裏切られて攻撃されたとあっては醜聞どころの話ではないだろうから。多少、話が改変されていても別に驚きはしない。

 

ただ、誰の魔法が誤爆したのかくらいは、既に調べがついているものだとばかり思っていた。しかし、実際はそれすらもされておらず、事故ということでなぁなぁにされていた。実に呆れた話である。それでよく戻って来い等と言えたものだ。

 

誠司と顔を見合わせて、ハジメは大きく溜息を吐いた。本日、何度目かの溜息である。ハジメはもう何も言う気が起きないらしく、代わりに誠司が口を開く。

 

「はぁ……それを聞いて、ますます戻ろうと思わなくなりました。もうあなた方と会うことはないと思いますが……それでは」

「ま、待ってください! やっぱり中西君達は皆を恨んでいるんですか?」

 

愛子がまた頓珍漢なことを聞いてくるので、誠司は内心面倒に思いながらも懇切丁寧に答えることにした。

 

「恨むも何も、当然の反応だと思いますよ。だって、味方を巻き込んで攻撃するような危険人物がいる所に戻りたくありませんから」

「危険……人物……?」

「仮にパニックに陥っていたとしても、非常事態に味方を誤射するような奴を野放しにしている所に誰が戻るんですか? それにしても……他のクラスメイト達も凄いな。そんな危険人物が後ろにいたら自分もやられるかもしれないのに背中を預けられるんだから。俺なら怖くて絶対に無理だな」

 

呆れを多分に含んだ誠司の言葉にハッとした表情で青ざめる愛子達。

 

確かにそうだ。もしも誤射した人物が前線組や愛ちゃん護衛隊の誰かだとしたら、また誰か犠牲になる者が出るかもしれない。そういった事態を防ぐために、誰が誤射したのかは特定しておくべきだった。本当に生徒の安全を考えているのなら。

 

それを今更ながらに気付かされたのだ。何も言えなくなる愛子達に、誠司達はもう何も言わずに二階への階段を上がって行く。愛子達の間には何とも言えない重い空気が流れる。

 

 

 

誠司達は部屋に入り、明日に備えて早めに休むことにした。誠司は1人部屋、ハジメ達女性陣は3人部屋だ。部屋に入り、ベッドに腰掛けたハジメはシアに尋ねた。

 

「シア、大丈夫? あの腐れ騎士に色々言われてたけど」

「え? はい、大丈夫です! 元々()()は出来てましたから」

 

あの時、シアがデビッド達を無視出来ていたのは、誠司達の仲間に加わる前に嫌われる覚悟が出来ていたからだ。なので、悪意ある言葉を掛けられても受け流すことが出来た。しかし、シアの顔色はどこか優れない。

 

「でも……やっぱりキツいものですね。嫌われ、憎まれるというのは。ブルックの町ではそんなことが無かったのも大きかったんでしょうけど……」

「シア……」

 

そんなシアに何て言えば分からないハジメ。その時、ユエがシアに抱きついた。ついでにウサ耳もモフモフする。

 

「ふあっ!? ユ、ユエさん!?」

「……シアのウサ耳はウッサウサで可愛い」

「ユエさん……そうでしょうか?」

「んっ!」

「そうだよ、シア」

 

ハジメもシアのウサ耳に触れる。その触り心地の良さに思わず笑みが溢れる。

 

「僕もシアのウサ耳は可愛くて好きだよ。何なら誠司も時々触りたそうにウズウズしてるしね。セクハラになるからって自制してるけど」

「ん……誠司にも触らせてあげたら?」

「誠司さんも…… そうですね。偶になら触らせてあげても良いかもしれませんね」

「あはは、誠司が聞いたら喜びそうだよ」

「……そうなったら遠慮なく触ってくるかも」

 

三人は楽しそうに部屋で会話に花を咲かせる。

 

 

 

そんなハジメ達をよそに、隣の部屋で誠司は明日に使うポケモン達を予めモンスターボールにしまって用意をしていた。明日は早朝から宿を出る予定なので、余計な時間はなるべく省いておきたい。ポケモン達も事情を聞くと快くボールに入ることを了承してくれた。

 

今回、誠司が選んだポケモンは、移動用のケンタロス、空から探すためのチルット、レーダーの役割のヒレを持つヌマクロー、賢く自分達とは違った視点で物を見ることが出来るヤレユータン、そして野生のポケモン達に襲われた際に相手を無力化出来るマシェードとチリーン…………この六体である。

 

彼らをモンスターボールにしまい、腰のベルトに装着するとトランクを出る。途中ポケモン達の食事を用意したり、体調のチェックもしていたため、トランクを出た頃にはもう深夜になっていた。捕獲したポケモンの数もかなり多くなってきたのでそれだけお世話も大変である。だが、不思議と誠司はそれほど苦に感じていなかった。

 

トランクから戻り、ベッドに腰掛けて一息吐く。そんな時、扉を叩く音が聞こえてきた。扉を開けるとハジメが立っていた。

 

「ねぇ、誠司。ちょっと先生の所に行かない?」

 

思いがけないハジメの言葉に目を丸くする誠司。

 

「畑山先生に? それはまた何でだ?」

「うん、先生には僕達の旅の目的とか今まで知った情報を開示して良いと思うんだ」

「……?」

「僕達が旅を続ける上で、どうしても目立つ存在になるのは間違いないよね? そうなると教会やエヒトとかいう狂った神が何かしら干渉をしてくる可能性が高い。場合によってはクラスメイトとかを差し向けて来るかもしれない……」

「ああ、そういうこと……」

 

ようやく誠司もハジメの言いたいことを理解したらしく、大きく頷く。

 

「つまり、畑山先生に教会を信じ過ぎるなって忠告する訳か。確かに畑山先生達も教会の犬共が近くにいる以上、いつ教会の思想に染まるか分かったもんじゃない。それに畑山先生の言葉ならクラスメイト達も従うだろうしな」

「どれだけ効果があるか分からないけど、まぁ僕達が言うよりずっと効果はあると思うよ」

「だが、畑山先生は信じるかねぇ…… 俺達ですら半信半疑だってのに」

 

実のところ、誠司達は解放者の話を完全には信じていない。オスカーやミレディが嘘を吐いているようには思えなかったが、彼らにとって都合の良いことだけを言っている可能性もある。当事者の証言だけでは客観的とは言い難い。

 

もちろん、ミレディにもその旨は伝えている。完全に信じるかどうかは他の大迷宮を攻略してから判断するとも。ミレディの方も自分の話を聞いただけで信じて貰えるとは思っていないようで、それで十分だと言われた。彼女曰く、人の話を鵜呑みにして簡単に信じ込むような人間の方が逆に信用ならないとのことだ。

 

そんな誠司の懸念にハジメも少し考え込むような仕草を取る。

 

「う〜ん、先生のことだから大丈夫だと思うよ。先生の行動原理はいつも生徒のことばかりだからね。僕達の話を嘘だと決めつけて一方的に斬り捨てることはしないと思う。それに、話をするのもあくまで教会を警戒させるのが目的だし」

「まぁ、ハジメがそう言うなら…… それなら早く行こう」

 

誠司は部屋を出て扉に鍵を掛けると、さっさと愛子が泊まっている部屋に向かった。

 

 

 

その頃、愛子は部屋で一人、ソファに腰掛けて考えごとをしていた。情報があまりにも多すぎて考えは一向に纏まらない。火の入っていない暖炉をただひたすらに見つめ、先程の出来事を振り返る。

 

大切な教え子が生きていたことは知った時を思い出して頬を緩めるも、その後の彼らのつれない態度を思い出して眉を顰める。しかし、彼らが自分達に不信感を抱くのも無理はないと考え直して、小さく溜息を吐く。そして、誠司達の周りにいた少女達を思い出し、信頼出来る仲間を得たのだと再び頬を緩めた。

 

その時、自分以外誰もいないはずの部屋の中から声を掛けられた。

 

「何を百面相しているんですか、先生?」

「っ!?」

 

愛子はギョッとして声がした方へ振り向く。振り向いた先には、入口の扉にもたれながら立っている誠司とハジメの姿があった。驚愕のあまり舌がもつれながらも何とか言葉を発する愛子。

 

「な、中西君? それに南雲……君も。な、何でここが……それにどうやって……」

「食事の席の際に畑山先生達、部屋の鍵を机の上に置きっぱなしにしてたでしょ。いくつかあった鍵に書かれた番号の部屋の中から一人部屋を探したらすぐに分かりましたよ。それにどうやってと言われても……普通にドアから入りましたとしか言えませんね」

「えっ、でも鍵が……」

「丁度優秀な錬成師がいるんでね。合鍵を作って開けて貰いました」

 

誠司がそう言うと、ハジメは得意そうに笑みを浮かべた。愛子はしばらく呆然とするも、すぐに眉を顰めて咎める表情になった。

 

「二人とも、こんな時間に、しかも女性の部屋にノックもなくいきなり侵入とは感心しませんよ。わざわざ合鍵まで作って……一体、どうしたんですか?」

 

愛子のお叱りを受け流し、二人とも素直に謝ると来訪の目的を告げた。

 

「そこは確かに非常識でしたね。すみません。少しだけ気が変わりましてね。先生と少し話をしようと思いまして。出来れば生徒やら騎士やら邪魔者がいない状況で」

「え……話ですか……?」

 

もしかして本当は戻って来るつもりなのかと期待に目を輝かせる愛子。だが、ハジメは苦笑しつつその期待を否定する。

 

「いや、さっきも言った通り、戻るつもりはありませんから。今からする話は、あくまでも先生なら冷静に受け止められるだろうと思ったから話します。どう判断するかは先生に任せます」

「念のために言っておきますが、俺達もこの話は半信半疑だということをご了承ください」

 

そのように前置きを置いて、誠司とハジメは今までの旅で知った情報や自分達の旅の目的を話し始めた。

 

 

 

どれくらい時間が経ったか分からないが、この世界の話を話し終えた誠司達。愛子は呆然としており、どう受け止めていいか分からないようだ。情報を咀嚼し、自らの考えを持つに至るには、まだ時間が掛かりそうである。

 

「以上が僕達が奈落に落ちてから知ったことですね。これを知ってどうするかは先生に任せます」

「戯言と斬り捨てるか、真実と考えて行動するか、それは畑山先生次第です」

「あ、あの……二人はもしかしてその狂った神を何とかしようと旅を……?」

「それはこれから次第ですね」

「ああ、さっきも言った通り、俺達も半信半疑の内容なんでね。まだ確信は出来ませんが……少なくとも、地球に帰るためにパルキアの力が必要なのは確かです」

 

誠司とハジメの言葉から、あまりにもスケールの大きい話を聞いて思わずこめかみを押さえる愛子。少し話題を逸らすように尋ねた。

 

「そのアテはあるんですか?」

「もちろん。大迷宮あたりが鍵になるでしょうね。興味があるのならオルクスでもどこでも探索しても構いませんよ。もっとも、彼らが攻略に乗り出しても早死にするでしょうけど」

 

誠司が先程のクラスメイト達を思い出しながらそう言った。そんな時、愛子が何か思い出したかのように、ある生徒のことを伝えた。

 

「白崎さんは諦めていませんでしたよ」

「「……」」

「他のクラスメイト達はあなた達が死んだと言っても、彼女だけは諦めていませんでした。自分の目で確認するまで、あなた達の生存を信じると。今も、オルクス大迷宮で戦っています。天之河君達は純粋に実戦訓練として潜っているようですが、彼女だけは君を探すことが目的のようです」

「……白崎さんは無事ですか?」

 

ハジメが愛子に尋ねた。愛子は彼女がハジメと親しかったことを思い出して、にこやかに答えた。

 

「ああ、南雲……君は白崎さんと仲が良かったですもんね。順調に実力を伸ばして攻略を進めているそうです」

「う~ん……そういうわけじゃないんですが…… 良ければ伝えておいて貰えませんか? 迷宮では魔獣だけじゃなくて後ろの仲間にも警戒しておけと」

「え? それは……」

 

先程、誠司とハジメに言われたことを思い出して、顔を曇らせる愛子。確かに誤爆した人物が誰か分からない以上、警戒は必要かもしれない。だが、彼らはもう何か月も攻略を進めていて、その間に事故は一度も起こっていない。だから彼らに限っては問題ないかもしれない。そう考え始めていた。

 

そんな愛子の気持ちを正確に読み取ったハジメは容赦なく残酷な事実を突き付けた。本当なら黙っていても特に問題は無かった事実を。

 

「もうこの際だから言っておきますけど……僕達が落ちた原因になった魔法は誤爆じゃありませんよ。明らかに僕達を狙って誘導された魔弾でしたから」

「え? 誘導? 狙って?」

 

言っている意味が分からず、思わず聞き返す愛子。分かりたくないのかもしれない。今度は誠司が愛子に告げた。

 

「つまり、俺達はクラスメイトの誰かに殺されかけたってことです」

「っ!?」

 

愛子は顔面を蒼白にして硬直する。

 

「僕達が狙われた原因は白崎さんとの関係くらいしか浮かばなかったので。嫉妬で人を殺そうとするような人間なら今後、何をしでかすか分からない。しっかり忠告した方が良いですよ」

 

ハジメがそう言うと、誠司と一緒に部屋を出た。部屋に一人残された愛子は思わず寒気を感じ、両腕で自身の身体を抱きしめた。

 

大切な生徒が仲間を殺そうとしたかもしれない。それも、死の瀬戸際で背中を狙うという卑劣な手段で。生徒が何より大切な愛子にはとても受け入れ難い話だ。だが、否定すればハジメの言葉も理由もなく否定することになる。生徒を信じたい心がせめぎ合う。

 

愛子の悩みはますます深くなり、普段以上に眠れぬ夜を過ごすことになった。

 

 

 

部屋を出て誠司は少し不快そうな表情で、愛子のいる部屋と両隣の部屋を睨み付けた。正確にはその部屋にいる者達に対してだ。それに気付いたハジメが尋ねた。

 

「どうしたの、誠司?」

「いや……あいつら、確か畑山先生の護衛とか言ってたが、所詮は口だけだったんだなって思ってな」

 

ハジメも誠司の言葉の意味に気付いたようで、冷めた声で言った。

 

「仕方ないんじゃない? つい数か月前まで普通の高校生だったんだから。まぁ、僕達もだけど」

「ふん、呆れた奴らだ」

 

二人はそれぞれ違う部屋に入るとすぐにベッドで眠りについた。




誠司達は解放者達の話は半信半疑です。まぁ、解放者達の言葉だけでどう信じろという話ではありますし……
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