魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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捜索任務開始!

夜明け頃。人々がまだ寝静まっている時間帯、誠司達は宿の受付でチェックアウトを済ませていた。

 

事前に早朝から出発することを伝えていたとは言え、極めて早い時間でありながら、オーナーのフォスは嫌な顔一つせずに応対してくれている。フォスは誠司達から部屋の鍵を受け取ると、四つの包みをそれぞれに渡した。

 

「これは?」

「握り飯です。移動しながらでも食べられますので、よろしければ朝食にどうぞ」

 

そう言ってフォスは優しく微笑んだ。流石は高級宿、粋な心遣いに胸が熱くなる。誠司達は素直にお礼を言った。

 

「そうか……じゃあ、有難く頂きます」

「本当にありがとうございます」

「ん……嬉しい」

「ありがとうございます!」

 

四人が嬉しそうにお礼を言うと、フォスは少し申しなさそうに笑った。そんな彼を見て頭にハテナマークを浮かべる誠司達。

 

「いえいえ、昨晩は当宿のお客様があなた方にご迷惑をお掛けしたそうなのでお詫びですよ。不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありませんでした」

 

フォスはそう言うと、誠司達、特にシアに向かって頭を下げる。それを見たシアは慌てて頭を上げるように言う。

 

「わわっ! オーナーさん、頭を上げてください! 私は別に気にしてませんから」

「そうですよ。あなたが謝る必要はないですよ」

 

ハジメも思わずそう言うと、フォスは頭を上げた。誠司とユエも口を開いた。

 

「オーナーさん、それなら次に俺達が来る時に美味しい米料理をお願いします」

「ん……昨日のニルシッシル、本当に美味しかった。また食べたい」

「お客様……」

 

誠司達の温かい言葉に、フォスはようやくいつも通りの笑顔を浮かべた。

 

「では、一刻も早くあなた方に北山脈の問題を解決して貰わねばいけませんね」

「ああ、金を貰う以上、手を抜く訳にはいかないので。それでは行ってきます」

 

そう言って、誠司達は宿の出口に向かって行った。

 

「行ってらっしゃいませ」

 

背後のフォスの言葉に右手を軽く上げて応えると、誠司達は扉を開けて宿を後にした。

 

 

 

宿を出てしばらく歩く誠司達。道中、フォスから貰った握り飯を頬張りながら北門へ向かう。そこから北の山脈に続く街道が延びているのだ。

 

人捜しの仕事である以上、出来る限り急いで捜索を行わなければならない。遅れれば遅れるだけ、生存率は下がっていくからだ。

 

幸い、本日の天気は快晴。捜索日和だ。

 

表通りを北に突き進み、やがて北門が見えてきた。その時、誠司達の足が止まる。北門の側に複数の人がたむろしているのが見えたからだ。

 

愛子とクラスメイト達の計七人だ。誠司は面倒な奴らがいると小さく溜息を吐いた。ハジメ達も半眼になっている。

 

「で……何か俺達に用ですか、畑山先生?」

 

誠司が尋ねる。一瞬、気圧されたようにビクッとする愛子だったが、すぐに毅然とした態度を取って誠司達に向き直る。少し離れた場所で何やら話し込んでいた優花達も誠司達に気が付いて、愛子の傍に寄って来た。

 

「私達も同行します。行方不明者の捜索なら人数は多い方が良いです。だから……」

「お断りします」

「な、何故ですか?」

「まぁ、色々理由はありますが、一番の理由はあなた達が同行しても仕事の邪魔にしかならないからですね」

 

誠司ははっきりと断りを入れる。普段の誠司であればもう少しオブラートに包んで断るのだが、今回は包み切れなかった。こっちは人命が掛かっているのだ。ボランティア感覚で来られても、はっきり言って迷惑でしかない。

 

愛子達の後ろに馬が数頭いるのが見えた。恐らく愛子達が用意したのだろう。「彼女達に乗馬が出来るのか?」と一瞬思う誠司達だが、そこはどうでも良いのでスルーする。

 

「お前らが来ても足手まといだ」と言われて、思わずカチンとくるクラスメイト達。そのうちの一人、園部優花が食ってかかる。

 

「ちょっと、そんな言い方は無いでしょ。中西達が私達のことを気に食わないのは分かるけど、愛ちゃん先生にまで当たらないでよ。それに、どうやって山脈まで行く気なのよ? 走って行くつもり?」

 

誠司達に移動手段が見当たらないので、自分達と会いたくないから適当にそう言っていると勘違いしているようだ。誠司達は無言でモンスターボールを取り出すと、各々ポケモンを出す。

 

「ブモオオォォォ!」

「メッタ!」

「シャシャン!」

「ゴーッ!」

 

突然、目の前に現れたケンタロス、メタング、シャンデラ、ゴーゴートにクラスメイト達から悲鳴が上がる。

 

「きゃああっ!?」

「ま、魔獣!」

「何でいきなり!? どっから出てきたの!?」

 

ポケモン達は魔獣として恐れられている存在だ。そんなものがいきなり現れればこうなるのは必然である。分かってはいたことだが、あまり気持ちの良いものではない。

 

「俺達は魔獣、いやポケモン達と一緒に旅をしているんだ」

「今回の仕事もこの子達の力を借りるつもりだったしね」

「ん……本当に頼もしい仲間」

「だから、ポケモン達のことが怖いなら来ない方が良いと思いますよ。私達としてもこの子達を怖がった状態で一緒にいられても困るので……」

 

誠司達はそう言うと、自分のポケモンに乗り込む。いざ出発しようとした瞬間、愛子から待ったを掛けられた。

 

 

愛子が言うには、生徒の一人、清水が数日前から行方不明になっているらしく、色々と情報を集めているがまだ情報が上がっていない。しかし、北の山脈地帯ではまだ情報収集を行なっていない。事件にしろ自発的失踪にしろ、まさか北の山脈地帯に行くとは考えられなかったので当然ではある。なので、これを機に自ら赴いて、ハジメ達の捜索対象を探しながら清水の手がかりもないかも調べようと思ったのである。

 

ちなみに優花達がいるのは偶然で、愛子だけに行かせるわけにはいかないと半ば強引に付いて来たようだ。騎士達は誠司達といるとまた厄介事になるとして、置手紙を残して留守番を指示しておいたらしい。まぁ、賢明な判断である。

 

「無理なことを言っているのは分かっていますが、お願いします。私達を同行させてください」

「だけど畑山先生、その……清水?って奴を探すだけならわざわざ同行する必要はないのでは? 何故そこまで?」

「それは……」

 

愛子は誠司とハジメに身を寄せて理由を告げた。愛子の顔をよく見れば化粧で隠れてはいるが、目元に隈がある。昨晩、殆ど眠れなかったのだろう。

 

「昨日南雲……君が言っていたことを先生として詳しく知る必要があるからです。移動時間や捜索の合間で良いので、お願いします」

 

愛子の目に強い決意の光があるのが見える。誠司はハジメにジト目を向けた。昨夜の最後の言葉は失敗だったな……と。ハジメも気まずそうに「ごめん」と口の動きだけで誠司に詫びる。

 

「ねぇ、誠司。連れて行こう」

「ハジメ、本気か?」

「仕方ないよ。このまま教会とかに捜索依頼を出されたらそっちの方が遥かに面倒だし」

「……確かにな。だが、畑山先生への説明はハジメがしてくれよ」

「分かってるって」

「中西君、南雲……君! ありがとうござ……「ただし条件が二つある」……条件ですか?」

 

愛子の感謝の言葉を遮ると、誠司は愛子や周囲のクラスメイト達を見渡した。

 

「一つ目の条件は、俺達がこれからやることを教会に口外しないことだ。別に犯罪行為をするわけではないが、バレれば異端審問だの何だの面倒ごとになるのは目に見えているからな」

 

一つ目の条件に愛子達は素直に頷く。確かに魔獣を使っていればそうなる可能性はあるからだ。

 

「そして二つ目は、自分の身は自分で守ることだ。無理言って俺達に同行するんだ。何かあっても、自分の身くらい自分で守れ。まぁ、仮にも畑山先生の護衛を任されてるくらいだから、その心配はないだろうがな」

 

誠司の言葉に、クラスメイト達の顔が強張る。だが、誠司は気付かないフリをした。条件を伝え終えた誠司はハジメに あるものを出すように言うと、モンスターボールを取り出した。

 

「戻れ、ケンタロス」

 

誠司はケンタロスをモンスターボールに戻した。ハジメ達もそれに倣う。愛子達は大きなポケモンが出たり消えたりする光景を見て、目を丸くしている。

 

ハジメは宝物庫から『魔力駆動四輪』プリーゼを取り出した。車という異世界にはとても似つかわしくないものが現れたことにはっきりと驚きを隠せない愛子達。ユエは昨日のこともあって少しげんなりとした表情を浮かべている。シアはそんなユエを励ましている。

 

「嘘だろ……」

「車まで……」

「車とかどうやって手に入れたの……?」

 

そんなクラスメイトの驚きの声を無視して、「全員は中に入らないから何人かは荷台に乗って」と言ってハジメは先に運転席に乗り込む。

 

 

こうして誠司達は愛子やクラスメイト達を同行させて北の山脈へ向かうこととなった。

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