魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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北の山脈へ

山脈地帯へ続く道を魔力駆動四輪プリーゼが爆走している。しかし、昨日程のスピードは出さずに比較的安全運転で進んでいるため、車内も荷台も特に揺れはない。

 

運転席にはハジメが座り、隣の助手席には愛子が座っている。愛子がハジメの隣なのは例の話をするためだ。愛子としては他の生徒に聞かれたくないらしく、直ぐ傍で話せるようにしたかったらしい。

 

後部座席にはユエとシア、優花達クラスメイトの女子陣が座っている。シアはクラスメイトの女子の菅原妙子、宮崎奈々の二人からキラキラした目で質問攻めに遭っていた。優花は興味のない様子で窓の景色を眺めているが、聞き耳を立てているのが丸分かりである。そのため、シアは居心地が悪そうだ。時々、窓際の席でウトウトと呑気に船を漕いでいるユエを恨みがましく睨んでいる。

 

ユエは出発した途端、速攻で眠ってしまったので、シアにしわ寄せが来たのだ。もっとも、仮にユエが起きていたとしても、変わらずシアにばかり質問が飛んでいただろう。ユエは美人すぎてどこか近寄りがたい雰囲気があるからだ。

 

一方で誠司はクラスメイトの男子陣と一緒に荷台で過ごしていた。普段は助手席に座っていたのだが、愛子がハジメと話をするために席を譲って欲しいと頼まれたのだ。誠司としても女しかいない空間の中で一人だけ男というのは精神的にきつかったため、特に不満はない。

 

誠司はのんびりとモンスターボールの手入れをしていた。荷台に一緒に乗っているクラスメイトの玉井淳史、相川昇、仁村明人はしばらくは三人で雑談をしていたが、誠司がしていることが気になるのか、チラチラと誠司が持っているものを見ている。そうして、やがて淳史が意を決したのかおずおずと聞いて来た。

 

「な、なぁ、中西。ずっと気になってたんだけど、そのボールって何だ?」

 

質問されると思っていなかった誠司は思わず手を止めて顔を上げる。

 

「……これか? これはモンスターボールって言ってな。ポケ……魔獣を捕まえることが出来るアーティファクトだ」

「そ、そんなアーティファクト見たことも聞いたこともないけど……」

「そりゃあ、ハジメが作ったものだからな」

「南雲が…… もしかしてこの車もそうなのか……?」

「そうだよ」

 

誠司の答えに愕然とした表情を浮かべ、周囲を見渡す淳史達。誠司達の会話は後部座席の女子陣も聞こえていたらしく、驚きの声が聞こえてくる。これがあの無能と呼ばれていた奴なのかと複雑な気持ちのようだ。もしも、仲間に戻ってくれればどれほど助けになるかと思わず口に出そうになるが、昨日や出発前に言われたことを思い出して口を噤む。

 

その時、気まずげに視線を逸らした昇は誠司の腰のベルトに複数のモンスターボールが付いていることに今更ながらに気が付いた。思わず顔を引きつらせる。

 

「なぁ、中西。どれくらい魔獣を持ってるんだ……?」

「ん? 今手元にいるのは六体だけだな」

「ろ、六!? そんなにいるのか!?」

 

本当はもっといるのだが、そこは説明が面倒なのでスルーする。トランクまで説明する羽目になるからだ。淳史が尋ねた。

 

「お前、魔獣が怖くないのか?」

「怖い?」

「だってそうだろ。オルクスの訓練の時にも襲い掛かってきたし、凶暴だってイメージがどうしてもあるんだ」

「………」

 

黙って聞いている誠司に明人も続ける。

 

「それに、昨日右腕を失ったり、顔が火傷したのは魔獣と戦ったからだって言ってただろ? なのに全然怖がっている素振りがないからさ」

「ああ、そういうことか…… まぁ、怪我を負ったのは奈落での探索でも割と終盤だったからな。それまではこいつらに色々助けてもらったし。全部のポケモンが悪いとは微塵も思っていなかったよ」

「そ、そうなのか?」

「ああ、こいつらがいなかったら間違いなく死んでたよ。信頼の置ける大事な仲間だな」

 

そう言って誠司はモンスターボールを弄る。ふと昇が尋ねた。

 

「そういえば、さっきからそのポケモンって何だ? 魔獣のことをそう呼んでるみたいだけど」

 

昇の質問に淳史も明人もうんうんと頷いている。後部座席の女子達も気になるのか、分かりやすく聞き耳を立てている。

 

「ポケットに入るモンスターだからポケットモンスター。それを縮めてポケモン。俺達はそう呼んでるよ。その方が親しみがあって良いだろ?」

 

誠司の言葉に男子達は少し呆れた様子で言った。

 

「お前、本当に変わってるよな。魔獣をそんな風に呼ぶなんて」

「よく言われるよ」

 

誠司はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

 

その頃、ハジメと愛子の話も佳境を迎えていた。

 

「なるほど……確かに話を聞く限りだと故意に魔法を撃ち込まれた可能性は高そうですけど……」

 

ハジメから当時の状況を詳しく聞く限り、間違いなさそうだが、やはりそのことを信じたくないのか愛子は頭を悩ませる。

 

「あの……南雲さんは犯人に心当たりはありますか?」

 

ちなみに、愛子のハジメへの呼び方は「さん」付けに変わっている。昨日からずっと「君」で呼ぶかどうか迷っている感じだったので、好きに呼んで構わないとハジメが伝えた所、「さん」で呼ぶことにしたらしい。ハジメももう女であることを隠す気はないので文句は無かった。愛子の質問にハジメはフンと鼻を鳴らす。

 

「どうでしょう? 火属性の魔法が使えれば誰でも出来そうですからね。でもまぁ、敢えて言うなら、檜山君じゃないですか? 僕達のことを滅茶苦茶嫌ってましたから」

「で、でもまだそうと決まったわけじゃ……」

 

愛子は思わずそう言うが、確かに彼女の目から見ても彼のハジメや誠司に対する態度は異常だった。ハジメもほんの少しだけフォローする。

 

「まぁ、衝動的な犯行だったんでしょうけど、現時点では彼がやった可能性が1番高いですね。もっとも、証拠が無いので断定は出来ませんが。いっそのこと、本人が自白でもしてくれれば楽なんですけど」

「そんな、一体どうしたら……」

 

愛子は仮に犯人を特定できたとしても、人殺しで歪んでしまったであろう心をどうすれば元に戻せるのか、どうやって償いをさせるのかについて頭を悩ませる。

 

だが、それについて答えてくれる者はおらず、うんうんと頭を捻って悩むうちに、愛子はやがて寝息を立てて眠り始めた。ハジメは横目でそれを確認すると、何も言わずに運転に集中する。

 

 

 

北の山脈地帯

 

標高千メートルから八千メートル級の山々が連なるそこは、どういうわけか生えている木々や植物、環境がバラバラという不思議な場所だ。誠司達が訪れた場所は日本の秋山のように紅や黄といった色鮮やかな葉を持つ樹々が立ち並び、そこかしこには香辛料の素材や山菜が生えている。ウルの町が観光都市として潤う訳である。

 

その麓にプリーゼを停車させると、誠司達は少しの間、見事な紅葉の景色に見惚れた。女性陣の誰かが「ほぅ」と溜息を吐く。

 

誠司としてももう少し見ていたいが、仕事で来ているのだと自分に言い聞かせて一つのモンスターボールを取り出す。それを見てユエも自分のモンスターボールを取り出した。

 

「出てこい、チルット」

「……出てきて、モクロー」

 

「チルゥ!」

「モフゥ!」

 

姿を現したチルットとモクローに驚く愛子達。しかし、可愛らしい見た目に愛子や女子達はモフりたいのかウズウズしている。誠司はそんな愛子達を無視して指示を出した。

 

「よし。チルット、昨日言った通り、空から怪しい所がないか調べるんだ。それで何か分かったら俺達に知らせてくれ」

「チール、チル!」

「……モクロー、あなたもお願い」

「モッフゥ!」

 

チルットとモクローは誠司とユエの指示を聞くと、勢いよく空へ消えていった。ハジメはプリーゼを宝物庫にしまうと、代わりにあるものを取り出した。

 

それは赤縁の眼鏡と全長三十センチくらいの大きさの鳥型の模型だった。模型はポッポのような姿をしており、頭部には水晶が付いている。ハジメは眼鏡をかけると、模型を空中に放り投げる。

 

すると、模型はふわりと宙に浮き、そのまま山の方に向かって飛んで行った。誠司が尋ねた。

 

「ハジメ、あれは?」

「無人偵察機『オルニス』だよ。この眼鏡のレンズとオルニスの見る光景が繋がってるんだ」

「なるほど、つまりドローンか。ブルックの町で作ってたのはそれだったのか」

「うん、本当に苦労したよ」

 

このオルニスはライセン大迷宮でちょろまかした鉱石で作った代物だ。しかし、鉱石の量から一機しか作れなかった。その分、高性能に作っている。小型なのを活かして細かい動きを取ることが可能だし、ハウリアにいたポッポを基に作ったため、ポッポと同様にいくつか技を使うことも出来る。

 

車だけでなく、ドローンの登場に唖然とする愛子達。凶暴で危険なはずの魔獣を使いこなす誠司と異世界に似つかわしくないアーティファクトを作ってそれを使いこなすハジメ。

 

愛子達は、もういちいち誠司やハジメのやることに驚くのは止めようと、おそらく叶うことのない誓いを立てるのだった。




オルニスが原作と色々仕様が異なっていますが、ご了承ください。
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