魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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ティオの登場です。尻パイルされていないので変態にはなっていません。


リザードンの正体

遂に決着がつき、地面に倒れ込んだリザードンを見て、ようやく誠司達は安堵の息を漏らす。もう安全だろうとユエが氷壁を解除した瞬間、黒色の魔力がリザードンの体を包み込み始めた。

 

『っ!?』

 

突如起きた異変に全員思わず警戒するが、繭のようにリザードンを覆っていた魔力はスルスルと小さくなっていく。そして、丁度人が一人入るくらいの大きさになると一気に魔力が霧散した。

 

黒い魔力が霧散したその場には黒髪金眼の美女が倒れていた。見た目は二十代前半くらい。身長は百七十センチ以上あるだろう。見事なプロポーションを誇っており、乱れた衣服から覗く、シアより大きい二つの双丘が激しく自己主張し、今にも零れ落ちそうだ。

 

凶悪な魔獣が倒れたと思ったら、やたらと艶めかしい美女だったことに敦史達男子陣が盛大に反応している。若干前屈みになっており、それを見る優花達女性陣の視線は既にゴキブリを見る視線と何ら大差ない。

 

美女はまだ息をしているようで、時折胸が揺れている。ハジメと誠司は思わず顔を見合わせる。

 

「まさかリザードンじゃなくて人だったなんて……」

「ああ、魔獣図鑑が発動しない訳が分かったよ」

 

その時、ユエが呆然とした様子で呟いた。

 

「……誠司、ハジメ。もしかしてこの人、竜人族かもしれない」

「何?」

 

竜人族。今からおよそ五百年以上前に滅びたとされる種族だ。ドラゴン系のポケモンに変身する能力を持ち、滅びた理由は定かではない。

 

「……でも、なぜこんな所に?」

 

三百年以上生きているユエにとっても竜人族は伝説の存在だ。自分と同様、歴史から消えた筈の種族の生き残りの存在に興味を惹かれるのだろう。瞳に好奇の光が宿っている。

 

だが、確かにユエの言う通り、滅んだはずの竜人族の生き残りがこんな所で冒険者達を襲っているのかは誠司達も気になる所だ。誠司はユエに尋ねる。

 

「なぁ、ユエ。竜人族ってのは会話は出来るのか?」

「……そのはず。龍に変身出来ること以外、人間と大差ないはずだから」

「そうか。それなら……ハジメ、頼めるか?」

「うん、任せて」

 

そう言ってハジメは美女の元に近付いて行った。愛子達は何をする気かと顔を見合わせる。

 

美女に向かってハジメは回復魔法を使った。それにより、美女の身体の傷が幾つか消えていく。

 

「嘘だろ…… 南雲のやつ、回復魔法まで使えるのかよ……」

 

敦史が呆然とした様子で呟いた。愛子達も同じ気持ちのようで驚きの表情を浮かべている。

 

「う、うーーん…………」

 

少し回復魔法を浴びたことで美女の意識が戻ってきたらしい。その瞬間、ハジメは回復魔法を解除する。さっきまで殺し合った相手である以上、完治させる必要はない。話が出来るくらいまで回復出来たらそれで十分だ。

 

「こ……こ……は…………?」

 

美女はあちこち痛む身体を何とか起こして周囲を見渡す。そして、視界にハジメや近くにいる誠司達の姿が入ると、目を大きく見開く。バッと自分の身体を見ると、そこには人間の姿があった。

 

美女は自分の正体がバレたことを悟ったのだろう。分かりやすく目を泳がせるが、やがて諦めたように大きく溜息を吐いた。「大失態じゃ……」と痛恨を感じさせる呟きも聞こえる。そんな美女にハジメは改めて尋ねた。

 

「それで……あなたは、竜人族なの?」

「うむ……いかにも。妾は誇り高き竜人族が一人、名をティオ=クラルスと言う。妾を止めてくれたのはお主らか?」

「ん? 止めてくれた……だと?」

 

ティオと名乗った美女の言葉に誠司は引っ掛かりを覚えた。なので、誠司も質問した。ティオは彼の質問に頷く。

 

「その通り。妾は操られておったのじゃ。お主らを襲ったのも本意ではない。あの男……黒ローブの男に命じられたのじゃよ」

 

そう言うティオの視線はウィルやゲイル達に向いていた。誠司は尋ねる。

 

「どういうことだ?」

「うむ。順番に話そう。妾は……」

 

 

ティオの話を要約するとこうだ。

 

ティオは異世界からの来訪者の調査のため、竜人族の隠れ里から飛び出して来たらしい。竜人族は表舞台に関わらないという掟があるのだが、異世界から現れた未知の来訪者を放置するのは不味いということで調査を行うことにしたそうだ。それで、その調査にティオが選ばれた。

 

そして、集落から出て長旅の末、この一つ目の山脈と二つ目の山脈の中間辺りに到着した時、黒いローブを頭からすっぽりと被った男が現れたのだ。男の傍らにはイカのような姿をしたポケモン、カラマネロも浮かんでいた。その男はカラマネロと共にティオに襲い掛かって来た。

 

当然、ティオも反撃をしたが、男もカラマネロも尋常でない強さだった。しかも、長旅の疲れが溜まっていたことが災いして、ティオはあっという間に無力化されてしまい、男の闇魔法に掛かって思考と精神が蝕まれていった。

 

その後、ティオはローブの男に従って、二つ目の山脈以降でポケモン達の洗脳の手伝いをさせられていたらしい。そんなある日、その手伝いで一つ目の山脈まで向かっていた所、ウィル達と遭遇し、男から目撃者の始末の命令を受けて彼らを襲ったのだ。

 

そして、誠司達との戦いに敗れ、戦闘不能になって意識を失ったことでようやく洗脳が解けたようだ。

 

 

「……ふざけるな」

 

事情説明を終えたティオに、そんな激情を必死に押し殺したような震える声が発せられた。皆がその人物に目を向ける。拳を握り締め、怒りを宿した瞳でティオを睨んでいるのはウィルだった。

 

「操られていたとしても……ナバルさんやレントさんやワスリーさんがあいつに殺されたのは事実なんですよ! それが仕方なかったとでも言うんですか!?」

 

激昂するウィルの隣に立つゲイルやクルトは、怒りやら悲しみやら全て混ざったような難しい顔を浮かべていた。自己責任がルールの冒険者である以上、死は覚悟の上だ。先程、誠司達に言った言葉は決して嘘ではない。

 

だが、頭では理屈が分かっていても大切な仲間を殺した仇が目の前にいるのだ。彼らの仇を討ちたいという気持ちはある。しかし、彼女の操られていたという言葉がどうも嘘には思えなかった。だから、自分の感情をどこにぶつければ良いのか分からなかった。

 

愛子達はどう言えば良いのか、オロオロしっ放しだった。誠司達はウィルやゲイル、クルトの三人を黙って見ている。その時、意外な人物が動いた。ハジメだ。ツカツカとウィルに歩み寄ると、宝物庫からナイフを取り出して、それをウィルの手に握らせてこう言った。

 

「そんなに憎いならウィルさんが始末を付けたら?」

 

そう言われたウィルは戸惑うように「え、あ……」と声を漏らし、ハジメに握らされたナイフを青褪めた顔で見つめていた。愛子達は思わず止めさせようと叫ぼうとしたが、それを誠司が制した。これは部外者が簡単に口出しして良い問題ではない。

 

ウィルは助けを求めるようにゲイルやクルトに目を向けるが、2人とも首を横に振る。仲間の死は悔しいが、殺すべき相手が彼女でないことが分かっていたからだ。

 

次にティオに目を向ける。彼女は覚悟を決めた様子でウィルをジッと見つめていた。その目はこれから殺される者とは思えない程澄んでいた。そして、彼女の足元は地面に埋まりかけていた。既にハジメの錬成によって封じられていて身動きひとつ取れないのだ。もっとも彼女は動くつもりはない。

 

「自分達を殺しかけ、仲間を殺した彼女が憎いんでしょ? なら、被害者のあなたがやるべきだと思うけど」

「い、いや、私は…… も、もし反撃した時に備えてあなた方が代わりに……」

 

パチッパチッパチッ!

 

突如、音がした方向に全員目を向けると、誠司が拍手をしていた。口元は薄っすら笑みを浮かべ、瞳には侮蔑の色が混じっていた。誠司はウィルに近付くと口を開いた。

 

「いや~、素晴らしいよ。汚れ仕事は俺達のような下々の者にやらせて自分は安全な場所で高みの見物か。実に賢い、()()()()()やり方だ」

「なっ!? わ、私は……」

 

誠司の言葉を聞いてウィルは愕然とする。

 

自分は貴族のそういう所が昔から嫌いだった。そういうドロドロした所が。だからこそ、自分のことは自分でやる冒険者に憧れ、自分もなりたいと思ったのだ。それなのに、かつて軽蔑していた行動を自分が取っている。ウィルは反射的に反論しようとするが、反論出来なかった。

 

「俺達も貴族様の命令とあっては従わざるを得ないからな。俺達に命令してみなよ。クデタ伯爵家の人間としてさ」

「そ、そんなこと出来るわけ……」

「感謝しろよ。()()()()()()育ててくれたんだろ? お前の父親(パパ)母親(ママ)は」

 

次の瞬間、誠司はウィルに胸倉を掴まれた。親を侮辱されて思わず黙っていられなかったのだ。胸倉を掴まれて尚、誠司の顔には笑みが浮かんでいるが、ウィルは能面のような無表情を浮かべている。しばらく誠司を睨み付けると、ウィルは誠司から手を離した。

 

そして、そのまま直接ティオの元へ向かう。ティオは変わらずウィルから目を離さない。ティオの前で立ち止まり、ウィルはようやく口を開いた。

 

「ティオさんでしたか……あなたは本当に操られていただけなんですよね? 私達を襲ったのは本意ではなかったんですよね?」

 

口調こそ静かだが、嘘偽りは絶対に許さないという迫力がある。ティオもそんなウィルの言葉に素直に頷いた。

 

「……うむ。先程話したことは全て真実じゃ。竜人族の誇りにかけて嘘偽りではない」

 

ティオの言葉に先程から黙っていたユエも口を開いた。

 

「……なら、嘘じゃない。竜人族は高潔で清廉。私は皆よりずっと昔を生きた。竜人族の伝説も、より身近なもの。彼女は『己の誇りにかけて』と言った。なら、きっと嘘じゃない。それに嘘つきの目がどういうものか私はよく知っているつもり」

「ふむ、この時代にも竜人族のあり方を知るものが未だいたとは…… いや、昔と言ったかの?」

「……ん。私は、吸血鬼族の生き残り。三百年前は、よく王族のあり方の見本に竜人族の話を聞かされた」

 

ユエの言葉にティオは目を見開く。竜人族の彼女にとっても吸血鬼族の存在は驚きだったようだ。周囲の、ウィル達や愛子達も同様に驚愕の目をユエに向けている。

 

「何と、吸血鬼族の…… しかも三百年とは…… なるほど死んだと聞いていたが、主がかつての吸血姫か。確か名は……」

「……今はユエと名乗ってる。大切な仲間に貰った大切な名前だから、そっちを使ってくれると今は嬉しい」

 

ユエにとって竜人族とは正しく見本のような存在だったらしく、話す言葉の端々に敬意が含まれていた。ティオの言葉を肯定したのも、その辺りの心情が絡んでいるのかもしれない。

 

ウィルもユエにここまで言われたらティオの言葉を信用せざるを得ない。ウィルはゲイルとクルトに振り返って視線で尋ねる。彼らもウィルと同じ気持ちのようで小さく頷いている。だから、ウィルはゆっくりと口を開いた。

 

「……分かりました。ひとまず、あなたの話を信じます。でも許すかどうかは、これからのあなたの行動次第……それで良いですか?」

「……うむ。構わぬ。操られていたとはいえ、妾が罪なき人々の尊き命を摘み取ってしまったのは事実じゃからな……」

 

ティオは懺悔するように、声音に罪悪感を含ませながらそう言った。




筋が通っていないと判断すると、徹底的に煽るのは誠司の悪い癖です。


リザードンの正体はティオでした。

「リザードンはドラゴンタイプじゃないだろ!」って言う人がいるかもしれませんが、ドラゴン系なのでリザードンも入ってます。某ドラゴン使いもリザードンを使っていたしセーフでしょ。
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