魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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今回はいつもより少し短めです。すみません。


緊急事態

その後、誠司達が思い出したように調査の途中で見付けた遺留品をウィル達に渡した。そして、そのうちの一つのペンダントはウィルのものだったことが判明した。

 

てっきり冒険者の中の誰かの物かと思っていたのだが意外だった。写真の人物はもしかして彼の婚約者か何かかと思って尋ねると、ウィルの母親らしい。しかも、若い頃の一番写りが良いものらしく、ウィルは相当なマザコンだったことが判明した。優花達女性陣はドン引きしていた。

 

失くしたと思っていたペンダントが戻って、ウィルも大分気持ちが落ち着いたらしく、笑みが戻っている。早速、下山の準備をする誠司達だったが、そこで待ったが掛かった。愛子だ。

 

「ち、ちょっと待ってください! あの、ティオさんで宜しかったですか? そのローブの男について教えて頂いても宜しいでしょうか……?」

「うむ、そうじゃったな……」

 

ティオの話によると、そのローブの男は闇魔法を駆使してポケモンの群れを洗脳して大群を作っているのだと言う。なんでも群れのリーダー格や進化系のポケモンにのみ洗脳することで効率良く群れを配下に置いているのだとか。そして、それを使って近隣の町を襲う計画を立てているようだ。

 

「そ、そんな……」

 

愛子が愕然とした様子で言った。優花達やゲイル達も深刻な表情を浮かべている。優花はティオに尋ねた。

 

「あの、そのローブの男に他に特徴はありませんでしたか?」

「そうじゃのう……ローブを深く被っていたせいで顔まではよく分からんかったが……あれは人間族じゃな。手の色は間違いなく人間族の肌の色じゃった」

『!?』

 

その場にいた全員に衝撃が走る。ポケモンを操るということからてっきり魔人族の仕業だとばかり思っていたからだ。しかも、人間族で闇魔法の才能を持つ男に愛子達は心当たりがあった。愛子や優花達は一様に「そんな、まさか……」と呟きながら困惑と疑惑が混ざった複雑な表情をした。

 

と、そこでハジメが突如、「うわぁ……これはまた……」などと呟きを漏らした。実はティオの話を聞いた時点でオルニスを飛ばしてポケモンの大群やローブの男を探していたらしい。そして、遂にオルニスがとある場所でポケモンの大群を見付けたのだが、その数はかなりのもので「戦争でもしに来たのか?」と言いたくなる程だ。

 

既に進軍は始まっているようで、ポケモン達の進行方向から察するに狙いはウルの町で間違いない。このままの進軍速度であれば、一日程度で町に到達してしまうだろう。

 

事態の深刻さに誠司達以外の誰もが動揺し、混乱する。その時、ウィルが「もしかしたら誠司殿達なら何とか出来るのでは……」と無責任な提案をした。だが、誠司本人がその提案を一蹴する。

 

「冗談じゃない。保護対象までいるのに戦争なんて出来るかよ。ウダウダ言ってる暇があったら、さっさと町に帰って報告するべきだと思うがな」

 

そんな誠司の態度に反感を覚えたような表情を浮かべる敦史達やウィル。そんな中、愛子が思い詰めたような表情でハジメに尋ねた。

 

「あ、あの、南雲さん。黒いローブの男は見付かりましたか?」

「いや、さっきからオルニスで探してますけど、それらしき人影はないですね」

「そうですか……」

 

愛子はハジメの言葉に俯き、ポツリと、ここに残ってローブの男が現在行方不明の清水幸利なのかどうか確かめたいと言い出した。生徒思いな愛子には、このような事態を引き起こしたのが自分の生徒なら放置が出来ないのだろう。

 

これには優花達は猛反対した。必死に愛子を説得するが、愛子はしばらく逡巡したままだ。その内、誠司達が同行すれば……なんて意見も出始めたので誠司は無視してさっさと行動することにした。正直もう付き合いきれないからだ。

 

「そんなに残りたいならどうぞご自由に。俺達はウィル達を連れて町に戻らせてもらう」

 

誠司はそう言うと、ウィルの肩口を掴んで下山の準備を始める。それに慌てて制止の声を掛けるウィルや愛子達。「そのまま放っておくのか」だの「ローブの男の正体を確かめたい」だの「誠司達なら大群も倒せるのではないか」だの無責任なことばかり言ってくる。

 

その時、ずっと黙っていたゲイルが口を開いた。

 

「なぁ、ちょっと良いか? 町に戻るって簡単に言うが、ここからウルの町までは下手すれば数日は掛かるぞ。町に戻る頃には町が滅んでしまうんじゃないか?」

 

もっともな指摘である。ゲイルの質問にハジメが答えた。

 

「それなら大丈夫です。僕の作ったアーティファクトを使えば、ウルの町までであれば二時間くらいで着きますから」

「そ、そんなアーティファクト、にわかに信じ難いんだが……」

「だがまぁ、こんな時に嘘を言う奴らじゃないか…… よし、分かった。従おう」

 

そう言うと、ゲイルもクルトも下山の準備を始めた。そんな二人を見て、ウィルは裏切られたような表情を浮かべる。

 

「なっ!? ゲイルさん、クルトさん、この状況を放っておくんですか!?」

 

そんなウィルにゲイルとクルトは諭すように言った。

 

「あのな、ウィル。さっきの洗脳されてたティオさんを見ただろ。俺達を殺すことしか考えてなかった。その魔獣の大群も恐らくティオさん同様、町を襲うことしか考えていないはずだ」

「そんな奴ら相手に戦って、もしも俺達が全滅したり、撃ち漏らしが出たりすれば町は不意打ちで大群の被害を受けることになる。すぐに町まで戻れるんならさっさと戻って報告するすべきだ」

 

ゲイルとクルトが理路整然とそう反論すると、ウィルは何も言えなくなってしまう。愛子達の方も自分達の要求がいかに無意味で無謀かを突き付けられて、思わず押し黙った。そんな愛子達に誠司とハジメも畳み掛けるように言った。

 

「まぁ、二人の言う通りだな。俺達のポケモン達もさっきの戦いで消耗してるんだ。その上、こんな障害物だらけの場所で戦うなんてやりづらくて仕方ない」

「それに、プリーゼは僕じゃないと動かせない構造だから、誰かが先に戻るなんてことも出来ないよ」

 

もし仮にハジメ以外の者が動かせたとしても、そもそも車の運転などしたことない優花達や車の存在も知らないウィル達に運転など絶対に不可能だろう。碌に整備もされていない山道なら尚更だ。町に戻る前に事故を起こすのが目に見えている。

 

愛子は四人の言葉を聞いて、町への知らせと生徒達の安全確保をまず優先することに決めた。清水の心配は一時的に心の中に抑え込む。

 

全員の意見が一致し、ようやく誠司達は下山を開始した。ティオはハジメの回復魔法で完治したため、問題なく動けるようになった。

 

実は、誰が動けないティオを背負って行くのか淳史達三人が壮絶な火花を散らせていたのだが、ハジメによってそれが阻止されてしまって分かりやすくガックリと肩を落としている。そして、優花達女子陣はそんな三人を冷めた目で見ていた。

 

そんなこんなで一行は背後にポケモン達の大群という暗雲を背負って、急いでウルの町に戻ることとなった。




昨日、アニポケでサトシの引退が分かって寂しい……

でもまぁ、声優交代とかになる前に引退はある意味良かったのかも……
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