魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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今回は少し短めです。


作戦開始!

「あ、あのさ! 南雲、中西!」

 

声のした方を振り返ると、そこにはクラスメイトの一人の園部優花がいた。彼女だけはまだこの場を離れていなかったようだ。二人の胡乱な目を向けられて「うっ」と一瞬だけたじろぐが、直後にキリッとまなじりを上げてこう言った。

 

「あ、ありがとね! あの時、助けてくれて!」

 

優花の言葉に首を傾げる誠司とハジメ。恐らく、ティオのことを言いたいのかもしれないが、彼女を守った覚えは全くない。優花は2人が思い違いをしているのを察してすぐに訂正を入れる。

 

「その、さっきのこともそうだけど、それだけじゃなくて……あの日、迷宮で、ガラガラ達から助けてくれたでしょ。その後もバッフロンの足止めをしてくれたし」

 

優花の言葉で「ああ」と合点がいったように頷くハジメ。

 

「……あぁ、あの時、頭をかち割られそうにそうになっていた……そう言えば、園部さんだったっけ?」

「うっ、かち割られ……あんまり生々しい表現しないでよ。割とトラウマなんだから」

 

奈落に落ちた時に何か彼女にしたってことは分かったが、未だに思い出せない誠司。仕方なく、思い出したフリをして誤魔化す。

 

「それで……無駄にしないから! 南雲達にとってはどうでもいいことかもしれないけどさ! それでも、助けてくれたこと無駄にしないから!」

 

彼女なりに色々考えてはいるようだ。だが正直なところ、口だけでは何とでも言える。ハジメは優花に言った。

 

「そう…… それなら今はちゃんと先生を守ることだけを考えなよ。昨日までの醜態をもう二度と晒さないで」

「う、うん……分かってる」

「今の君達が何を言っても説得力はないよ。だから……本当にそう思っているなら行動で示して。僕が言いたいのはそれだけだよ」

 

優花はハジメの言葉に悔し気に唇を噛む。やがて優花は踵を返して愛子達の後を追いかけた。そして、走りながらハジメや誠司の言っていたことが次々と頭の中に響き渡る。

 

『本当にそう思っているなら行動で示して』

 

『護衛ってのは危険な仕事だ』

 

『昨日までの醜態を二度と晒さないで』

 

『護衛としてお前らは何をしてきたんだ?』

 

(分かってる。分かってるよ。そんなことは……)

 

優花はそんな声から逃れるように必死に走る。だが、二人の声はなかなか彼女の頭から離れなかった。

 

 

 

優花が立ち去った後、誠司はハジメに尋ねた。

 

「なぁ、ハジメ。さっきからずっと思ってたんだが……そもそもあいつって誰?」

「誰って……園部さんだよ。え? 待って? もしかして今まで園部さん達の名前を知らないまま過ごしてたの?」

 

ハジメが思わず呆れた口調で問い詰めると、誠司は気まずそうに頬を掻く。

 

「全く興味がなかったからな……」

「それ、本人の前では絶対に言わない方が良いと思うよ」

「……分かってるよ」

 

ハジメの言葉にユエもシアも呆れた様子で頷いているのを見て、誠司は少し不貞腐れたように答えた。

 

一方でウィルはティオに何かを語りかけると、誠司達に頭を下げて愛子達を追いかけて行った。「何を言われたんだ?」と疑問顔を向ける誠司達にティオは苦笑いして答える。

 

「今回の出来事を妾が力を尽くして見事乗り切ったのなら、冒険者達の事、少なくともウィル坊は許すという話じゃ……そういうわけで助太刀させてもらうからの。何、魔力なら大分回復しておるし竜化せんでも妾の炎と風は中々のものじゃぞ?」

 

どうやらリザードンに変身しなくてもいくつか技が使えるらしい。威力は竜化した時より劣るが、それでも人間時に技が使えるのは有難い。

 

「そうか。それなら頼む。戦力は多いに越したことはないからな」

「うむ。任せよ」

 

しかし、それ以前に懸念点が一つあった。

 

「問題は魔獣を使うってことをどうやって民衆に納得させるか……だな」

 

戦うことを決意してからずっと考えていたことなのだが、一向に良い考えが浮かばずにいた。それにハジメが「それなんだけど……」と提案した。

 

「僕に考えがあるんだ。ここは任せてもらっても良いかな?」

「ん? 考え?」

 

どの道、誠司はケンタロスやクレッフィと共に先にポケモンの群れに向かって突っ込む必要がある。ハジメやユエといったメンツはまずは住人達を落ち着かせてからそのまま誠司達と合流する予定だ。住人が先走ってこっちまでフレンドリーファイアされたら敵わないためである。

 

「まぁ、俺に良いアイデアは浮かばないしハジメに任せるか。それじゃあ、住人を落ち着かせたらすぐに合流してくれ」

「了解!」

「んっ!」

「分かりました!」

「任せよ!」

 

そして、誠司は作戦通り、ケンタロスとクレッフィを出してケンタロスに乗り込むと、町を勢いよく飛び出した。そのままポケモン達の大群に向かう。そんな誠司を見て壁際から驚愕の声が聞こえるが、その後のことはハジメ達に任せることにする。

 

まずは目の前のことに集中しなくてはならない。

 

そして、誠司達は目標地点まで到達すると、ケンタロスに指示を出す。大群より少し離れた距離だ。近付き過ぎると、こちらが攻撃を受けたり、“じわれ”でポケモン達が落ちてしまう可能性もある。

 

「よし。ケンタロス、思い切り“じわれ”だ!」

「ブモオオォォォ!!!」

『!!?』

 

ケンタロスが勢いよく前脚を地面に突き立てると、そこを中心に大きなひび割れが走っていく。

 

「今だ。走れ!」

「モオオォォ!」

 

誠司の指示で一気に距離を取るケンタロス。誠司が後ろを振り返ると、地割れが起こったことで大群に混乱が起きたようだ。しかし、それでも構わず進むポケモン達もいる。ストライクの群れもその一つだ。

 

「やっぱりストライク達はそのまま突っ込むか。それなら……」

 

誠司は二つのモンスターボールからチゴラスとキュウコンを出した。

 

「チゴラス、キュウコン、ストライク達を頼む」

「グオオォ」

「コンッ」

 

二体はストライクの群れに立ちはだかり、戦いが始まった。

 

「よし。次は……おっと!」

 

誠司が周囲を確認しようとした瞬間、緑色の犬のようなポケモン達が襲い掛かって来た。ラクライだ。地割れが起こっても高い脚力で乗り越えたようだ。十数体で同時に“かみなりのキバ”や“スパーク”を使って攻撃をしてくる。

 

「くそっ! クレッフィ、“まもる”!」

「クレフィィィ!」

 

クレッフィが誠司達を守るが、いつまでもつか分からない。急いでヌマクローを出そうとしたその時……

 

「……シャンデラ、“シャドーボール”」

 

声と共に無数の黒い球体が飛んできた。ラクライ達はそれをギリギリで躱す。誠司が飛んできた方向に目を向けると、そこにはシャンデラとユエ、そして、ハジメ達が浮かんでいた。シャンデラの“サイコキネシス”で浮かんでいるようだ。

 

「お待たせ、誠司」

 

ハジメがそう言うと、誠司も笑みを浮かべる。

 

「な~に、まだ始まったばかりだ」

 

 

 

「……ここは私達に任せて」

「シャシャン!」

 

ユエ達はラクライの群れと戦うことになった。ラクライ達もユエとシャンデラが強敵だと本能で感じ取ったのか、警戒を崩さない。

 

その間にも地割れに構わず突き進むポケモン達はまだまだいる。今度はデンチュラの群れだ。ハジメがボールからラビフットを出して撃退していく。

 

その時、町から歓声のような声が上がった。あまりにも大きいので思わず振り返る誠司。

 

「一体、何を吹き込んだんだ?」

 

誠司の質問にハジメは肩をすくめて答える。

 

「吹き込んだなんて人聞きの悪い。豊穣の女神である愛子によって一部の魔獣達が善の心に目覚め、愛子のため、町のために戦うみたいな感じのことを言ったんだよ」

 

そう、ハジメは町の人々を落ち着かせるために、そして、魔獣や魔獣の力を借りる自分達に忌避感を持たれるのを防ぐためにわざと愛子を旗頭にしたのだ。確かに色々メリットはある。

 

「なるほどな。まぁ、元はと言えば畑山先生が言い出したことだし、一緒に矢面に立ってもらうわけか」

「そゆこと」

 

そうこう言っている間にも大群も少しずつ落ち着いてきたのか、襲い掛かってくるポケモン達の種類や数も増えていく。

 

誠司達はお互いに顔を見合わせて不敵な笑みを浮かべると、それぞれポケモンを出していく。

 

 

 

町の至る所からは大歓声が上がり、町の重鎮達や護衛騎士達は呆然としていた。クラスメイト達はかなり複雑そうな表情を浮かべている。本来であれば自分達が町を守る役割であるのに、かつて無能と見下していた者達に守られているのだ。複雑な心境にもなるだろう。「今の自分達の役目は愛ちゃん先生を守ることだ」と必死に自分に言い聞かせようとするが、敗北感が拭えない。

 

そして、愛子はただひたすらに誠司達の無事を祈り続けていた。それと同時に表情を悲痛そうに歪めていた。

 

山脈での休憩中、ポケモンについて話していた時の誠司の顔を何度も思い出す。その時の彼の表情は本当にポケモンのことが大好きで、彼らを大切な存在として見ているのがはっきりと分かる微笑ましいものだった。誠司だけじゃない。ハジメもユエもシアもそうだ。それなのに自分がそんな彼らを戦いの場に引きずり出してしまった。

 

こんなの……自分がかつて抗議した教会と何が違う。自分がやったことは教会と同じじゃないのか。

 

愛子は自分のしたことの恐ろしさを今更ながらに実感し、強く頭を殴り付けられたようにショックを受けていた。

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