数時間後、戦いも終わりが見えてきた。洗脳されたポケモン達も何とか戦闘不能にさせて洗脳から開放したり、捕獲したりして収拾していった。リーダーが倒れたことで群れのポケモン達は大人しくなり、どこかへ逃げ出して行く。ポケモン達の大群も今では数える程にまで少なくなっている。そして現在、誠司は騎兵のような姿をしたポケモン、シュバルゴと対峙していた。
「シュバルゴか。こんなのもいたとはな」
オルニスでは見かけなかったので恐らく新しく大群に加えた一体なのだろう。群れは無く、単独で動いているようだ。誠司は残り少ない手持ちを繰り出す。既にこの戦いで殆どのポケモン達は消耗しており、まともに戦える手持ちのポケモンは少なくなっている。
「ここは頼むぞ、エレザード!」
「エザァ!」
エレザードとシュバルゴの戦いが始まる。そして、激しい技の応酬の末に何とかシュバルゴを弱らせると誠司はモンスターボールを投げてシュバルゴを捕獲した。
シュバルゴを片付けた誠司はエレザードをボールに戻して先を進もうとすると……
「誠司さん、危ない!! よけてぇぇ!!」
そんな声と共にシアによって押し飛ばされた。その次の瞬間、誠司がいた所には大きな衝撃音が鳴り響いた。思わず音がした方に目を向けると、そこには一メートルを超える巨大な金属質のハンマーがあった。地面には無数の亀裂が走っており、もしもシアがいなかったら今頃は地面のシミになっていただろう。
「カーヌチャ!」
この状況に似つかわしくない可愛らしい鳴き声と共にピンク色のポケモンが自分よりも大きなハンマーを軽々と持ち上げて肩にかつぐ。何年も夢で見てきたことで数百種類のポケモンを知っている誠司だが、目の前のポケモンは初めて見るポケモンだった。魔獣図鑑の技能によって目の前のポケモンについての情報が頭に入り込んでくる。
「何々……デカヌチャン? 初めて見るポケモンだな」
目の前のポケモン、デカヌチャンは虚ろな目で巨大なハンマーを振り回している。かなりのパワーだ。
「この世界にはまだまだ知らないポケモン達がいるのか……まったく、これだからポケモンってのは面白い!!」
誠司は闘志と感動の入り混じった目でポケモンを繰り出そうとすると、それをシアが制した。シアも目を輝かせている。旅をしていて分かったのだが、シアは意外と脳筋思考の持ち主だ。だからこういう豪快なポケモンにそそられるのだろう。
「誠司さん、ここは私達に任せてください!」
「ホビホッビ!」
誠司としては本当は自分が戦いたいと思っていたが、鋼・フェアリー属性のデカヌチャンには地面技が有効だ。なのでここは素直にシア達に任せることにした。そんな彼のもとに、ユエがシャンデラに乗ったままやって来た。ユエが簡潔に状況を伝える。
「……誠司。ハジメが黒ローブの男を見付けた。今、戦ってる。手を貸して」
「……っ分かった! 出てこい、ケンタロス」
「ブモオォォ!」
誠司はケンタロスに乗ると、ユエの案内でローブの男がいる方に向かった。
「おいおいおい、この程度かぁ? お前らの実力はよお? お前らみたいなクソ雑魚に我らが負けるわけねえんだよぉ」
「はぁはぁ……」
肩で息をするハジメの目の前には黒いローブを纏った男とイカのようなポケモン、カラマネロがいた。ハジメの残りの手持ちも残すはあと一体だけになってしまっている。しかも相性が絶望的だ。
「もう……君しかいない…… お願い、グレッグル!」
「グエッ!」
グレッグルがボールから飛び出ると、カラマネロを睨み付ける。グレッグルを見て男はハジメを嘲笑う。先程から、芝居がかったようにオーバーな言動が目立つ。
「アハハハ! 何だぁ、そいつは? 最後に残った仲間がそんな役立たずとはな……」
「どうかな? 役立たずかどうかはまだ分からないよ」
「グエッ!」
ハジメとグレッグルが反論すると、男の隣にいたカラマネロが血走った目でハジメ達を睨み付ける。男は吐き捨てるように言った。
「ほざけよ、クソ雑魚が。お前らのせいで我が計画が台無しにされたんだ。命が助かるなんて思うなよ。お前らを殺した後は、お前らの大切な、大切な、お仲間も全て我が支配下に置いてやる。死ぬまで有効に使ってやるよ」
男がそう言うと、カラマネロが技を繰り出す。触手から強力な念が籠った刃を無数に飛ばす。エスパー属性の技“サイコカッター”だ。ハジメがすかさず指示を出す。
「マズい! 躱して、グレッグル!」
「グエグエ~」
グレッグルは持ち前の身体能力でそれを器用に躱していく。だが、“サイコカッター”の数はどんどん増していく。躱し続けるにも限界が来るだろう。
「グレッグル、カラマネロに“どくづき”!」
「グエッ!」
グレッグルは攻撃を躱しながらカラマネロに接近する。そして、グレッグルは腕に毒を集中させて“どくづき”を放とうとするが、その一撃は紙一重で躱されしまう。それによってグレッグルに大きな隙が出来てしまった。
「甘えんだよぉ、やっちまいな!」
「マーロマロッホオオォォ!」
カラマネロは再び“サイコカッター”を無数に飛ばしてきた。グレッグルは必死に躱そうとするが、今度は躱し切れず数発、食らってしまう。
相性最悪のエスパー技をもろに受けたグレッグルは白目を剥いて倒れてしまった。
「そんな、グレッグル!」
ハジメがグレッグルの元に急いで駆け寄ろうとするが、ローブの男はそんな隙を与えるようなことをしない。
「アハハハハハ! だから言っただろうが、お前らみたいなクソ雑魚に我らが負けるわけないってよおおぉぉ!」
男と同調するかのようにカラマネロも嘲笑しながら触手を振りかざす。ハジメは必死に躱そうとするが、間に合わない。
思わず、ギュッと目を瞑ったその時………いつも聞き馴染んだ声が聞こえてきた。それでいて頼りになる声。
「ケンタロス、“メガホーン”だ!」
「ブモオオォォォ!!」
ケンタロスは自慢の角を突き出して勢いよくカラマネロに突っ込んで行った。
「!? マーロウッ!」
カラマネロは寸前で何とか躱す。誠司と一緒に来たユエがハジメに叫ぶ。
「ハジメ! 急いでモンスターボールに!」
「っ分かった!」
ハジメはモンスターボールを取り出すと、グレッグルをボールにしまう。
「クソ雑魚がぁ、群がってんじゃねえよぉ!!」
男が激昂してそう叫ぶと、カラマネロも口から黒い光線を放つ。“あくのはどう”だ。“あくのはどう”はそのままシャンデラに向かう。ユエはシャンデラと共に迎え撃つ。
「……“緋槍”」
「シャシャシャ……シャン!」
ユエの炎魔法とシャンデラの“れんごく”で“あくのはどう”が打ち消される。カラマネロはまた技を放とうとしているのが見えたため、誠司はすかさずチリーンを繰り出して指示を飛ばす。
「チリーン、“かなしばり”!」
「チリチリン!」
チリーンによって身動きが封じられたカラマネロは困惑の声を上げる。
「マ、マロマロ?」
そして、困惑しているのはローブの男も同じだった。
「お、おい! どうなってんだ!? クソが! 動け、動けよぉ!!」
男はカラマネロに向かって、まるで
「今がチャンスだ。ケンタロス、“メガホーン”!」
「ブモオォォ!!」
ケンタロスは今度こそ“メガホーン”をカラマネロに当てるため狙いを定める。カラマネロは必死に躱そうとするが、身動きが取れない。
「ブモオォォォォォォ!!!」
「マロマロオオォォォ!!」
カラマネロはケンタロスの“メガホーン”をもろで受けてしまい、カラマネロは遂に崩れ落ちてうつ伏せの状態で倒れてしまった。
カラマネロを何とか撃退し、後はローブの男だけだと誠司、ハジメ、ユエの3人が男の方に目を向けた次の瞬間……
「きいいいええええええああああああああああああああああああああああ!!!!」
男は頭を押さえ付けて大音量の奇声を上げる。思わず耳を塞ぐ誠司達。やがて、男はフッと糸の切れた操り人形のように倒れ込み、ピクリとも動かなくなってしまった。
「え、え? これ、どうするの……?」
「ん、とりあえず連れて行くしかない」
「ああ、だが、少し気になることもあるんだよな……」
誠司は未だに地面に伏しているカラマネロを一瞥する。少なくとも、操っている者が倒れたことでもうポケモン達の洗脳も完全に解けたはずだ。後はこのローブの男を連れて行けば任務完了である。
誠司達は宝物庫から出した特殊ワイヤーで男の身体を巻き付けて拘束する。このワイヤーは鋼鉄製なため、人間の力で引きちぎることはまず不可能だ。
男を拘束し終えると、誠司達は町へと進路を向ける。こうしてウルの町の防衛戦はひとまず誠司達の勝利で幕を閉じた。
何気にSVの新ポケ、デカヌチャンが登場しています。初めて見た時にシアの手持ちに加えたいと思い、書きました。
ローブの男の様子がおかしいですが、それは次回で分かります。ちなみにティオは別の場所で戦っていました。