魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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大都市フューレン~オルクス大迷宮
帰って来たフューレン


「うぅ……頭痛い……」

「クソ、これが二日酔いか……」

「初めて経験しますけどキツイですねぇ……ウップ」

「……ん、頭がガンガンする」

「……父上や兄上が酒は飲んでも呑まれるなと言っていましたが、こういうことだったんですね……」

 

翌日、誠司達は二日酔いでガンガンくる頭痛をこらえながら何とかフューレンに到着した。昨晩野宿した場所はフューレンに比較的近い場所だったらしく、出発してから三十分足らずで着くことが出来た。誠司、ハジメ、ユエ、シア、ウィルの五人はグロッキー状態だったが、一方のゲイルやクルト、ティオは経験の賜物なのかピンピンしている。

 

「ちょいと飲ませすぎたか? 大丈夫か、お前ら?」

「まぁ、良い経験にはなったとは思うがな」

「うむ。何事も経験じゃな」

 

ゲイル達が呑気にそんなことを言っているため、誠司が睨み付ける。

 

「クッソ、他人事だと思って……」

「誠司、はいこれ」

 

ハジメが宝物庫から神水を取り出してそれを手渡す。ユエやシアはハジメから受け取るや否や神水を一気飲みしている。誠司とハジメもそれに倣って口に流し込んだ。ウィルは恐る恐る少しずつ飲んでいる。

 

神水の効果は二日酔いにも効果抜群なようで飲み終えると、あんなにしつこかった頭痛がみるみるうちに引いていった。

 

「プハー、気分がさっぱりした」

「もう二日酔いは懲り懲りだね」

 

二日酔いが治りホッと一安心していると、にわかに周囲が騒がしくなった。周りを見渡してみると、いつの間にか人が集まって来ていたようだ。プリーゼを隠しもせずに門まで来たのだ。無理もなかった。そうこうしている間に前方から門番らしき男性二人が現れた。

 

「おい! 何だ、この黒い箱のようなものは!? 何なのか説明しろ! 危険なものじゃないだろうな!?」

 

門番の一人は誠司達に高圧的に話し掛けて尋問しようとする。誠司としてはこういう事態は想定の範囲内だったので澱みなく答える。

 

「これは俺達のアーティファクトです。移動用のね。何もしなければ危険じゃありませんよ」

 

尋問しようとしていた門番は誠司の回答に今ひとつ納得していない様子だったが、もう一方の門番が誠司達の顔を見て、何かに気が付いたのか「あっ」と声を上げて慌てて相方に耳打ちする。

 

「おい、待て。こいつら……」

「……何!? 嘘だろ? こいつらが……」

「いや、言われていた特徴のままだ。その態度じゃ後でドヤされるぞ」

 

門番達は誠司達に向き直ると、確認をする。

 

「……君達、君達はもしかして誠司、ハジメ、ユエ、シアだったりするか?」

「ん? ええ、そうです」

「僕達はフューレンのギルド支部長の依頼を終えて戻って来たんですが……」

 

誠司とハジメの言葉に門番達は頷くと、先程までの態度を改めて敬礼の姿勢を取った。

 

「失礼しました! イルワ支部長からすぐ通すようにとの通達です!」

「どうぞこちらへお願いします!」

 

どうやらイルワから事前に通達が来ていたようで誠司達はすぐに町に入ることが出来た。そのせいで周囲の人々から何事かと好奇の視線に晒されたが、今更気にすることもないだろう。

 

 

フューレンに入ってすぐ、誠司達は冒険者ギルドにある応接室に通されていた。取り留めのない話を交わしながら待つことおよそ五分。誠司達に依頼をした張本人であるイルワ・チャング支部長が部屋の扉を蹴破らん勢いで開け放ち、飛び込んで来た。

 

「ウィル! 無事かい!? 怪我は無いかい!?」

 

以前の落ち着いた雰囲気などかなぐり捨てて、視界にウィルを収めると挨拶も無く安否確認をするイルワ。それだけ心配だったということだろう。ゲイルやクルトなどは「あんなに取り乱した支部長初めて見た……」と驚きを露わにしていた。ウィルは気まずげな様子でイルワに詫びる。

 

「イルワさん……すみません。私が無茶を言ったせいで……」

「何を言うんだ。私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった…… 本当によく無事で…… ウィルに何かあったらグレイルやサリアに合わせる顔がなくなるところだよ…… 二人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげるといい。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来ているんだ」

「父上とママが……分かりました。直ぐに会いに行きます」

 

イルワは、ウィルに両親が滞在している場所を伝えると会いに行くよう促す。ウィルは、イルワに改めて捜索に骨を折ってもらったことを感謝し、誠司達やゲイル達に何度もお礼を言う。そして、改めて挨拶に行くと約束して部屋を出て行った。誠司やハジメとしてはこれっきりで良かったのだが、きちんと礼をしないと気が済まないらしい。律儀な奴だなと苦笑する。

 

ウィルが出て行った後、イルワはまずゲイル達に頭を下げてお礼を言った。

 

「ゲイル、クルト。ウィルを最後まで守り通してくれて、本当に感謝する。今回の依頼で君達を選んだのは本当に正解だった。そして、私の出した依頼で死者を出してしまい申し訳ない……」

「……支部長、頭を上げてください。俺達も冒険者である以上、殉職は覚悟の上だ。気にしないでください。それに俺達はそこにいる誠司達のおかげで助かったんだ。礼なら彼らに」

 

ゲイルはそう固辞するが、誠司やハジメは首を横に振ってそれを否定する。

 

少しの間、手柄の押し付け合いになったものの決着はつかなかった。誠司達は報酬の件で話があるため、ゲイル達は部屋を出ることになったからだ。彼らからも口々にお礼を言われて照れくささはありつつも悪くない気分だった。

 

そして、ゲイル達も出て行き、部屋に残ったのは誠司達とイルワだけとなった。イルワは、穏やかな表情で微笑むと、深々と誠司達にも頭を下げた。

 

「君達も本当にありがとう。ウィル達が生きて帰れたのは君達のおかげだ。感謝してもしきれないよ」

「まぁ、ウィルが生きていたのはゲイル達のおかげでもありますがね」

「ふふ、それもあるだろうが……ウルの町を攻めてきた魔獣の大群を撃退してくれたのは事実だろう?」

 

にこやかに笑いながら、イルワは確信めいたようにそう言った。誠司は胡乱な目を向ける。

 

「……随分情報が早いですね」

「ギルドの幹部専用だけどね。長距離連絡用のアーティファクトがあるんだ。私の部下が君達に付いていたんだよ。といっても、あのとんでもない移動型アーティファクトのせいで常に後手に回っていたようだけど……彼の泣き言なんて初めて聞いたよ。諜報では随一の腕を持っているのだけどね」

 

流石は大都市のギルド支部長。大した抜け目のなさである。常に置いていかれて焦りで半泣きになっているその部下を想像すると中々同情してしまう。

 

「それにしても、大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとは……二重の意味で君に依頼して本当に良かった。魔獣の大群を撃退した力にも興味はあるのだけど……聞かせてくれるかい? 一体、何があったのか」

「情報は伝わっているのでは?」

「確かに情報は伝わっているけど、撃退したという結果だけだ。具体的な内容については君達という当事者から直接聞いた方が早いだろう」

 

イルワの返答に誠司は確かにと頷いた。それなら()()もあった方が早いだろう。

 

「でしたらユエとシアのステータスプレートを貰えませんか? それとティオは……「うむ、二人が貰うなら妾の分も頼めるかの」……ということなので三人分お願いします」

「ふむ、確かに、プレートを見たほうが話の信憑性も高まるか……分かったよ」

 

そう言って、イルワは職員を呼んで真新しいステータスプレートを三枚持ってこさせる。そして、ユエ達はステータスプレートを使った。

 

それによって、ユエ達のステータスは実はとんでもないものだったことが判明した。それこそ召喚されたチート集団ですら少人数では相手にならないレベルのステータスだ。勇者が限界突破を使っても本気の彼女達には及ばないだろう。こんなのがいるんだったら、わざわざ異世界から召喚しなくても戦争をどうにか出来たんじゃ……と思ってしまう誠司とハジメだった。

 

これには流石のイルワも口をあんぐりと開けて言葉も出ない様子だ。無理もない。ユエとティオは既に滅んだとされる種族固有のスキルを持っている上に、ステータスが特異過ぎる。シアは亜人族という種族の常識を完全に無視している。驚くなという方がどうかしている。

 

そして、誠司達はモンスターボールからそれぞれ自分のポケモン、クレッフィ、ベロバー、ラクライ、ホルビーを出した。室内なので小柄なポケモンに限定してある。突如現れたポケモン達にギョッとするイルワ。しかし、ポケモン達に攻撃の意思がないのが分かると、何とか落ち着く。

 

冷や汗を流しながら、何時もの微笑みが引き攣っているイルワに誠司達は事の顛末を語って聞かせた。普通に聞いただけなら、そんな馬鹿なと一笑に付しそうな内容でも、先にステータスプレートで裏付けるような数値や技能、ポケモン達を見てしまっているので信じざるを得ない。イルワは全ての話を聞き終えると、一気に十歳くらい年をとったような疲れた表情でソファーに深く座り直した。誠司達もポケモン達をモンスターボールにしまう。

 

「……なるほど。道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。誠司君やハジメ君が異世界人だと分かってはいたが……実際は、遥か斜め上をいっていたか……」

「……それで、支部長さん。あなたはどうしますか? 僕達を危険分子だと教会にでも突き出しますか?」

 

イルワは、ハジメの質問に対して非難するような眼差しを向けると居住まいを正した。

 

「はは……冗談がキツいな。出来るわけないだろう? 君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としても有り得ない選択肢だよ……大体、見くびらないで欲しいね。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」

「……そうですか。それは良かった」

 

ハジメは肩を竦めて、試して悪かったと視線で謝意を示した。イルワもそれに気付いたのか気にするなというように苦笑いを浮かべる。

 

「可能な限り、君達の後ろ盾にもなろう。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように君達の冒険者ランクを全員、金ランクにしておく」

 

思わぬ大出世に顔を顰める誠司。それを見抜いたイルワは誠司へ諭すように説明する。

 

「良いかい、誠司君。確かに地位が高くなればその分、責任が伴う。それを億劫に感じるのも分かるよ。しかし、地位が低ければ行動が制限されやすくもなる。上に逆らい辛くなるからね。君達が自由に動けるように、そして、後ろ盾になりやすくするには君達を金ランクにした方が手っ取り早いんだ」

 

イルワにそこまで言われれば誠司も何も言い返せなかった。誠司が頷くのを見ると、イルワは手紙を書き始める。手紙を書き終えて家紋入りの判を押すと、それを机に置く。イルワは誠司達に質問する。

 

「本来なら多くの手続きが必要だが、何とかしよう。キャサリン先生や私の推薦、君達の実績があれば問題ないだろうしね。君達はこれからどうする予定かな?」

「グリューエン大砂漠へ向かう予定です」

「なら都合が良い。この手紙をホルアドの冒険者ギルドの支部長に渡してくれないか? そこの町の支部長とは個人的に親しいし、キャサリン先生の手紙も合わせればまず却下されることもないだろう」

 

誠司は手紙を受け取る。誠司もハジメも複雑な表情を浮かべていた。ユエは心配そうに二人を見つめる。

 

「どうかしたのかい?」

「いえ……」

「少し昔を思い出しまして……」

 

誠司とハジメの濁すような回答にイルワは「そうか……」と返してこれ以上何も聞くことはなかった。そして、誠司達はフューレンに滞在する間はギルド直営の宿のVIPルームを使わせてくれることとなった。誠司達は礼を言うと、イルワと握手を交わして別れ、そのギルド直営の宿へ向かった。

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