魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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情報共有と訓練

翌日、体力も回復した誠司は自身のステータスプレートを取り出して技能の意思疎通(魔獣)を確認した。効果は以下の通りだった。

 

『効果: 魔獣と意思疎通を取ることが出来る。魔獣の気持ちを理解出来る』

 

 

「やっぱり。ネマシュの気持ちが分かったような気がしたのはこの技能の影響か」

「マシュ?」

 

ネマシュはコテンと体を傾ける。首を傾げているつもりのようだ。

 

「まぁ、良いか。さてと、この世界のことをもう少し詳しく知っていかないとな」

 

誠司はそう言うと、ネマシュと一緒に図書館へ向かおうと扉に手を掛ける。しかし、寸前で大事なことに気付いた。「このままネマシュを連れ歩いたらマズくね?」ということに。可愛らしい見た目で忘れがちだが、人間族にとって敵とも言える存在なのだ。そのままは非常にマズイだろう。

 

あれこれ考えた末、ネマシュは上着に付いている大きめのポケットに入っててもらうことになった。魔獣図鑑によると、通常のネマシュは二十センチほどの大きさらしいのだが、このネマシュは十五センチ程度と小柄だったためポケットにもすんなりと入ることが出来た。そして、ネマシュには勝手に出たりしないように色々教えておく。

 

図書館に入ると既にそこには先客がいた。ハジメだ。二人とも戦闘面では期待出来ない以上、何か知識面で力を得ようと考えていたのだ。それから誠司もハジメも何度も図書館に来ているのですっかり常連になっていた。司書もそういった姿勢を気に入っているのか割と好意的だ。

 

「やぁ、誠司」

「おーす。ハジメ」

 

ハジメもこの世界について勉強している最中だったようだ。誠司も手伝う。

 

数日の間、色々な本を読んで分かったことがあった。

 

エヒトがアルセウスを倒した後にはまだ続きがあったようだ。

 

どうやら、何千年も前に反逆者という人達がエヒトに戦いを挑んだらしい。彼らは敗れたらしいが、パルキアとは別の魔獣、ディアルガを連れ去ってしまったそうだ。そして、ディアルガは現在でも行方が分かっていない。

 

「なぁ、ハジメはこの話を信じるか?」

「反逆者の話? たしかにパルキアとは別の魔獣はどうなったんだろうとは思ってたけど……」

「まあな。それに……俺、あの教皇の言っていたことを全部信じられないんだ。まるでカルトーーーモゴッ」

「シー、シー、シー、シッ」

 

ハジメに口を塞がれる。ハジメは周囲を見渡して自分達以外に人がいないことを確認すると、手を離した。安心したように溜息も吐く。

 

「まったく、声が大きい。誰かに聞かれたらどうするの。僕達はただでさえ無能扱いされてるんだからそんなこと聞かれたら消されかねないよ」

 

ハジメが誠司に注意する。確かに誰が聞いてるか分からない場所でそんなことを言っているのを教会関係者に聞かれれば消されかねない。一応、誠司もハジメも他のクラスメイト達同様に神の使徒ということにはなっているが、その中でも最下層だ。消した所で戦力としては大した影響にはならないだろう。そして、消した後で残ったクラスメイト達にはハジメ達は逃げたとでも言っておけばどうとでも誤魔化せる。ハジメも誠司もクラスメイトから快く思われていないことも教会側にバレているので特に問題もなく誤魔化すことが出来るだろう。

 

「悪い…… 軽率だった」

「でも確かに妙なんだよね。どの本にも同じような内容が書いてある。それこそ王国以外の国、ヘルシャー帝国やアンカジ公国で書かれた本にも」

「ああ、どうもこの世界には宗派ってものが無いらしいな。普通はこんなことあり得ないと思うんだが……」

 

なんでも地球基準で考えるのもどうかと思うが、誠司が感じていた違和感はそこだ。普通、同じ宗教であっても人によって解釈が変わるものだ。それが代々続くことで宗派が生まれていく。地球でのキリスト教、仏教、イスラム教然りだ。だが、この世界では全ての国で同じ認識なのだ。気持ちが悪いくらいに。国によって多少の価値観の違いこそあるが、大まかな認識に違いがない。

 

「それに……どうもこの世界ではポケモンは悪として存在しているみたいだな」

 

誠司が一冊の本を広げる。そこにはポケモンの攻撃方法や弱点、そのポケモンの倒し方しか載っていなかった。その本にはネマシュについても載っていたが、相手を眠らせる胞子を撒き散らして攻撃して来る、毒の攻撃が有効としか書いていなかった。おまけにネマシュのスケッチも本物よりも大分凶悪そうに描かれている。

 

「他にももっと書くべきことがあるだろうに……」

 

どうやら反逆者達はポケモンを使って戦っていたらしい。おまけに人間族の仇敵である魔人族もポケモンを使っているのだ。ポケモンに対する認識が悪いままなのもある意味仕方ないのだ。特に教会の影響が強い場所ではそれが顕著のようだ。

 

「はぁ…… 歴史は勝者が作るってことなのかね………」

 

誠司は大きく溜息を吐いた。

 

それから2人はそれぞれ自分の技能の話に入った。

 

ハジメの方はまだ魔力量や技量が知識に追いついていない感じで、細かい操作は出来るようになってきてるらしい。上手く成長していけば色々な物が作れそうである。誠司もポケモンを一体仲間にしたことを明かした。それには流石のハジメも驚いたようだ。ポケットからネマシュを取り出すとハジメは慌てて周囲を見渡す。そして、誰もいないことを確認すると、ハジメはネマシュに優しく触れた。ネマシュもハジメのことを気に入ったのか気持ち良さそうだ。

 

「うわぁ。可愛い。この子、どうしたの?」

「昨日、怪我してた所を拾ってな。助けたら懐かれた」

「へぇ…… 昔から動物好きだもんね」

「まぁ、表立って連れ歩くことは出来ないからポケットに入れているが、中々良いもんだ」

「そっか…… ネマシュ、誠司のこと色々助けてあげてね」

「マシュー」

 

そして、誠司とハジメの訓練の時間になった。二人で本を片付けて、誠司はポケットにネマシュをしまう。ポケットから勝手に出ないように注意しておくことも忘れない。

 

 

訓練場に行くと既にそこには何人か人がいた。皆、誠司とハジメを見ながらヒソヒソと話している。相変わらずの感じの悪さだ。そんな時、誠司達に近付く集団が現れた。確か、軽戦士とか槍術師とかだったか……

 

「よぉ、無能ども。またやられに来たのか?」

「また俺達が鍛えてやるよ」

 

召喚前からハジメを目の敵にしている奴らだ。最近じゃ誠司にまでちょっかいを掛けて来るようになった。召喚前は百八十センチ程あった体躯のお陰で絡まれることも無かったが、ステータスが分かって怖くなくなったらしい。つくづく小物感丸出しの連中だ。

 

ハジメは顔を強張らせるが、誠司は呆れた表情だ。こっそり気付かれないようにポケットに手を突っ込み、中にいるネマシュにある合図を送った。誠司の反応が気に食わないのかリーダー格の軽戦士が突っかかって来る。

 

「おい、なんだよ。その顔は? 無能の癖に」

 

そう言って殴り掛かって来た。この瞬間を待ってた。誠司はわざと一発殴られると、すぐにポケットから手を出して、握っていたものを連中の顔にばら撒いた。

 

“ねむりごな”だ。朝、ポケットに入れる時にネマシュにはある指示を出して置いた。自分がポケットに手を入れて合図を送ったら“ねむりごな”を出すようにだ。

 

「な!?」

「うわ!」

「何だよ、コレ!?」

「ペッ、ペッ……!」

 

突然の反撃に驚いたのか軽戦士達には動揺が走る。咳き込んだりしているが、“ねむりごな”を全員しっかりと吸ってもらった。ちなみに、誠司は魔獣攻撃耐性があるため効果は薄いし、ハジメは予め後ろに下げておいた。なので、ねむりごなの被害は殆どない。やがて落ち着いたのか軽戦士が激昂する。

 

「中西、テメェ! いきなり何しやが……ん………だ………………」

 

ねむりごながやっと効いたのか軽戦士は強い睡魔に襲われて倒れてしまった。軽戦士の仲間達も同様に倒れる。周囲が騒がしくなる。

 

「中西! お前、檜山達に何をしたんだ!」

 

騒ぎを聞きつけたのか勇者達がやって来た。正直、相手するのは面倒臭いが誠司は素直に答える。

 

「何ってその日村が「檜山」……檜山が俺達に殴り掛かって来たから反撃しただけだぞ。自前で調合した眠り薬だからこいつらは命に別状はないぞ。ただ眠っているだけだから」

 

途中、名前を間違えるが、ハジメがすぐに訂正する。実際、殴られた痕もあるのでそれを見せる。反撃の理由としては問題ないだろう。だが、勇者は誠司の言葉にまだ納得がいかないのか更に言い募る。

 

「だが、いきなり薬をばら撒くなんて何を考えているんだ! 檜山達はお前達のために特訓してくれたんだろ?」

 

………こいつは何を言っているんだ? 勇者の隣の剣士も顔に手を当てて溜息を吐く。呆れてモノも言えないって感じだ。誠司も正直、同じ気持ちだった。ハジメも「何を言っているんだ?」と言いたげだ。

 

「これが特訓だって? 俺達に四人がかりでやるのがか? リンチの間違いだろ? というか、俺は無能なりに戦えるように模索している最中なんだよ。ハジメも同様にな。だからお前らも邪魔しないでくれよ。そこで寝ている奴らにもそう言っておけ。ハジメ、行こうぜ」

「う、うん…………」

「おい、待て! まだ話は……」

 

勇者がまだ何か言っているが、こういう手合いは無視するに限る。

 

訓練場の奥の方に向かう途中、ハジメが尋ねた。

 

「ねぇ。眠り薬だって言ってたけど、さっきの粉ってネマシュの技だよね?」

「ああ。“ねむりごな”だ。あれを吸うと眠気を誘うんだよ。あれでもう絡んで来なけりゃ良いんだが……」

「うーん、どうだろ…… あ、そうだ。さっきの大丈夫? 檜山君に殴られてたけど」

「ん? 別に大したことはないな。出来るだけダメージは減らしてたから」

「?」

 

召喚前、誠司が読んでいた漫画の中には敵に殴られる時に一歩後ろに下がってダメージを減らすシーンがあった。それは見切りというらしいのだが、今日までの間にあの軽戦士達に何度も絡まれていたのでそれを試す機会は結構あった。なので、さっき殴られたのもそこまでダメージにならないくらいにまで上手くやれるようになっていた。

 

そのことをハジメに伝えると、その見切りを教えてほしいと頼まれた。なので訓練の時間一杯、誠司は見切りのやり方をハジメに教えた。




見切りは昔、「怨み屋本舗」って漫画を読んだ時に知ったので入れてみました。足の速いオタクが使っていました。若干うろ覚えなので少し違うかもしれません。
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