魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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久しぶりのホルアドへ

数日後、旅の準備を整えた誠司達はイルワやウィル達の見送りの元、フューレンを出発した。本来は数日はかかる過酷な旅でも、魔力駆動四輪プリーゼの力があれば、快適な旅である。あっという間に誠司達は宿場町ホルアドに到着した。

 

そのまま素通りしても良かったのだが、イルワからの届け物があるためギルドに立ち寄る必要がある。それにグリューエン大砂漠の通り道なので何も支障はない。

 

ホルアドのギルドを目指して、町のメインストリートを歩く中、誠司とハジメは懐かしげに目を細めた。ハジメに手を引かれているミュウがそんな二人の様子に気付いたようで、不思議そうな表情をしながら尋ねた。

 

「ハジメお姉ちゃん、誠司お兄ちゃん、どうしたの?」

「え? ああ、えっと、僕と誠司は前にもここに来たことがあってね。まだ四ヵ月くらいしか経ってないはずなのに随分濃い時間を過ごしたな~って思ってさ」

「まぁ、色々あったからな、俺達」

「……誠司、ハジメ、二人とも大丈夫?」

 

ユエが心配そうに尋ねる。そんなユエに誠司もハジメも手をヒラヒラ振って気にするなと伝える。

 

「別に大したことじゃないって。ちょっと感慨に耽ってるだけだから」

「ああ、思えば俺達の旅はあそこで奈落に落ちたことで始まったんだよな」

「そうそう、本当に色々なことがあったよ……」

 

ある意味、運命の日とも言うべきあの日のことを思い出し、遠い目をしながら独白する誠司とハジメの言葉を神妙な雰囲気で聞くユエ達。その時、ティオが興味深げに尋ねた。

 

「ふむ。二人は、やり直したいとは思わんのか? 元々の仲間がおったのじゃろ? 二人の境遇はある程度聞いてはいるが……皆が皆、敵意を持っていたわけではあるまい? 仲の良かったものもいるのではないか?」

 

ティオのストレートな質問に誠司もハジメも考え込む。ふと腰のベルトにあるモンスターボールが目に入り、優しい眼差しでそれを見つめる。脳裏に色々な思い出がよぎった。

 

「そうだね……確かにそういう人がいなかった訳じゃないけど…… 僕は奈落に落ちたことは後悔はないかな」

「俺もだ。もしも時が戻せたとしても俺もハジメも何度でも同じ道を辿るよ」

「ほぅ、それはなぜじゃ?」

 

ティオは少し面白そうな表情であえて聞いた。二人の様子からある程度の答えは予想出来るが。

 

「ヌマクローやブースター、キュウコン、それからケンタロスとは奈落の底で出会ったんだ。奈落に落ちなければ一生出会うこともなかった」

「それに、ポケモン達だけじゃない。ユエとも出会ったんだ。奈落の底でね。こんなに良い仲間達に出会ったのに後悔なんてするわけがないよ」

「……ハジメ」

 

ユエはハジメの言葉に嬉しそうに顔を綻ばせる。シアも微笑ましそうに笑う。二人からの答えを聞いたティオは「そうか、愚問じゃったの」と頷いた。

 

 

 

そんな会話をしながら、誠司達は冒険者ギルドのホルアド支部に到着した。誠司はギルドの扉を開ける。ブルックやフューレンといった他の町のギルドと違って、ホルアド支部の扉は金属製だった。扉からギギィィィッという重苦しい音が響き、それが人が入って来た合図になっているようだ。

 

ホルアド支部の内装や雰囲気は今までの町の支部とは異なるものだった。言ってみれば、誠司やハジメが当初抱いていた冒険者ギルドのイメージそのままである。建物の中には荒くれ者達がたむろしており、誰も彼もが目をギラつかせ、ブルックのようなほのぼのした雰囲気など皆無である。

 

誠司達がギルドに足を踏み入れた瞬間、冒険者達の鋭い視線が一斉に誠司達を捉える。ミュウは怯えた表情で傍らのハジメにしがみつく。一人のいかつい顔をした冒険者が誠司達の元に近付いて来た。

 

「おい、坊ちゃん。ここは女を侍らせたヤツが来る場所じゃねえんだよ。ぶっ飛ばされる前に失せな」

 

冒険者は凄んで誠司に向かって怒鳴る。他の冒険者達はその冒険者と同意見なのか愉快そうにヤジを飛ばす。

 

「ギャハハハ、終わったな。あのガキ」

「オレ、死ぬ方に五千万賭けるぜ」

「おれも死ぬ方に七千万」

「バーカ、そんなの賭けにならねえだろうが」

 

ドッと冒険者達の間で下品な笑いが起こる。誠司達が呆れたようにそんな冒険者達を眺めていると、怒鳴っていた冒険者がブチ切れた。

 

「おい、聞いてんのか。てめぇ、オルクス大迷宮二十階層を攻略した紫ランクのアテウ・マデス様を知らねえのか!」

 

アテウが怒鳴った次の瞬間、アテウは顔を真っ青にして泡を吹いてぶっ倒れた。アテウだけではない。誠司達に敵意を向けていた他の冒険者達も全員倒れている。残された冒険者や職員達は何が起きたのか分からず、呆然とした表情を浮かべていた。

 

誠司はユエに礼を言った。

 

「ナイスだ、ユエ」

「ん、お安いご用」

 

ユエが携帯しているモンスターボールの一つがユラユラ揺れた。ユエがシャンデラに命じて、アテウを含む冒険者達の魂を吸い取って貰ったのだ。と言っても、気絶する程度に抑えてあるが。

 

誠司達はぶっ倒れている冒険者達を気にも留めることなく、カウンターへ向かう。受付嬢は誠司やハジメと同じくらいの年の明るそうな娘だった。どうやら、美人の受付嬢というテンプレはこの町にあったらしい。もっとも、普段は魅力的であろう受付嬢の表情は緊張で強張っていたが。

 

「あの、ギルド支部長はいますか? 僕達はフューレンのギルド支部長から手紙を預かっていて直接渡すように言われているんですが……」

 

ハジメはそう言いながら、自分のステータスプレートを受付嬢に差し出す。誠司も同様に差し出した。

 

「は、はい。お預かりします。え、えっと支部長からの直接の依頼ということですか?」

「そうなるな」

「は、はぁ……?」

 

誠司の答えに受付嬢は少し訝しげな表情を浮かべる。何せ一介の冒険者がギルド支部長から直接依頼を受けるなど普通はありえないからだ。しかし、二人から受け取ったステータスプレートの情報を見て目を大きく見開いた。

 

「き、金ランク!?」

 

冒険者の中で金ランクに到達した者は一割にも満たない。なので、金ランクの認定を受けた者については、ギルド職員に対して伝えられる。当然、この受付嬢も全ての金ランク冒険者の名前は把握しており、誠司達のことなど知らなかったので、思わず驚愕の声を漏らしてしまった。

 

その声にギルド内が騒がしくなり、職員も冒険者達も誠司達を凝視している。受付嬢は自分の失態に気付き、顔を真っ青にさせて、ものすごい勢いで頭を下げ始めた。

 

「も、申し訳ありません! 大切な情報を……」

「いや、別に良いから支部長に取り次いでもらえますか?」

「は、はい! 応接室へご案内します! こちらへどうぞ!」

 

受付嬢は慌ただしく、駆け出した。ユエがポツリと呟いた。

 

「……私達、どんどん有名になっていく」

「もう気にしていたらキリがないですね」

 

シアの言葉に一同は何とも言えない表情を浮かべた。

 

 

受付嬢の案内のもと、応接室に通された誠司達。ソファに座って五分程待っていると、ギルド支部長が入って来た。六十過ぎのガタイのいい左目に傷が入った迫力のある男だった。このギルドの荒くれ者達を束ねる立場にふさわしい人物であることが伺える。

 

「お前らが話に聞いていた金ランクか?」

「ええ、そうです。あなたがギルド支部長ですか?」

「いかにも。俺はロア・バワビス、ここのギルド支部長を務めている」

 

誠司は頷くと、二通の手紙をロアに差し出した。

 

「フューレンのギルド支部長から手紙を預かっています」

「イルワからか。仕事の愚痴の手紙……って訳じゃなさそうだな。大方、お前さん達のランク関係の話ってとこか。どれどれ……」

 

核心を突いたことを言いながらロアは封を開けて、手紙の内容に目を通す。しばらく経つと読み終えたのか目を上げて誠司達に視線を戻した。

 

「……なるほど。この手紙によれば……随分と大暴れをしたようだな」

「全部成り行きですがね」

「ほぅ……手紙には、にわかに信じがたい内容ばかりであるが…… まぁ、イルワの奴がこんな嘘をわざわざ手紙に寄越してまで伝えるとは思えん」

 

ロアの言葉に思わず苦笑いを浮かべる誠司達。

 

「……!」

「……っ! …………っ!」

 

その時、部屋の外が急に騒がしくなった。男性の怒鳴っている声が扉の向こうから聞こえてくる。しかも、その声はどんどん大きくなる。何事かとお互いに顔を見合わせていると、突然、応接室の扉がバタンと開いた。職員に抑えられた状態で一人の全身黒装束の少年が部屋に入って来た。少年は部屋にいた誠司達に気付かず、ロアに向かって切羽詰まった様子で叫んだ。

 

「聞いてくれ! 魔人族が現れたんだ!」

「……君は誰かね?」

 

突然部屋に入って来た無作法者に対し、ロアが厳しい表情で何者なのか尋ねる。しかし、ハジメは目の前の人物を見て思わず目を丸くした。まさかここで再会するとは思わなかったからだ。思わず声が漏れる。

 

「……遠藤君?」

 

一方の誠司はどこかで会ったかなと首を傾げていた。ロアが驚いたように、ハジメに尋ねた。

 

「む? 知り合いかね? 南雲ハジメ」

 

ロアの言葉に今度は遠藤が驚く番だった。何せ、死んだと思われていた人間と全く同じ名前が呼ばれたのだから。

 

「な、南雲だって!?」

 

遠藤は目の前のソファに座っている白髪の少女がハジメ本人だと気付き、マジマジと見つめ始める。ハジメは居心地悪そうに顔を背けた。遠藤はまさかという面持ちだ。

 

「お、お前、マジで南雲……なのか?」

「うん、正真正銘、本物の南雲ハジメだよ」

「そ、そうか…… ってことはそっちは……中西か?」

「ああ、そうだ」

 

遠藤は二人の姿を上から下までマジマジと観察し、それでも記憶にある誠司やハジメとの余りの違いに信じ切れないようだ。

 

「えっと、何か二人とも、えらく変わってるんだけど……見た目とか雰囲気とか…… 南雲に至っては性別も変わってるし……」

「そりゃあ奈落に落ちてから色々あったからな」

「奈落の底から這い上がって来たからね。多少は変わるよ。それと性別が変わったわけじゃないから」

「多少って……別人だろ……でも、そうか。良かった、生きてたのか……ん? ちょっと待って。性別が変わってないって、南雲のその姿、どっからどう見ても女……」

「そりゃあ、僕は女だからね。元々」

「は、はあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

更なる衝撃の事実に思わず絶叫する遠藤。その絶叫に、ギルド内では思わず耳に指で栓をする者が続出した。

 

 

 

「それで一体何の用だ? 君は確か、勇者パーティーの……」

「え、遠藤です」

 

遠藤を抑えていた職員を退室させ、ロアは険しい表情で質問を投げかける。遠藤は、未だにソファに座る誠司やハジメをチラチラ見ながら答えた。その時、遠藤はあることに気が付き、誠司とハジメに尋ねた。

 

「そ、そうだ。なぁ、中西も南雲も奈落から這い上がってきたんだよな?」

「ん? ああ、そうだな」

「それってつまり……たくさんの強い魔獣がウヨウヨいる迷宮の深層から自力で生還出来るくらい強いってことだよな? 信じられねぇけど……」

「まぁ、そうなるね」

 

遠藤の真剣な表情でなされた確認に肯定の意をハジメが示すと、遠藤はハジメに飛びかからんばかりの勢いで肩を掴みに掛かり、今まで以上に必死さの滲む声音で、表情を悲痛に歪めながら懇願を始めた。

 

「なら頼む! 一緒に迷宮に潜ってくれ! 早くしないと死んじまう! 皆、死んじまうんだ!!」

「ちょ、ちょっと待ってよ。いきなり何なの!? 全然意味が分からないんだけど? せめて事情を話して貰わないと……」

 

ハジメが、普段目立たない遠藤のあまりにも切羽詰まった尋常でない様子に、困惑しながら問い返す。このままでは埒があかないと判断したロアが力づくで遠藤をハジメから引き離す。

 

「まずは落ち着け。それに彼女の言う通り、詳しく話を聞かせて貰わないと困る。さっき魔人族と言っていたが、具体的に何があった?」

「そ、それは……」

 

ロアに諭され、遠藤はぐったりと力が抜けた状態で話し始めた。情緒不安定な遠藤の様子から、碌な内容じゃないだろう。誠司達は嫌な予想をしながら聞くことになった。




アテウ・マデスはコミカライズ版に登場した当て馬冒険者です。また、原作では遠藤がハジメと再開してから、ロア支部長と話をする流れでしたが、アニメ版ではハジメ達がロア支部長と話をしている最中に遠藤が乱入してくるという流れでした。本作ではアニメ版の流れの方がスムーズだったのでそちらを採用しました。

次回、勇者パーティSIDEになります。
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