魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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誠司達SIDEに戻ります。


救出依頼

遠藤の語った内容は誠司達の予想通り、碌なものではなかった。

 

遠藤含む光輝達前線組は女魔人族カトレアが引き連れたポケモン達と戦ったものの、今までの層のポケモン達とは比べ物にならない強さだったそうだ。仲間数人が傷付き、現在は何とか退避して回復に専念しているのだそう。遠藤に応援を呼ぶように送り出して。

 

遠藤がギルドまで戻れたのは、“暗殺者”の天職のお陰だったらしい。生来の影の薄さと暗殺者のスキルを駆使して何とか戻ることが出来たのだ。しかし、犠牲が無いわけではなかった。地上に戻るための転移陣がある層まで戻った際に、カトレアの配下のポケモン達に追い付かれ襲われたのだ。転移陣に待機していた騎士達によって逃がされて、命からがらここまで来ることが出来たのだ。

 

「だから戦力を集めて急いで戻らないとこのままじゃ天之河達も……」

 

必死でそう訴える遠藤に誠司達もロアも深刻な表情を浮かべた。室内は重苦しい雰囲気に満たされていた。

 

……のだが、ハジメの膝の上で幼女がモシャモシャと頬をリスのよう膨らませながらお菓子を頬張っているため、イマイチ深刻になりきれていなかった。幼いミュウには少々難しかったようだが、それでも不穏な空気は感じ取っていたようで、不安そうにしているのを見かねてハジメがお菓子を与えておいたのだ。不安そうにソワソワされても迷惑かと思い、お菓子をあげていたのだが、裏目に出てしまった。

 

「つぅか! 何なんだよ! その子! 何で、呑気に菓子食わしてんの!? 状況理解してんのかよ!? みんな、死ぬかもしれないんだぞ!」

「ひぅ!?」

 

 場の雰囲気を壊すようなミュウの存在に、ついに耐え切れなくなった遠藤がバンッとテーブルを叩きながら怒声を上げる。その瞬間、遠藤の周囲から殺気が噴き出る。何だかんだでミュウは既に誠司達のアイドル的存在になっている。そんな彼女に危害を加えようとする者に容赦はしない。

 

「……何ミュウちゃんに八つ当たりしてるの?」

「……気持ちは分からんでもないが、大人気ないぞ」

「……処す?」

「……コテンパンにしますよ?」

「……少しは落ち着かんか。見苦しい」

「ひぅ!?」

 

先程のミュウと同じような悲鳴を上げて、思わず隣のロアにしがみ付く遠藤。そんな遠藤を尻目にハジメやシアがミュウをなだめ始める。とりあえず一区切りついたところで、ロアが呆れたような表情をしつつ、埒があかないと判断したのか話に割り込んだ。

 

「さて、誠司、ハジメ。さっきのイルワの手紙でお前達の強さは知ってる。たった五人で魔獣の大群の殲滅、半日足らずでフューレンを巣食う闇組織の壊滅……イルワの奴が嘘を吐いていなければの話だがな。俺も一応事の概要は掴んでいたが……実際ここまでぶっ飛んでるとは思わなんだ。お前達が実は魔王だったと言われても不思議に思わないぞ」

 

ロアの言葉に、遠藤が大きく目を見開いて驚愕をあらわにする。自力でオルクス大迷宮の深層から脱出した誠司やハジメの事を、それなりに強くなったのだろうとは思っていたが、それでも自分よりは弱いと考えていたのだ。

 

何せ、今まで無能と称されていた者達だ。姿が変わっていても、どうしてもまだその認識があった。だからこそ、遠藤は自分が二人の実力を過小評価していたことに気付き、もしかすると自分以上の実力を持っているのかもしれないと、過去の二人と比べて驚愕しているのである。

 

遠藤が驚きのあまり硬直している間も、ロアと誠司達の話は進んでいく。

 

「そんなお前達の腕を見込んで頼みがある。俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

「……勇者達の救出ですか?」

「そういうことだ」

 

遠藤が、誠司の「救出」という言葉を聞いてハッと我を取り戻す。そして、身を乗り出しながら捲し立てる。

 

「そ、そうだ! 中西、南雲! 早く一緒に助けに行こう! 二人がそんなに強いなら、きっと皆を助けられる!」

「「…………」」

 

見えてきた希望に瞳を輝かせる遠藤だったが、誠司もハジメも反応は芳しくない。何か考え込んでいるようだった。遠藤は当然、二人とも一緒に救出に向かってくれるものだと考えていたので、即答しないことに困惑する。

 

「どうしたんだよ! 今、こうしている間にも皆が死にかけているかもしれないんだぞ! 何を迷ってんだよ! 仲間だろ!」

「……は?」

「……仲間? 誰が?」

 

聞き捨てならない言葉が耳に入り、思わず視線を戻す二人。底冷えのする声に遠藤は先程の殺気を思い出し、尻込みするも、半ば意地で言葉を返す。

 

「誰がって……俺達は仲間だろ!? だったら仲間を助けるのは……」

 

そんな遠藤の言葉に誠司は思わず鼻で笑った。そして、冷ややかにあることを尋ねる。既に知っていることではあるが、聞かずにはいられなかった。

 

「へぇ……なら、あの時、俺達を奈落に落としたあの魔弾は誰が撃ったものだったんだ?」

「……へ? あっ……」

 

一瞬、遠藤は何を言っているのか分からない様子だったが、すぐに質問の意図に気付いたのか顔を青ざめる。ハジメも同様に質問した。

 

「仲間が生死不明になったんだから、当然誰の攻撃だったのか明らかにしてるんだよね? まさか、そのまま事故でなぁなぁにした……なんて言わないよね?」

「そ、それは……」

 

動揺して反論一つ出てこない遠藤の姿が、ハジメの言葉が事実であることを証明している。

 

「で、でも、頼む! 皆を助けてくれ! 虫の良いことを言ってるのは分かってる! 今までのことだって全部謝る! 早くしないと重吾が、健太郎が……皆が死んじゃうんだ! 何でもするから! お願いします! お願いしますぅ!」

 

遠藤が必死に誠司やハジメの手を握り、懇願をし始めた。予想以上に強い力に驚く。それだけ必死だということなのだろう。そんな遠藤の様子を見かねてロアが口を挟んだ。

 

「俺からも頼む」

「……ロア支部長」

「お前達が彼らを快く思っていないのは分かってる。だが、勇者パーティは俺達人間族にとって希望と言える存在。彼らが死ねば、魔人族との戦争に多大な影響が出る。だから、思うところもあると思うが、何とか堪えてもらえないか?」

 

ロアも頭を下げて頼み込んだ。そんなロアの態度に、思わず言葉を飲み込む誠司達。誠司もハジメも再び思案し始める。

 

実は、勇者パーティを助けるのに乗り気じゃないのは、別に彼らに恨みがあるからではない。遠藤の話に聞いていたポケモン達も、今の誠司達の手持ちなら相性等を考慮しても特に苦戦することもないだろう。

 

問題は自分達がポケモンを使うことにあった。ただでさえ、クラスメイトの中には自分達を敵視する者もいたのに、わざわざそんな者の前に攻撃材料を持って現れるなど真平ごめんだったのだ。しかし、必死に懇願する遠藤や頭を下げているロアを見て、そのまま見捨てるべきかともなる。

 

そして、ハジメの脳裏にはある言葉が過ぎった。水妖精の宿での愛子の言葉だ。

 

『白崎さんは諦めていませんでしたよ』

『自分の目で確認するまで、あなた達の生存を信じると。今も、オルクス大迷宮で戦っています』

 

「……白崎さんはまだ無事?」

 

ハジメが、遠藤にポツリと尋ねる。いきなりの質問に遠藤は「えっ?」と一瞬、疑問の声を漏らすものの、取り敢えず何か話をしなければハジメが協力してくれないのではと思い、慌てて香織の話をしだす。

 

「あ、ああ。白崎さんは無事だ。っていうか、彼女がいなきゃ俺達が無事じゃなかった。最初の襲撃で重吾も八重樫さんも死んでたと思うし……白崎さん、マジですげぇんだ。回復魔法がとんでもないっていうか……あの日、お前が落ちたあの日から、何ていうか鬼気迫るっていうのかな? こっちが止めたくなるくらい訓練に打ち込んでいて……雰囲気も少し変わったかな? ちょっと大人っぽくなったっていうか、いつも何か考えてるみたいで、ぽわぽわした雰囲気がなくなったっていうか……」

「……そう」

 

 聞いてないことも必死に話す遠藤に、ハジメは一言そう返した。少し沈黙が流れ、ハジメは誠司に声を掛ける。

 

「……誠司」

「……助けたいのか? お前を虐めてた奴もいるんだろ? 本気か?」

「……うん。白崎さんには義理もあるし、そのまま見殺しにするのはね」

「はぁ……そうかい……」

 

ハジメの言葉に誠司は溜息混じりに少し考え込む仕草を取ると、ユエ達に視線を向けた。

 

「……私はどこでも付いていく」

「ミュウも! ミュウも付いていくの!」

「私もですよ! だって仲間なんですから!」

「もちろん、妾もじゃ」

「……皆、ありがとう」

「……分かった」

 

仲間からの言葉に心が温かくなった。ハジメがお礼を言う。仲間達の言葉に誠司もようやく腹が決まった。そして、最後にロアへ視線を向ける。

 

「ロア支部長、この依頼はどれくらい報酬が出ますか?」

「ん? ああ、これくらいだな」

 

ロアが近くの紙にサラサラと報酬金額を書き込む。そこには相場の倍以上の金額があった。まぁ、緊急性の高い上に救出対象が勇者パーティだから無理もない。遠藤は額を見て目をひん剥いていた。あまりの金額の高さに驚いているのだろう。

 

「え、えっと……助けてくれるってことでいい……のか……?」

「ああ。だが、条件が一つだ。お前らを助ける以上、その方法に文句を言うな。それを守れるなら助けてやる」

「守る! 守るよ! 皆を助けてくれるならどんな方法でも良い! だから頼む!」

「よし、決まりだ。ロア支部長、依頼を受けます」

「そうか。ならば頼むぞ、最年少の金ランク冒険者達!」

『了解!!』

 

結局、誠司達が一緒に行ってくれるということに安堵して深く息を吐く遠藤を無視して、誠司達はロアとさくさく話を進めていった。

 

流石に、迷宮の深層まで子連れで行くわけにも行かないので、ミュウをギルドに預けていく事にする。その際、ミュウが置いていかれることに激しい抵抗を見せたが、何とか全員で宥めすかし、ついでに子守役兼護衛役にティオも置いていく事にして、ようやく誠司達は遠藤の案内で出発することが出来た。

 

「よし、それならさっさと行くぞ。早くしろ、安藤」

「遠藤だよ! 俺、影が薄いどころか名前すら覚えられてなかったのか……」

 

誠司から名前すら覚えられていなかったことに思わずショックを受ける遠藤だったが、今はそれどころではない。ハジメ達に急かされながら大迷宮に入ると、ハジメ、ユエ、シアがポケモン達を繰り出すのを見て、目が飛び出るくらいに驚愕した。

 

「ま、魔獣……!? 何で……!?」

「良いから早く乗って」

「で、でも……」

「文句は無しだろ。シア、悪いが俺も乗せてくれ」

「良いですよ!」

「よし。先に行くぞ」

 

誠司はシアのゴーゴートに相乗りさせてもらい、先に走り出した。ユエを乗せたシャンデラもそれに続く。ハジメを乗せたメタングも、困惑する遠藤の身体をガシッと掴むと、そのまま大迷宮を疾走する。

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

遠藤の絶叫を響かせながら。

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