魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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ポケモン合戦

香織の言葉に雫も目を見開いて、目の前の人物達を凝視する。色々と変わっている所もあるが、記憶の中の二人と合致し始めると、雫は驚きの声を上げた。

 

「え? え? 本当に南雲君と中西君……なの? ホントになんで? ここに?」

「まぁまぁ、まずは落ち着いてよ、八重樫さん」

 

ハジメが苦笑しながら宥めていると、そうこうしている間にユエやシアもやってきた。メタングに抱えられていた遠藤もヨロヨロと降りて、仲間達に呼び掛ける。

 

「重吾、健太郎、皆! 助けを呼んできたぞ!!」

「「浩介!!」」

 

遠藤の親友の永山と野村が叫んだ。

 

「助けを呼んできた」という言葉に反応して、光輝達もカトレアもようやく我を取り戻した。そして、改めて誠司達を凝視する。だが、そんな周囲の者達の視線などはお構いなしといった様子で、誠司は少し面倒臭そうな表情をしながら、仲間達に手早く指示を出した。

 

「ユエ、シア、二人はあそこで固まっている奴等の守りを頼む。ハジメは向こうで倒れている騎士達の回復を頼んだ」

「ん……任せて」

「了解ですぅ!」

「オーケー!」

「さて……」

 

ハジメ達がそれぞれ自分の役割を全うしに行ったのを確認すると、誠司はカトレアの方に向き返った。カトレアは警戒心を剥き出しにしながら睨んでいる。誠司はある提案をした。それは、傲慢とも言える提案であった。

 

「俺達は勇者パーティの救出依頼で来たんだが…… 悪いけどさっさとこいつら連れて帰らせてもらえないかね? こっちもさっさと帰りたいんだ」

「……何だって?」

 

イワークが戦闘不能になったとは言え、他にも大勢の魔獣の大群に囲まれている状態での台詞とは思えず、カトレアはつい聞き返してしまった。しかし、すぐに何も戦況を理解していない子供の言葉だと考えてしまい、フンと馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

 

「……帰らせろ? ここに来た時点であんたらはもう生きて帰るなんて出来ないんだよ。こいつらの前にはね!」

 

カトレアの合図でポケモン達が動き出した。誠司は溜息を吐く。

 

「はぁ……やっぱ交渉は無理か……」

 

地面からボコッボコッとイワーク達が飛び出して攻撃を仕掛けようとする。しかし、誠司は全く動じず、イワーク達の様子を観察する。

 

(あのイワーク達……やっぱ動きが変だな。多分あいつか……)

 

イワーク達の様子がおかしいことに気付き、遠くに浮かんでいるカラマネロに視線を向ける。ヌマクローが誠司に呼び掛け、誠司もヌマクローに視線を戻すと、指示を飛ばす。

 

「マクロッ!」

「よし。ヌマクロー、“マッドショット”!」

「マークロッ!!」

 

ヌマクローが泥の塊を無数に発射し、一発残らずイワーク達に命中する。効果抜群の攻撃に、イワーク達は全て倒れ伏してしまう。

 

次にチョロネコの群れが四方八方から一斉に襲い掛かってくる。しかし、誠司は冷静にヌマクローをボールに戻して次のポケモンを繰り出す。それを見た香織や雫は驚きの表情を浮かべる。

 

「ま、魔獣が……!?」

「マシェード、“まもる”」

「マシェ!」

 

マシェードの特性“はっこう”によって、チョロネコ達は誠司達ではなく、マシェードに集まり始める。チョロネコ達は一斉に“みだれひっかき”を繰り出そうとするが、マシェードの“まもる”によってあっさり防がれる。そして、攻撃が防がれたことで隙が生じたチョロネコ達にマシェードは反撃をする。

 

「“マジカルシャイン”!」

「マーシェッ!」

 

マシェードの身体が眩く輝き、チョロネコ達を倒していく。

 

「流石だね。誠司もマシェードも」

 

ハジメは、向こうで戦っている誠司達をチラリと一瞥してニヤリと笑うと、目の前の自分の仕事に集中する。騎士達に神水や回復魔法を駆使して治療していく。しかし、メルドの傷は想像以上に酷く、死ぬ寸前だった。

 

「これは……酷い……」

 

ハジメが悲痛そうに顔を歪めながら、回復魔法や神水を使って回復させていく。その隙を狙って、ツンベアー達が襲い掛かる。しかし…………

 

「……邪魔しないで貰える?」

 

ハジメは底冷えのする声でドンナーを構える。ハジメの側には、ラビフットとイーブイ、グレッグル、ブイゼル、メタング、ベロバーが立っていた。ツンベアー達はラビフット達を見て、怯んだように一瞬動きが止まるが、すぐにまた動き出した。そんな様子を見てハジメは溜息を吐く。

 

「はぁ、イーブイは“てだすけ”で僕のサポートをお願い。他は僕や騎士達が攻撃されないように守って」

「イブ!」

「ラビ!」

「メッタ!」

「グエェ!」

「ブイブイ!」

「ベロン!」

「そして、それでも襲ってくるようなら……誠司には悪いけど殺らせてもらう」

 

そう言ってドンナーを構えるハジメは冷徹と言える表情を浮かべていた。

 

「何なんだ……彼は一体、何者なんだ!?」

 

少し離れた所で、光輝が動かない身体を横たわらせながら、そんな事を呟く。今、周りにいる全員が思っていることだった。彼らには、正体不明の何者かが魔獣を駆使して、自分達を散々苦しめた魔獣達を圧倒していることしか分からなかったのだ。

 

そんな光輝達の疑問に答えたのは、その何者かをここまで連れて来た遠藤だった。

 

「はは……信じらんないだろうけど、あそこで戦ってるのは中西だよ」

『は!?』

 

遠藤の言葉に全員が間の抜けた声を漏らす。更に遠藤は衝撃的な爆弾を落とす。

 

「ちなみに、あそこでメルドさん達を回復させているのは南雲だよ。しかも、あいつ実は女だったんだってさ」

『……はぁ!?』

 

続け様に落とされた爆弾発言に、光輝達は驚きの声を上げる。

 

「まさか……中西も南雲も生きてたのか……?」

「あそこからどうやって……?」

「え、え? それより南雲君が女って……」

 

各人、あまりにも衝撃の事実に茫然とした表情を浮かべていた。遠藤は「気持ちは分かる」と乾いた笑いを浮かべながら、再度事実を伝える。

 

「いや、本当なんだって。二人のステータスプレートも見たし」

 

その時、衝撃からいち早く立ち直って、ひどく狼狽した声で遠藤に喰ってかかる人物が現れた。

 

「う、うそだ。中西も南雲もあの時奈落で死んだんだ。そうだろ? みんな見てたじゃんか。生きてるわけない! 適当なこと言ってんじゃねぇよ!」

「うわっ、なんだよ、檜山! 二人のステータスプレートも見たし、この異世界で二人も同姓同名の奴らがいるわけないだろ!」

「なら、なら……何か細工でもしたんだろ! それか、誰かがステータスプレートを奪ってなりすまして何か企んでるんだ!」

「いや、何言ってんだよ? あれに細工なんて無理だし、奈落で奪うなんてもっと無理に決まってんだろ!」

 

錯乱した様子の檜山に、周囲は何事かと若干引いていた。檜山のパーティメンバーでさえ困惑した様子だ。そんな檜山の頭上に突如、大量の水が降りかかる。水浸しになりながらゲホッゲホッと咳き込む。一体何が!?と混乱する檜山に、冷水以上に冷ややかな声がかけられる。

 

「……静かにしてて。死にたくないなら」

「そうですね。冷静になれないと……死にますよ?」

 

人を水浸しにしておいて、全く悪びれない物言いに再び激高しそうになった檜山だったが、声のする方へ視線を向けた途端、思わず言葉を呑み込んだ。そこにはビスクドールの如き金髪美少女と、白髪のスタイル抜群のウサ耳少女が立っていた。突然現れた美貌の少女達に男女関係なく自然と視線が吸い寄せられた。鈴などは明からさまに見蕩れて「ほわ~」と変な声を上げている。ユエの傍らに浮かぶシャンデラの灯す炎が彼女達を妖美に映しているのも一因だろう。

 

その時、カトレアの指示でイワークやパラセクト、スカンプーの三体が光輝達に襲い掛かった。恐らく、捕らえて人質にするつもりらしい。メルドを含む騎士達はハジメとポケモン達によってしっかりガードされている。だからこそ、まだガードされていない光輝達を狙ったのだ。

 

鈴が咄嗟に結界を張ろうとするが、既に限界の身体では碌に詠唱することすら難しいようだ。そんな鈴をユエとシアが制する。「ほぇ?」と思わず鈴の口から溢れる。二人はモンスターボールから、それぞれモクローとホルビーを繰り出す。

 

「シャンデラ、“かえんほうしゃ“、モクロー、”このは“!」

「ホルビー、”マッドショット“です!」

シャンデラ、モクロー、ホルビーの攻撃は、それぞれパラセクト、イワーク、スカンプーを直撃した。効果抜群の攻撃に三体は倒れ伏す。その時、モクローとホルビーの体が光に包まれた。

 

「……っこれは……」

「もしかして……」

 

光が収まると、そこにはそれぞれ違うポケモン達の姿があった。キザな前髪をしたフクロウポケモンとガッシリとした体格のウサギポケモンだ。

 

「フルフルゥ!」

「ホールゥ!」

「……進化……した……やった!」

「やりました! おめでとうございますぅ!」

 

手持ちのポケモンが進化して歓喜の声を上げる二人。衝撃の展開の連続に付いていけず困惑した表情を浮かべる光輝達だが、二人はお構いなしである。

 

「進化したか……おめでとさん、二人とも」

 

モクローがフクスローに、ホルビーがホルードに進化して二人が大喜びしているのを遠目で見つつ、誠司は目の前のポケモンに集中する。

 

そこには、一体のチョロネコがいた。先程、チョロネコの群れをマシェードの“マジカルシャイン”で一掃したはずなのだが、一体だけ回避していたのだ。

 

どうもこのチョロネコ、他のチョロネコ達よりも遥かにレベルが高い。“つめとぎ”や“わるだくみ”で能力を上げて上手く戦っている。先程の攻撃を回避したのも、咄嗟に他のチョロネコを盾にして防いだからで、それらの動きを指示無しで全てこなしている。洗脳前から相当頭が良いようだ。

 

だからこそ、倒すのではなく、モンスターボールで捕獲することに決めた。義手を銃に変形させて、マシェードに指示を飛ばす。

 

「マシェード、チョロネコの動きを封じるぞ!」

「マシェ!」

 

チョロネコは縦横無尽に動き回り、マシェードの死角を突いて攻撃を仕掛ける。しかし、近付いてくれるのなら誠司としても好都合だった。

 

「“キノコのほうし”!」

 

マシェードは周囲に胞子をばら撒き、チョロネコの動きを鈍らせる。そこをすかさずボールを発射して命中させる。ボールは数回揺れるも、やがて静かになった。捕獲成功だ。

 

誠司がボールを回収しようとすると、突然ボールが何者かに奪われてしまう。ヤミカラスだ。“どろぼう”攻撃でモンスターボールを奪い取ったのだ。

 

「マズイな。取り返すぞ! マシェード、“ムーンフォース”!」

「マーシェッ!」

 

マシェードは何度か“ムーンフォース”を発射するが、ヤミカラスは機敏に動き回って、躱すため全然当たらない。誠司も今度はヤミカラスを捕獲しようと、モンスターボールを二、三個程発射するが、当たらない。誠司の義手の銃は装填の関係もあるので、そう何発も連射することも出来ない。仕方ないので、誠司はマシェードを戻して別のポケモンを繰り出す。チゴラスだ。

 

「チゴラス、“がんせきふうじ”!」

「グオォォ!」

 

チゴラスは岩を使ってヤミカラスの動きを封じていくが、ヤミカラスも負けていない。今度は上空に逃げようと、高く飛び上がった。しかし、そうなることは誠司も想定内だった。

 

「チゴラス、跳べ!」

「グラァァァッ!」

 

チゴラスは足を踏ん張ると、尻尾を叩きつけて勢いよく空を跳んだ。

 

「ヤ、ヤミィ!?」

 

ヤミカラスもこれには驚いたようだ。このチゴラスは、ライセン大峡谷出身だ。身体能力、特に足腰の力は相当なもので、跳躍力は高い。ヤミカラスがいる所まで跳び上がるなど、チゴラスにとっては朝飯前だった。誠司は指示を飛ばす。

 

「“ドラゴンテール”!」

「グラァ!」

 

チゴラスは、尻尾をヤミカラスに叩き付ける。驚きからつい無防備になってしまったヤミカラスはそのままなす術もなく、地面に墜落してしまう。誠司はすかさず、モンスターボールをヤミカラスに向けて発射する。ボールはヤミカラスに命中し、そのまま捕獲された。チョロネコとヤミカラスが入ったボールを回収すると、ボールの状態を確認する。幸い、チョロネコのモンスターボールは無傷だった。

 

「ホント、何なんだい……」

 

カトレアは焦りの表情を浮かべていた。突如、現れたかと思えば、強力な魔獣を使って、自分達を追い詰めていく。自分が揃えた魔獣達は既に殆ど全滅しており、残ったのはカラマネロとドダイトスだけであった。

 

打てる手はもう無いかと諦観の念が胸中を侵食していく中、カラマネロがカトレアの腰にある一つの黒い球体を触れる。それを見てカトレアは思い出す。自分の最後の切り札を。

 

「マロマロ……」

「カラマネロ、まさかこれを使えというのかい!? これは……」

「マーロウ」

「確かに……もう他に打つ手は……仕方ないね……やるしかない!」

 

カトレアは覚悟を決めた表情を浮かべると、近くのドダイトスに向かって、球体を投げつける。そして、土魔法で球体を破壊する。砕かれた球体から銀色の粒子が降り注ぎ、ドダイトスは粒子を浴びてしまう。

 

その直後、ドダイトスの体に異変が訪れた。ドダイトスが苦しみ始めると同時に、体中が結晶のように固まり始めたのだ。頭には、鉄斧のような冠が出現した。

 

「ははは……こうなったら、もう止まらない。お前達は……これで終いだ!」

 

変貌していくドダイトスの側で、カトレアは歪んだ笑みを浮かべた。

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