魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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決着です。


決着

「なんだ!? ドダイトスが急に宝石みたいに……!?」

 

誠司は思わず目を見開いて、驚愕の声を漏らす。今までの夢でも、メガシンカやダイマックスのようにポケモンの姿が変わる現象はあったが、ポケモンが宝石のように光り輝く現象は見たことが無かった。

 

試しに魔獣図鑑の技能を発動させると、情報が頭に入ってくるが、穴だらけで肝心なところが分からない。こんなことは初めてだった。辛うじて分かったのは、目の前にいるドダイトスは鋼属性のポケモンであるということだけだった。

 

(そんな馬鹿な…… さっきまで草・地面属性だったはずなのに……)

 

狼狽する誠司達を他所に、ドダイトスは口を大きく開けてエネルギーを溜め始めた。誠司はチゴラスに指示を飛ばす。

 

「まずい! チゴラス、“だいちのちから”!」

「グオォォ!」

 

チゴラスが足を力強く踏み締めて、地面のエネルギーをドダイトスに命中させる。しかし、ドダイトスのダメージは低いようで、技は中断されずに発動されてしまう。ドダイトスが発射したエネルギーは金属の塊と化して、チゴラスに襲いかかる。

 

その直前、チゴラスの前にシュバルゴが立ちはだかり、防御する。先制で味方を防御する技“ファストガード”だ。

 

誠司はチゴラスが無事なのを確認してホッと安堵の息を吐く。チゴラスをボールに戻して、ヌマクローとブースターを繰り出す。

 

「よし、三体であのドダイトスを倒すぞ! シュバルゴは“ドリルライナー”、ヌマクローは“マッドショット”、ブースターは“かえんほうしゃ”!!」

「シュババババ!」

「マークロッ!」

「ブーーギュッ!」

 

三体の同時攻撃をドダイトスに浴びせる。効果抜群の攻撃にドダイトスは少なからずのダメージを受けるが、怯むことなく攻撃を続けている。どうやら痛みをあまり感じていないのか、自分が傷付くのもお構いなしのようだ。先程の粒子の影響かと誠司は怒りの表情を浮かべる。

 

原因であるカトレアに視線を向けると、誠司は目を見開いた。カトレアはブツブツと何かを呟いていた。呟き終えると、ニタリと歪んだ笑みを浮かべて、灰色の球体のような魔法を誠司に放つ。その魔法は誠司の近くで破裂して煙が誠司やポケモン達を包み込んだ。

 

この魔法は土属性の上級魔法で、相手を石化状態にさせる効果を持つ。しかも、殆どの防御魔法では効果が無いというオマケ付きだ。その光景に、光輝達は息を呑んだ。ハジメ達も目を見開いて驚きを露わにする。

 

「は……あははは! 油断するからそんな目に遭うのさ! この魔法を受けて無事でいられた奴はいな……「無事でいられた奴はなんだって?」……は?」

 

カトレアの嘲りの言葉に返事をしたのは、他ならぬ誠司の声だった。急いで発動させたため、魔法の効果時間も短く、すぐに煙が晴れた。そこにいたのは、誠司とブースターとヌマクロー、そして新たにヤレユータンだった。状態異常を無効化させる“しんぴのまもり”をヤレユータンに出させて、更にブースターの“てだすけ”で底上げすることによって、完全に防御していたのだ。

 

それを見たカトレアは階層内にある出口の一つに向かって、振り返ることなく駆け出した。もうドダイトスや他のポケモン達はどうでも良い。さっさと逃げないとまずい。そう本能的に悟ったのだ。

 

誠司達も追おうとするが、ドダイトスが立ちはだかる。ドダイトスはまだ暴走状態のようで、シュバルゴを弾き飛ばす。そして、誠司達に向かって、全体重が籠った“ヘビーボンバー”をお見舞いしようと、のしかかろうとしてきた。誠司はヌマクローと視線を交わす。お互いに頷くと、指示を飛ばした。

 

「ヌマクロー、“カウンター”!」

「マクロッ!」

 

ヌマクローはゆったりとした動きでドダイトスの腹部分を捉えて、拳を突き出す。相手の威力を利用したこの技はドダイトスには効果抜群だったようだ。ドダイトスは勢いよく、吹き飛ばされてしまった。

 

そして、ドダイトスが吹き飛ばされた先には、ようやく出口の前に辿り着き、逃げようと駆け込もうとしたカトレアがいた。急に周囲が暗くなって怪訝そうに振り返った彼女の顔は凍りついた。

 

ドガッシャアアン!!!

 

哀れなカトレアは吹っ飛ばされたドダイトスの下敷きになってしまった。その瞬間、ドダイトスを覆っていた結晶や鉄斧の王冠が砕け散る。効き目が切れたようだ。ドダイトスは完全に目を回しており、動く気配がない。誠司はモンスターボールを発射してドダイトスに命中させる。すると、ドダイトスの巨体はボールの中に吸い込まれていき、ボールは数回揺れた末に収まった。

 

ドダイトスの下敷きになってしまったカトレアは、辛うじて圧死は免れたものの、見るも無惨な状態になっていた。手や足は変な方向に曲がり、骨が飛び出てしまっている部分もある。また、身体のあちこちも骨が何本か折れたようで、咳き込む度に血が吹き出ている。

 

「ガハッ、こんなのって……ないだろ……」

 

誰に向かって言ったのか、それはカトレア自身も分からない。カツンカツンと足音を鳴らして近づいてくる誠司の姿が、今のカトレアには死神のように見えた。力なく、周囲を振り返ると、すでにカラマネロを含む魔獣の姿は一体もない。洗脳が溶けたポケモン達は真っ先に逃げ出したのだろう。そして、ポケモン達を洗脳していたカラマネロもカトレアを置いてどこかに逃げてしまったらしい。

 

「こんな……理不尽な奴らが……いた…なんて……聞いてないよ……クソッ」

「さてと……魔人族であるあんたが何故ここにいる? そして、ドダイトスに使ったやつ、あれは何だ? 答えて貰おうか」

「ハッ…敵の利になることを誰が話すか……バーカ……」

 

息も絶え絶えながらに、挑発するカトレアに誠司は冷めた視線を返す。そして、カトレアの腹を足で勢いよく踏みつける。しかも、骨が折れている部分を的確に。

 

「あがああぁぁ!!」

 

激痛に、悲鳴を上げるカトレア。絶叫すると、再びゴフッと吐血する。あまりにも容赦のない光景に、クラスメイト達が息を呑むのが聞こえた。

 

「言え」

「ぐぐ……だ、誰が……」

 

それでも口を割ろうとしないカトレアに、誠司が再び踏みつけようと足を上げたその時、ハジメが口を挟んだ。騎士達の治療は終わったようで、誠司の元に寄って来た。

 

「大迷宮攻略……でしょ?」

「……っ!?」

 

ハジメの言葉に明らかに動揺するカトレア。そんな彼女に誠司は胡乱な目を向ける。誠司は今度はハジメに質問した。

 

「ハジメ……どういうことだ?」

「簡単だよ。あのドダイトスやカラマネロは神代魔法で強化したものなんでしょ? 多分、ドダイトスに使ったあの粒子もそれなんじゃないかな? そして、あなたがここに来たのも、このオルクス大迷宮の攻略……ってとこなんじゃない?」

「な、なんで…………?」

 

ツラツラと仮説を並べるハジメに、図星なのかカトレアは悔しそうに顔を歪める。そして、ある事実に思い至ったようで、カトレアはハジメと誠司の顔を交互に見つめる。やがて、フッと全てを諦めたような表情を浮かべた。

 

「まさか……計画の障害が……あのお方達と同じ攻略者とは……予想外だ。もう良いだろ……ひと想いに頼むよ。あたしは……捕虜なんて……絶対にごめんだからね」

 

カトレアの言葉に誠司とハジメは黙って、銃を取り出す。二人の瞳には殺意が宿り始める。カトレアは負け惜しみと分かっていながらも、二人に腹いせの言葉をぶつける。

 

「覚え…てろ。いつか……あたしの恋人が…必ず…あんたらを……殺す……!」

「殺しに来るならこっちも容赦はしない」

「僕達はそうやって前を歩いて来たんだ。今までも……そして、これからも」

 

互いにもう話すことはないと口を閉じ、誠司はカトレアの頭部に、ハジメは心臓部分に銃口を向けた。確実に息の根を止めるために。

 

しかし、いざ引き金を引くという瞬間、大声で制止がかかった。

 

「ま、待ってくれ! 二人とも! 彼女はもう戦えないんだ! 何も殺さなくても良いだろ!」

「「……」」

 

誠司もハジメも「何を言ってるんだ?」という表情を浮かべて肩越しに振り返る。副作用が切れたのか、光輝はフラフラしながらも何とか立ち上がって、更に声を張り上げた。

 

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。そうすれば更に情報も引き出せる。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。中西も南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ」

「「……」」

 

あまりにもツッコミどころ満載の言い分に、ハジメは最早聞く価値無しと切って捨てた。さっさと終わらせようと引き金に指を掛けると、それを誠司が制した。

 

「……誠司?」

「ここで殺さずに捕虜にした方が、今後の人間族の戦いに有利になる……そういう認識で良いのか?」

 

そう誠司が尋ねると、光輝は「分かってくれた!」というように目を輝かせた。

 

「そ、そうだ! 彼女はもう戦えないんだ! なら早く彼女をちりょ「なら捕虜に相応しい状態にしないとな」……え?」

 

誠司の言葉の意味が分からず、光輝は思わず聞き返すが、次の瞬間、目の前の光景に言葉を失った。誠司が傍らのシュバルゴにある指示を出したのだ。

 

「シュバルゴ、“いあいぎり”。そいつの手足を狙え」

「シュバ」

「やめ……やめろ……」

 

これからやろうとしていることを察して慌て出したカトレアを他所に、シュバルゴは目にも止まらぬ速さで槍を振るい、彼女の手足を斬り落とした。

 

ザシュシュッ!

 

「ああああぁぁぁ!!」

 

カトレアの断末魔が響き渡る。ショッキングな出来事に悲鳴もチラホラ上がった。誠司はそれらを無視して、神水をカトレアの身体にぶっかける。これにより、血が止まったが、斬られた手足は元に戻らない。そして、痛みも消える訳ではない。

 

「な、何をやってるんだ!」

 

ハッと我に返った光輝が慌てて怒鳴るが、当の誠司はどこ吹く風だ。ハジメもカトレアに回復魔法を少し掛けて、致命的な骨折等を治していく。

 

「何って……捕虜にするんだろ? 今後逃げたり反撃されないようにしたまでだ」

「なっ!? だからってこんな……!」

「ぎぎぎ……勇者……!」

 

カトレアは悶え苦しみながら、光輝を血走った目でこれでもかと睨みつける。

 

「お前が…お前のせいで……あたしは……! 戦士としての死に場所まで……奪いやがって……! 許さない……! 呪ってやる……呪って……」

「あ…あ……」

 

カトレアの呪詛を直接向けられた光輝は、顔を青ざめて立ち尽くしていた。

 

「マシェード、ブースター!!」

 

もう聞くに耐えないと、誠司はマシェードをボールから出して、マシェードとブースターに呼び掛ける。二体とも、付き合いが長いだけあって、すぐに誠司の意図を察してくれた。

 

ブースターは“てだすけ”でマシェードにパワーを送り、マシェードは強力になった“キノコのほうし”をカトレアに振りかけた。

 

「う、あ……」

 

強力な胞子になす術もなく、カトレアはそのまま意識を失ってしまった。

 

辺りを静寂が包み込む。クラスメイト達は目の前で起きたショッキングな光景に何も言葉を発することが出来ずにいた。

 

やがて、静寂の満ちる空間に押し殺したような光輝の声が響いた。

 

「なんで……なんであんな真似が出来るんだ……彼女だって人間なのに……」

 

そんな光輝の呟きをスルーして、誠司はカトレアの襟首を掴んでズルズルと引きずりながら、ユエとシアの元に向かった。誠司としては、彼の望みには出来る限り叶えたつもりである。文句を言われる筋合いはない。

 

しかし、それを相手が許容するかは、また別問題である。




一応現時点で、カトレア生存です。現時点では……ね。
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