魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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糾弾

誠司がカトレアを引きずりながら、歩みを進める中、同様に隣を歩くハジメに尋ねた。

 

「ハジメ、メルド騎士団長達の容体はどうだった?」

「危なかったよ。特にメルドさんは、あと少し遅かったら手遅れになってた。まぁ、全員しばらくすれば気づいて動けるとは思うけど」

「そうか。あと……あいつらも回復出来るか?」

「まだ魔力は残ってるし神水もあるからやろうと思えば出来るよ。まぁ、元よりそのつもりだったし」

「それならあいつらの回復も頼むわ。全員が無理そうなら、回復魔法が使える奴を最優先で回復させて、それ以外はそいつに回復させれば良い」

「オケ」

 

誠司とハジメが近づいて来るのが見えたユエとシアは、もう護衛は良いだろうと光輝達から離れる。背後に鈴が名残惜しそうに「お姉様」と呼ぶ声が聞こえたが、スルーする。

 

「じゃあ、僕は回復させて来るよ」

「ああ、頼むわ」

「任せて」

 

そう言って、ハジメは誠司を追い越してクラスメイト達の元に向かう。ハジメとすれ違う形でユエとシアが合流した。

 

「……お疲れ様」

「何とかなりましたね」

「ああ。そういえば、モクローとホルビー、進化したんだろ? おめでとう」

「ん、ありがとう」

「フルフルゥ!」

「そうなんです! ホルビー、すっごく逞しくなったんですよ!」

「ホルルゥ!」

 

フクスローは自慢げに前髪を掻き上げ、ホルードも自慢げに耳を振り上げる。そんな二体を見るユエとシアも実に嬉しそうだ。マシェード達も「おめでとう」と言うように祝い合っている。実に微笑ましい光景だ。

 

そんなポケモン達を他所に、誠司はあるポケモンの元に向かう。そこには通常より大きいツンベアーが倒れていた。先程、光輝によって斬り捨てられたツンベアーで、瀕死の重傷だ。

 

誠司は無言で手持ちの神水をツンベアーにかけてやる。すると、ツンベアーの腹にあった大きな傷がどんどん塞がっていく。傷が塞がったことでツンベアーは意識を取り戻したようで、ヨロヨロとぎこちなく起き上がった。そして、自分を治したのが目の前の男だと悟ったようで、胡乱な眼差しを向ける。自分を斬った男の仲間だと思っているのだろう。誠司はツンベアーに話しかける。

 

「俺は別にあいつらの仲間って訳じゃない。お前らは操られてただけなんだろ? だから治したんだ。それに、お前らを操ってた元凶は俺達が潰したよ」

 

そう言って、片手に持っているカトレアを示す。ツンベアーは驚きの表情を浮かべるが、やがて感謝の意を示すように、頭を下げた。そして、ツンベアーは頭を下げたまま、その場から動かない。それを見て、誠司はもしかしてと思い、尋ねた。

 

「お前、もしかして俺達と行きたいのか?」

「ベンツ、ベンツァ!」

「だけど、群れの奴らは……」

「ベンツァ、ベンツァァ!」

 

どうやら、ツンベアーの群れにはリーダーが負けると、もう群れには戻れないという掟があるらしい。ツンベアー達がボスを置いてさっさと逃げ出したのもそういった背景があったのだろう。随分厳しいものである。つまり、今のツンベアーに帰る場所は無いということだ。

 

「それなら……よろしく頼むぞ!」

「ベンツァ!」

 

誠司が空のモンスターボールを軽く、押し当てる。すると、ツンベアーはボールに吸い込まれ、数回揺れた後に収まった。

 

誠司がユエとシアの元に戻ると、クラスメイト達の回復を終えたのかハジメも戻って来た。しかし、そんなハジメを呼び止める者がいた。香織だ。

 

やがて、感極まったように、香織がハジメに抱きついた。それを見て、誠司も思い出す。

 

(そういや、白崎ってハジメのことが好きなんだっけか。あれ? でもハジメは女だから……)

 

一度は抱きついた香織だったが、すぐにハジメから離れた。彼女にとって、あまりに覚えのある感覚がしたからだ。信じられない、信じたくないという気持ちが顔にアリアリと浮かんでいる。香織の隣にいた雫も、事態が落ち着いてからハジメを改めて見ると、どうも違和感があった。男には見えないのだ。なので、雫は意を決してあることを尋ねる。

 

「あ、あの南雲君。なんというか……その…あなたって……女の子なの?」

 

ハジメが女であることは、光輝達は遠藤から明かされていたが、香織と雫の二人は少し離れた場所にいたため知らなかったのだ。雫の問いにハジメは困ったような顔を浮かべるが、やがて大きく頷いた。

 

「うん。僕は正真正銘、女だよ。えっと…今まで隠してて本当にごめん」

「う…そ……」

 

香織は呆然とした様子でそう呟くと、突然フッと意識を失って倒れてしまう。雫が慌てて支える。そんな香織を見て、光輝がハジメに怒鳴った。

 

「香織!? 南雲! 香織に何をしたんだ!」

「え? えっと……」

 

光輝に詰められ、気まずそうにするハジメを見て、誠司が助け舟を出した。

 

「ハジメが女だって知って色々驚いたんだろ。それなりに親しかったしな」

 

恐らく想い人が女だと知ったことのショックだとは思うが、そこは伏せておく。余計ややこしくなるし、そもそも自分の勘違いかもしれないからだ。

 

誠司の顔を見て、光輝は今度は誠司に怒りの矛先を向けた。

 

「中西……なんで無抵抗だった彼女にあんな真似をしたんだ! お前には人の心が無いのか!?」

 

どうやら、カトレアにした処置のことが気に入らないらしい。誠司は冷めた視線を向けたまま返した。

 

「さっきも言ったろ。逃げたり反撃されないようにするためだって。今は無抵抗でも、隙を突かれないようにな。迷宮内(ここ)ならまだ良いが、()でやられると厄介だ」

 

上を指差しながら言った誠司の言葉に、クラスメイトの何人かはハッとした表情を浮かべる。しかし、光輝はまだ納得がいかないようで、更に言い募る。

 

「だ、だけど……眠らせることが出来るんだったら最初からそれを……」

「眠らせたところで、いつ目を覚ますか分からないんだよ。だから、もし早くに目を覚ましたとしても問題ないようにしたまでだ」

「光輝」

 

雫が光輝に話しかける。

 

「中西君の言う通りよ。捕虜として連れて行くのなら、しっかり逃げられたり反撃されたりしないようにしないといけないわ。そうしないと、私達だけじゃなくて、地上の関係ない人達まで危険に晒しかねないのよ」

 

雫に諭されて、光輝も表面上は納得したようだ。しかし、光輝は別の論点に話をすり替えて、誠司達を責め立てた。

 

「……確かにそういう意味では一理あるかもしれない。でも中西達が信用出来るかどうかは別問題だ。中西も南雲も魔獣を使っているんだ。簡単に仲間として認めることは出来ない!」

「ちょっと、光輝! 中西君達は、私達を助けてくれたのよ? いくらなんでもそんな言い方はないでしょう?」

「だが、雫。魔獣が危険だってことは雫だってよく知っているだろう。そんな魔獣達を操っているんだぞ。信用出来る訳がないだろ」

「あのね、光輝、いい加減にしなさいよ? 大体……」

 

光輝の言い方に、雫が目を吊り上げて反論する。クラスメイト達は、どうしたものかとオロオロするばかりであったが、檜山達は元々誠司やハジメが気に食わななかったこともあり、光輝に加勢し始める。

 

次第に議論が白熱し始めた。その時、周囲に反響する程の怒鳴り声が、議論に熱中していた全員の耳朶を揺らした。

 

「お前ら、いい加減にしろよ!!」

 

突然の怒声に何事かと全員、声がした方を振り返ると、そこには今まで見たことがないくらいに激怒している遠藤の姿があった。これまでの影の薄さはどこへやら、仲間達では抑えきれないくらいの勢いが今の遠藤にあった。

 

「天之河も檜山達も助けて貰っといて何だよ、その態度は!? 中西達は、俺が必死に頼み込んでやっと来てくれたんだぞ! 彼らに礼の一言もないのかよ!?」

 

遠藤にとって、誠司達は自分が必死に頼み込んで何とか来てくれた助っ人達だ。それを救出された側の人間が、助っ人達を非難している。遠藤(救出を頼み込んだ側)からすれば、「ふざけるな」としか言いようがない暴挙だった。

 

ヒートアップしている遠藤を抑えたのは、意識を取り戻したメルドの声だった。

 

「よせ、浩介」

「メ、メルドさん……だけどっ」

 

メルドは少し前に意識を取り戻したようで、他の騎士達に抱えられながら、誠司達の元にやって来たのだ。自分の腹など怪我していたはずの箇所を見て、不思議そうな顔で首を傾げた。

 

ユエやシアが軽く事情を説明すると、メルド達は目の前の男女が死んだはずの誠司とハジメだと知って驚き、喜んだ。また、救われたことに礼を述べながら、あの時、助けられなかった事を土下座する勢いで謝罪するメルドに、誠司とハジメは居心地悪そうにして謝罪を受け取った。

 

ハジメとしては、あの時のメルドの言葉は既に忘却の彼方だったからだ。誠司は言わずもがなである。

 

そして、メルドは光輝達にも謝罪をした。

 

「メ、メルドさん? どうしてメルドさんが謝るんだ?」

「当然だ。私はお前達の教育係として、大切なことを教えていなかったからだ」

「そんな……メルドさんは沢山のことを教えてくれたじゃないか!」

「魔法や剣術のことじゃない。人を傷付ける覚悟……もっと言えば、人を殺す覚悟のことだ」

「……メルドさん…まで」

「時期が来れば、賊を相手に経験させるつもりだったが…… お前達と過ごすうちに、迷ってしまった。本当に申し訳ない。今回のことは全て、私の責任だ……」

「メルドさん……」

 

そう言って、再び深く頭を下げるメルドに、クラスメイト達はあたふたと慰めに入る。どうやら、メルドも光輝達についてかなり悩んでいたようだ。団長としての使命と私人としての思いの狭間で揺れていたのだろう。そういう意味では、人格者と言えるだろう。

 

光輝達に微妙な空気が流れているのを他所に、誠司はハジメ達に尋ねた。

 

「そういえば、勇者達を救出するという依頼な以上、地上まで送り届ける義務があるはずなんだが…… ポケモン達(こいつら)のことが嫌なら、そのまま俺達だけで帰って良いのかな?」

「そうだね、僕達もポケモン無しで彼らを護衛しろってのはちょっと……」

「ん……帰ろう」

「そうですね。早く帰りましょう。ミュウちゃんやティオさんも待ってますし」

 

少し声を抑えて話していたのだが、クラスメイト達にはバッチリ聞こえていたようで、慌てて待ったを掛けられた。そして、遠藤が代表して地上まで便乗させて欲しいと頼み込んだ。誠司達としても別に護衛するのは問題ないので、ポケモンのことで文句を言わないという条件付きで了承した。

 

そういうわけで、誠司達は地上までの間、光輝達を囲んで護衛することになった。ちなみに、気絶した香織は雫が、捕虜のカトレアは永山が運ぶことになった。道中、ポケモン達が襲い掛かってくるものの、誠司達が難なく対処していく。

 

「ブースター、“メロメロ”」

「イーブイ、“メロメロ”」

「ブーギュッ!」

「イブイーブッ!」

 

ブースターとイーブイが同時に可愛らしくウインクすると、襲いかかってきたクチート達をメロメロ状態にしてしまう。ブースターは♂、イーブイは♀なので、性別不明のポケモンでなければ、大抵のポケモンはまともに戦えなくなる。数十層もあるので、体力を無駄に消費させたくないのだ。二体の“メロメロ”に当てられたのか、女子の何人かはモフりたそうにしているが、軽くスルーする。

 

クラスメイト達の誠司達を見る目は様々であった。感嘆だったり、妬みだったり、それ以外の複雑な感情だったりと本当に様々だ。

 

途中、美少女好きな鈴がポケモン達のことお構いなしでユエやシアにあれこれ話しかけたり、ハジメのことで質問攻めにしたり、二人が余り相手にしてくれないと悟るとシアの巨乳とウサミミを狙いだしたりして、親友の恵里に物理的に止められたり、近藤達がユエやシアに下心満載で話しかけようとしたものの、シャンデラやホルードに物理的に阻まれて大人しくさせられたりと色々あったが、一行は、やっとのことで地上に到着した。

 

ポケモン達をボールに戻して入場ゲートを抜けると、彼らを出迎える者がいた。ミュウとティオだ。

 

「あ! ティオお姉ちゃん! 誠司お兄ちゃんとお姉ちゃん達が来たの! おかえりなのー!!」

 

ミュウが嬉しそうに誠司達の元に駆け寄った。ハジメも顔を綻ばせた。

 

「ミュウちゃん! 待っててくれたんだね。良い子にしてた?」

「うん!」

 

誠司もティオに尋ねた。

 

「ティオ、どうしてここに?」

「ミュウが『お迎えする〜』って聞かなくてのぉ。しばらく入口で待ってたんじゃ」

「……なるほどな」

 

誠司は納得したように頷いた。金髪美少女やウサ耳少女、白髪少女だけでなく、可愛らしい幼女や美しい和服美女までいることを知ったクラスメイトの男子数人は「ハーレムかよ……」と嫉妬心を露わにしていた。

 

そんなクラスメイト達を他所に、ティオが何かを思い出したようで、あっと声を上げる。

 

「そうじゃ。ロア支部長が最悪の事態に備えて、大迷宮に向かうための騎士や冒険者達の編成を進めているんじゃ。早く戻ったことを伝えに行った方が良いかもしれん」

「マジか。それなら早くギルドに行くか」

 

誠司達は急いで、冒険者ギルドのホルアド支部に戻ると、既に騎士や冒険者達が集まっていた。誠司達が依頼を達成させたことを知ると、ロアはホッとした表情を浮かべながらお礼を述べた。そして、騎士や冒険者達を解散させると、ロアは誠司達に報酬を渡し、イルワと同様に今後便宜を図ることを約束してくれた。ロアはその後、メルドや生き残った騎士達と話をすることになったので、誠司達は建物から出ることにした。

 

依頼が終わった以上、もう光輝達にも用がないので、さっさとその場で別れることにした。しかし、いざ別れようとしたら、待ったが掛かった。光輝だ。

 

「お、おい! 中西、南雲! どこへ行くつもりだ!」

「どこへって……依頼が完了した時点でもう俺達があんたらと一緒にいる理由はないからな。ここでお別れだよ」

「なっ!? 俺達は仲間じゃないのか!? だったら……」

「「……は?」」

 

さっき仲間と認めないだの何だの言っていた癖に、今度は仲間扱いしてくるような言い方に誠司もハジメも呆れる。誠司は改めて自分達の立ち位置をはっきりさせることにした。

 

「……あのな、勇者さん。この際、はっきり言っておくが、俺達はあんたらの仲間じゃない。あんたらの所に来たのも、戻ってきたわけでもなければ、仲間になりに来たわけでもない。ただ依頼だったから来たまでだ。その依頼が終わった以上、もうあんたらに付き合う理由なんてないんだよ」

「な……」

 

光輝は目を見開いて、誠司とハジメの顔を交互に見つめる。しかし、誠司の顔を見るうちに、ある考えが生まれる。そして、一度その考えが生まれると、どんどん膨れ上がり、光輝の中ではそれ以外の正解が浮かばなかった。

 

「そうか、分かったぞ……中西は魔獣達を使って南雲や、ユエ達を無理矢理従わせているんだろ!? なんて卑怯な奴なんだ! 早く彼女達を解放しろ!」

『…………は?』

 

何をどう考えたらそんな結論に至るのか。誠司達は思わず呆けた声を漏らした。




なんか、アンチにする気はないのに光輝がクズキャラになっていく……

ちなみに、最後に光輝がなんでこんな結論に至ったのかというと……

中西の顔が火傷で包帯巻きになっている→そんな顔で美少女達が寄ってくるなんておかしい!→何か卑怯な手を使ったんだ→魔獣を使って無理矢理侍らせているに違いない!

みたいな感じです。……最低ですね。
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