「そういえば、ネマシュって他にどんな技が使えるんだ……?」
夕方、誠司は魔獣図鑑の技能を使ってネマシュの技を調べた。前に確認はしたが、全部の技は見ていない。確か、攻撃技も使えたような気がするが……
調べた結果、ネマシュが現在使える攻撃技は、“すいとる”・“かふんだんご”・“おどろかす”・“エナジーボール”だけだった。まだまだ技の数は少ないが、成長していけばどんどん新しい技が覚えられるようになるだろう。少なくとも夢ではそうだったのだ。多分、こちらでも同じように出来るはずだ。
そして、誠司は今使える攻撃技の中でも特に強力そうな“エナジーボール”を確認することにした。夜、誠司とネマシュは訓練場に向かった。夜なので誰もいないが、念のため人が来ないように用心しながら奥の方に行く。身体が光るネマシュは灯りの代わりになる。便利なものだ。
訓練場の中でも特に人目の付かない場所に着くと訓練用の的を用意し、誠司は早速ネマシュに指示を出した。
「よーし。ネマシュ、“エナジーボール”だ!」
「マシュ! マーーーーシュッ!」
ネマシュは力を溜めて緑色に輝く球状のエネルギーを作り出す。それを発射する。
しかし、いざ発射された“エナジーボール”はフラフラと心許ない動きで彷徨った後、ポフンッという気の抜けた音ともに消滅してしまった。的から大きくズレた位置で。
誠司はその有り様を見てポリポリと頬を掻くと、溜息混じりに呟いた。
「……こりゃ、特訓が必要になるな」
それからネマシュにはもう二、三回程、“エナジーボール”を発射してもらった。すると、ネマシュの技の出し方に問題があるのが分かった。
それは技を出した時の動きだ。どうやらネマシュは技を出す際、“エナジーボール”のエネルギーに押されてしまうのかかなり不安定な体勢になってしまうようだ。これでは満足な方向に飛ばないだろう。なので、誠司がネマシュをしっかりと押さえ込んだ状態でもう一度技を出してもらう。すると、今度はちゃんと不安定な動きをせずに的に当たった。ネマシュは嬉しそうだ。
「よし。この体勢を忘れるなよ。もう一度“エナジーボール”だ!」
「マーーシュッ!」
もう一度“エナジーボール”を出させる。しかし今度は真っ直ぐ飛ぶものの、的から外れてしまう。
「マシュー?」
「あれ? おかしいな? 技を出す時の動きは変じゃなかったのに……」
誠司は首を傾げる。そして、一つの可能性を考えた。次はネマシュの顔を見ながらまた技の指示を出した。
すると、ネマシュの問題点がもう一つ見つかった。このネマシュ、どうやら技を出す直前に反射的に目をつぶってしまう癖があるようだった。
「……あのな、ネマシュ。技を出す時はちゃんと相手を見ないと………」
「マシュ……」
ネマシュは申し訳なさそうに声を上げる。無自覚だったようだ。誠司はどうするか考え込んだ。
「こうなったら、動かない的じゃなくて
そう呟くと、誠司は自分の身体を張ることにした。
「仕方ない…… ネマシュ。こうなったら、俺を的に“エナジーボール”を撃ってみろ」
「マシュ!?」
「俺があちこち逃げ回るから俺に当ててみるんだ。そうすれば、目を開けたまま出来るようになるはずだ。それに……どうせ、この先、ポケモンや人に当てなければいけない時が来る。今のうちに慣れておいた方が良いだろ」
「マ、マシュ……」
「良いからやるんだ。俺のことなら心配すんな。それじゃ、やるぞ」
そう言うと誠司は走り出した。ネマシュは少し悩んだ末に表情を引き締める(客観的に見るとそこまで変わらない顔だが)と何発か“エナジーボール”を放つ。最初はかすりもしなかったが、段々と誠司と距離が縮まってくる。
そしてーーーー
ドシュッ!
「ぐぅ……」
遂に“エナジーボール”が初めて誠司の背中に命中した。誠司がすぐに振り返ってネマシュの顔を見るとしっかりと目を開けていた。技を受けた痛みよりも嬉しさの方が勝った。ネマシュがすぐに心配そうに駆け寄った。
「マシュマーシュ?」
「ああ、大丈夫だよ。言っただろ? 心配無いって」
「マシュ!」
「ちゃんと目を開けて出来るようになったな。この感覚を忘れるなよ。ネマシュ、最後にもう一発だけ出来るか?」
「マシュ!」
「よし。それなら……あの的に向かって“エナジーボール”だ!」
「マシュ! マーーーーシュッ!!」
発射された“エナジーボール”はしっかりと真っ直ぐに的に命中した。今度は誰の手も借りずに。
技を成功させたネマシュはピョンピョンと跳ねている。非常に嬉しそうだ。誠司の方も達成感と誇らしさで胸が一杯だった。
翌日、ハジメにこの話をした所、無茶しすぎだと怒られた。
この作品ではポケモンの覚えられる技の数に限りはありません。あると少し面倒なので……
こういった技の特訓の話は今後、閑話みたいな感じで時々入れていくと思います。人とポケモンの絆回になりそうなので。