魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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技の特訓 れいとうパンチ編

誠司達は翌日の早朝にホルアドを出発して、グリューエン大砂漠へ向かった。勇者達と顔を合わせないよう、注意して出発したため誰とも会うことなくホルアドを出ることが出来た。

 

正直、わざわざ夜逃げみたいな真似をする必要もないのだが、もしも勇者達とばったり会ったら何を言われるか分からない。おまけに昨晩、彼の仲間を返り討ちにもしてしまっている。話を聞いたハジメは「うわぁ……下衆の考えることって分かりやすいね……」と苦笑していた。

 

そんな訳で、早朝に出発したのだが、グリューエン大砂漠に入るまで、プリーゼでも数日は掛かる距離だ。なので、それと並行して皆でポケモン達のトレーニングも行うことにした。今日は誠司とハジメがダブルバトルを繰り広げている。

 

「ラビフット、“にどげり”! イーブイ、“スピードスター”!」

「ヌマクローは“いわくだき”! ヤレユータン、“サイケこうせん”!」

 

ラビフットの蹴りとヌマクローの拳がぶつかり合い、イーブイとヤレユータンの技がぶつかり合って、爆発を起こす。

 

誠司とハジメのポケモンバトルをユエ達やポケモン達も楽しそうに観戦している。特にミュウは、初めて見るポケモンバトルに目を輝かせていた。

 

「わぁ〜、すごいの! 誠司お兄ちゃんもハジメお姉ちゃんも、ポケモン達も皆カッコイイの! ねっ、ブイゼルちゃん!」

「イ、イル〜」

 

興奮したミュウに抱きしめられているブイゼルが少し苦しそうに返事する。そんなブイゼルを見て、シアが苦笑しながら、ミュウを諌める。

 

「こらこら、ミュウちゃん。あんまりギュッと抱きしめたらブイゼルが可哀想ですよ」

「あっ! ごめんなさい、ブイゼルちゃん!」

「ブイブイッ!」

 

慌てて謝るミュウに、ブイゼルは「気にしないで」と言うように鳴いた。この数日で、ミュウとブイゼルはすっかり仲良くなっていた。ブイゼルは元々面倒見の良い性格だったため、ミュウの方も元々ポケモンに対する悪感情がなかったため早々に仲良くなったのだ。

 

そうこうしている間にも、誠司とハジメのバトルも佳境を迎えていた。

 

「ヌマクローは“こごえるかぜ”!」

「マークロゥ!」

 

ヌマクローは尻尾をブンブン振って冷たい風を作り出し、ラビフット達に叩き込んだ。冷たい風に凍えるラビフット達にハジメは指示を飛ばす。

 

「ここが踏ん張りどころだよ! 燃えてラビフット、“ニトロチャージ”! イーブイは“でんこうせっか”!」

「ラービィィィ!」

「イブイーブッ!」

 

ラビフットは炎に身体を包み込み、冷たい風の中を突っ切る。イーブイも“でんこうせっか”で同様に突っ切る。

 

“こごえるかぜ”は、冷たい風によって相手の体が(かじか)み、それによって動きが鈍くなる効果がある。しかし、ハジメは咄嗟に“ニトロチャージ”や“でんこうせっか”で切り抜けている。その技の選択に誠司は思わず感心した。

 

「ほぉ、やるな。だが……」

 

ヤレユータンが目を青白く光らせると、イーブイの体が青白い光に包まれる。

 

「イブ!?」

「“サイコキネシス”で投げ飛ばせ!」

「ヤレユー!」

 

“サイコキネシス”でイーブイは吹き飛ばされ、ラビフットにもぶつかってしまう。それによって、爆発が起こり、イーブイもラビフットも大ダメージを負ってしまう。

 

「勝負ありかな」

「イーブイ、ラビフット! 立って! 立つんだ!」

「イッブ……」

「ラ…ビ……」

 

ハジメの呼びかけに応えるかのように、イーブイとラビフットが息も絶え絶えに立ち上がった。

 

「よし! よく立ち上がった! まだ勝負はここからだよ、誠司!」

 

その瞬間、イーブイとラビフットの体が光に包まれた。

 

「えっ!? ここで……!?」

 

ハジメが驚きの声を上げる。光が収まると、そこには、スラリとしたウサギポケモンのエースバーンと、額の宝石と二又の尾が特徴のポケモンのエーフィが立っていた。

 

「やった! 進化した!」

 

二体が進化したのを目の当たりにして、ハジメは感極まったようで、嬉しそうに抱き着いた。エースバーンもエーフィも、奈落の底で仲間になってからの長い付き合いなので、感動もひとしおなのだろう。エースバーンもエーフィも照れくさそうに笑っている。

 

進化したことで、勝負は結局有耶無耶になってしまった。しかし、二体も進化したことで、大迷宮攻略がより有利になったと考えれば、大きな収穫と言えるだろう。

 

誠司達やポケモン達もすっかり祝福モードだったが、ただ一体、ヌマクローだけはどこか複雑そうな表情を浮かべていた。

 

 

その日の夕方、皆夕食を食べ終えてゆっくり休んでいた。トランク内でヌマクローは一体でトレーニングを重ねていた。水辺エリアで勢いよく流れている滝に向かって、何度も拳を叩きつけている。その表情には必死さが滲んでいた。

 

「ヌマクロー」

 

自分を呼ぶ声がしたので振り返ると、そこには誠司とツンベアーが立っていた。誠司は口を開いた。

 

「夕食を食べてすぐにトレーニングか。随分勤勉だな」

「マクロ」

「分かってるさ。焦ってるんだろ?」

 

誠司の言葉に、ヌマクローは思わず振り返った。

 

「……マクロゥ」

「同期と言えるポケモン達が先に進化して、早く自分ももっと強くならないとってとこか。だがな……」

 

誠司はヌマクローの腕を掴む。ヌマクローの腕は若干腫れていた。滝を突き抜けて、向こう側の岩壁に何度も拳を叩きつけていたからだ。

 

「無茶なトレーニングを続ければ、体を壊す。そうなったら、俺達が困るんだよ」

「マクロゥ、マクロゥ」

「焦る気持ちは分かる。だから、闇雲にやるんじゃなくて……ツンベアー、“れいとうパンチ”!」

「ベンツァー!」

 

ツンベアーが滝に片方の拳を叩きつけると、滝が一瞬で凍りついた。もう片方の拳を叩きつけて氷を砕くと、滝は再びいつも通りに水が流れ落ち始めた。ヌマクローはそれを呆然と眺めていた。

 

「ヌマクロー、今からお前にはこの技を覚えてもらう」

「マクロ」

「技のレパートリーは多い方が良いからな。特に相性の差を補える技は」

 

水・地面属性のヌマクローにとって、一番に警戒すべきは草属性だ。それに対抗出来る氷・飛行・毒属性は積極的に覚えさせたい。ちょうど新しく氷属性のツンベアーも仲間にしたし、指導役としては申し分ない。やはり、その技を使えるポケモンがいると教えやすさも全然違うからだ。

 

その後、ヌマクローはツンベアーの指導のもと、数時間かけて“れいとうパンチ”を習得した。ツンベアーは群れのリーダーだったこともあり、教え方が上手かったのもあるのだろう。

 

 

そして、翌日、誠司はシアと対戦を繰り広げていた。誠司はヌマクロー、シアはゴーゴート。ヌマクローにとって、非常に不利な相手である。

 

「ゴーゴート、連続で“つるのムチ”ですぅ!」

 

ゴーゴートは首周りに生い茂った草から“つるのムチ”を出して、攻撃を仕掛ける。

 

「躱せ、ヌマクロー!」

「マクロッ!」

 

ヌマクローはダッと駆け出して、攻撃を躱していく。

 

「そのまま“じならし”!」

「マクローーッ!」

 

ヌマクローは地面を揺らす。それによって、ゴーゴートの“つるのムチ”が解除されてしまう。シアはすかさず次の技を指示する。

 

「それなら……ゴーゴート、素早さを上げますよ! “くさわけ”ですぅ!」

「ゴーッ!」

 

ゴーゴートは葉っぱを纏いながら、軽快なステップで“じならし”をモノともせず、ヌマクローに突っ込む。

 

「マクロッ!?」

 

ヌマクローには効果抜群で吹き飛ばされるも、なんとか倒れずに堪えた。そんなヌマクローを見て安堵する誠司。今こそ特訓の成果を見せる時だと、ヌマクローに指示を飛ばす。

 

「ヌマクロー、新技行くぞ!」

 

ヌマクローもその言葉を聞いて、“れいとうパンチ”のことを思い出したらしく、気合いが入ったようだ。

 

「新技が何か知りませんが、負けませんよ! ゴーゴート、もう一度“くさわけ”ですぅ!」

「ゴーッ!」

 

ゴーゴートは先程以上のスピードで、翻弄する。

 

「ヌマクロー、“れいとうパンチ”!」

「マクロゥッ!」

 

ヌマクローは拳に冷気を纏わせる。ゴーゴートは、しばらく翻弄するかのようにヌマクローの周囲を走り回っていたが、背後に向かって突っ込もうとしてきた。それを誠司は見逃さない。

 

「後ろだ! 思いきりいけっ!」

「マーークロゥ!!」

「ゴゥッ!?」

 

ヌマクローは、振り向きざまに冷気を纏った拳をゴーゴートに叩きつけた。カウンター気味の効果抜群の攻撃が効いたようで、ゴーゴートは膝をついた。

 

勝負ありだ。シアがゴーゴートに駆け寄った。

 

「ゴーゴート、大丈夫ですか!?」

「ゴゥ……」

 

「マクロゥ!」

 

ヌマクローは相性最悪な相手に勝てたのが非常に嬉しかったらしく、大きく咆哮を上げた。その時、ヌマクローの体が光に包まれた。それを見た誠司が嬉しそうに呟いた。

 

「ここで始まるか……」

 

光が収まると、そこにはミズゴロウのような体色でがっしりした体格のポケモン、ラグラージが立っていた。突然の進化に、ラグラージ自身も理解が追いついていないらしく、呆然としている。そんなラグラージに、誠司は苦笑しつつ呼び掛けた。

 

「おめでとう。気分はどうだ、ラグラージ?」

 

誠司に言われたことで、ラグラージはようやく自分が進化したことを実感したらしく、嬉しそうに吠えた。

 

「ラーグッ!」

 

その後、応援していたハジメ達やポケモン達からも進化したことを褒められ、ラグラージは嬉しそうにしていた。そんなラグラージを見て、誠司は感慨深いものが胸中に浮かぶ。

 

(それにしても、ラグラージに進化か…… 早いもんだな。昨日のハジメの気持ちが少し分かるよ)

 

こうして、着々と次の大迷宮に向けてポケモン達のレベルを上げていく誠司達であった。




次回で次章に入ります。一時期失踪したりもしましたが、なんとかここまで書き進めることが出来ました。次章も楽しんで頂けると幸いです。
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