魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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大砂漠での救助

グリューエン大砂漠。

 

ここは旅をするには非常に過酷な環境である。

 

まず、常に吹き荒れる風で巻き上げられる砂により、方向を見失う。しかも、照りつける太陽と、その太陽からの熱を余さず溜め込む砂の大地が強烈な熱気を放っており、外気温は四十度を軽く超える。

 

そんな訳で、砂漠横断を実行する者は殆どいない。仮にいたとしても、かなりの準備が必要になる。

 

しかし、そんなことは誠司達には関係ない。彼らは現在、そんな過酷な環境を、知ったことではないと言わんばかりにプリーゼに乗って突き進み、砂埃を後方に巻き上げながら爆走していた。道なき道だが、それは車内に設置した方位磁石が解決してくれている。

 

「うわぁ……外、すごいですね……普通の馬車とかじゃなくて本当に良かったです」

「全くじゃ。この環境でどうこうなるわけではないが……流石に、積極的に進みたい場所ではないのぉ」

 

車内の後部座席で窓にビシバシ当たる砂と赤銅色の外世界を眺めながらシアとティオがしみじみした様子でそんなことを呟いた。いくら竜人族で高い耐久力を持つティオでも、流石にこの環境は鬱陶しいらしい。

 

「前に来たときとぜんぜん違うの! とっても涼しいし、目も痛くないの!」

 

前部の窓際の席でミュウはキラキラさせた目をハジメに向けている。ハジメはそんなミュウに照れくさそうに笑った。

 

「そう言ってくれると嬉しいよ、ミュウちゃん。あ、後ろの方に冷蔵庫があるからジュースでも何でも好きなの取って良いよ」

「本当!? わーいなの!」

 

ミュウは嬉しそうに冷蔵庫からジュースを取り出して、自分の分だけでなくシアやティオ達にも手渡していく。ミュウはジュースを飲みながら、窓の向こうを眺めていると、何か案山子のような、サボテンのようなものが複数見えた。ミュウは誠司に尋ねた。

 

「んみゅ? 誠司お兄ちゃん、あの緑色のは何なの?」

「うん? あれは……ノクタスだな。昼間はああやって眠って、夜になると動き出すんだ」

「ほえ〜、こんな過酷な場所にもポケモンがいるんですね〜」

 

誠司の説明を聞いて、シアがそんな呑気なことを言っていると、誠司は少し呆れた視線を向ける。

 

「そりゃあいるさ。こんな過酷な環境でも生きていける子達がいるんだから。本当にポケモンってのは奥が深いよ」

 

誠司の言葉の通り、窓の向こうには様々なポケモン達が独自の生活を送っているのが見える。

 

「ん? なんじゃ、あれは? ハジメ、三時方向で何やら騒ぎじゃ」

 

そんな雑談をしながら目的地に向かっていると、不意に、そんな様子を面白げに見ていたティオが運転席のハジメに注意を促した。窓の外に何かを発見したらしい。

 

ハジメが言われるままにそちらを見ると、どうやら右手にある大きな砂丘の向こう側に、ミミズ型のポケモンが何体か集まっているようだった。砂丘の頂上から複数の頭が見えている。

 

「誠司、あのポケモンは?」

 

ハジメはプリーゼを一旦止めて、誠司に尋ねると、誠司は首を傾げつつ魔獣図鑑の技能を発動させた。

 

「俺も初めて見るポケモンだな…… なになに……? ミミズズ…?ってポケモンらしい」

「顔は可愛い感じだけど……もしかして危険?」

「いや、基本臆病だから、こちらから攻撃するような真似をしなければ問題は無いと思う。だけど妙だな。さっきから同じところをグルグル回っているように見えるぞ」

「うーむ……ミミズズは本来、土や鉱石類を食べるからの。あんな風に食べることに躊躇するようなことはないはずじゃが……」

 

ティオは、ユエ以上に長生きな上、ユエと異なり幽閉されていたわけでもないので知識は結構深い。なので、誠司達が知らないことも知っていることが多い。そんな彼女が首をかしげるということは、何か異常事態が起きているのは間違いないだろう。

 

その時、シアはあることに気が付いた。

 

「あれ? ティオさん、さっきあのポケモンは鉱石を食べるって言いましたよね? ということは、今の私達……物凄くマズイんじゃ……」

『……え?』

 

シアの言葉に、全員が思わずミミズズ達に視線を向けた。すると、先程まで周囲をグルグル回っていたミミズズ達は全員動きを止めて、ジッと自分達の方を見つめていた。多種多様な鉱石を組み合わせて作ったプリーゼは、ミミズズ達からすれば、ご馳走の塊である。誠司達は、それに今更ながら、気が付いた。

 

ハジメは冷や汗をかきながら、プリーぜをゆっくりと前進させる。ミミズズ達もそれに釣られて、ゆっくりとプリーゼのもとへ向かう。間違いなく、自分達を狙っている。それを確信したハジメは後ろを振り向いて怒鳴った。

 

「皆、しっかり掴まってて!」

 

ハジメは一気にアクセルを踏んで、プリーゼを勢いよく、発進させた。すると、ミミズズ達も一斉に追いかけて来る。

 

「わざわざこっちを狙わなくたって、食べ物はいっぱいあるでしょ!?」

 

ハジメは悪態を吐きながら、右に左にとハンドルをきり、砂地を高速で駆け抜けていく。

 

「おおう!」

「ひぅ!」

「わわわ!」

「んぐ……痛い」

後ろの席の方から、ティオ、ミュウ、シアの悲鳴が上がった。強烈な遠心力に振り回されたのだ。そして、ユエは砂漠横断中ずっと眠っていたため、急に右に左に振り回されて意識を覚醒させた。その時にどこかに頭をぶつけたらしく、涙目になりながら頭のコブをさすっている。

 

走り回るうちに、他のミミズズ達を呼ぶ形になったのか、プリーゼの真下から新たなミミズズ達が飛び出してきた。

 

車内から悲鳴が上がる。このままでは、いずれミミズズ達に飲み込まれてしまうだろう。そうなる前になんとかする必要がある。その時、ティオがあっと何か思い出したかのような声を上げた。

 

「……そうじゃ! 思い出した! 水じゃ! ミミズズの体は錆びやすいから水に弱いんじゃった!」

「え!? ティオさん、それ本当ですか!?」

「うむ、間違いない。だから奴らはこんな砂漠地帯に生息しているんじゃ!」

「なるほど、そういうことなら……ハジメ!」

「分かってる!」

 

ハジメはハンドルにある複数あるボタンのうちの一つを押した。すると、天井が音を立てて開き始めた。しかも、幸いなことに、さっきまで酷かった砂嵐も止んできており、これなら車内にまで砂が入ってこないだろう。

 

誠司はラグラージを、ハジメはブイゼルをモンスターボールから出すと、指示を飛ばした。

 

「ラグラージ、上空に向かって最大パワーの“みずのはどう”!」

「ブイゼルはそれを“みずでっぽう”で破裂させるんだ!」

「ラグッ!」

「ブイブイッ!」

 

ラグラージは最大火力で“みずのはどう”を打ち出した。発射された“みずのはどう”は、開いた天井を抜けて上空に昇った。十分な高さになるのを確認したブイゼルは、“みずでっぽう”をそれに命中させた。

 

ドッパーーンッ!!

 

“みずのはどう”は弾け飛び、周囲に水が勢いよく降り注いだ。

 

『っ!? ミミズズズゥゥ!!』

 

ミミズズ達は、一斉にパニックを起こして、慌てて地中に潜って行ってしまった。ひとまず危機が去ったようで、全員車内でホッと息を吐く。

 

「……なんとか助かった…のかな?」

「おそらくな。だけど一応……」

 

誠司は、ラグラージとブイゼルに視線を向けて指示を出した。

 

「ラグラージ、ブイゼル、さっきのやつを二、三回繰り返してくれ。そうすれば、ミミズズ達も俺達を危険だと判断して襲わなくなるはずだ」

「ラーグ!」

「ブイブイッ!」

 

今回は水を降らせてなんとかミミズズ達を追い払ったが、地面が乾けば再び襲い掛かってくる可能性は高い。それなら、何度か水撒きをして、ミミズズ達を近づけないようにすれば大丈夫だろう。ラグラージとブイゼルは頷くと、すぐに行動に移った。

 

その後、水が降り注ぐたびに何度か地響きのようなものがしたが、三回ほど繰り返すと、静かになった。おそらく、一体残らずその場から逃げ去ったのだろう。

 

「あれ? ハジメさん、あそこに誰か倒れてますよ!」

「ん? ……白い人?」

 

シアが指を指した方向には、ユエが呟いたように白い衣服に身を包んだ人が倒れ伏していた。

 

おそらく、先程のミミズズ達がグルグル回っていたのは、この人がいたからだろう。だが、それだと何故ミミズズ達は何故あのような行動を取っていたのか、疑問が残る。ユエが尋ねた。

 

「……どうする?」

「ひとまず様子を見に行こうか。色々気になることもあるし」

「そうだな。そのままにするのも寝覚めが悪いしな」

 

そんなわけで、プリーゼを走らせ倒れている人の近くまで寄り付けると、ハジメは窓を開けて様子を確認した。

 

「あの服装って確か……アンカジ公国の……」

 

うつ伏せになっているから顔までは分からないが、体格からして男性のようだ。小刻みに震えていることから生きてはいるようだ。ハジメ達はプリーゼから降りて、男を仰向けにさせると、息を呑んだ。

 

男はまだ二十代前半くらいの青年だった。苦しそうに歪められた顔には大量の汗が浮かび、呼吸は荒く、脈も早い。服越しでもわかるほど全身から高熱を発している。見るだけで今の青年は危険な状態であることが分かる。

 

「……多分だけど、猛毒状態みたい。しかも、重度の」

「猛毒? ってことはモモンの実とかはどうだ?」

「でもこの状態じゃ、自力では食べられないよ。せめて刻んだりとかしないと」

「それなら……シア、プリーゼの冷蔵庫にモモンの実がある。それを細かく刻んで持ってきてくれないか? できれば、飲み込めるくらいに」

「わ、分かりました!」

 

誠司に言われ、シアが急いでプリーゼに乗り込んだ。しばらくすると、細かく刻まれたモモンの実を持ってシアが戻ってきた。

 

「お待たせしました! これを……」

「ああ、助かるよ」

 

シアからモモンの実を受け取り、大きさを確認して誠司は頷いた。誠司はそれを青年の口に押し込み、神水で流し込んだ。飲み込めるくらいの大きさなので、喉を詰まらせる心配は無いだろう。

 

コクコクと喉の動きを確認すると、誠司はハジメに合図を送った。ハジメは大きく頷くと、青年の身体に回復魔法をかけた。

 

すると、青年は呻き声を上げ始めた。それと同時にまぶたも震え始める。

 

「うぅ……こ…こ…は……?」

 

青年は力なく周囲を見渡すと、誠司達に尋ねた。

 

「あの……もしや私は死んだのですか……?」

「いや、生きてるよ。俺達はまだ死んでないからな」

「え、えっ? ということは……」

 

青年は、自分を取り囲む誠司達に目を白黒させて混乱するも、誠司達から大雑把な事情を聞くと、彼らが自身の命の恩人であると理解し、頭を下げて礼を言うと共に事情を話し始めた。

 

その話を聞きながら、誠司とハジメは、どこに行ってもトラブルが付き纏うことに、よもや何かの嫌がらせじゃないだろうな?と若干疑わしそうに赤銅色の空を仰ぎ見るのだった……




当初はサダイジャで考えていましたが、SVでミミズズが出て、ミミズズの方がピッタリかと思い、ミミズズにしました。

ちなみに、冷蔵庫にモモンの実が入っていたのは、後でおやつとして食べようと誠司が入れていたからです。
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