魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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オアシスに潜む毒ポケモン

それからしばらくして、アンカジ公国に辿り着いた。

 

ハジメ以外の全員はまずトランクに入って、毒に効果のある木の実を出来る限り集めることにした。収穫には多くの人手が必要だし、亜人族のシアや海人族のミュウは目立つので、宮殿に着く前に余計なトラブルに巻き込まれないようにするためという理由もあった。

 

ビィズは、トランクに入って行く誠司達に仰天していたものの、ハジメに促されてアンカジ公国の宮殿へ向かった。道中、兵士達から止められたりもしたが、次期領主であるビィズのおかげでほぼほぼ顔パスでスムーズに進んだ。

 

「父上!」

「ビィズ! お前、どうしっ……いや、待て、それは何だ!?」

「メッタ!」

 

ビィズの顔パスで宮殿内に入ったハジメ達は、そのまま領主ランズィの執務室へと通された。衰弱が激しいと聞いていたのだが、どうやら回復魔法と回復薬を多用して根性で執務に乗り出していたらしい。

 

そんなランズィは、一日前に救援要請を出しに王都へ向かったはずの息子が帰ってきたことに驚きをあらわにしつつ、その息子の有様を見て、ここに来るまでの間に宮殿内で働く者達が見せたのと全く同じ様に目を剥いた。

 

無理もない。なにせ、現在ビィズは、宙に浮いているのだから。正確には、メタングに掴まれる形で運ばれていた。モモンの実やハジメの回復魔法によって、大分回復したが、まだまだ完治には心もとない状態だったのだ。誰かが肩を貸してゆっくり歩いて行くことも考えたが、一刻も早く向かった方が良いと判断して、メタングに運んで貰うことにしたのだ。

 

まるでクレーンゲームのように運ばれるという微妙に情けない姿でありながらも、事情説明を手早く済ませるビィズ。話もトントン拍子に進んできたため、ハジメはそろそろ誠司達を呼び戻すことにした。

 

トランクのボタンの一つを押して、トランクを床に置く。一分程で、トランクがガタガタ動き、ひとりでに開いた。

 

「ふぅ、ひとまずはこれくらいかな?」

「結構採れましたね」

「うむ、少しは治療の足しになるじゃろう」

「いっぱい採れたの!」

 

いっぱいに木の実が積まれたカゴを抱えながら、誠司達がトランクから出てきた。トランクの側に合計三つのカゴを置くと、誠司達は大きく伸びをする。突如トランクから人が現れる光景を目の当たりにしたランズィは目を見開いて驚いた。

 

「なっ、なっ、君達は一体、どこから……!? それにその木の実は……!」

 

カゴの中の桃色や緑色の木の実。今、ランズィ達にとって何よりも価値のあるものだ。

 

「モモンの実とラムの実です。今あるだけの分をかき集めてきました。治療にお役立てください」

「おぉ……これなら、これなら多くの人を助けられる……ありがとう、本当にありがとう!!」

 

ランズィは誠司達の手を取って何度もお礼を言う。しかし、これで解決という訳ではない。誠司はランズィに尋ねた。

 

「領主殿、最低でも二百メートル四方の開けた場所はありますか?」

「む? うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが……」

「よし、ではそこに貯水池を作るか。ハジメ、シアは医療院や患者達の収容施設に行ってくれ。木の実はあるだけ集めたけど、全員に行き渡るかは分からない。切り分けるか、重病人を優先して使うなりしてくれ」

 

誠司はそれぞれに指示を出した。これからやることは簡単だ。ハジメは患者達を治療する。誠司は、貯水池を作るユエに協力したあと、そのままオアシスに向かって、一応、原因の調査をする。まぁ、分かれば解決してもいいし、分からなければそのままグリューエン大火山に向かう。そういうプランだ。

 

誠司の号令に、全員が元気よく頷いた。ハジメは木の実が詰まったカゴを宝物庫にしまうと、シアと一緒にビィズの案内のもと、治療院に向かった。ちなみに、ビィズはまだメタングに運ばれたままであった。

 

現在、ランズィと護衛や付き人多数、そして誠司、ユエ、ティオ、ミュウはアンカジ北部にある農業地帯の一角に来ていた。二百メートル四方どころかその三倍はありそうな平地が広がっている。普段は、とある作物を育てている場所らしいのだが、時期的なものから今は休耕地になっているそうだ。

 

誠司達からプランを聞いたランズィは、半信半疑であった。この非常時に謀ったと分かれば即座に死刑にしてやると言わんばかりの眼光で誠司達を睨んでいる。誠司達に対しては木の実のことで借りはあるが、それはそれとしてアンカジの民全員分の飲み水を確保するなどという、荒唐無稽な話を完全に信じるのは難しいものがあった。

 

まず、誠司はブースターを出して、指示を出す。突如魔獣が現れたことで護衛の者が武器を構えようとするが、次の瞬間、驚きの光景を目の当たりにする。

 

「ブースター、ユエに“てだすけ”」

「ブギュ!」

 

ブースターがユエに力を分け与える。その瞬間、ユエの身体にはオーラのようなものが纏った。

 

「“壊劫”」

 

前方の農地に頭上に向けて真っ直ぐにつき出された右手の先に、黒く渦巻く球体が出現する。その球体は、農地の上で形を変え、薄く四角く引き伸ばされていき、遂に二百メートル四方の薄い膜となった。そして、一瞬の停滞のあと、音も立てずに地面へと落下し、そのまま何事もなかったかのように大地を押しつぶした。

 

凄まじい圧力により盛大に陥没する大地。地響きが鳴り響く。それは、さながら大地が上げた悲鳴のようだ。一瞬にして、超重力を掛けられた農地は二百メートル四方、深さ五メートルの巨大な貯水所となった。

 

誠司がチラリとランズィ達を見ると、お付の人々も含めて全員が、顎が外れないか心配になるほどカクンと口を開けて、目も飛び出さんばかりに見開いていた。衝撃が強すぎて声が出ていないようだ。

 

神代魔法を半分以下の出力で放ったユエは、「ふぅ」と息を吐く。“てだすけ”もあって大分魔力の消費を抑えることが出来たのだが、少なくない魔力を消費したことに変わりはなく僅かだが倦怠感を感じたのだ。

 

ユエは振り返って、誠司に視線を向けると、妖艶に笑う。

 

「……誠司♡」

 

意味を悟った誠司はやれやれと溜息を吐く。首筋を摩りながら、ユエのもとに寄って、しゃがみ込んだ。ユエは、嬉しそうに頬を緩め、誠司の首に腕を回すと抱きついた。

 

そして、

 

「……いただきます」

 

そのまま誠司の首筋に噛み付いた。

 

カプッ! チュ~

 

「ミュウにはこれを見るのはちと早すぎるのぅ……」

 

ランズィは顔を紅くしながらもこちらを真剣にみていた。ティオは流石にミュウに見せるのはまだ早いという分別はあったのか、頬を紅くしながら後ろから目隠しをしていた。ミュウは「見えないの~」としきりに文句を言っていたが背後から抱きしめられ、シアを超える巨乳に後頭部からすっぽり収まってしまっているため抵抗は出来ないようだ。

 

誠司から血をもらい“血力変換”により魔力に変換したユエは、そっと誠司の首筋から体を離すと、一度舌舐りして「……ご馳走様」と言って地面に降り立った。

 

「ユエ、もう十分か?」

「……ん、大丈夫問題ない」

 

そんな会話をしてるとランズィが話しかけて来た。

 

「せ、誠司殿。もしかしてだが、そちらのお嬢さんは……」

 

誠司はランズィの目を見て、これは誤魔化せないと判断して、苦笑いしながら返事をする。

 

「うーむ、まぁ察してくれると助かります」

「……うむ、今はコチラとしても緊急事態だからな。見なかった事にしよう」

「……感謝します」

 

ランズィの言葉に安堵の息を吐いた誠司はユエと仕上げの仕事に取り掛かった。

 

誠司は今度はツンベアーを出して、“ぜったいれいど”を指示した。ツンベアーは大きく息を吸い込むと、勢いよく極寒の冷気を放って、貯水池を凍りつかせた。これで水が簡単に地中に流れたりはしないだろう。ユエに合図を送ると、ユエは水系上級魔法を使って貯めていった。数回繰り返し、ようやく数十トン分の水を貯め終えることに成功した。

 

「こんなことが……」

 

ランズィは、あり得べからざる事態に呆然としながら眼前で太陽の光を反射してオアシスと同じように光り輝く池を見つめた。言葉もないようだ。

 

「取り敢えず、これで当分は保つだろう。あとは、オアシスを調べてみて……何も分からなければ、稼いだ時間で水については救援要請すればいい」 

「あ、ああ。いや、聞きたい事は色々あるが……ありがとう。先程の木の実の件も含めて心から感謝する。これで、我が国民を干上がらせずに済む。オアシスの方も私が案内しよう」

 

ランズィはまだ衝撃から立ち直りきれずにいるようだが、それでもすべきことは弁えている様で、誠司達への態度をガラリと変えると誠意を込めて礼をした。木の実の件もあって、完全に信用してもらえたようだ。

 

誠司達は、そのままオアシスへと移動する。オアシスは、キラキラと光を反射して美しく輝いているが、水面には白い結晶が漂っていた。

 

その時、水底から魔獣図鑑の技能の反応があった。

 

ランズィから具体的にどこまで調査したのか尋ねると、調査したのはオアシスとそこから流れる川、各井戸や地下水脈で、オアシスの底までは調べられていないようだ。そして、アンカジ公国には結界のアーティファクトがあるのだが、その効果にオアシスの底は含まれていないらしい。

 

それを聞いた誠司は、汚染の原因の出所に目星をつけた。

 

「なるほど。間違いなく、オアシスの底に何かいるな。仕方ない。力づくで引きずり出すか」

 

誠司の言葉に動揺しているランズィ達をよそに、誠司はエレザードを出した。それを見たユエやティオも、誠司が何をしようとしているのか察したようで、ユエはラクライを出し、ティオは腕に電気を纏わせた。

 

「エレザード、“10まんボルト”」

「……ラクライ、“でんげきは”」

「“かみなりパンチ”じゃ」

 

バチバチバチバチッ!!!

 

エレザード、ラクライ、ティオが電気技をオアシスに叩き込む。デンキウナギの放電などとは比べ物にならない強力な電撃が、さながら落雷のような凄まじい轟音を上げて、オアシス全体へと流し込まれていく。オアシスの水面は放電の衝撃で大きく揺れ動いた。

 

「お、おいおいおい! 一体何をやっているんだ!? このままではオアシスが……オアシスがぁ……!」

 

ランズィが悲鳴を上げて、部下とともに阻止しようと必死に掴みかかってきた。しかし、誠司達はどこ吹く風だ。その直後、魔獣図鑑の反応があった。どんどん近づいてきているのを感じて、誠司はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「……出てきたか」

 

バシャーンッ!!

 

大きな音がオアシスの方から上がり、何事かと振り返ったランズィ達の目に、今日何度目かわからない驚愕の光景が飛び込んできた。

 

そこには、黄色・青・ピンク・暗緑色のサイケデリックな体色を持ったドロドロした体のポケモンがいた。体表には、オアシスに浮かんでいた白い結晶があちこちに付いている。そのポケモンは恐ろしい形相をしており、電撃を食らって、相当怒っているようだ。

 

「ベトオオオォォォ!!」

 

(ベトベトン……アローラの姿か。いや、この世界にはアローラなんて地名は無いから少し違うな……)

 

誠司がそんなことを考えていると、ランズィは呆然と呟いた。

 

「なんだ……これは……」




原作では猛毒バチュラムでしたが、本作ではアローラベトベトンです。当初は原種ベトベトンの予定でしたが、ベトベトンの性質(ベトベトンの体液は、一滴で25mプールを汚染させる)を見ると、アローラの方が良いかと思い変更しました。

なんか、最近ブースターは“てだすけ”しかしてないので大迷宮では活躍させたいな〜
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