魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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オルクス大迷宮での出来事

「遠征………ね…………」

「マシュ?」

 

誠司は憂鬱そうに溜息を吐いた。

 

今日の訓練後、メルドから実戦訓練の一環として明日からオルクス大迷宮の遠征へ行くことが発表された。

 

オルクス大迷宮と言うのは、全百階層で構成されていると言われている大迷宮で階層が深くなるにつれて強力なポケモンが出現するらしい。にも関わらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練の場として非常に人気がある。実戦経験を積むのに最適だからだ。メルドの話によるとその遠征はクラスメイト全員が参加することになっているらしく、その中には当然誠司やハジメも含まれている。

 

正直に言うと、誠司としてはあまり気乗りがしなかった。相棒のネマシュは大迷宮のポケモン相手に戦えるようには思えなかった。そして、何より自分の手で大好きなポケモンを傷付けたり、場合によっては殺さなければならないのがたまらなく嫌だった。しかし、参加しないとただでさえ悪い立場が更に悪くなることは目に見えていた。それに、一度神の使徒として戦うことを決めたのなら無能であっても無能なりにやっていく責任はあると思っていた。例えズルズル流されるような形で選択したとしてもだ。

 

「まぁ、なるようになるか……ね」

「マシュー……」

 

誠司とネマシュはベッドで横になると、現実逃避するように目を閉じた。

 

 

 

次の日、誠司達はメルド率いる騎士団員数名と共にオルクス大迷宮の近くにある宿場町ホルアドに向かうことになった。オルクス大迷宮は新兵の訓練によく利用するらしく、ホルアドには王国直営の宿屋がある。誠司達はそこに宿泊することになっている。オルクス大迷宮に本格的に挑戦するのは明日からだ。

 

誠司はハジメと同室になった。誠司はベッドで横になっているのに対して、ハジメは図書館から借りて来た「魔獣図鑑」という本を読んでいた。ネマシュは誠司と一緒にベッドで横になっている。「数日一緒に過ごしてすっかり似てきたもんだ」とハジメは苦笑していた。ふと誠司がハジメに尋ねる。

 

「なぁ、ハジメ。お前、明日の訓練が怖いか?」

「え? 何? いきなり」

「いや…… ハジメはどう思ってんのかなーって思ってさ」

「まぁ、うん…… 正直、怖いかな……… だから気を紛らわせるためにこうして本を読んでるんだし」

「まぁ、それもそうか…… 他の奴らも同じ感じなんだろうか……」

「珍しいね。誠司がクラスメイトのことを気に掛けるなんてさ。いつもは全く興味を持たなくて名前すら覚えられない癖に」

「俺だってたまにはナイーブになることもあんだよ」

 

その時、扉を叩く音が聞こえた。今はもう深夜に当たる時間だ。誠司もハジメも警戒心を露にするが、続く声で警戒を解いた。白崎の声だったからだ。

 

誠司はベッドの上でウトウトしているネマシュを急いで壁に掛けてある自分の上着のポケットに仕舞い込み、ハジメはそれを確認すると扉を開けた。そこには白崎がいた。どうやらハジメと話したいことがあるらしい。なので、誠司は空気を読んで部屋を出ることにした。男女の逢瀬を邪魔する趣味は誠司には無い。ハジメは少し複雑そうな顔をしていたが。

 

もしかして白崎はハジメのことが好きなんだろうか? そういえば、召喚前にも何度かハジメのことで質問されたことがあった。最初は何かハジメの弱みでも握るつもりかと思って警戒していたが、どうも少し違ったようなので多少は態度を軟化させたが。当時は色々な奴と仲良くなろうとしている感じなのかと思っていた。

 

誠司は色々とそんなことを考えながら静かに散歩をする。そのため、憎悪に満ちた表情で誠司とハジメがいた部屋を睨み付けている人物に気付くことが出来なかった。

 

 

 

そして翌日、誠司達はオルクス大迷宮に潜っていた。ハジメに昨晩白崎と何を話していたのか聞いたが結局教えてくれなかった。ネマシュはポケットの中でぐっすり眠っていたため聞いていなかったらしい。少し気になるが、「まぁ良いか」と気持ちを切り替える。ハジメもその様子に少し安心したような表情を浮かべ、すぐに気を引き締める。

 

勇者達は前方の方でポケモンと戦っている。誠司とハジメは後ろの方で皆に付いて行くような形だ。時折、護衛役とも言える騎士達が弱ったポケモン(ラッタやコラッタ)を誠司やハジメの方に弾いてくれる。ポケモンを直接殺さないといけないのは嫌だが、ずっとポツンと見ているだけというのも精神的にきついので有り難かった。

 

誠司はラッタに心の中で謝罪しつつもネマシュのねむりごなをばら撒いて動きを鈍らせてトドメを刺し、ハジメは錬成を使って身動きを取れない状態にして確実にトドメを刺していく。近くで見ていた騎士達は感心したような表情を向けていた。だけどやっぱりポケモンを殺さないといけないというのは気分が悪かった。

 

訓練はしばらく続き、白崎が何か壁に埋まっている鉱石を見つけた。メルドがその鉱石の説明をする。どうやら、それはグランツ鉱石という宝石として使われるものらしい。しかし、何を思ったのか軽戦士がそれを取ろうとしたのだ。

 

「団長! トラップです!」

 

騎士の1人がメルドに警告を飛ばすがもう手遅れだった。軽戦士が鉱石が触れた瞬間、魔法陣が広がり部屋全体を覆ってしまった。メルドは急いで撤退を指示するが間に合わなかった。

 

そして、誠司達は次の瞬間には巨大な石造りの橋の上に転移してしまっていた。橋の下には何もなくただ暗闇が広がっている。もしも落ちたりすればそのまま御陀仏だろう。そして、考える間もなく、橋の両端にそれぞれポケモンが現れた。

 

一方は五十体はいるであろうガラガラの群れ。太い骨を得意げに振り回している。そして、もう一方には、通常よりも遥かに体が大きく目の血走ったバッフロンがいた。

 

 

 

 

その後のことは少し記憶が曖昧である。正確には怒涛の展開の連続だった上に夢中でやっていたためよく覚えていないのだ。

 

まず、パニックになったクラスメイト達はバッフロンはおろかガラガラにさえ殺されそうになっていた。だからこの状況を打開するために誠司やハジメがまず自分達の能力を使って囮になることを提案したのだ。その間に体制を立て直せばこの窮地を脱することが出来ると信じて。

 

不運なことにこのバッフロンは”そうしょく“という特性のせいで草属性の技が一切効かず、”ねむりごな“でも眠らなかった。だが、注意を逸らすくらいは出来る。ネマシュは他に”まもる“を使うことも出来たし誠司自身に魔獣攻撃耐性もあったため、多少の攻撃を防ぐくらいは出来たのだ。ハジメも錬成で足を封じるくらいは出来た。

 

メルドは渋ったものの、他に良い方法が浮かばなかったためその作戦に乗った。そして、その作戦通りに誠司が注意を逸らす。バッフロンは怒り狂って誠司に攻撃を仕掛けるが、誠司はネマシュに“まもる”を指示する。ポケットの中であってもちゃんと発動するようでしっかりと守ってくれた。その間にハジメが足を封じていく。ハジメが錬成し終えたのを確認すると誠司はハジメを連れて急いでその場から離脱する。

 

離脱を確認したメルドはすぐに遠距離で攻撃出来る者達に指示を送る。数多くの多種多様な魔法攻撃を放ってバッフロンを攻撃する中、火球という1つの魔法が急に軌道を変えて誠司とハジメの方に向かって飛んできたのだ。自分達を狙って撃ったことは明らかだった。

 

誠司は急いで躱そうとするが間に合わなかった。直撃して足元がフラついてしまう。それを見たハジメはすぐに誠司の手を引いて急いでクラスメイトの元へ向かおうとする。しかし、もう手遅れだった。攻撃を受けたバッフロンが最後の抵抗に()()攻撃を放ったのだ。それは今の誠司達にとっては不運とも言える技、”じだんだ“だった。さっきまで散々技を防いでいたため威力が倍になったこの攻撃は、ただでさえダメージが蓄積されてヒビが入っていた石橋に更に大きな亀裂を走らせる。

 

そして、石橋は完全に崩壊した。バッフロンはもちろん、誠司もハジメも近くにあったものも全て奈落の底の闇の中に吸い込まれていく。バッフロンの最後の攻撃によって誠司もハジメも道連れにされてしまったのだ。クラスメイト達や騎士達が絶望に満ちた表情でこちらを見ている。何か叫んでいるようだが、橋の崩れる音のせいか何も聞こえなかった。

 

誠司はふと天井を見上げる。誠司は落ちる際、仰向けの体勢を取った。せめて、ポケットにいるネマシュが少しでも助かるように。

 

 

誠司は静かに目を閉じた。まるで全てを諦めたかのように。脳裏にふと家族の顔が浮かんだ。




はい、誠司もハジメも奈落に落ちました。もう少し詳しく書こうと思ったのですが、個人的に奈落に落ちて以降を早く書きたかったので大分あっさりした感じになってしまいました…… すみません。
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