魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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火影のローゲン

「ねぇ、本当にこの道で合ってるのかな……?」

 

ハジメは少し不安そうに尋ねるも、その問いに答えられる者はいない。現在、誠司達は上り階段をただひたすらに上っている。チヲハウハネと別れた後、誠司達は何とか下に続く階段を見つけ、それからずっと階段を歩き続けていた。しかし、下に向かっていたはずの階段は何故か上に続いていき、いつしか上り階段として、誠司達は上へ上へと進んでいたのだ。ただ階段を上り下りするだけだが、意外と体力を使う。ようやく出口の光が見えた時には、全員ヘトヘトになっていた。

 

階段を出た先には、かつて見たライセン大迷宮の最終試練の部屋よりも尚、広大な空間が広がっていた。

 

ライセン大迷宮の部屋と異なり球体ではなく、自然そのままに歪な形をしているため正確な広さは把握しきれないが、少なくとも直径三キロメートル以上はある。下はマグマで満たされており、所々に岩石で出来た島のようなものがある。下のマグマには、先程まで乗っていた小舟が糸に包まれた状態でプカプカ浮かんでいるのが見えるため、あの階段を通ることは正解だったようだ。

 

ぐつぐつと煮え立つ灼熱の海とフレアのごとく噴き上がる火柱。地獄の釜というものがあるのなら、きっとこんな光景に違いない。誠司達は、ごく自然にそんな感想を抱いた。だが、なにより目に付いたのは、マグマの海の中央にある島だ。海面から十メートル程の高さにせり出ている岩石の島。それだけなら、他の足場より大きいというだけなのだが、その上をマグマのドームが覆っているのである。まるで小型の太陽のような球体のマグマが、島の中央に存在している異様さは視線を奪うには十分だった。更にマグマのドームの中央部分には拳程の大きさをした岩が置かれている。おそらく、その岩を何とかしないといけないようだ。

 

「……あそこが住処?」

「みたいだな。だが……少し変じゃないか?」

「変って?」

「いや、あそこまでどうやって行くんだろうって思ってな」

「いや、どうやって……って、別にユエのシャンデラや僕のメタングもいるし、ティオが竜化したりすれば、あそこの住処まではひとっ飛びでしょ」

「そうなんだが……飛行手段が無い場合はどうやってあそこまで行かせるつもりだったのか少し気になってな」

「ふむ……誠司よ。おそらく、その答えはこれにあるんじゃないかの?」

 

ティオが指で指した先に誠司達も視線を向ける。壁には、次のような文言が刻まれていた。

 

『見えざる勇気を持つ者、境界を干渉する資格あり』

 

シンプルだが、謎の多いその文言に、誠司達は首を傾げた。

 

「見えざる勇気って……どういう意味なんでしょう?」

「ん……なぞなぞ?」

「普通に無視して飛んで行けば良いんじゃないの?」

「まぁ、別にこの謎を絶対に解かないといけないって訳ではないが……」

「ふむ、なるほどの。それで見えざる勇気という訳か……」

 

ティオだけは上を見上げた後、何かに気づいたようにブツブツ呟くと、誠司達に言った。

 

「皆、わざわざ妾の竜化やポケモン達に頼らんでも、あそこの住処へは行けそうじゃぞ」

「ええ? ティオさん、何か分かったんですか?」

 

シアが興奮した様子でティオに尋ねると、ティオは見た方が早いと言うように、階段の先へ大きくジャンプした。極々自然な動作だったため、反応が遅れるも、反応した時には驚愕の光景が目の前にあった。

 

ティオが普通に空中に立っているのだ。竜化はもちろん、風の魔法を使っている訳でもない。その理由をハジメとユエがいち早く気づいた。

 

「なるほど、ここには見えない足場があるんだね……」

「ん、無色透明で、全く見えない」

「正解じゃ。上を見ると分かりやすいぞ」

 

ティオに言われて上を見てみると、天井は下のマグマの熱で黒く変色しているが、所々何故か変色が弱くなっている箇所があった。足場がある所は、マグマの熱が阻害されて、変色が弱くなっているようだ。

 

「それで見えざる勇気って訳か。随分洒落た仕掛けだな」

「しかも勇気を出して跳ばないといけないくらいの位置に足場がありますもんね」

 

誠司達は苦笑しつつ、見えない足場に跳び移った。最初は五人乗っても問題ない足場だが、他もそうとは限らない。なので、五人は散開してそれぞれ別々の足場に跳んで住処に向かうことにした。もし誰かが足を踏み外して落下してもすぐに助けられるよう、お互いにどこにいるのかを把握することも忘れない。

 

ようやく、全員が住処の前に辿り着いた時、声が聞こえてきた。

 

「よぉ、やっと来たな」

『!?』

 

全員が声のした方を振り向くと、少し遠くの岩で出来た島の上に一人の男とカラマネロがいた。その男は、白いフード付きの服を纏っており、長い金色の前髪が片目を隠している。しかし、浅黒い肌色や微かに見える尖った耳から、誠司達は男の正体を悟った。

 

「お前、魔人族か……」

「一体、魔人族が何の用なの?」

 

おおかた、神代魔法の習得のために来たのだろうが、念のためにハジメは尋ねた。しかし、男の返答は予想外のものだった。

 

「あ? 決まってんだろ? オレの作戦をぶち壊してくれたお前らを消しにきたんだろうが」

「……は?」

 

予想外の回答に、ハジメは目を点にさせる。しかし、男はそんなハジメ達の様子に気付かず、話を続けた。男の瞳には憎悪の炎が燃え上がっている。

 

「折角、あの方から直々に頂いたベトベトンを使って、アンカジ公国を潰しに掛かってたってのに、お前らが滅茶苦茶にしてくれたからな。せめてお前らを消しとかねえと、オレの面目丸潰れなんだよ」

 

誠司達が臨戦体制を取ると、男はおかしそうに笑った。

 

「良いねぇ、その顔。潰しがいがある。折角だから、オレの得意技で消してやるよ!」

 

そう言うと、男の輪郭がぼやけ始めた。その様は、まるで蝋燭の炎のようだ。誠司はすかさずマーイーカを出して指示を飛ばした。浮いているマーイーカなら、足場を考える必要がないからだ。

 

「マーイーカ、“あくのはどう”!」

「マーイーカァァッ!!」

 

マーイーカは男に向けて黒い光線を発射するが、全く手応えがない。ハジメもメタングを出して攻撃をするが、空振りに終わった。

 

「無駄だよ。俺の炎の幻影は破られねぇ」

 

男の声がそこかしこに響き渡る。どこにいるのか分からない。今度は不気味な影のようなものが現れた。それを見たマーイーカは錯乱したかのように技を放つが、一向に技は当たらない。誠司はマーイーカを落ち着かせようとするが、マーイーカは止まらない。

 

「マイッカ、マイッカ、マイッカッ!」

「マーイーカ、落ち着くんだ!」

 

そんな誠司達を、男は嘲笑った。

 

「炎の幻影は心を蝕む。だからこそ、オレはこう呼ばれてるんだ。『火影のローゲン』とな」

 

誠司達は、凄まじい熱気で平衡感覚まで狂い始めていった。どっちが上か下かも分からない。汗が滝のように流れ、正常な判断が出来なくなっていく。ローゲンはそんな誠司達を嘲笑うかのように、炎魔法を発動させる。

 

「さぁ、そのままくたばりな!」

 

その時、ドゴーーンという音が聞こえた。何事かと音のした方を見上げると、巨大なイモムシのようなポケモン、チヲハウハネが壁を突き破ってきたのだ。

 

「ギョゴギギギィィ!!」

 

突如現れたチヲハウハネに、誠司達も、ローゲン達も目を点にさせた。

 

「さっきのチヲハウハネ……?」

「え……何でここに……?」

 

誠司やハジメが意味が分からずに呆けた声を漏らす中、ユエが声をかける。

 

「……誠司、ハジメ、まだ戦いは終わってない。この熱気、もしかしたら……フクスロー!」

「フルフルゥッ!」

 

ユエは何かに気付いたのか、フクスローを出して“きりばらい”を指示した。

 

「フクスロー、“きりばらい”! 多分この熱気、マグマでもあの男の魔法でもない!」

「フルル、フルフールゥ!!」

 

フクスローは頷くと、翼に力を込めて熱気を吹き飛ばした。すると、ボヤけていた周囲がクリアになっていく。周囲の岩の足場には、ブーバーンとマグカルゴ複数体が姿を現した。この二種のポケモン達は高温の体温を持ち、特性も“ほのおのからだ”というものであった。それが凄まじい熱気を生み出していたのだ。そして、ブーバーン達は全員目が虚ろになっており、洗脳されているのは明らかだった。

 

タネがバレたことで、ローゲンは舌打ちする。

 

「チッ、バレたか。折角この火山の魔獣どもを洗脳したってのによ。まぁ良い。そのデカいイモムシ諸共あの世に送ってやる」

 

そう言ってローゲンは複数の火球を作り出すと、それを誠司達に放った。それに続いてブーバーン達も炎技を放つ。

 

誠司はすかさずブースターを繰り出し、ハジメはメタングにブースターを乗せて移動するように指示をする。ボールから出てきたブースターは見事メタングの頭の上に乗っかった。

 

「ブースター、“もらいび”で炎を吸収して“かえんほうしゃ”だ! あいつらの目を覚まさせてやれ!」

「ブギュ!」

「メタング、ブースターを上手くサポートしてあげて!」

「メッタ!」

 

メタングに乗ったブースターは炎攻撃を次々と吸収していき、強力になった“かえんほうしゃ”を放つ。炎属性のポケモン達に炎技は、効果は薄いが、“もらいび”で威力が上がっているためある程度のダメージを与えることが出来たようだ。膝をついたり、息が上がるブーバーンやマグカルゴ達を見て、ローゲンは使えない奴らだと内心毒づいた。その時、背後から大きな影が見えた。チヲハウハネだ。ローゲンが気付いた時には、チヲハウハネが“とびかかる”を使った後だった。

 

チヲハウハネは全体重を掛けてローゲンに襲いかかるが、カラマネロに阻まれる。攻撃を邪魔されたチヲハウハネはカラマネロを力づくで押さえ込もうとするも、カラマネロも“ばかぢから”を使うことで応戦する。何とか攻撃の隙を作ったカラマネロは“はかいこうせん”を発射しようとするが、寸前でチヲハウハネに阻止され、“はかいこうせん”はあらぬ方向に発射された。

 

そして、発射された“はかいこうせん”はマグマのドームに設置されていた岩、「マグマのおきいし」に命中した。マグマのおきいしはドームから外れ、少し離れた別の島まで弾き飛ばされてしまった。マグマのおきいしが無くなると、マグマで出来たドームは消滅していき、それと同時に何か溺れたような鳴き声が聞こえてきた。

 

「ゴボボッ、ゴボゴボォ!」

 

そんな鳴き声と共に何処からか姿を現したのは、真紅の体色に鋼の四つ足を持ったトカゲのようなポケモン、ヒードランだった。




魔人族のローゲン、一応原作キャラでしたが、原作では台詞のみの登場だったので、実質本作オリキャラになりました。

ありふれアニメ3期始まりましたね。ハウリア達のはっちゃけ具合が凄い。
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