魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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解放者の相棒

誠司達は再び船を渡りながら進んで行く。道中、人間の狂気をこれでもかと詰め込んだ幻覚を何度か見せられるのと同時に、様々なゴースト属性のポケモンが襲いかかってくる。攻略に挑む前は、海の中だから水属性のポケモンが多く出てくると思っていたが、それ以上にゴースト属性のポケモンが多い。今はカゲボウズの大群と交戦を繰り広げていた。

 

「くそっ、数が多いな!」

「ベロバー、“まもる”!」

「ベーッ!」

 

カゲボウズ達が目から黒い光線“ナイトヘッド”を撃ってきた。だが、ベロバーが素早く防御する。特性“いたずらごころ”のおかげで素早く行動できるのだ。それでもめげずに攻撃してこようとしてくるカゲボウズ達に、その前にベロバーが攻撃を仕掛けていく。“ふいうち”攻撃だ。

 

その瞬間ベロバーの体が光り輝き始めた。進化が始まったのだ。光が収まると、そこには髪の長い悪魔のようなポケモンが立っていた。

 

「えっと、このポケモンは……?」

「ギモーだ」

「モーギ」

 

ギモーは、気怠げに髪をたなびかせる。そんなギモーにカゲボウズ達が再度攻撃を仕掛けてきた。不意打ちを受けて完全に頭に血が上ってしまったらしい。ギモーは両膝をつくと、すかさず両手を地に付けて、怒れるカゲボウズ達に向かって頭を深々と下げ始めた。所謂土下座の構えだ。突然の行動に驚きの表情を浮かべるハジメ達だが、それはカゲボウズ達も同じであった。一瞬彼らの動きが止まる。その一瞬の隙を逃さず、ギモーの後ろ髪がうねり、槍のように尖った髪がカゲボウズ達に襲いかかる。

 

「カゲッ!?」

「カゲボッ……」

 

仲間がやられてカゲボウズ達は、次々と逃げ帰って行く。ハジメが誠司に尋ねた。

 

「ねぇ誠司、今の技は?」

「えーと、“どげざつき”って技らしい。相手の隙を突く技みたいだな」

「へぇ……でも、まだまだ動きが甘いね」

「モギ?」

「良い? ギモー、土下座っていうのはね、こうやって……」

「おい土下座師範、悪いけど講義は後にしてくれ。まだ先は長いんだから」

「あっ、ごめん。つい……」

 

なんだかハジメがギモーに向かって土下座についての講義をし始めたので、誠司が半ば強制的に止めさせて先に進むよう促す。この親友は何故か土下座に変な拘りがあるからだ。話し出すと長くなる。先を進む誠司達に、今度は二体のサマヨールが立ちはだかった。二体とも“シャドーパンチ”を繰り出そうとするが、ギモーが見事防ぎ切る。技を防がれて思わず無防備になったサマヨール達に向かって、二体のポケモン達が飛び出した。

 

怒涛のゴーストポケモンラッシュは、二人のポケモン達をどんどん強くしていった。ギモーだけでなく、チョロネコはレパルダスへ、ブイゼルはフローゼルへと進化を遂げていた。誠司とハジメは殆ど同時に指示を飛ばす。

 

「レパルダス、“つじぎり”!」

「ニャゴッ!」

「フローゼル、“アクアブレイク”!」

「フルフルゥ!」

「「ンマッ!?」」

 

同時に攻撃を受けて、二体のサマヨールは倒れ込んでしまった。その直後、本日何度目かの幻覚が発生した。

 

「またか。今度は何だ……?」

「どうせまたゲンナリするようなものなんだろうけど……」

 

 

空間の歪みが終わると、誠司達は海の上に立っていた。少し離れた先には豪華な装飾をした船が浮かんでいるのが見える。どうやら戦争も終わったみたいで、先程までの幻みたいな喧騒は見る影もない。一体何を見せられるのかと周りを見回すと、近くに一人の人間がいるのが見えた。白いフードを深く被っているため、その人間が男なのか女なのか分からない。

 

だが、只者ではないのは分かる。なにせ自分達と同じように海の上に立っているのだから。魔法を使っている様子もない。フードの人物は少し離れた先の船に目を向ける。忌々しげに口を開く。声は男とも女ともとれる声だった。

 

「許可なく戦争を終わらせようとは……愚か者達には神罰が必要だな」

 

そう言ってフードの人物は、一枚の板状の物体を取り出す。大きさは手のひらサイズと小さいが、海のような青色の光を放っている。フードの人物はそれを海に放り込む。しばらくすると、海から飛沫と共に一人の女性が姿を現した。その女性は青い髪に青みがかった鎧を身に纏っている。

 

女性は、フードの人物に向かって膝を着き、頭を下げる。フードの人物は、女性に命じた。

 

「神罰を下すのだ。『ジープト』よ」

「かしこまりました。全ては主の御心のままに」

 

ジープトと呼ばれた女性は一礼すると、そのまま飛び立って行ってしまった。そして、その数分後に先程まで穏やかだったはずの海は嵐が起こり、高波が発生して豪華客船をあっという間に呑み込んでしまった。フードの人物はそれを見て頷く。

 

「さて……そろそろ行くとしよう。かの国の“魅了”も完了した頃だろうしな」

 

そこで、周囲の景色がぐにゃりと歪む。どうやら、先程の映像を見せたかっただけらしく、誠司達は元の足場の上にいた。近くにゴーストポケモン達がいないことから、どうやら今の幻は、ゴーストポケモン達が作った訳ではないらしい。誠司達は、一旦休憩を取ることにした。今の幻はそのまま放置するには情報量が多すぎる。

 

「ねぇ、誠司。さっきの幻、どう思う?」

「色々整理することが多すぎる。だけど、まずはあのフードの奴、あれが解放者達の言っていた狂った神ってことで良いんだよな?」

「……多分ね。あれがただの人間ではないのは確かだよ」

 

そして、そのフードの人物が持っていた板状のもの。もしかしたらあれが…………

 

「もしかしたら、あれがアルセウスの力なのか。確か、オスカーやミレディが言うには、アルセウスの力は奪われたと言ってたが……」

「それを使って好き勝手しているってことなのかな。少なくとも、さっきの幻を見る限り、善行には使っていないよね。嵐を起こして船を沈めるんだから」

「しかも、戦争を勝手に終わらせたのが理由みたいだ。これは、いよいよミレディの言う通り、クソ野郎な神様だってのが濃厚になってきたな」

「うん……それにしても、この大迷宮は、ここの世界の人にとってはキツイだろうね」

「……確かにな」

 

この世界の連中は、そのほとんどが信仰心を持っているはずだし、その信仰心の行き着く果ての惨たらしさを見せつけられては、相当精神を苛むだろう。この迷宮は精神状態に作用されやすい魔法の力が攻略の要である意味、異世界人である誠司達だからこそ、精神的圧迫もこの程度に済んでいる。

 

少し休んだことで、ある程度疲れも取れたので、先に進むことにした。長く続いた道も残り少なくなってきた。その時、魔獣図鑑の技能に反応があった。しかもかなりの数だ。慌てて周囲を見渡すと、先程まで戦ったゴーストポケモン達が次々に姿を現した。

 

誠司達もポケモン達もすぐに戦闘態勢を取るが、ゴーストポケモン達には先程までの敵意は見られなかった。気になったので話を聞いてみると、どうやら、自分達を束ねるボスとも言えるポケモンの命令で襲ってきたらしい。そして、自分達を倒せるくらいの強さであれば、そのボスポケモンにも勝てるはずだと何故か激励されてしまった。

 

「さっきまでお互いバチバチに戦っていたよね?」と突っ込みたい気持ちもあったが、何とか飲み込んだ。どうやら根は良い子達なようだ。

 

その時、一体のムウマージが誠司に近づいて来た。どうやら、誠司達に付いて行きたいようで、休憩中に誠司達の話を聞いて、大迷宮の外の世界に興味を持ったみたいだ。他のポケモン達も仲間が離れることに少し寂しそうだが、ムウマージを激励し始めている。そんな空気で仲間にしない選択を取る勇気は誠司にはなかった。そもそも、くるもの拒まずが誠司のポリシーである。誠司はムウマージに話しかける。

 

「それならムウマージ。俺達と一緒に来るか?」

「ムゥ!!」

「オーケー、なら決まりだ」

 

そう言って、誠司はモンスターボールをムウマージに軽く当てる。ムウマージはボールの中に吸い込まれると、ポカンという音とともにゲットされた。

 

こうして、意外な仲間が増えた誠司達は先を進み、一番奥に光る魔法陣へと足を踏み入れた。

 

 

「此処は……」

 

魔法陣を超えた先、誠司達はある空間に出た。

 

そこには中央に神殿のような建造物があって四本の巨大な支柱に支えられていた。支柱の間に壁はなく、吹き抜けになっている。神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれていた。また、周囲を海水で満たされたその神殿からは、海面に浮かぶ通路が四方に伸びており、その先端は円形になっている。そして、その円形の足場にも魔法陣が描かれていた。そして、その四つある魔法陣の内の一つが誠司達である。

 

しかし、ハジメは中心の魔法陣の場所を見つめながら疑問を抱いた。

 

「……あれ? あの複雑な魔法陣は神代魔法の魔法陣だよね…… ということは、僕達はこれで攻略したってこと?」

「ハジメ、何か問題あるのか?」

「いや、さっきのゴーストポケモン達が言ってたじゃない。自分達より強いボスポケモンがいるって。だから最後はそれと戦う流れになると思ったんだけど……」

「そういえば確かに……」

 

その時、誠司達が現れたものと別の魔法陣が輝き始めた。どうやら、ユエ達もここへ来たようだ。爆ぜる光が収まると、そこにはユエ、シア、ティオの三人の姿があった。

 

「良いタイミングだね。そっちは大丈夫だった?」

「ん……そっちも大丈夫そう。良かった」

「あ! ハジメさん、誠司さん! 無事で良かったですぅ!」

「うむ。二人とも無事で何よりじゃな」

「メシィ」

「「ん?」」

 

聞き覚えのない声がしたのでよく見てみると、ティオの側には小さい幽霊のようなポケモンがフヨフヨ浮かんでいた。ドラメシヤだ。

 

「ティオ、どうしたんだ? そのドラメシヤ」

「ああ、どうも懐かれてしまったようでな。誠司、空のモンスターボールは持っておらんか?」

 

誠司からモンスターボールを受け取ると、ティオは優しくドラメシヤの頭に押し当ててゲットした。数回揺れた後、無事ボールに入ったドラメシヤを見て嬉しそうにティオは笑った。今まで自分だけポケモンを持っていなかったので、内心寂しさを覚えていたそうだ。初めてポケモンを仲間にした時の喜びは皆経験しているので、ティオに対する視線はどこか温かい。そんな誠司達の態度に恥ずかしさを覚えたのか、誤魔化すように咳払いをすると、それぞれどんな風に攻略をしたのか情報共有をしようと提案してきた。

 

誠司とハジメは、新たに捕まえたムウマージや、ゴーストポケモン達との戦いで進化したフローゼル、ギモー、レパルダスを見せながら、軽く説明した。一方のユエ達も、誠司達と同様にゴーストポケモン達や幻を抜けてきたらしい。途中で、ユエのラクライはライボルトに進化した。ユエもライボルトもどこか自慢げにしていた。

 

簡単な情報共有も終わったので、まずは魔法陣で神代魔法を手に入れることにする。ゴーストポケモン達の言うボスポケモンが何なのか、結局分からず仕舞いだが、せっかく神代魔法を得られるチャンスなのだ。

 

そして、魔法陣に足を踏み入れようとした次の瞬間、誠司の魔獣図鑑とシアの未来視が同時に反応した。

 

「やばい! 皆離れろ!」

「危ない! 下がってください!」

 

二人の声と同時に、巨大なイカリが魔法陣を覆い隠すかのように降ってきた。誠司とシアが止めなかったら、今頃はイカリに潰されていただろう。

 

イカリが飛んで来た方向に視線を向けると、巨大な舵輪に藻が絡まったポケモン、ダダリンが周囲を覆っていた海水の中から姿を現した。

 

「ダッリーーーン!!」

 

鎖を使ってイカリを引き寄せて元の位置まで戻すと、ダダリンは戦闘態勢を取る。どうやら、このダダリンがゴーストポケモン達の言っていたボスポケモンというやつだろう。

 

「やっぱりこういう流れになる訳か……」

 

誠司は呆れたようにそう呟くと、モンスターボールを構える。




解放者メイル・メルジーネの相棒ポケモンは、ダダリンです。解放者の中では1番早く相棒が決まりました。ちなみに1番最後に決まったのはナイズ・グリューエンでした。ナイズの相棒ポケモンは後の話で明かす予定です。(ヒードランではありません)
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