黄金の精神で怪奇現象を切り抜ける話 作:匿名ですぅ
…どれ程走っただろうか。木に寄りかかって、荒い呼吸を繰り返す。月に照らされた村がぼんやりと見えてからは、ゆっくりと誰もいない道を歩いた。
この道は、沼田と共に自転車を漕いだことがある。たしか、近くの街の、ゲームセンターに行くためだった。初めてのUFOキャッチャーで、俺たちはお菓子ばかりを狙っていたな。運よく手に入り過ぎて、逆に食べきれなくなってしまったのも良い思い出だ。
……この記憶は、本当の記憶なのだろうか。
「……着いた」
最初に怪異と出会った旅館が、遠くに見えた。辺りには、灯りの灯っていない家が間隔を開けて沈黙していた。
『……おい』
ハッと振り返ると、自分より10m程後ろに、うっすらと人影が見えた。それはゆっくりと顔を上げ――
「ッ?!?!」
そいつは、“俺”だった。比喩でも何でもない。自分と全く同じ顔、体格、声をしている。かろうじて違うのは、その身に纏った服だけだった。
「テメェ…?!ドッペルゲンガーか!」
『……どうかな』
そいつは、すぅと闇に消えた。離れて見失った訳ではない。目の前には既に、誰もいなくなっていたのだ。
「!!どこだッ!!」
周囲を見回した瞬間、頭に衝撃が走る。続いて肩、腹、背中と衝撃が走った。そして、その攻撃をしている物体は…!!
「腕が!?腕が空中から生えてきている?!」
『……!!!』
ラッシュを喰らい、後方に大きく吹っ飛ぶが、着地の直後にポケットから輪ゴムを取り出した。
どこだ?!どこにいるんだ?!
懸命に敵を探す勇也に応える様に、それは姿を現した。
「喰らえ!!」
輪ゴム弾が放たれ、それが直撃する直前。
勇也の身体中に、幾つもの空気穴が開通した。
「…ごぶ…」
ああ、そうだったのか。
コイツの能力は――
意識は暗く、暗く落ちていく。
☆★☆
「…うん…?」
ゆっくりと目を開けると、白い天井が目に入った。ここはどこだ?
「……い……せ…い……」
沼田の声だ。……沼田?
「先生!!」
意識が完全に覚醒する。はっきりとした視界には、こちらを覗き込む仗助と沼田の姿が見えた。
「私は一体…?」
「気絶したんスよ、さっきの戦いで。」
そうか…情け無いな。
「勇也ちゃんはどこに?」
「それが、1人で行っちまったんスよ!あの野郎!」
「そんな……いや、それなら早く追うぞ!!」
ベッドから飛び降り、机に置いてあったメガネを取った。
「し、白羽さん!まだ安静にしていただかないと――」
「断る。仗助ちゃん、私が運転するよ。」
「ウス!!」
看護師を避け、扉を開けた時。後ろから、予想外の声が聞こえた。
「僕…も!一緒に…行かせてください!!」
車を飛ばしながら、私は沼田に話しかけた。
「沼田ちゃんは、いつ仗助ちゃんと合流したんだい?」
「…さっき、車で移動している途中、仗助くんが先生を運んでいるのを見たんです。」
成程ね。この時間、この方向に意味もなくやってくる筈がない。
「私たちを追いかけて来たの?」
「…!はい…。」
「何故?」
「…いてもたっても、居られなくなったんです。やっぱり…僕には、勇也が闘っているのに、自分だけすやすやと寝るなんてこと、出来ません!!!」
……!
「フフ、やっぱり、沼田ちゃんは沼田ちゃんだな。……なあ。何故、君の“秘密”は言えないんだい?“秘密”が何なのかなんて、聞く気はない。ただ…言えない理由を、教えて欲しい。」
「……きっとこれを知ったら、勇也は悲しむと思うんです。傷つけてしまうと思うんです。そして――多分、僕に失望する。」
沼田は俯き、表情を曇らせた。
「……沼田ちゃん。勇也ちゃんを……信じてやってくれないか?」
「え?」
「勇也ちゃんだけじゃない。君と彼の思い出や記憶。そして…友情を、信じてみなよ。」
沼田は、より一層俯いて。だが、表情の曇りは少しだけ和らぎ。
「…はぃ。」
握りしめた拳に、ポタポタと水滴がこぼれ落ちた。
☆★☆
「あっち行こーぜ!!」
「ま、待ってよ〜!」
ある、夏の日。
今日も日差しは強く、セミはミンミンと鳴いていた。雲一つない青空の下を、勇也くんと2人で駆けていく。
「おーい!勇也くんに越光くーーん!」
声が聞こえた方を見ると、お隣の畑のお婆さんが手を振っていた。走って近づくと、水が入ったペットボトルを渡してくれた。
「今日はいつもより暑いから、ちゃんと休憩しなさいよ?」
「はーい!」
「おう!…けどおばちゃん!沼田は“越光”って呼ばれたくないって、前言ったよな?」
「ちょ!勇也くん!ごめんなさいお婆ちゃん!」
「あらあらごめんねぇ。忘れとったよ〜。」
僕の名前は、沼田 越光だ。越光は『こしみつ』と読むのだが、読み方を変えると米の品種になってしまうため、それで虐められたことがある。だから、あまり名前は好きではない。
「まあ、水感謝だぜ、ばあちゃん!行こーぜ沼田!」
勇也くんはサムズアップすると、キラキラとお婆ちゃんと僕に笑って見せた。
思えば、僕をいじめっ子から助けてくれた後も、こんな顔で励ましてくれたっけ。
「うん!」
再び2人で走り始めた。今日はどこに遊びに行こうか。
こんな日々が、いつまでも続いてくれたらなぁ…。
「おい沼田、今日は森で遊ぶぞ!」
「えー、でも、お父さんから森では遊ぶなって…」
「獣のことだろ?大丈夫、そこまで奥には入らなねえよ!」
「それなら、大丈夫だね!」
思えば、ここで無理にでも引き返すべきだったのだ。
森に入って少しした頃、勇也くんがいきなり歩みを止めた。
「あ、あそこ…!」
「え?どうし――」
勇也くんの視線の先に居たのは、手足の妙に長い化物だった。そのブドウの集合体のようなものは、四つん這いで坂道を下っていた。
そして――目が合った。
「逃げるぞ沼田!!」
「……ぁ……ぁ」
幼かった僕は、あの化物を見て動く事が出来なくなっていた。
棒立ちする僕を余所に、どんどん化物は接近してきている。
「早く!!動け、動くんだ沼田ァ!!」
もう、目の前まで――
ドンッ!!!
身体に衝撃を受け、僕は坂道を転がり落ちていった。
土と草にまみれながら、顔を上げると――
――はっきりと、僕たちが居た場所で、赤いものをもっさもっさと咀嚼している化物が目に入った。
そして、理解する。
僕の唯ひとりの親友。
僕を救ってくれた親友。
そして――大好きな親友。
そう、勇也くんは――僕を庇って死んだのだと。
僕が…勇気のない僕が……殺したのだ。
「ウワアアアアアアアァアアアアアアァァァ!!!!!!!!」
何故か今になって動く様になった足は、化物に向かうことはなく。
自分のためだけに、反対方向へと駆け出した。
「何で…!!何で今になって動けるようになるんだよォオオオオオオ!!!!」
僕はこの先、この事を忘れることは決して無いだろう。
やる気のない、堕落した日々が続く。
いや、勉学を怠っている訳でも、生活が崩れている訳でもない。
だが、確かにあの時から。俺は、ただ周りに流される、人形の様なものになってしまっていた。
難関大学を卒業しても、それが無くなることはなかった。
そして、久しぶりに実家に帰ることになった。と言っても、もう塵場村から両親は引っ越している。あそこに居ると、僕も両親も、勇也を忘れる事が出来ないと考えたからだそうだ。
杜王町に到着し、改札を潜った。
この町には、奇妙な噂がある。もしそれが殺人鬼の仕業なのだとしたら、いっそ僕を――
その時、背後に鋭い痛みが走った。刺された様な痛みに振り返ると、背中に深々と“矢”が刺さっていた。
「な……!」
直ぐに矢は溢れ落ちたものの、とんでもない苦痛にのたうち回る。
それを、いつのまにかやって来ていた男が上から覗き込んでいた。
「……スタンドが発現しないな。駄目か。」
その言葉が聞こえたのを境目に、僕の意識は手放された。
「お……ろ……おい、起きろ。」
目を開けると、そこは病室だった。どうやら一命を取り留めたらしい。
…だが、この男は誰だ?
父さんでもないし、こんな友達がいた覚えもない。格好から、医師ということもないだろう。
「沼田…目を覚ましたか。」
……似ている。
僕のたった1人の親友、勇也に…似ている!
「えっと…井之頭勇也さんの親戚ですか…?」
「ハア?何言ってんだ。目がまだボヤけてんのか?俺だよ、勇也だよ!!」
勇……也?
「カカカ、勇也!今のはギャグに決まっとるだろうが!」
反対側を見ると、父さんが腕を組んで笑っていた。
彼の発言を聞いて、鳥肌が立つ。父さんは堅い人間だし、ドッキリなんか企画する筈がない。何より、そんなことは『勇也を侮辱すること』であり、寧ろ阻止しようとするだろう。
それなら、本当に。これが夢でなければ本当に――
いや……そうだ。
僕は、何を勘違いしていたんだろう。
怪異なんている筈がないじゃないか。
勇也と今まで、一緒に過ごして来たんじゃあないか。
勇也は――死んでなんかないんだ!
「そうだよ、ギャグギャグ!」
「はぁ?!つ、つまんねぇギャグ!!」
「カッカッカッカ!!」
だが、心にはあの男が言った『スタンド』という単語がいつまでも残っていた。
☆★☆
身体に幾つもの穴が開き、意識が完全に手放されかけた瞬間。
強い衝撃が、走った。
それと同時に、身体の痛みが完全に消失する。まさか、この能力は――
「間に合った…!」
目を開くと俺は車の中にいて、そこにいたのは仗助と先生、そして…沼田だった!
沼田が何故ここにいるのかは定かではない…が、多分俺に協力しに来てくれたのだろう。
車は少しカーブしながら停止した。
「馬鹿お前ら、なんで来た!!」
「1人で勝手に先走りやがってよォ~~、おれ達に悪いとでも思ってんスか!?」
「だって俺のせいで――」
「おれは!!どっちかが困ってるなら助けてやる、それが友情ってモンだと思うんスよッ!!!」
仗助…!!
「………すまない、悪かった。」
「分かればいいんスよ。…所で…ほら沼田さん!」
「は、はい!あの…勇也!!僕には、言わなければいけない事があるんだ…!!」
「お、おう!!」
今日、出発前に沼田が『言えない』と言っていた事だろう。
緊張で、額に汗が滑り落ちる。
「実は――君は、僕の『スタンド』なんだッ!!!」
「……へ?」
え?俺がスタンド?確かに能力は発現したが…。
あまりにも突拍子もない言葉に、俺は硬直していた。
「小学校の頃、僕達は怪異に遭遇したんだ。怯えて動けなかった僕を庇って…勇也は、死んだ。そして、僕が大学を卒業し、杜王町に来たときに『スタンド使いになる矢』を刺されたんだ!だから…君は、ここ一年程の記憶しか無いんだ。」
「お、おい!確かに露伴先生のページは途中で途切れていた。けど、ちゃんと小学校の記憶も、中学校からの記憶もあるぜ!」
「それは、多分僕の記憶だよ。だから、君が居なくなった中学校からの記憶は、かなりぼんやりとしている筈だ。」
「た、確かにそうだ。だけど、俺だけじゃあない!他の人の記憶も、記録もちゃんと――」
「それは、多分君のスタンドが出来る過程で起こったんだ。原理はよく分からないけど、多分『君が生きている』という現在の状況によって、『過去』が少し捻じ曲げられたんだよ。」
しばしの間、沈黙が流れる。
確かに、認め難いことだ。だが、そう考えれば全てに納得が行くことに気付いた。スタンドが見えるのも、記憶のページがほとんど無いことも。
そして、それが正しいとするならば。――あの敵は、死んだ俺だ。ならば、彼がこの襲撃を起こしていたのだろう。同じ人間である俺を、殺すために。
そこまで考えてから、勇也は顔を上げた。
「分かった。信じるよ。」
「本当?…失望、しないのか?」
「動けなかった事か?小学校のガキなんて、そんなもんだろ。」
「悲しく、ないのか?」
「俺が『スタンド』だったからって、お前との思い出が偽物になる訳じゃ無いだろ。まぁ、家に赤い変な虫がいたときよりは驚いたけどな!」
そう言って、勇也は笑った。沼田には、その笑顔が昔と重なって見えて。
「うぅ、ぅ……」
沼田は、心にずっと詰まっていたものが流れ出ていった事を感じた。
「さぁ………行くぞ!!!!」
「ウス!!」
2人で扉から飛び降り、彼と向かい合った。
勇也は助けられる直前、体の周りの空間に小さな穴が多くあり、その全ての穴から『自分』が見えていることに気づいた。そこから分かったのは、彼の能力は『空間を繋げる』類いのものではないか、ということだ。
彼が途中見えなくなったのは、彼の目の前の空間が、別の空間と繋がっていたから。拳が飛び出して来たのは説明するまでもないだろう。そして、輪ゴム弾が増えて跳ね返ってきたのは、『入口』一つに対し、『出口』を多く設定したから、増殖したのではないかと考えられる……と、いう事を既に4人で共有していた。
2人の姿を見ると、少しため息を吐いた後、彼は再び姿を消した。
「へッ、もうその手は気がねぇぜ!」
白羽は、勇也と仗助のメガネのレンズの表面に地図を出現させていた。彼らのメガネは半メガネで、白羽のメガネをパキッと二つに割った物だ。これで、彼がどこに歪みを発生させたのか、どこに居るのかが確認する事が出来る。ただ、これをやっている間は白羽のスタンドが使えないので、白羽には車の中で待機してもらっている。
勇也が輪ゴム弾を、敵とは反対方向に放った。そう、そこにも空間の捩れが生じていたのだ。つまり、そこに撃ちこめば――
『ッ?!』
地図のマークがよろめいたのを見て、当たった事を確信する。攻撃が『別の場所』に瞬間移動させられるなら、その『別の場所』に撃ちこめば、攻撃を当てる事が出来る!!
自らを隠す事を無意味だと悟ったのか、彼は空間の歪みを消し――いや、居ない!!後ろからのナイフ攻撃を仗助と共に避け、後ろの存在を視認する。『彼』が2人に増えている…!
『避けるか』
「まさか、自分を増やすことも可能なのか!!」
攻撃が外れるとすぐさま、元の『空間の歪み』へと戻って行き、再び別の場所から現れる。それを何度も繰り返し、3人、そして4人にまで増え、さらに加えて空中からナイフまでも飛来し始めた。
「ふ、防ぎ切れねぇ…!!」
最初は左目の地図によって辛うじて避ける事が出来ていたが、どんどん上がっていく攻撃のテンポと、不意打ちのナイフによりどんどん切り傷が増えていく。
「ドラァ!!」
「ゴルァ!!」
隙を突いてなんとか2人を弾き飛ばしたが、どちらも吹き飛ばされた先に歪みが出現し、次の瞬間には別の歪みから出現してきてしまう。状況はどんどん不利になっていく一方だったが…!!
「仗助!弱点を発見した!!」
「おれもっスよ!!そして、それを突く方法もな!!」
仗助はスタンドで、勇也は強化済のガムテープで、攻撃してくる敵の内の2人を動けない様拘束した。すると、もがいていた敵がすぐに消滅したのだ!!
2人は、投げられたナイフが全て『5秒後』に消滅しているのを発見していた。そして、攻撃してくる敵も全員、『5秒以内』にもとの歪みへ戻っている。つまり、『増やされたもの』は、5秒以内に戻らないと消滅してしまうのだ!
今攻撃していた敵が戻ってから再び出現した時、それらは全員大きなダメージを負っていた。それもそうだ、自身の2分の1が消失したのだから。
その負傷を負ったまま素早く動けるはずもなく――
「ドラララララララララララララララララララララララララララララァ!!!!」
「ゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラゴラ!!!!」
全員がラッシュを全身に浴び、吹き飛ばされた。歪みに入ることには成功したものの、本体に大きなダメージが入っただろう。
勇也達から5m程離れた場所に彼が出現すると、仰向けにばったりと倒れた。もう闘う体力は残っていないだろう。
ゆっくりと近づくと、彼は既に諦めの表情をしていた。
『……早く殺せよ。』
勇也は複雑な心境だった。自分を、殺す。だが、彼は本当の意味の自分ではない。いや、寧ろ彼のほうが“自分”なのかもしれない。
「……最後に何か、言い残す事はあるか?」
『……ない』
「そうか」
拳が振り上げられ――
「待ってくれ!」
振り返るとそこに居たのは、車から飛び出してこちらに走ってくる沼田だった。
「沼田、危険だから――」
「勇也!!……行かせてくれ。」
真剣な眼差し。沼田は彼と親友だったのだ。話したい事が、無いわけがない。
勇也は沼田に頷き、道を開けた。沼田は仰向けに倒れている彼の横に立ち、そして座った。
「……
『沼……田……。』
「あの時は、動けなくてごめん。そして、聞かせてほしい事があるんだ。」
彼は、顔を少し傾けて沼田と目を合わせた。
「人を…殺した事はある?」
『……あるさ。この前の病院で……僕の手下が1人殺した。』
「違うよ。“君”が殺したことだよ。」
『……ねぇよ』
「じゃあ…何で、勇也を殺そうとしたんだ?」
『……最初、僕は唯の弱い地縛霊だった。だが、一年程前にいきなりこの能力を手に入れたんだ。しかし、薄々感じていた。このままでは、『僕の存在が消滅』することに。それが何故なのかは分からなかったのだが…最近ここを訪れて幽霊を退治した男を見て、理解したんだ。つまり、彼が生きる限り、僕は死ぬ運命にある。』
それを聞くと、沼田は勇也に振り返った。
「勇也は、どう思う?僕は…やっぱり彼が完全に悪い人間になったとは、思えないんだ。」
「…今の話を聞いて、俺もそう思った。怪異の社会なんて知らねぇけど、きっとロクでもない社会だろう。その中で、ある程度は不殺を貫けるんだぜ。少なくとも…『なにも死ぬことはねぇ』と思う。もう死んでるけどな。」
「なら、決まりだね。仗助くん!」
「お、おれぇ?」
仗助は今の流れから、唐突に自分が呼ばれたことに少し戸惑ったが、直ぐに理解した。
「ああ、そういうことっスか…!!」
勇也は倒れている彼の首元を掴むと、自分と同じ高さまで持ち上げた。
『……な…にを?』
「今から、
『……良いのか?僕が何するか分からないのに?』
「僕は………君を、信じるッ!!!!いつも笑顔で僕を助けてくれて、毎日一緒に遊んだ君をッ!!!!」
『……そうかよ。』
その顔からは、先程までの諦めは消え失せていた。登りゆく朝日に照らされ、代わりに煌めいたのは――
「ドラララララララララララララララ――
☆★☆
朝日が、眩しい。うっすらと目を開けると、そこには見慣れた天井があった。いや、朝日ではない。もう時計は11時を回っていた。
そういえば、朝早くから仕事を始めていた叔母に頼んで、泊めさせて貰ったのだ。流石に白羽先生は別の部屋だが、沼田と仗助は同じ部屋で寝ていた。
欠伸をかきながら服を着替え、扉を開ける。セミが大きな声で鳴いていた。階段を降り、叔母さんに声を掛けると、再び部屋に戻った。
「2人とも、起きろ。昼食が来るぞ」
「ふぁ〜あ、今何時?」
「11時11分だ。」
「ぉおっ、ゾロ目っスね~。」
少しすると、昼食が部屋に運ばれて来た。
……人間らしい食事なんて、いつぶりだろうか。
「こりゃうめぇ!鯖に味がよォ~~く染み込んでるぜッ!!」
「だろ?ここは飯だけは一級品だからな。」
「はは!トイレとか、掃除してないんじゃないかってくらい汚いも――」
沼田の顔に、大量の汗が流れる。
「も、モノカルチャーショップもあるもんね!それに比べて、ここは綺麗だよ~!まるで天使のトイレか!!ってね!!はは…は……」
沼田の視線の先を見ると……じーっと、叔母さんが隙間から鬼の様な形相で俺達を見つめていた。
「うわぁ!!」
「旅館では、静かにしましょうねぇ~!!」
「「「は、はい!!!」」」
扉がバンッと閉められた。
それと同時に、小声で仗助が呟いた。
「…ホラーよりホラーっスよ……こいつはァ……」
「……そ、それはそれとして!後で先生も誘って、4人で散歩行こうよ!」
「いいな!」「良いっスね!」「良いなそれ!!」
「せ、先生ーーーーッ?!か、壁がァーーーッ!!!」
「仗助ちゃん、直してくれたまえ!!ハッハッハッ!!!」
今日は、いままでずっと居た筈の塵場村がとても輝いて見えた。
ここまで読んでくださり、ありがとうごさいました。完結まで書き切ることが出来たのは、皆さんの応援のお陰です。この後なのですが、機会があればこの物語とは別の闘いを投稿するかもしれません。その時はどうぞ宜しくお願いします。
あと、疑問がある人も居ると思うので、ここである程度は補足します。
「1.スタンド名やステータスは?」
白羽 滝:『ブレイク・フリー』
破壊力A スピードA 射程距離B 持続力B 精密動作性A 成長性D
沼田 越光:『イエスタデイ』
破壊力C スピードC 射程距離∞ 持続力∞ 精密動作性C 成長性C
井之頭 勇也(幽霊):『エヴィルウィンド』
破壊力E スピード∞ 射程距離C 持続力C 精密動作性B 成長性E
ただし、本編での勇也(霊)は弱体化しています。本来のスタンドステータスは、
破壊力E スピード∞ 射程距A 持続力A 精密動作性B 成長性E
となっております。
「2.勇也(霊)について」
まず、『勇也(スタンド)が生きる限り勇也(霊)は存在が消滅する運命にある』というのは、勇也(スタンド)が、勇也として完全に作り出されたからで、分かりやすく言うと『別の世界から生きている勇也を連れてきた』ようなものだからです。ここから下に6部のネタバレを含む解説があるため、気を付けてください。
プッチ神父の『メイド・イン・ヘブン』の最終段階で世界が一巡した時、生きている生物が新しい世界に送られます。その過程で、その生物の情報を元に過去が作られます。つまり、『現実』から『過去』が作られているのです。
だから、『勇也』の存在は少しずつ過去を侵食していました。そのため記憶のみならず、勇也の幽霊という存在さえも消えかかっていたのです。
また、勇也(霊)の能力は先述の通りスタンドです。勇也(スタンド)の影響を受け発現しました。
とりあえず、これで終わりにしたいと思います。
改めてまして、本当にありがとうございました!