陰鬱系魔法少女モノに、子供向けキラキラ魔法少女が落ちてきた話。   作:ヒオルカ

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本編終了後の主人公は頼りになる存在じゃないといけないんだ...!(過激派)

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第一話

 

 

「..........」

 

 

また一人...消えた。

 

 

集中を解き、探知魔法を切断する。

 

 

 

これでこのエリアの魔法少女の数が一桁となった。

 

今回の侵攻で消えた彼女は...数度見かけたくらいだったか。

 

数ヶ月前に魔法少女になった新入りだったはずだが、それ以上のことは何も知らない。

 

「.........」

 

普段ならともかく、災禍が急増する『侵攻』が起きた場合は、魔法少女が一人二人と消滅することはそう珍しいことではない。もう何度も経験してきたことだ。

 

 

 

「なんだ、また消えちまったのカ?」

 

「...ええ。」

 

「...まあしょうがないサ。競争相手が減ったから...いいってことデ。」

 

「......そうね。」

 

私の使い魔クロは、デフォルメされた黒猫のような体を揺らしながら辺りを見回している。

 

 

 

「お、いたゼ。Dクラスだけド。あのビルを曲がった先ダ。」

 

奴らの気配を感じたクロは、毛を逆立てて曲がり角を睨む。

 

「分かった。」

 

魔法で生成した刀を構え、足音を消しながら近づく。

 

 

角を覗くと、まだこちらに気付いていない怪物が一匹。

 

「....ッ!」

 

不意を狙って、刀を振るう。

 

名も知らない同僚が消えたその日も、戦いは続く。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

魔法少女。

 

それはこの世界を守るために、使い魔達が作り上げた『システム』だ。

 

数年前、この世界の裏側に存在するという使い魔の世界が、邪悪な生命体に侵略を受けた。

 

その生命体『災禍』はどんなものでも吸収をし、自らのエネルギーに変換してしまう性質で、元いた使い魔たちのほとんどは彼らに取り込まれてしまったらしい。

 

数少ない生き残りの使い魔たちは、この世界に助けを求めた。

 

こちらに逃げ延びた彼らは、魔力の波形が合致する思春期の少女達を対象に力を与え、世界を守る戦士を誕生させた。

 

最初期はろくに相手もされなかったり、アニメ的な夢の存在と勘違いしたものしか現れなかったみたいだけれど。

 

それでも、災禍がこの世界に侵食を始めて、実際に被害が出るまでの話。

 

 

もっとも災禍による侵略は、それが完了したとしても通常気づかれることはない。

 

跡形もなく、ただ存在していなかったかのように消滅する。

 

その異常に気づくことができるのは、魔力を持った使い魔と...素質のある少女たちだけ。

 

初めの頃は3桁もいた魔法少女たちは、正義のため...とは行かなくとも、友達や家族を守るために戦うことを選んだのだ。

 

皆が皆支え合い、手を取って戦った。

 

使い魔達や他の魔法少女と共に、戦いなど爪の先ほども知らない少女たちが。

 

 

 

その勢いが減衰していった節目がいつなのか、はっきりとは分からない。

 

 

獲物を取り込み力を増す災禍。

 

いくら消し飛ばしても、一向に数の減る気配のない侵略の勢い。

 

大規模な侵攻が起こるたびに数を減らしていく魔法少女。

 

 

「今ダ!」

 

「はぁっ!」

 

刀を水平に振り抜き、コアを両断する。

 

 

災禍は取り込んだものに近い形を取ってはいるが、輪郭くらいのもので基本は流体だ。その流体を攻撃してもすぐに再生されてしまうため、コアを狙う必要がある。

 

 

「ふぅ...」

 

災禍が霧散する。

 

災禍から解き放たれた魔力が、ブレスレットに吸い込まれていく。

 

ブレスレットに嵌め込まれたオーブの輝きは、もうすぐ完全に充填されることを示していた。

 

「...もう少し。」

 

「そーだナ...」

 

 

災禍から得ることができる魔力。これさえ貯まれば、魔法少女は強力な力を行使することができる。

 

戦況が悪化した今、これを一つでも多く得るために、生き残った魔法少女が争っているような状態だ。

 

最初期は各々がそのエネルギーを多種多様な使い方で行使していたが、今やほとんどの魔法少女がその使い道を一致させている。

そしてその使い方こそが、魔法少女達の戦力を落としていると言ってもいい。

 

 

もはや皆の願いは一つ。

 

 

災禍の手が及んでいない別の地域へ、家族や友人を連れて逃げ出すことだ。

 

 

災禍に狙われた地域は、獲物を逃すことのないフィールドが形成される。

 

その地域に住む人々は無意識に縛られ、その土地から離れられなくなってしまう。

 

今の魔法少女は皆、溜め込んだ魔力でそのフィールドになんとか小さい穴を開けて、親しいものたちを連れて逃げ出そうとしている。

 

 

...逃げ延びた場所で、その地域が狙われることがないよう神に祈りながら。

 

 

「なァ...ほんとに逃げるのカ?」

 

クロが、こちらに問いかけてくる。

 

「なら、クロは残って戦う?」

 

「......いヤ。」

 

 

私も、クロも、他の魔法少女も、他の使い魔達も。

 

もはや、ただ敗走の準備をしているだけになってしまった。

 

 

 

 

その時、気配を感じる暇もないほど素早い一撃が私の背後を襲った。

 

「...サキ!後ろダ!」

 

「ッ!ぐぅッ!」

 

 

弱いものは消え、魔力を充填し終えた強いものは我先にと逃げ出す。

 

既にこの魔法少女というシステムは、詰んでいるのだ。

 

 

「大丈夫カ!サキ...!一人じゃAクラスは無理だゼ...逃げよウ!」

 

「分かってる...!でも...!」

 

 

通常では見ない巨体と溢れ出す魔力。

一体どれほどの人間を取り込んだのか、異様な気配を漂わせる災禍に恐怖する。

 

数体のDクラスとの戦闘で多少なりとも消耗し、既にAクラスの一撃を受けたこの体で逃げ切れるかは、分からない。

 

だからといって、せっかく貯めたブレスレットの魔力を吐き出そうなんて気にはどうしてもならない。

 

 

 

 

...そうやって発動を躊躇したせいで何人が消えた?

 

 

 

ヤツがこちらに狙いを定めた。

 

ブレスレットの光が私を惑わせる。

 

早くこの魔力を使ってこんな戦いから逃げ出さなければ、頭がおかしくなってしまうというのに。

 

でも、こんな所で死にたくはない...!

 

 

「サキ!クソッ...!」

 

 

だが、人間の逡巡なんて災禍には関係がない。

 

Aクラスは全身から包丁やフライパンを幾つも形成して、とんでもないスピードで振り下ろしてくる。

ああ、コイツはもう家一つくらいは余裕で食べ尽くした後なんだろうなと、ぼんやりとその姿を眺めたのが私の最後。

 

 

 

 

 

...には、ならなかった。

 

 

 

「リリカル☆キャノン!」

 

 

空から、光が降り注いだ。

それは...どうしようも無いほどに、

 

 

「当たった...?って、まだ生きてる!わわわ、ど〜しよう!」

 

 

『魔法少女』であった。

 

 

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