陰鬱系魔法少女モノに、子供向けキラキラ魔法少女が落ちてきた話。   作:ヒオルカ

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第二話

 

真上から放出された、並はずれた魔力の奔流は、災禍の不意を完全に突いたようだ。

 

撃破にこそ至っていないが、負傷をしているのが確認できる。

不意にダメージを受けた奴は混乱して、手当たり次第に武器を振り回し始めた。

 

「ダイヤモンドベール!」

 

その魔法少女は透明なバリアを展開してその攻撃をどうにかしのぐ。

 

Aクラスの攻撃を防ぐバリア...?

 

 

「君、大丈夫!?こっち!」

 

呆然としていた私は手を引かれる。

 

彼女が作り出したバリアを破壊した災禍は、渾身の一撃をこちらへと振り下ろしにかかる。

 

「ミラージュジェム!」

 

だが、その一撃は空を切り、その災禍は獲物を見失うこととなった。

 

結果私はその乱入者によって、命を繋ぐことができたのであった。

 

 

 

 

「ふぅ...ビックリしちゃったよ!この世界に来た途端に、すっごい強そうな怪物がいるんだもん!」

 

空から降ってきた謎の魔法少女は、ほっとした様子で話しかけてくる。

 

全体的にピンクで、フリフリ衣装の魔法少女。

 

それだけであれば幾度も見たことのある典型的魔法少女だが、魔力探知で感じられる魔力の量はかなりのものだ。

 

Aクラスに傷を負わせる強力な一撃、Aクラスの攻撃を防ぐバリア、そして幻惑の魔法。行使する魔法も、戦い方も、ベテランの域を超えている。

そこまで強ければ名は知れているはずだが...

 

「...クロ。」

 

「いヤ...知らネー。」

 

 

「ねぇ、君も魔法少女?私、夢野きらり!あなたは?」

 

こちらの混乱も知らず 、この魔法少女は呑気に話しかけてくる。

 

「.....霧切サキ。こっちは妖精のクロよ。」

 

「わ...!妖精さんだ!出ておいで、ルビリン!妖精さんだよ!」

 

彼女がそう声をかけると、彼女の腰についているポシェットから一匹の妖精が顔を出した。

 

「こんなところで同じ妖精に会えるなんてびっくりルビ!」

 

赤い宝石の首飾りを身につけた、子犬のような妖精だった。

 

「あんまり見かけない姿だけど、どこの出身ルビ?マジックランド?それともジュエリーワールドルビ?」

 

「......」

 

クロは黙っている。

 

「あなた、見たことのない魔法少女だけれど...」

 

代わりに私が口を開く。

 

「私?私は一年前に魔法少女になって...悪の組織『ヌリタクール』を倒した後、この世界に飛んできちゃったの!」

 

「...はい?」

 

 

悪の組織?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「それでね!もうダメだ〜って思った時に、私のポリッシュリングが輝き出してね...!」

 

目をキラキラさせながら自分の過去...とやらを話し続ける、夢野きらりという魔法少女。

それを私たちは呆れたように聞いていた。

 

「もう一人の...あ、私の他にもう一人魔法少女がいてね!その子との絆の力で...!」

 

 

これは、初期の魔法少女によく見られた『魔法少女フリーク』だろう。

 

魔力を得たことによって自分をアニメか何かの魔法少女だと勘違いをし、自身の妄想と現実の区別がついていない人。

 

ここまで症状が酷そうなのは...いたのだろうか?

 

「それでねそれでね...!」

 

私はクロと目を合わせて、ため息を吐く。

 

「もういいわ。私はもう行くから...」

 

聞くだけ無駄だろう。踵を返して歩き出す。

 

「あれ、もう行っちゃうの?気をつけてね〜!サキちゃん!」

 

アレが何かを言っているが、あんなのに関わっている暇はない。

 

とっとと家に帰って寝よう。

 

 

 

 

「はぁ、なんだか今日は疲れた...クロ?」

 

帰り道、クロはさっきから何か悩んでいるみたいだ。

 

「...あの魔法少女が妄想癖が激しいのはいいけどヨ、妖精までおかしいってのはどういうことダ?」

 

「それは...」

 

「オレ達はひでぇ目にあってからこの世界に来てるんダ。お遊び気分でやれるわけがなイ。」

 

確かに不思議な点は多い。彼女は魔法少女になって一年と言っていたが、変身して間もない時期ならばともかく、一年戦い続けてあんな状態でいられるものだろうか。

 

それにあの戦い方も...大技を幾度も使ったのはブレスレットを使用していたのだろうか?

初期の希望に満ちた魔法少女たちのように。

 

それにしては...随分と手慣れた行使だった気がする。

 

 

 

そうこう考えているうちに家へと辿り着く。

 

 

 

「考えても無駄なこと。私たちはもうすぐこの町を離れるんだから。」

 

「...そりゃそうダ。」

 

玄関をくぐる。

 

とっととシャワーを浴びてしまおう。

 

「......」

 

さっきの災禍から受けた傷に水が染みる。

 

「はぁ...」

 

 

今日はもう眠ろう。

 

もう少しだから。

あと少し、次は油断せず低級の災禍を狩って。

 

それで、お母さんとお父さんと一緒に、この町を出るんだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

翌朝。

 

 

「「きゅう〜....」」

 

「..........」

 

家の前で、あの能天気魔法少女とその妖精がぶっ倒れていた。

 

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