陰鬱系魔法少女モノに、子供向けキラキラ魔法少女が落ちてきた話。   作:ヒオルカ

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第三話

 

「むぐむぐ...ん〜!美味しい!」

 

「おいしいルビ!」

 

「はぁ...」

 

家の前で伸びている不審者を放置するわけにもいかず、私は渋々彼女を家に上げることにした。

 

正直あまり関わりたくはないけれど、そういえば昨日命を助けてもらった気がする。

中身がアレだったのですっかり忘れていたが、お礼はしないといけない。

 

「ありがとう!このフレンチトーストとっっっても美味しかったよ!それに、急なのにお家に上げてもらって、ご飯まで...」

 

「...それで、なんであんなところに倒れていたの。」

 

「えっとね、あの後一晩中あの怪物を倒して回ってて...」

 

「......」

 

一晩中?どれだけ魔力を余らせているんだか...

 

「気づいたらお昼になっちゃってて、こっちに来たのお夕飯前だったからお腹すいて倒れちゃったみたい...えへへ。」

 

そう言って彼女は呑気そうに笑う。

 

それが本当だとしたら、複雑な心境だ。

私の獲物が減少してしまうけれど、昨日のように不意打ちを受ける可能性も減少する。

 

...まあ、そんなことは欠片も考えていないだろう、彼女は。

 

というか随分食べる人だった...後で補充しておかないと...

 

 

「...食べ終わったのなら、とっとと家に帰って。」

 

「え、えっと...その、私別の世界から来ちゃったので、お家ないんだよね...」

 

 

 

まだ続ける気なんだ、それ。

 

「.........」

 

彼女は潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。

 

「......分かった。この家、使ってもいい。」

 

「え!?その、私がお願いしておいてなんだけど、平気なの?ご両親とか....」

 

 

......

 

 

「そういえば、ご両親は今お仕事?」

 

「 病院。」

 

「病院?何かの病気なの?」

 

 

彼女が小首をかしげる。なんだかイライラしてくる。

 

 

「...去年、災禍に存在を半分奪われて、それから眠ったまま。」

 

「え...」

 

私が魔法少女になったその日。

 

私はなんでこんな奴にこんな話をしているのか。

 

「ご、ごめん...!私、その...」

 

「...あなたは、いつまでそうしているつもり?」

 

「え...?なんのこと...?」

 

やっぱりこんなのを助けるべきではなかったかもしれない。

 

「その魔法少女ゴッコのこと。」

 

「魔法少女...ゴッコ?私も、あなたも魔法少女じゃないの?」

 

「あなたは楽しいのかもしれないけど、周りにとっては迷惑なだけ。あなただって知っているはず、もうそんな状況じゃないってことくらい...」

 

彼女は分かりやすいように狼狽える。

 

「ご、ごめん...!でも、私本当に知らなくって...!」

 

「本当ルビ!ボク達別の世界から来てて、なんにも...」

 

彼女のポシェットから、ルビリン...とかいう妖精が飛び出してくる。

 

 

「おイ、お前もしかして何にも話してないんじゃねぇカ?」

 

そこにクロも現れて、ルビリンを睨みつける。

 

 

私達が劣勢になり始め、その総数が減り出した時。

魔法少女をどうにか増やそうとした妖精が、ろくに説明もせずに魔力を与えたことがあった。

 

結果、それは魔法少女フリークとなり...早々に退場した。

 

それ以来、説明なしで魔法少女を誕生させることはタブーとなっている。

 

 

「説明...?な、なんの説明ルビ?」

 

「とぼけやがっテ...」

 

「せ、説明ならちゃんと聞いたよ!ジュエリーワールドの宝石が、妖精と私の絆のパワーを、えっと...どうにかこうにかして...!」

 

 

 

「もういい、話すだけ無駄。私達は外へ出るから、この家は好きに使って。行こう、クロ。」

 

「あ...!ま、待って!」

 

 

私達は乱暴に家を出た。

 

こんなのに付き合っていてもストレスが溜まるだけ。もうお礼も十分したと思う。

 

どうせ彼女もすぐにいなくなるだろう。

それとも私がこの監獄から解放されるのが先か。

 

どうでもいいことばかりが頭に浮かぶ。

 

...早く行こう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

災禍は基本的に明るいうちは活動をしない。

 

そのため、大抵の魔法少女は昼間普通に働いている。

 

完全に中学校に通っている時間帯だけれど...その辺りはどうにか魔法で誤魔化す。

魔法少女とはいえ食いぶちは必要だ。

 

 

 

バイトが終わり、陽が落ちてくる。

 

その時間帯、魔法少女は戦いの準備を始める。

様子のおかしい家や、魔力反応がないかを調査したり、魔法の訓練をしたり。

 

私も変身をして、どのルートで狩りができそうかチェックする。

 

そういった情報を共有するシステムがあった気もするが、いまや誰も利用していない。

 

 

「あの家は結構濃いゼ。」

 

「...ちょっとリスキーかもしれない。違うルートで行こう。」

 

 

調査を終え、今日の巡回ルートを決定した。完全に陽が落ちるのを待とうか...

 

 

 

「よぉ、サキ。」

 

 

「...ジュリ、コトノ。」

 

 

背後から、大きなハルバードを携えた小柄な少女と、弓を背負った身長の高い少女が姿を見せた。

 

「あっちのデカい奴は辞めとくのか?さっすが、ほぼ満タンのお方は慎重だなぁ?」

 

「何の用?」

 

彼女は結城ジュリ。

私と同じ時期に魔法少女となり、私と同じく未だこの世界から抜け出せていない囚人だ。

 

 

この町で他の魔法少女と出会った場合は、まず戦闘体制をとるべきである。

戦いになって敗北すれば、溜め込んだ魔力を奪われることになる。

 

出会ったからといって戦闘になることはあまりないが、0というわけでもない。

 

 

「そう構えんなよ、やる気はねぇ。その魔力を解放されちゃあ、二人でもどうなるかわかんねぇしな?」

 

「...なら、もう行く。」

 

「待ちなさい、聞きたいことがあるわ。」

 

もう一人も口を開く。

 

彼女は白波コトノ。

私達より少し後に力を得た魔法少女。

 

ジュリとは魔法少女になる前からの知り合いらしい。

 

今の魔法少女でも、彼女達のように手を組んでいる人達はいる。

 

当然複数人の方が災禍との戦いにおいて優位ではある。

だが得られる魔力は分割されるし、寝首を掻かれる可能性もあるため、信頼のおける人としか組むことはできないだろう。

 

 

「昨日、向こうの通りで大規模な魔力反応があったわ。あなた昨日はそこのルートだったでしょう。何か知ってるんじゃないの?」

 

「......」

 

大規模な魔力反応...どう考えてもアイツだ。

 

 

「...あなたの魔力はそんなの減ってないから、別の魔法少女よね?」

 

 

「......新入りの魔法少女フリークのせい。」

 

またアイツのせいで厄介事に巻き込まれそうだ。

 

 

「...新入りだぁ?あんなでかい魔力使っといて?」

 

ジュリがこちらを訝しげに見つめてくる。

 

「私もよく知らない。でもどうせブレスレットの魔力を考えなしに使っただけじゃないの。」

 

「ふぅん...まあベテランの魔法少女フリークなんているわけないだろうし。」

 

「...もういいでしょう?私は行く。」

 

踵を返して歩き出そうとする。

 

 

その時、私たちの妖精が反応した。

 

「災禍が湧いてきたワ!」

 

「Dクラス数匹っぽいノ。」

 

私達を取り囲むように、小型の災禍が出現する。Dクラスであれば負けることなどない相手だが、油断してはいけない。

 

「チッ、もうそんな時間か。サキ!もうちょっとのところ悪いが、コイツらはアタシらがいただいてくぜ?」

 

彼女らが武器を構え、魔力を込める。

 

「......」

 

私も無言で刀を構える。当然言いなりになって獲物をくれてやる意味はない。

 

災禍が形を変化させるが、その中で蠢めく核を見逃さないようにと目を凝らしていた、その時。

 

 

 

「あ!いた...ってうわぁ!?怪物だ!私も手伝うよ!サキちゃん!」

 

 

 

夢野きらりが駆け寄ってくる音を聞き...私は少し目眩を覚えた。

 

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