陰鬱系魔法少女モノに、子供向けキラキラ魔法少女が落ちてきた話。 作:ヒオルカ
「おい、なんだアイツ...は...?」
「さっき言った魔法少女フリーク。」
「あれが大規模な魔力反応を...ってジュリ?どうしたの?」
「い...いや...」
突如現れた夢野きらりは、ブレスレットを、天にかざす。
「いくよ!ルビリン!」
「オッケールビ!」
「「マジカルジュエルチェンジ!」」
ブレスレットに嵌め込まれた大きな紅色の宝石が、煌びやかな魔力を放出する。
拡散した魔力の粒子は桃色の衣装へと形を変えて、彼女を魔法少女へと変貌させた。
「きらめく情熱で、みんなスマイル!マジカルベリー!」
...今のは何?
「怪物達!私の情熱で、照らしてあげる!」
「ルビ!」
「これは...重症ね。」
「ええ...」
「ま、マジカルルビー...」
派手な演出でビックリしたせいか、私達同様しばらく固まっていた災禍達も動き出す。
「ッ...!コトノ、やるぞ!お前はアタシの後ろから...」
ボーッとしている暇はない!数としてはこちらが不利だけど、とにかく少しでも稼げるように...
「みんな、私に任せて!」
そう言い放った夢野きらりは、ブレスレットから杖のようなアイテムを形成した。
「ジュムライトワンド!」
この人...!またブレスレットの魔力を使って...!
「力を合わせるルビ!」
「うん!いくよルビリン...!プリズムショット!」
杖が天へと掲げられる。
その先端から放たれた桃色の光は、上空で拡散して災禍達に降り注いでいく。
「んなっ!?」
「これは...!?」
「...ッ!」
全力で刀を真横に薙ぎ払う...!
急襲した光が着弾する。
巻き上げられた粉塵が見えなくなった時には、災禍の姿などカケラも見当たらなくなっていた...
「退治完了!みんな、大丈夫だった?」
災禍が消滅した後の魔力が、ほとんど彼女のブレスレットに吸い込まれていく。
「あれ、これなんだろうサキちゃん?何か知ってる?」
私のブレスレットに入ったのは...一体分の雀の涙ほどの魔力。
ジュリとコトノに至っては一ミリも入ってきていない有様だ。
「...?」
こ、コイツ...!
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「あ、あの...みんな?」
「テメェ...」
二人が夢野きらりを睨みつける。いや、三人か。
「あなた、嫌がらせのつもり?ブレスレットの魔力を減らして魔力を得たって意味ないでしょう?」
「ええ!?ご、ごめん...!でも、怪物は早く倒さないと、誰かがケガをしちゃうかもしれないでしょ?それに...ブレスレットの魔力って、減るの...?」
「はぁ?」
彼女は何も知らないかのように手を振ってオロオロしている。
妖精がポシェットから飛び出してきた。
「ジュエリーワールドのお宝、ポリッシュリングの力の源は勇気の光ルビ!持ってる人が勇気を失わない限り、魔法の力が湧いてくる腕輪ルビ...!」
彼女の妖精が慌てながら説明をするが...
それを聞いた二人は溜息をついて...武器を構えた。
「ああ...そんなに邪魔したいってんならやってやる。悪く思うなよ、マジカルルビー。」
「...?ええ、そうね。悪いけどその魔力...奪わせてもらうわ。」
「ちょ、ちょっと待って!どうしてぇ!?」
コトノが弓を引き絞る。
つがえられた矢は淡い光を放ち...発射されると同時に三つに分裂する。
「やってやるノ!」
そして矢と共に発射された妖精が軌道を操作し、縦横無尽に襲い掛かってくる。
「だ、ダイヤモンドベール...!」
...先日Aクラスの攻撃を防いだ防御魔法だったか。
その透明なバリアは二本の矢を防ぐが...一本を通してしまう。
「くぅ...!」
彼女に触れた矢は爆発を起こし、彼女の体にダメージを与える。
「いくぞワーマ!」
「しょうがないワネ!」
ジュリの妖精ワーマがハルバードに溶け込む。そして、その刃に燃え盛る炎が付与された。
彼女はハルバードを両手で軽々と振り回して夢野きらりに肉薄する。
「オラァ!どうしたどうした!」
攻撃に怯む彼女を、ジュリがハルバードによる近接攻撃で追い詰めていく。
「うう...!待って、ちゃんとお話しを...!」
「お前の妄想なんざ聞いたってしょうがねぇだろ!」
ジュリの連続攻撃によって、バリアには所々穴が空いたり、ヒビが入りはじめている。
「きらり...!勇気の力が弱まってるラビ...!」
弱まっている...?
確かに、ジュリとコトノはかなりの実力者だ。
だが、 Aクラスの攻撃を何度も防ぐことのできるバリアが、彼女らの攻撃を安易と通すとは思えない。
まさか本当に、勇気とやらを力に...?
「うぐ...!だ、ダメだよ...!魔法少女同士が戦うなんて...!」
「......」
「魔法少女はみんなの希望なの...!みんなの夢を守って、勇気を与えて...!」
「...そんな綺麗事、もう言える状況じゃないのよ!」
「こ、この世界のことはまだ分からないけど...でも諦めちゃダメ!みんなで力を合わせれば...きっと...!」
「っ...!うるさい!さっさと倒れて魔力を寄越しな...!」
矢の雨にさらされたバリアはもう崩壊寸前の状態。
そこに、ジュリの大振りの一撃が...
「......ッ!」
.........
「っ!....って、あれ...?サキちゃん...!」
気がつけば私は、ハルバードの側面に刀を擦り、弾き返していた。
「...オイオイ、何のつもりだ?」
「......」
どうして、私はこんなことを...
「隙ありなノ!」
夢野きらりの背後へ、妖精の矢が軌道を変え襲いかかった。
「よっト!」
間一髪、クロが弾き返す。
「ぐぬ...オマエの契約者、おかしくなっっちゃったんじゃないノ!?」
「どーだかナ。」
「サキ、あなたとやり合う気はないのよ。一体どういうつもり?」
「...別に。思い出しただけ。」
「あん?何をだよ。」
「昨夜、私はAクラスに襲われてこの人に助けて貰った。その借りがあったから。」
...そうだ。
これはただ借りを返すためだけに助けただけに過ぎない。
「さ、サキちゃん...!」
「昨夜...?あの魔力反応はそれだったって訳ね。」
「...チッ。」
ジュリはハルバードを下ろすと、妖精を解放した。
「もういいのかしラ?」
「ああ、興が冷めた。もう帰んぞコトノ。」
「...分かったわ。命拾いしたわね、魔法少女フリークさん。」
「ま...待って!みんなで力を合わせればむぐっ...!? 」
夢野きらりの口を塞ぐ。これ以上ややこしくするんじゃない。
二人はこちらに背を向けて歩き出した。
ジュリはなんだかチラチラ彼女を見ている気がする。
コトノは少し立ち止まって振り返り、視線をこちらに向けた。
「あなたが世話するっていうのなら、それの手綱はちゃんと握っておきなさいよ。」
「誰が世話なんか...!」
言い返す前に、彼女達は強化された身体能力で遠くへと去っていく。
その場には私と、傷だらけになった夢野きらりだけとなった。
変身を解く。
「あ、ありがとうサキちゃん...!助かったよ〜!」
「だ、抱き付かないで...ちょっと...!」
この不思議な魔法少女は、私に一体どれほどの影響を及ぼせば気が済むのだろうか?
彼女の顔に手を当てて引き剥がす。
剥がれないわ全然...
いつのまにか空は少しづつ明るさを取り戻しているように感じられる。
私は諦めて家へと歩き出すことにした。
「はぁ...とっとと帰るよ。」
「うん!」
もうすぐこの町を出る私が、彼女と関わることに何を期待しているのか、私自身にも全く分からない。
どちらにせよしばらくは苦労しそうだと、溜息をついた。