陰鬱系魔法少女モノに、子供向けキラキラ魔法少女が落ちてきた話。 作:ヒオルカ
「いてて...!さ、サキちゃんもうちょっと優しく...!」
「じっとして。」
消毒液を染み込ませたガーゼを傷口に当てる。
同時に回復魔法も加えておくけれど、得意な魔法では無いし、大して効果はないだろう。
そもそも回復魔法を得意とする魔法少女はもうほとんどいない。
魔法少女がバラバラになって戦う現状、メインを回復にする魔法少女がいたら、災禍よりも先に他の魔法少女に襲撃を受け...なんてこともあり得る。
「サキちゃん、ほんとにありがとうね!また助けてもらっちゃって...!」
「...最初に助けて貰った恩を返しただけ。」
ガーゼを当ててサージカルテープで貼り付ける。
魔法といえど、皆大体は物理的な現象となることが多いので、攻撃を受ければ普通に怪我はする。
変身さえしていればダメージを自身の魔力の減衰と折半するため、大怪我まで行くことはないけれど。
また、物理現象に寄らない純粋な魔法の攻撃は、逆に身体のダメージと折半出来ずに直接魔力を攻撃する。
そのため、ほとんど魔力の塊である災禍や、魔力がなければただの人と変わらない魔法少女に対して、かなりの効果を発揮するのだ。
「でも、やっぱり何かお返ししなきゃ!」
「......」
初めて見た時は混乱していて気づかなかったが、今回のDクラスをまとめて葬った攻撃を見てハッキリした。
Aクラスに傷をつけた砲撃もそうだろう。
アレこそが純粋な魔力による攻撃。
「...あなたは、本当に別の世界から来たの?」
「え...!うん!そうだよ!」
「どう思う...?クロ。」
私の肩から、クロがひょっこりと顔を出す。
「うーン...なぁ、ルビリンだったカ?」
「呼んだルビ?」
クロが声をかけると、彼女の妖精もポシェットから出てくる。
「......」
クロはルビリンの周りをぐるっと回って観察を始めた。
「な、なんだか恥ずかしいルビ...!」
ルビリンは恥ずかしそうに目を瞑っている。
「が、頑張ってルビリン!後でウィッチテイルでブラッシングしてあげるから!」
「ほんとルビ?頑張るルビ...!」
「ウィッチテイル...?なにそれ。」
「えっとね、これ!」
彼女はポシェットの端にある小さいポケットからスティック状のものを取り出し、リングにかざす。
すると、スティックの先からきめ細かいブラシが現れた。
「これはね、ジュエリーワールドの女王様から貰ったもので、妖精のお世話アイテムなの!」
「お世話アイテムって...」
クロはルビリンを観察し終えたらしい。
私の肩に戻って難しい顔をしている。
「よーしよしよく頑張ったねルビリン!」
「えへへ...気持ちいいルビ!」
そのブラシで毛並みを撫でられたルビリンは随分と嬉しそうだ...
クロを見る。
「...?なんだヨ。」
「...私もお世話アイテム買った方がいい?」
「いらねーヨ!」
怒られてしまった。
ちょっとクロにブラッシングとかやってみたかったのだけど...
って、そんなことを言っている場合ではない。
「クロ、ルビリンはどうだったの?」
「ああ...そうだナ。正直あんまり分かんなかっタ。体の作りとか魔力の流れはほとんど他の妖精と変わらないかんじダ。」
クロはもう一度ルビリンに近づく。
「この頭の赤い宝石はいくら調べても何にも分かんないナ。変わってるっていうカ、そんなの付いてる奴は見たことがないシ。」
「これは、ひかりと最初に変身した時に付いたものルビ!」
「元々はなかったの?」
ひかりが、相変わらず目を輝かせながら話す。
「女王様がね、この宝石は絆の証だって言ってたの!妖精と人間、二人の勇気が...えっと...!」
「確か...共鳴ルビ!」
「そうそう!二人の勇気が共鳴した時に現れて、力をくれる宝石なんだって!」
そう言って彼女はブレスレットを見せる。
「ポリッシュリングっていうの!私のはピンク色だけど、もう一人の子は色違いのお揃いで...」
「もう一人?」
「うん!私達は二人で魔法少女をやってたの。あっちは大丈夫かな...ヌリタクールは全部倒したけど...」
こんなのがもう一人いたら心労が絶えなさそうだ。
「これハ...中々のもんだナ。」
クロはまじまじとポリッシュリングを眺める。
「魔力反射傾向が基準値からだいぶ離れてるナ。ルビリンの魔力透過率にほとんどズレなく対応できるように形成されてル。まるでルビリンのコピーみたいダ。」
「け、傾向...?透過...な、なんだろうルビリン...?」
「分かんないルビ...」
きらりとルビリンは頭上に?を浮かべている。
「シンクロ具合が高いんだ。それで魔力の浸透もすぐに...」
「だから一体化時の魔力上昇も大きいけド、そのかわり妖精単体での戦闘力ハ...」
「......」
ふと彼女達を見てみると...倒れ込んで寝息を立てている。
...難しい話を聞いて眠くなるなんて、まるでマンガかアニメのキャラクターだ。
「まったく...」
きらりとルビリンをどうにかソファーに移動させて、ブランケットをかける。
昼夜逆転魔法少女はともかく、彼女の言い分が真実だとすればまだまだ夢の中にいる時間だろう。
「むにゃむにゃ...もう食べられないよ....」
きらりはルビリンの耳をはむはむしている。
あまりにもベタだ。
「......」
随分幸せそうな顔をして眠るものだ。
私もこの町から逃れることができたのなら、こんな顔で寝ることができるのだろうか。
...たぶん、無理だろうな。
「クロ...彼女、本当に別の世界から来たのかな。」
「さぁナ。オレ達じゃなんとも言えねぇヨ。」
今分かるのは、彼女が強大な力を持っていることと、とんでもないお人好しだということだけだ。
「私達ももう寝ようか、クロ。」
明日は彼女に必要な日用品を買いに行こうか...
なんだか、久しぶりに落ち込むようなことだけを考えずに眠れそうだと思いながら、寝床についた。