陰鬱系魔法少女モノに、子供向けキラキラ魔法少女が落ちてきた話。 作:ヒオルカ
「...そういえば、ここにはもう一人魔法少女がいるの?」
「いる。その人は...多分、この町で一番強い魔法少女。」
お見舞いを終えて、もう一つの目的地へと彼女を連れて行くため、廊下を歩く。
「い、一番...!どんな人なんだろう、ちょっと怖い人だったりしないかな...?」
どんな人と聞かれると、ある意味....きらりに近しい人だと言えるだろう。
カナタもそうだ。こんな状況になってもまだ、他の魔法少女を、世界を守るために戦い続ける...変わり者。
「きっと、貴方達は仲良くなれる。」
「本当?」
ドアをノックする。
「サキか、入ってくれ。」
カナタに促されて部屋に足を踏み入れた。
「お、おじゃましまーす...!」
扉をくぐった先には、先程の魔法少女と...車椅子に乗った少女が一人。
「サキ...!久しぶりですね。」
この町最強の魔法少女は、目を閉じたまま、こちらに顔を向けた。
「先日の侵攻の対処にも協力して貰ったみたいで...」
「...私のために戦っただけだから。」
わたしたちに微笑みかけるその少女は、真っ直ぐとこちらを向いている。
「それで...そちらの方は?」
「あ、私...夢野きらりって言います!魔法少女です!」
彼女の表情はよく読めないが、少し眉を上げて驚いているようだ。
「あら...!新しい魔法少女ですか?私は天野シオリと申します。どうぞよろしくね。」
そう言って、シオリは車椅子を進ませてきらりに近寄って握手をしようと手を伸ばす。
シオリは盲目で、足にも障害を持っている魔法少女である。
症状に関わらず、何かしらのハンデを背負っている魔法少女は魔法の力が高まる傾向にあるらしい。
元来人に備わっていない力を働かせることに長けているのだとか。
彼女は魔力の流れを感じることによって周囲の状況を把握したり、変身すれば足の動かない部分を補ったりすることが可能である。
「わわ...!すごい魔力...!」
接触によってシオリの魔力が伝わったのだろうか、握手をしたきらりが驚く。
「ふふ、ありがとう。あなたの魔力も....あら?」
そして膨大な魔力を扱うためには、その分魔力のことを深く理解していなくてはならない。
「きらりの魔力は少し変わっているの。だからあなたに見せに来た。」
「なるほどね...分かったわ。夢野さん、あなたは一体どんな魔法が得意なの?」
「きらりで大丈夫ですよ!私は...なんだろう?リリカルキャノンっていうビームとか、雨みたいに広がるプリズムショットとか...!」
「そう?私にも敬語はいらないわ、きらりさん。それで...えっと、りりかる...?ごめんなさい、私若い子の流行りはよく分からなくって...」
「シオリ、君はまだ大学生くらいでしょう?」
カナタがため息をつきながらそう言った。
シオリは魔法少女という存在がこの町に生まれた頃からの古参魔法少女である。
残念ながら、その時代の魔法少女はもう彼女しか残っていない。
...大学生は魔法少女と言って良いのだろうか?
まあ定義があるわけではないから別にいいかな...
「えっと...魔法少女フリークなのかしら...?よく聞いてきらりさん。魔法少女として戦うということは、覚悟なしではできないことなのよ。つい最近だって、あなたのように魔法少女に憧れを持っていた子が...」
「私もそう思ったけれど、この子本当にビームを撃つの。しかも完全な魔力だけのものを。」
「...魔力攻撃を?それは...もうちょっと詳しく見てみるわね。」
シオリはきらりの手を握って集中を始める。
彼女も数少ない、純粋な魔力を扱える魔法少女である。それも、回復魔法を一番の得意としている。
彼女の回復魔法は私たちのような傷の治療だけでなく、魔力を回復させることも可能だ。
肉体は私達の回復魔法でも補えるが、魔力を戻せるのは彼女だけ。
もちろんその魔力精度を使った攻撃魔法も、そこらの魔法少女より数段強力だ。
だが、数人と組んで一人前衛がいるといった状況では、その回復能力で更なる真価を発揮するだろう。それこそ、Aクラスをものともしない戦力になりうる。
つまり、シオリとカナタのコンビに勝る魔法少女はいないのだ。
「とっても澄んだ魔力...!量も多くって...あなた、今までどこで戦っていたの?」
「私は...人間界?ねぇルビリン、私達の世界って、マジックランドだとなんていうの?」
「地球ルビ?」
「地球だって!」
「......」
シオリが困ったようにこちらに顔を向ける。
...ひかりは先に、本物の病院に連れて行った方が良かったかもしれない。
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「ごめんなさい、やっぱり詳しいことは分からないわね...」
シオリは少し落ち込んだようにひかりの手を離した。
「勇気ある限り絶えず湧いてくる魔力...こんな性質を持つ魔法少女は今まで会ったことないわ。」
...シオリに分からないのであれば、もう調べても無駄だろう。いよいよもって異世界からの来訪者かもしれない。
「そう...とりあえず、この不可思議な存在はたぶんあなた達の味方。」
「そうなの...?きらりさん、あなたも他の魔法少女のために戦ってくれる人なのね?」
「うん!みんなの夢と希望を守るのが魔法少女だから!」
彼女は屈託にない笑顔でそう言い放った。
とりあえず一番の目標はきらりを彼女達に紹介することだった。私達にとっては厄介だが、シオリ達にとっては大きな戦力になるだろう。
その時、隣の部屋に繋がる扉が開いた。
そこから、女の子が顔を出す。
「お姉ちゃん...?」
現れたのは、まだ小学生低学年くらいの少女だった。
「ルミ...?ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」
「ううん......って、ええ!?」
眠そうに目を擦っていたその少女は、私達を見た途端に目を見開いた。
「わぁ....!ねえそこのお姉ちゃん!ちょっとこっち来て!」
少女はきらりの手を取ると、元いた部屋に引っ張って行く。
「わ...!?ちょ、ちょっと待って〜!」
そして、あっという間に彼女達の姿が見えなくなった。
「...あの子は?」
「彼女は相川ルミ。うちで保護している女の子よ。」
シオリは少しだけ俯いて、扉の方に顔を向ける。
「前回の侵攻の時に消えた魔法少女の妹さんなの。まだ幼いけど魔法少女の適性があって...姉が居なくなったのを、朧げながら認識していたのよ。」
「......」
魔法少女の適性がはっきりするのは大体中学生に上がるくらいの頃だ。
その時、ルミという少女は...姉や家族の存在を思い出して、どう思うのだろうか。
それとも、適性が発現しきらずに何もかも忘れて、シオリと共に生きていくのだろうか。
もしくは......私が逃げだすこの町と共に消滅するのか?
静寂に包まれた空気の中、カナタが俯きながら、口を開いた。
「...サキ。もう少しで、本当に行ってしまうのか?」
「......」
「カナタ。」
「...すまない。君が決めることなのに、無神経なことを言った。」
分かっている。考えるたびに胸が痛くなる。
あの子だけじゃない。私達よりも幼い子供達が沢山犠牲になっている。
目の前にいる二人の魔法少女も、もうすぐで三年ほどの付き合いだ。そして、私は彼女達だけでこの先戦って行けると思っているわけではない。
私は...彼女達を...
「サキ...そんな顔をしないで...?」
いつのまにか目の前に来ていたシオリは、そっと私の頬に手を置いた。
「私はね、魔法少女がこの町を出ていくことを、そんなに悲しいことだと思っていないわ。」
彼女は優しい声色で、そう話し出す。
「この町から出て戦わなくなるってことは、消えちゃうこともないでしょう?そうしたら...私達が居なくなっても、誰かがどこかで私達を覚えていてくれるのよ。」
「...っ」
「それに...あなたはきらりさんを連れてきてくれた。それって、私達のことを想って、最後まで私達を助けるためにやってくれたことでしょう?」
「ち、違う...!それは...」
「私達、まだ諦めてなんかいないわ。きらりさんを連れてきてくれたあなたのように。ね?カナタ。」
カナタもこちらを見て、笑いかけてくる。
「ああ。無限の魔力...だったか?百人力どころの話ではないな。これならば、きっと。」
違う...私は、そんな...
「私は...偶然見つけた彼女を連れてきて、逃げ出す自分の罪悪感を減らそうとしているだけ...!」
「本当に諦めている人は、ただ何もせずに居なくなってしまうわ。大丈夫、私達はきっと勝つ。そしたら、私達から会いに行くから。」
曇りのない表情でそう語りかけてくる彼女達に耐えられなくなって、私は背を向ける。
「私の用事は、もう終わったから...きらりには外にいると伝えておいて。」
「...ええ、分かったわ。あなたの家族を移動させる準備はしておくから、頑張って。」
部屋を出て、後ろ手に扉を閉める。
ああ...やっぱり彼女達も『魔法少女』だ。
他人のために戦い、その身を捧げることができる。
残念ながら、今の私には眩し過ぎる。
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突然現れた女の子に引っ張られて、サキちゃん達とは別の部屋へと引き込まれて行く。
「ど、どうしたの...?えっと、ルミちゃん?」
「わぁ...!本物だ!」
本物?なんのことだろう?
「本物のマジカルルビーだ!!!」
「ええっ!?どうして知ってるの!?」
どこかで会ったことあるっけ?ぜ、全然思い出せない...!
「る、ルビリン...?ルミちゃんのこと、知ってる?」
「わ、分かんないルビ...」
こっちにきて魔法少女以外とはほとんど会わなかったから、あんまり気にしてなかったけど...
元の世界のあの子に、あんまり普通の人に魔法とか見せちゃダメと言われたのを思い出す。
「どうして私のこと知っているの?」
「だって、お姉ちゃんと一緒に見てたもん!」
見てた?シオリさんと?
「テレビでね!悪い怪物を魔法の力でバーンって倒してたでしょ!」
ああ...テレビかぁ。
多分私をアニメの魔法少女と勘違いしているのかな?
でも、マジカルルビーって名前は...まあそこまで捻った名前じゃないし、そんな偶然もあるかも...?
「ねぇ、マジカルルビーはどうしてうちに来たの?」
「えっとね、それは...」
この子はシオリさんが魔法少女だってことは知らないのかな。
「今日は知り合いのお見舞いに来たんだ。それで、少しシオリさんとお話ししていたの。」
彼女はニコニコしてとっても嬉しそうだ。その満面の笑みは、見ているだけで私まで嬉しくなってくる。
「そのぉ...ルミちゃん。私が魔法少女だってこと、内緒にしておいてくれる?」
「うん!魔法のことはみんなには秘密だもんね!お姉ちゃんにも言わない!」
良かった、そのアニメでも魔法は秘密みたい。
「お姉ちゃんにも...あれ?」
不意に、ルミちゃんは何かを思い出したような顔をした。
「お姉ちゃん...?お姉ちゃんって...どこ?」
「え...?シオリさんなら向こうの部屋に居るよ?」
不安そうな顔で辺りを見回すルミちゃん。
「そうじゃなくって...お姉ちゃん...?うぅ...お姉ちゃん...!」
その瞳から涙がこぼれ始めて、どうしてか彼女は泣き出してしまった。
「ど、どうしたの...!?ルミちゃん!大丈夫だよ、お姉ちゃんに会いに行こう?」
私は慌てて彼女をシオリさんのところへと手を引いて連れて行った。
結局原因は分からなかったけれど、ルミちゃんはシオリさんが宥めるとすぐに泣き止んで、疲れてしまったのか眠りに落ちた。
シオリさんは彼女を落ち着かせた後、サキちゃんが外にいることを伝えてくれた。
それから、ルミちゃんが消えた魔法少女の妹さんだってことも。
私には、ルミちゃんやシオリさんにどうしてあげたら良いか全然分からない。
今の私にできることはすごく少ない。
こっちにきてからサキちゃんに頼りっぱなしで、迷惑をかけてばかりだし...
でも、諦めちゃダメだ!
力が足りないことも、どうすれば良いか分からないことも、挫けず挑戦して、みんなで力を合わせればどんな困難だって乗り越えられる。
それが、夢と希望を守る魔法少女だから...!
書きたい話を書くと文字数が安定しない...
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