陰鬱系魔法少女モノに、子供向けキラキラ魔法少女が落ちてきた話。   作:ヒオルカ

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第八話

 

 

病院に立ち寄った日から数日。

 

DクラスやCクラスの魔力を数匹分吸収したが、ブレスレットはなかなか満タンの合図を出さない。

 

終わりに近づけば近づくほど長く感じるものなのかもしれないが、ここで焦っても良いことはないだろう。

 

 

 

「ええ〜本当に?ありがとうおじさん!また来るからね!」

 

そんなことを考えていると、手分けして買い物をしていたきらりが帰ってきた。

 

 

「見て見てサキちゃん!コロッケおまけしてもらっちゃった!」

 

彼女は相変わらずの笑顔をこちらに見せる。

 

その笑顔はなんだか眩しく思えて、目を逸らしたくなってしまう。

 

 

 

...逃亡するための魔力を心待ちにする私を、彼女はどう思っているのだろうか?

 

軽蔑し、臆病者だと罵ってくれた方が私にとっては気が楽なのかもしれないが、そんなことをきらりに期待しても無意味だと、そんなふうに思う。

 

 

「そう、それは良かった。買うものはこれで全部だし...喫茶店にでも寄ってから帰ろうか。」

 

「うん!」

 

今夜の戦いの準備をするにはまだ早い時間だ。少しゆっくりするのが良いだろう...

 

 

 

 

ふと、ある人と目があった。

 

 

 

あれは...コトノだ。

 

 

「......」

 

「......」

 

 

二人して視線を外し、すれ違う。

 

 

 

 

魔法少女達は仮に敵対していても、昼間から衝突することはない。

 

流石の魔法も、目の前で思いっきり披露されれば一般人であっても認識はされてしまう。

魔力の性質によってすぐに忘れ去ってしまうとは思うが、騒がれても鬱陶しいし流れ弾が飛んでいくかもしれない。

 

とりあえず今の魔法少女は、街中ですれ違ったとしても気付いていないフリをするのが暗黙の了解となっている.......

 

 

 

 

「あ...!コトノちゃん!おーい!」

 

「......」

 

 

 

って教えておくべきだった。

 

聞いてくれるかは、別としても。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「......」

 

「......」

 

「このパフェすっごいおいし〜!」

 

私とコトノときらり。

 

どうしてこんな状況になってしまったのか、とりあえず気まずい雰囲気だ。

 

 

 

「自己紹介まだだったよね?私、夢野きらり!よろしく!」

 

きらりはそんな雰囲気も素知らぬ顔で自己紹介を始める。

 

 

「...はぁ。どーも、白波コトノって言うわ。よろしくする気はあんまりないけど。」

 

コトノはコーヒーを啜りながら、興味の無さそうにこちらに視線を向けた。

 

「で、どうなのよソイツは。見たところ治ってなさそうだけど?」

 

...まあ、このおかしな状況も良い機会と思うことにしよう。コトノ達にきらりの魔力について話しておくべきだ。

 

 

 

「コトノ。彼女はもしかすると、ただの魔法少女フリークという訳ではないかもしれない。」

 

「はぁ?」

 

コトノは驚いて、すくったプリンを落としかける。

 

「あんたねぇ...」

 

「彼女は、純粋な魔力攻撃の行使ができる。」

 

「...冗談でしょう?」

 

きらりがガタッと立ち上がった。

 

「じゅんすいな...っていうのはよく分かんないけど、勇気の魔法で色んなことができるよ!まずジェムライトワンドをくるっと一回転してもごご...!」

 

さっき来たばかりのパンケーキをきらりの口に突っ込んで黙らせる。

彼女の援護は状況をややこしくするだけだろう。

 

 

「私はこの目でその攻撃を見た。あの時Dクラスを全滅させた魔法もきっとそのはず。」

 

コトノに呆れたような表情を向けられるが、仕方がないことだ。

私だって以前であれば同じ反応をすると思う。

 

「確かに随分な威力だったけど...別に、出来ないわけじゃないでしょう。例えば、雨をイメージすれば物理現象を依代にした魔法でもアレは可能よ。」

 

「それをあの威力に仕上げるのは一朝一夕で成せる技じゃない。ただの魔法少女フリークが、それほど成長するまで生きていられる?」

 

「...運が良かったか、協力者がいたかよ。」

 

「仮にそうだとしても、今の今まで私達が彼女の存在を全く知らなかったのはおかしい。」

 

「それは...」

 

 

コトノは押し黙る。

 

 

「...彼女を、シオリに見せてきた。」

 

「...!それで、彼女は?」

 

「彼女は澄んだ魔力だとしか言わなかった。それ以外は分からなかったと。」

 

「...あのシオリが、分からないって?」

 

コトノは訝しげに、パンケーキをもぐもぐしているきらりに視線を向け、それから諦めたようにため息をついた。

 

 

 

 

「...それで?それを私に教えて何しようっていうの?彼女には勝てないから、ブレスレットの残りを埋める分の魔力を寄越しなさいってことかしら。」

 

「そんなことは言わない。」

 

「...冗談よ。でも、あなたがこんな事をしてもしょうがないでしょう。」

 

「それは...」

 

 

病院でも同じようなことを考えた気がする。

私がきらりを気にかけているのは、全て自分の罪悪感を減らすためでしかないのだ。

 

「......」

 

コトノは...そんな私の心を見透かしているような瞳をこちらに向ける。

 

 

 

 

「...ま、なんでも良いわ。邪魔しないっていうなら便利に使ってあげる。あんたが居なくなってもね。」

 

彼女は...なぜか私の思惑を追求するのをやめた。

 

 

沈黙が流れる。

 

 

 

「んぐ...あのね!私、こないだのこと謝りたくって...!」

 

ようやく詰め込んだものを飲み込んだらしいきらりが、少し真面目な表情をして口を開いた。

 

「後でサキちゃんから聞いたんだけど、怪物を倒す時に出る魔力が必要なんだよね?あの時私が取っちゃったみたいで...ごめんなさい!」

 

そう言うときらりは頭を下げた。

 

 

「...はぁ、良いわよ別に。というか私達は奪い合っているんだから、それが普通のことよ。」

 

コトノは困惑しながらも、少し間を置いて続けた。

 

 

 

「...この間は私達も悪かったわ。初心者に大人気なかった。いや、本当に初心者かどうかは知らないけど。」

 

「...!ううん、私は無事だったし、大丈夫!これで仲直りだよね!」

 

「仲直りって、仲良くしていた覚えはないんだけど...全く、サキはよくこんなのと付き合ってられるわね。」

 

「...もう慣れた。」

 

きらりは先程のような笑顔を取り戻し、コトノは困ったように少し笑った。

 

 

 

...コトノのそんな表情を最後に見たのは、一体いつだっただろうか。

 

視界の端では、妖精達も何やらひそひそと話をしているようだ。

 

「ちょっと!あんたの主人、うちのご主人を困らせてるんじゃないノ!」

 

「ルビ...!ごめんルビ〜!」

 

「はン、相変わらず過保護なことだナ。オマエはコトノの母ちゃんカ?」

 

「ノノノ...!私はまだそんな歳じゃないノ!」

 

 

なんだか懐かしい気分だ。

 

もう随分と昔のことのように感じられる、魔法少女達がみんな協力し合っていたあの頃のよう。

 

センチメンタルな気分になるのは、終わりが近づいているからなのだろうか。

 

 

そんな、今や見ることのない光景は、そう長くは続かなかった。

 

 

 

「...そろそろ時間ね。」

 

 

気付くと、さっきまで話し込んでいた妖精達が外を眺めている。

 

陽が落ちかけて、災禍の気配が少しづつ漂い始める時間。

この時間から動かなければ、不測の事態が発生しかねない。

 

会計を済ませ、出口へ向かう。

 

 

「あ、あの〜、協力とか...してみたり?」

 

「するわけないでしょ。わざわざ横取りされにいく趣味はないわ。」

 

そう言い放って、コトノは店を出て行く。

私達も、戦いの準備をしなければ。

 

 

 

 

「お?なんだコトノに...サキに、マジカルルビー?面白いメンツじゃねーか。」

 

「あの魔法少女フリークに引っ張られて話を聞かされたのよ。」

 

近くの家を屋根から偵察していたであろうジュリが降りてきて、合流する。

 

 

「よぉマジカルルビー。まだそれやってんのか?」

 

ジュリはきらりに挑発的な笑みを向ける。

 

「えっと、ジュリちゃん!あなたにも、この間のこと謝りたくって...!」

 

「この間...?なんだって?」

 

「Dクラスを全部平らげられたアレのことよ。」

 

その様子だと、どうやらジュリはすっかり忘れていたようだ。

 

 

「ああ...別にいいぜ?なんならもう一回やったっていい。そしたらお前をぶっ倒して根こそぎいただくだけだかんな。」

 

ジュリはハルバードを担ぎ直す。

 

彼女の魔力は少し増加しているように感じられる。

ここ数日はそれなりに災禍を倒すことができているようで、機嫌が良さそうだ。

 

「大丈夫!もう横取りしたりしないから...!なんだったら、あの魔力を渡してもいいよ!」

 

「お前のお情けを貰ったって嬉しくもなんともないね...じゃあなサキ、私らはあっちをやる。」

 

「そう。なら私達はあっち。」

 

私達はお互いに背を向け合って歩き出す。

 

気の抜けるような時間は終わり。

大した気配は感じないが、油断せずに残りの日々を戦い抜こう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「またね、コトノちゃん!ジュリちゃん!」

 

この間は喧嘩になっちゃったコトノちゃんと仲良くなることができた。

彼女とサキちゃんの間の雰囲気も、前よりは少し和らいだ気がする。

 

今度はジュリちゃんも...四人で喫茶店に集まれたらきっと楽しそうだ。

 

手を振って彼女達と別れ、サキちゃんについて行こうとする。

 

 

 

「あー...おい、マジカルルビー。ちょっとこっち来い。」

 

すると、ジュリちゃんが歩みを止めてこちらに手招きをしている。

 

「どうしたの?」

 

ジュリちゃんは少し辺りを見回してから、小さな声で話し出した。

 

 

 

「なぁ、アタシも好きなんだよ。マジカルルビー。」

 

 

 

 

......え!?

 

 

 

 

「えええ!?すす好きって...!そんな、でも私、急に!」

 

「バッカ声がデケェよ...!てか勘違いすんな!」

 

ひそひそと話している私達を、コトノちゃんとサキちゃんが怪しそうな目で見ている。

 

「とにかく、アタシにはそういうロールプレイはいいからよ。アタシの周りに知ってる奴あんま居なくってな...お前、なかなか再現度高いんじゃねぇか?」

 

「ま、待って?なんの話なの...?」

 

ろーるぷれいって何?ゲームの話?

 

「なんだ、頑固な奴だな。まあ、そんだけガチめに演じてるってことか...?まあ、本当の魔法少女でやることじゃねぇけど。」

 

「ジュリ?どうしたの?」

 

コトノが遠くから呼びかける。

 

「今行く!じゃあなマジカルルビー。また今度好きなシーンとか教えてくれよ。」

 

「え、あ、うん...?またね...?」

 

 

唐突に謎を残していったジュリちゃんは、あっという間に居なくなってしまった。

 

 

 

 

「きらり、ジュリと何を話していたの?」

 

サキちゃんが不思議そうな顔をしながら聞いてくるけど...

 

「えーっと、よく分かんなかった...なんか、ゲームがどうとか、またお話しようみたいな...?」

 

「え?ジュリが?」

 

二人して首を捻る。残念だけど説明のしようがない。

 

 

 

「...とにかく、もう行かなきゃ偵察が間に合わないし、とりあえず行こう。」

 

「うん。」

 

私達は、ジュリちゃん達とは反対側のエリアの調査に向かう。

 

 

...本当になんだったんだろう?

 

でも、またジュリちゃんとお話できるみたいだし...まあいいか!

 

 





誤字修正ほんとに助かります。ほんとに... ハズカシィ!
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