小説として破綻してるかもしれません。描写も綺麗じゃないし、暇潰し程度に読んで頂ければと思います。
0・死ぬのは簡単
『正義のヒーロー参上!ってね』
俺のスマートホンから可愛い高音の声の声優が、キャラクターを通して流れる。
俺は佐久間ギンジ。もうすぐ30になるしがない中年。
コレと言った任せてもらえる仕事も無し、恋人もいなければ家族もいない。いわゆる天涯孤独とかいうやつだ。
『悪の組織ヘルブラッククロスの好きにはさせないわ!』
俺のやっているゲームは、かつてその界隈では非常に人気のあったムフフなゲームだ。正義の組織に所属するヒロイン二人が、陵辱の限りを尽くされて、堕ちていくゲーム。主人公は悪の組織の1戦闘員の視点で物語が進んでいく。
友達も今となってはいない俺には会社の昼休みにやることと言えば決まってこのゲーム、正義のヒーローヘブンホワイティネスだ。
─ねぇねぇ、佐久間さんって・・・
─また一人でスマホいじってるね・・・
─ほっときましょ、目つき怖いし・・・
昼休みのオフィスでは、食事を終えて戻ってきたOLの方々は各自好きに俺の話をしては嫌味やら、なんやら好き放題話して来やがる。
個人的にいい歳した社会人の昼休みじゃない事はよくわかってる。なんだったら今からでも新卒の子たちを連れて昼飯でもなんでも行けばいいんだけどな。
でも就職してから俺には特に親しい上司、部下、同僚も出来た試しがない。作りたかったんだけどね。
(俺、まじでなんの為に生きてるんだろうな)
もう少しマシな未来だったら良かったのになぁ、っていつも思ってる。今更何を考えてもしかたないんだけどさ。
だんだん周りには昼休憩を終えて、オフィスに戻りつつあった。お疲れ様です、の一言も俺にはない。いや別にいいんだけどさ。
誰にも必要とされてない訳だし、別にいまからこの席を離れて飯を食いに行ったって文句すら言われない。
(行くか)
非常に無気力で給料だけもらって生きてるのは周りからすれば楽そうだなって思われてるかもしれない。けど、現実はそんなことない。どんどん精神を病んで行くしやる気すら出てこない。
オフィスを離れてから、ゲームの方はヒロインの片割れである神宮カエデというキャラクターが触手の怪人に絡め取られて、陵辱タイムが始まろうとしていた。
もう片方のヒロインでもある宮寺レンは戦闘員の数の多さに押し込まれ、手が出ない状況に追い込まれていた。
このゲームの実用性の高さから俺はこのゲームをひたすらやり込んでいる。変な縛りプレイもやったし、cg集のコンプも初日で達成できたし、なにより、出てくるヒロインは全員可愛いし見てるだけでも楽しいゲームだ。
もう26周も遊んでセーブできる箇所が無いぐらい遊んでる。通勤中であのイベントやらこのイベントやらを思い出して、現実逃避したくなるぐらいだしな。
だが、楽しいゲームであるのだが、一つだけ不満点もあった。
「ヒロイン達のバッドエンドしかないんだよなぁ、このゲーム」
エレベーターを待ちながら独り言の様に呟く。周りより一時間遅くオフィスを出ているのだから、今俺の周りに人はいない。
会社のビルを出ながらゲームやっていると、日差しの強さに嫌気が出る。
もうこのまま帰ろうかな。誰も俺の話なんて聞かないし、話しかけてもシカトか、睨むだけだしな。
なんで俺生きてるんだろ。このゲームの主人公のカエデみたいに、前向きで誰かのヒーローになることを俺も望んでたのに。
マジで、俺、なんの為に、生きてるんだろう。
仕事もない、頼れる人もいない、恋人もいない、家族もいない。
俺にあるのは・・・。
「危ない!!」
え?ふと、怒鳴られた一言に、ハッとする。スマホから視線を外し、前方を見ると、横断歩道の信号は赤。
「あ、やべ」
戻ろうとして焦ったのか、スマホを落とす。拾おうとしたら・・・。
パアアアアアアアアアアアアアア!!!
クラクション。音の方へ向くとひときわ大きいトラック。
死んだ。一瞬でそんな事を思った次の瞬間には、全身に想像以上の重たい衝撃が骨身に響き渡る。
宙でも舞ったのか、アスファルトに叩きつけられた。
(あ・・・これは死んだな)
コンクリートに打ち付けられた俺の視界は赤く染まる。血がにじむ様に広がり、青い空が赤く、黒く染まっていく。
(ああ、死ぬんだな。何もできず)
その瞬間俺の意識は一瞬で闇に引きずり込まれて行った。周囲の喧騒が遠のいていくのを感じて俺は死を確信していった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
───未来、2102年。
悪の組織ヘルブラッククロスが日本の支配を成功させ、世界へと戦線布告を行い、圧倒的な技術力、軍事力、そして容赦ない蹂躙劇を見せられては今や日本中にヘルブラッククロスに逆らう者達はいない。
一部の組織を除いては。
『リーダー、ついに第一、第二防衛ラインが突破された!もうここはだめだ、俺達もだめだ!先に逝くぜ』
通信機に入った仲間の悲痛な叫びが対ヘルブラッククロスの組織、日本奪還を目的に活動するレジスタンスのリーダー・シルヴァの耳に入ってくる。
「ああ、逝け!楽しかったぜ、あばよ!」
『リーダーもどうか無事で!オーバー』
通信が切れる前に大きな爆発音が響き、ブツり、と、通信機からノイズが走る。
ここはかつて東京と呼ばれた場所だった。80年前まで有名な観光名所のタワーがあったと、シルヴァは聞いている。
今やレジスタンスは袋のネズミ。10年以上日本を取り戻す戦いをしてきたが、アジトがバレて大襲撃を受けている最中だ。
「気がつけば、ここもこんなに荒廃してたんだな」
シルヴァはかつての思い出に浸るが、一瞬で現実に引き戻される。
「おう、お前ら!女は避難させとけよ。奴ら、女と見れば見境なく襲ってきやがる。それも己の本能のままにな。まったく不愉快だぜ」
「同意。リーダー、私はいつでも、戦える。指示を」
シルヴァの隣に立つクールな表情な少女が現れる。ボディラインがきっちり強調されるような近未来的な印象をいだかせるスーツに身を包み、両手にはおおよそ少女には似合わない、大口径の拳銃を持っている。
「宮ちゃんか」
「その、呼び方は好きじゃない」
落ち着いた、だがそれでいてどこかゆったりした口調でスカイブルーの髪色の少女はシルヴァに向き直る。
「いつも言ってんだろ、宮寺レンって女は俺たちレジスタンスの切り札だって。荷物の準備は済んだか?」
「いつでも」
今二人は防衛第三ラインの内側に立っていた。
大雪を降らせる環境兵器と、それを利用した戦術で、レジスタンスはもはや壊滅したも同然の状態である。本来ならこんな所で余裕に話している状況ではない。
「リーダー、やっぱり私も、戦う」
「だめだ。切り札には切り札らしい使い方があるんだ」
言うと、シルヴァはタバコを咥え、サングラスをかける。
レジスタンスの切り札は正確には宮寺レンではない。本当は、第三防衛ラインの地下に密かに作られたあるマシンだ。
それを使えるのは宮寺レンただ一人の為に設計されているから、要約されて宮寺レンが切り札、という扱いをされている。
「もう時間がない。これが今生最後のタバコだ」
大雪でも寒くても、きっと死にかけでもシルヴァはタバコをやめないだろう。
「さぁ、地下へ行け。これやるから」
「・・・」
手渡されたそれは、ビームを射出する剣。シルヴァがレジスタンスのリーダーとして、長年使い続けた武器だ。
「あんたら、まだこんな所で油をうってたのかい!?」
「げ、婆さん」
しわがれた老婆が、地下の入り口から飛び出てくる。
「あ、悪いな婆さん。こいつのこと、頼むわ。レン、剣の使い方はわかるよな?」
「あ・・・だ、め・・・リーダー、リーダー!!」
レンの視線には防衛ラインを乗り越えようと、ヘルブラッククロスの戦闘員達が様々な武器を背負って、こちらに迫ろうとしていた。
「変わりに、お前の拳銃借りるからよ」
「シルヴァ、はやくおし!」
老婆は早くとせがみながらも、その視線は今まさに迫ろうとしていた戦闘員達に向けられていた。
「早くおいで!レン!」
「リーダー!リーダーーーー!!」
「頼むぜ、レン。───を、変えろ」
腕を引っ張られて、地下へと連れて行かれるレン。シルヴァが何を言っているか途中聞こえなかったが、何を言っているのかはわかった。
シルヴァの戦闘が始まるや否や、重い鉄の扉は閉められ、アジトの地下へとどんどん連れて行かれる。とても老婆とは思えないフットワークと力は、ときおり老婆である事を忘れてしまう。
地下に密造されたマシンの部屋の直前まで、連れていかれ、そのマシンの前で老婆は止まる。気づけば、最後のレジスタンスの仲間達が老婆とレンを囲んでいた。
「あ、みんな・・・」
「顔をよく見せてレンちゃん」
老婆の両手は驚くほど暖かく、やわらかいレンの頬を包む。
「最後だから言うけど、僕、レンの事好きだった」
「たのむよ、宮ちゃん。貴女にしかできないからね」
「み、みんな・・・わ、私は、死ぬのはこわくない・・・でも、レンちゃんが居なくなるのは嫌だから・・・」
みんな思い思いに言葉を送る。まるで本当に最後のお別れの言葉みたいに。
「無理。私も、戦う」
レンも覚悟していたのだ。レジスタンスとして戦うことは命に関わることだと言うことを。
死ぬのは怖くない。死ぬのは簡単なのだから。
「レンちゃん・・・わたし達のわがままをきいてちょうだい」
「お婆さん・・・」
老婆の瞳は真摯で真っ直ぐレンの瞳を見据える。覚悟の重さの違う強い瞳の色を宿していた。
「死ぬことは簡単なのよ。けれどね、死を受け入れることは簡単じゃないの。だからレンちゃん、レジスタンスの切り札として頼むわよ。貴女は、きっとやれるわ。ここはわたし達に任せて、貴女は行きなさい」
その言葉を聞いたとき、レンは泣くしかなかった。生まれてからずっとお世話になった兄妹、親、家族同然の盛大な見送りに、レンは涙を流すしかなかった。
「さぁ、ここは任せて、あとは頼んだわよ」
「みんなぁ・・・ごめんなさい・・・ひぐっ、ぐすっ・・・ありがとう・・・」
涙を流しながら、レンはマシンの部屋へと足取り悪く向かう。
「よかったのですか?」
「構わないよ。シルヴァのガキは嫌いだけどね、あいつが言ったらこれが最善なのさ」
老婆は苦笑しながら、低い天井を見上げる。
「さーて、逝くとしようかね。日本の婆さんは敵に回すと痛い目に合うって事をやつらに思い知らせてやろうじゃないかね!」
嘘だ。本当は勝てない事を老婆も、この場にいる仲間たちも、レンもシルヴァも日本中がわかりきっていた。
でも、それでも悪に屈しては、全てが終わってしまう。
大きな闇がある時、小さな粒程度でも光があれば、いずれは全てを照らす太陽の如き閃光となる。
レジスタンスはレンを光の粒と例えて、彼女に全てを託した。
マシンの部屋では、またがって座れるような、二輪の形をしたマシン──タイムマシンが置いてあった。整備は済んでおり、後部にはレンが今着用している戦闘用スーツが二着、わずかな食料、80年前の日本が使用していた金銭少々。
「・・・気持ちに、答える。私、必ず勝つから・・・」
跨り、少女は時を渡る決意をする。
アクセルを回し、マシンが動き出す。徐々に狭い機械達で形成された部屋は、歪んで行き、自身も光の渦となる。
(必ず・・・勝つから!!)
そして少女はやがてその部屋から消え去る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
───現代、2022年、度固化(どこか)市。
どこかの繁華街だろうか。待ちゆく人々は楽しそうに歩き、カップルやサラリーマン、学生や、夫婦、家族連れ・・・様々な人たちが夜の繁華街を、それぞれ謳歌している。
豊かなポニーテールに、むっちりしたストッキング。ハイヒールで地面をコツコツと踏みながら、上下スーツで真面目な表情した女性が繁華街を歩く。彼女の名前は甘白ミドリコ。
公安に所属し、三年前は軍隊にも所属していた。
そんなミドリコだが、激務を終えて久しぶりの休日だと言うのに、誰とも遊べていなかった。暇だから飲みに行こうと、いそいそと歩いていた。
ここ最近この度固化市でおこっている集団犯罪の、検挙に彼女は名乗り出ていたが、なぜか捜査から外されてしまう。
意味不明な状況で手に入った休暇、飲まずには居られない。
ミドリコは正義を信じていた。この生まれ育ったこの街で、犯罪者がのさばっているなど断じて許せるものではなかった。
ふと、視線をやれば何やら人だかりが。
耳をすませば、事故だなんだと声がする。─なら、私が出るしか無いな。
公安の正義感に伴い人だかりの波や壁を超えて、その目で見たものをミドリコは驚愕する。
「な、なんだこれは・・・バイク・・・?と、少女・・・」
スカイブルーの髪をした少女はまるで本当に事故ったかのような姿で気絶でもしているのか、不思議な印象の服と、見たこと無い造形のバイクが転がっている。
「君!大丈夫か」
「・・・・・・」
抱きかかえた少女の脈と呼吸は正常・・・。
「私は公安に所属する者だ。この子を病院へ送る、そこをどいてくれ」
自分のスマホのワンボタン送信できる、緊急連絡を通して、救急車を呼び、ミドリコは気絶した少女をおぶる。
「なにあれ」
その人だかりを遠くで見つめる金髪の少女。
「カエデお嬢様、そろそろ」
黒服に細則され、カエデと呼ばれた少女は繁華街を後にする。
「後であの繁華街に何が起こったのか調べてちょーだい。なんか気になるのよね、あたし」
カエデはうーんと考えるそぶりをしながら、歩き出し、その半歩後ろを黒服が着いてくる。
「お嬢様、あたし、ではなく、わたくし、と呼称くださいませ。貴女はいずれ神宮財閥の・・・」
「はいはい、わかったわかった」
黒服の小言をうっとおしそうに流し、夜の繁華街を抜けていく。
ただの偶然か、ここに運命の三人が揃い、歯車は動き出す。
続く
設定広げすぎたけど大丈夫かな。
後書きに書くこと無いので、キャラクターのネタでも書きます
佐久間ギンジ
物語冒頭でなんか事故って死んだやつ。一応この物語の主人公。次回はもっと出番があります。
神宮カエデ
財閥のご令嬢。メスガキみたいなポジション。
次回の出番はありません。
宮寺レン
クールビューティーさん。今後の活躍に期待。でも次回に出番はありません。
甘白ミドリコ
彼氏居ない歴=年齢。本人はかなり真剣に悩んでいます。
次回少しだけ出番あります
シルヴァ
レジスタンスのリーダー。タバコとサングラスと拳銃奪って剣渡した色々悟ってる人。
老婆
レジスタンスの花
応援やコメント等評価を頂ければと思います!頑張れる糧になりますので、頑張れますので…!
風邪ひかぬように…!