正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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皆様こんにちはアトラクションです。
 
最近年末に向けた作業であったり、色々な仕事が増えたり忙しくなってまいりました。

投稿も二週間程遅れてしまい、しまいには残業して終電逃すという社畜ファイアしてしまいました。

ちょくちょく書いてはいたのですが、それでもプライベートの時間が無いほ2週間忙しくなってしまいました。

今は無事に復帰!

それではどうぞ!


103・不思議な関係、リコニスとギンジ

 昼に満ち溢れた月の光が、樹海の中に広がっていく。

 

 佐久間ギンジと鎧の怪人・王騎士型との最後の戦いの火蓋が、今ここに斬って落とされた。

 

 「──!」

 

 漆黒を濃く見せる幅広の剣を振り回して、ギンジに斬りかかろうとするのは、王騎士。

 

 隙も消しつつ、恐ろしい速度で振り下ろされた剣は、ギンジの頭上で金属音が重く響き渡らせながら止まってしまった。

 

 ギンジはムーン・パラディースの長ドスで縦一直線の攻撃を防ぎ、両手で抑え込んでいた。

 

 「ははっ、残念でし・・・った!」

 

 自信があった王騎士の剣はギンジの長ドスによって跳ね返された。 

 

 体重を乗せた一撃であっても、ギンジによる全身をバネの様にした飛び込みと防御の両立によって、剣を跳ね返す。

 

 すぐに体制を整えた王騎士は跳ね返った勢いを殺さずに、後方に回りながら剣を振り回す。

 

 振回せばすぐに黒い衝撃がギンジに向かって飛んでくる。

 

 「またそれかよ!」

 

 縦に回る丸鋸の様な黒い衝撃は月の光に満ち溢れた長ドスが、内側から突き破りながら粉砕された。そこにすかさずギンジの駆け込みが始まり、王騎士に向かって刃を向ける。

 

 「─!」

 「行くぞ!」

 

 月の光の刃が汚れた白金の鎧に向けられて、王騎士は次の攻撃に警戒する。

 

 ヒートアップしたギンジの覚悟に反応してしまう。

 

 この男と命の駆け引きをしているのに、熱く流れる源泉の如く、留まる事を知らない同じ怪人。

 

 なのに自分の胸がもっと熱くなっていくのを感じる。

 

 王騎士の鎧の中にある胸の鼓動が、今回の戦いによって熱く、より熱く、もっと熱く、さらに熱く。

 

 「───!」

 

 王騎士が左腕で自分の胸を叩く。

 

 この場における謎の行為に、ギンジの動きが止まる。

 

 「何してんだ・・・?」

 「─?──!?」

 「胸が熱くなった?何言ってんだ?」

 「!!──???」

 「熱くなったから攻撃した?自爆するんじゃねぇよ、俺が倒すんだからよ」

 

 自分の胸を攻撃したのは一体何故なのか、自分でもその行動原理を理解出来ていない様子で、自分で取った行動に困惑している感じに見えた。

 

 「せっかく俺たち()ったまって来たんだからよ、冷める様な事しないで戦おうぜ」

 

 目の前に立つ男が怪人の瞳に深みを増した光が出ている。

 

 怪人としてのより強い衝動を、より高みを登ろうとする強い戦闘意欲があの怪人から吹き出ている。

 

 「─・・・──!」

 「ああ、まぁ俺も怪人なんだしそうだろうな。そんな事より・・・」

 

 王騎士の言った言葉がギンジには通じていて、ギンジは王騎士から怪人だと明らかな明言をした。

 

 元々隠しても居ないし、そもそも戦う直前に紫ともそういう話しをしていたのだ。

 

 この男は怪人としては異質。

 

 そう判断した王騎士は、少しだけギンジに恐れを持ち始めた。

 

 「があああ!!」

 

 雄叫びを上げたギンジにビクリと驚く王騎士。

 

 少しだけ遅れて漆黒の剣を振り回して、ギンジの攻撃を防御する。

 

 長ドスを操る流れる様な三日月の数々。

 

 刃が残像と共に弧を描きながら、剣に抜けた素早い攻撃が繰り出される。

 

 「壊れろ!」

 

 漆黒の剣は見た目通り長く、幅も広い。

 

 2メートル近くもある王騎士が扱うにはかなりの大きさであり、長剣と呼ぶよりも、巨剣と呼ぶにふさわしい大きさである。

 

 こんな剣を振り回しながら戦う王騎士の強さも相まって、この漆黒の剣を早く破壊して封じ込めないと、いつまでもあの黒い衝撃を打たれ続ける。

 

 長ドスの突き、崩し、そこから手元の柄を使った殴りつけ、飛び蹴りをして後方に退いてからの横薙ぎ斬り。

 

 漆黒の剣からも重さを活かした鋭い突き、振り上げ、叩きおろし、砕き斬り。

 

 2つの刃が勢いを残したままぶつかり合うと、ギンジの手にだけ重苦しい衝撃と痺れと痛みが走ってくる。

 

 腕にも広がる強烈な一撃は、本当にこの王騎士の方が強いらしい。

 

 だから早く壊して、体力も限界に近いギンジはこの戦いに勝利したいのも本音だ。

 

 とは言っても剣術にはギンジに歩があり、軽さも含めると格闘による攻撃も多少なり通っては居るようだった。

 

 勝負を決めにかかったのか、ギンジは月光の力をもう少し放出して、王騎士へと接近を開始する。

 

 残像がギンジの背に現れた美しい月の色のフレーム。動きに合わせた複数の残像が、ギンジの動きをトレースしていき、勝機を見出す。

 

 しかし王騎士は焦らずにギンジへと腕を伸ばす。

 

 どれだけ動きが早かろうと、残像を重ねた目くらましだろうと、いかにギンジが強かろうと、しっかりと狙いを定めて深緑と月のスーツに身を包んだ男を捉える。

 

 「うおっ!?」

 

 月光の残像を背にしたギンジの勢いは、焦りと共に王騎士によって首を掴まれて止められてしまった。

 

 「──!」

 「マジかお前!」

 

 ギンジを首ごと持ち上げて、巨木に狙いを定める。

 

 「──!」

 「おおっ!?」

 

 深緑色のパワードスーツごとギンジを投げ飛ばし、巨木へと叩きつけられる。

 

 投げた勢いは確実に殺意が込められており、頭を強く打ったギンジの視界がぼやけてくる。

 

 「クソ、やっぱ強いな・・・」

 

 頭に血が登っていたギンジにも冷静さが戻ってくるが、巨木にめり込んだ身体が上手く動かせない。そんなに深く入ってはいないが、この王騎士との戦いで、全力を出しすぎたのだろう。

 

 体力の限界が本当に近づいている。

 

 「──!」

 

 漆黒の剣を頭上に掲げて、王騎士はギンジに狙いを定める。

 

 肉弾戦も剣術も敵わないと判断したのか、今まで一番大きな黒い衝撃が剣から吹き出す様に現れて、ギンジの視界に大きく黒い柱がいきなり現れた。

 

 「本気で殺す気だな・・・」

 「──!!!」

 

 黒い衝撃は剣と融合する事で、黒い巨剣となっていた。

 

 頭上に構えたと言う事は、このまま巨木ごとギンジを斬るのだろう。

 

 早くこの巨木から抜け出さないと行けないのだが、身体に力が上手く入らない。

 

 「つまり・・・絶体絶命って状況だな・・・」

 

 黒い巨剣がゆっくりと、バランス棒を支える様に、後ろに少しだけ倒れて、すぐにバランスを崩して落とす様に前方に振り下ろされた。

 

 巨木の葉を飲み込み、木を破壊し、ギンジをおも叩き斬り伏せようと大きな衝撃の刃が、ギンジを斬り潰しに来ていた。

 

 (これを喰らって無事か俺!?もう結構死にそうな気分なんだが!)

 

 そうこうしている間に、ギンジの視界の端に黒い衝撃が少し見えた。

 

 (あ・・・やべ)

 

 そう思った瞬間にギンジは瞳を強く閉じた。

 

 冗談抜きで死ぬかも知れないと、ギンジは覚悟を決めた。

 

 ここで負けるのも認められない事だが、ギンジはもう一度のチャンスを信じてスーツに防御結界を張ってみる事にした。

 

 これでこの攻撃の一回を防げるのであれば良いが、しかし防げなかったら・・・。

 

 「─?──!」

 

 黒い巨剣が巨木を半分近く真っ二つに裂いた瞬間、それが右に逸れた。

 

 逸れただけではなく、王騎士は自分の背後に向けて黒い巨剣を振り回し、樹海の一帯を円形に斬り払ったのだ。

 

 「なんだ・・・?」

 

 巨木の根本も斬られたことで、ギンジを内側から叩いて出す様に、身体が巨木のめり込みから剥がれていく。

 

 吐き出す様に出されたギンジは、スーツの変身が解除されてしまい、うつ伏せに倒れ込んだままになってしまった。

 

 「うっ・・・クソ、身体、が・・・あんまり動かねぇ」

 

 王騎士の剣が元の形状に戻ると、再び黒い衝撃を樹海の奥に向けて繰り出した。

 

 「・・・?」

 

 何があるのだろうか。ギンジには樹海の奥には何も見えない。

 

 「あっれーギンジちゃんじゃーん!」

 「え!?ギンジ君!?」

 

 二つの聞き覚えのある声が、ギンジの耳に入ってきた。

 

 「くふ、くふふ・・・ギンジ君をこんな目に合わすなんて」

 

 樹海のどこからから聞こえるその声は、どこか怒りを孕んだ声音をしていた。

 

 「あーあ、私がギンジちゃんを地面に這いつくばらせてあげたかったのに・・・まさか、あいつ?」

 

 もう一人の声も震えた声をしている。 

 

 ギンジの顔の左右に、二人の足が枯れ葉と土、戦闘の跡が広がる地面に強く踏みつけられた。

 

 「──!」

 

 王騎士が再びギンジの方へと振り向き、そこに居た二人の人物に兜の中の紅い光が輝いた。

 

 新たな敵の登場に対する歓喜の眼光。

 

 「ミヤコ、リコニス・・・どうしてここに」

 

 ギンジの下に駆けつけてくれたのはミヤコとリコニス。

 

 ミヤコはまだわかるが、どうしてリコニスもここに来ているのか、ギンジは不思議そうな表情を見せる。

 

 「結構ボロボロにされてるねぇ、ギンジちゃん・・・」

 

 地面に這いつくばっているギンジに視線を動かしたリコニスが、つまらなそうに鼻を鳴らす。

 

 「あーあ、今度こそ万全の状態で殺し合いが出来ると思ったのになぁ・・・ま、今はいっか。そーれーよーりー〜ぃ」

 

 いつでも殺し合いを考えているリコニスが、ミヤコと共に王騎士に目線を向ける。小首をかしげると思わせて、首の骨を鳴らしたリコニスが黄金の刀を引き抜いて、王騎士にその刃を向ける。

 

 「くふふ、ギンジ君をこんな目に合わせて、生きていられると思わない方が良いよ?」

 「あら、珍しく意見が合うわね、ミヤコ。あいつ、私がヤっていい?」

 「くふふ、リコニスと意見が合うなんて嫌な気分だけど。でも、あの怪人の事は任せるよ。わたしじゃ絶対勝てないからね」

 

 ミヤコの生身は半分怪人であっても、戦闘には向いていない。

 

 故にあの怪人の相手はリコニスに任せるしか無い。

 

 そうしてミヤコは身を翻すと、足元に居るギンジに小さな手を差し伸べる。

 

 「ミヤコ・・・」

 「くふふ、大丈夫だよ。君の事は、わたしがぜーんぶ」

 「ミヤコ、今は駄目だ」

 「くふふ、こんな状況でも恥ずかしがるなんて、ギンジ君は可愛いな〜くふふ、くふっくふふ」

 「本当に駄目だ!紫がこの温泉街に来てる!」

 「?」

 

 何故ここで紫が出てくるのだ。それも分からないが、ギンジの眼が強く訴えている。

 

 今はこんな事でふざけている場合では無いと。

 

 ギンジが身体をようやく起こして、倒れた巨木に寄りかかりながらミヤコの瞳をジッと見つめる。

 

 「ミヤコ、一つ頼んでいいか?」

 「・・・良いよ、なんでも言って。青か」

 「本当に怒るぞ!違うって!」

 

 ミヤコはどうしてこうも性的な事に旺盛なのか。

 

 そのいつもどおりのミヤコの顔を見て、ギンジは安心した。

 

 「いいか、ミヤコ。紫を追うんだ。あいつは温泉街に向かって何かしようとしてる。あのレベルの怪人を街にも向かわせてるかも知れないんだ・・・カエデ達にも合流出来ていないし、頼めるか?」

 「くふふ、具体的には追いかけてどうしたら良いのかな?」

 「必要ならカエデ達に撃破してもらいたい。あいつはもう、以前までの紫じゃない。なんとしても止めてくれ!」

 「カエデ達に協力をお願いしないと行けないのもやだなぁ。でもま、良いよ。ギンジ君のお願いだもの、やってあげなきゃ、お嫁さんとしての責務がうんたらかんたら」

 「ねーそろそろいいかなー?ミヤコもギンジちゃんもいつまでもそこに居ると戦えないんだけどぉー?」

 

 ミヤコが顔を赤くしながら身体をくねらせていると、リコニスが半ギレの表情で眼を血走らせている。

 

 「いいや、俺は残るぜ。こいつを倒す」

 「くふふ、それじゃあわたしは紫を追いかけて・・・」

 「私がギンジちゃんと一緒に、あいつと戦えばいいのね?」

 

 リコニスの表情が少し柔らかくなった気がした。

 

 「ふーん、共同戦線って事ねぇ、ヘヴンホワイティネス?」

 「あーそうなるな、ヘルブラッククロス」

 「くふふ、戦う相手がヘルブラッククロスなのに、共同戦線って不思議だね」

 

 嬉しそうに笑うミヤコに、ギンジも立ち上がって金棒を構える。

 

 その隣でリコニスも黄金の刀を王騎士に向ける。

 

 「ミヤコ、頼むぜ」

 「くふふ、任せて」

 「それじゃあ、あいつをぶっ殺してぇ、紫ちゃんもここに連れてきてくれたら私が紫ちゃんをぶっ殺してあげるわ」

 

 三人それぞれが軽く頷いて戦闘体制に入ると、すぐに王騎士の漆黒の剣が頭上に振り上げられた。

 

 「こうして一緒に戦う時が来るなんて不思議だな」

 「そうね。でもギンジちゃん、またヘバってダウンするようだったら、次は殺すよ」

 「そうならないように、ちゃーんと協力しようぜ」

 

 二人が横並びで構えた瞬間に、王騎士が漆黒の剣を振り下ろした。

 

 丁度ギンジとリコニスを分断するように振り下ろされた斬撃を左右に避けると、ギンジがミヤコを抱えて別のエリアへと移動させる。

 

 王騎士はそれを逃す事なく追撃を重ねて来るが、リコニスが背後から鎧を傷つける。

 

 「よそ見してる暇あるのぉ?言ったよね、殺すって」

 「そうだぜ!」

 

 バゴォン!

 

 強い打撃の音が王騎士の胴体を巨木へと転がしていく。

 

 リコニスの方に振り向いた事で、隙が生じた。そこへすかさずギンジの金棒が思い切り叩き込まれたのだ。

 

 「──!」

 

 鎧を着ているのに俊敏な動きで立ち上がると、その目の前にはギンジとリコニスが立ちはだかる。

 

 「行け、ミヤコ!絶対に紫を見つけろ!」

 「くふふふ、ギンジ君も絶対に敗けないでね!」

 

 ギンジの号令によって、ミヤコは樹海の奥へと姿を消していく。

 

 「見つけられるかしら?」

 「問題ねぇよ!ミヤコだったら絶対に、紫を見つけてくる!」

 「ふぅん?なんか嫌になるぐらい信用してるわね」

 

 ギンジがミヤコを信用していて、ミヤコもまたギンジを信用している。

 

 その二人の距離感が見ていて苛立ちが募る。

 

 だが今はあのギンジと隣で戦っているのは、あのミヤコでもヘヴンホワイティネスのカエデでも無いのだ。

 

 「せいぜい役に立ってくれよ、リコニス」

 「誰に言ってるの?私は一人大暴れして大幹部になった、ヘルブラッククロスの実力者よ・・・簡単に敗けると思う?」

 「味方になると頼もしいぜ、その言葉」

 

 リコニスの軽口に感心しながらも、ギンジとリコニスはお互いに武器を構えて、再度雄叫びにも近い咆哮を上げた王騎士との戦いが始まるのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 樹海から林道へ、林道から舗装されたアスファルトの道へ。

 

 明らかに場違いな格好をした、異質な雰囲気を持った男が、紫色のパワードスーツについた蜘蛛の巣を引っ張り取る。

 

 「やれやれ。温泉を堪能したのに、また汚れたよ」

 

 誰かに聞こえるでも無いただの独り言。

 

 それは夏の終わり告げるような風の音にかき消され、その生暖かい風を全身で感じながら、ドクターパープルは昼の空を見上げた。

 

 仮面越しでもよく見える清々しい青空と雲が、まだまだ強い夏の日差しと共に押し寄せてくる。

 

 「ふ・・・全く夏も終わらないね」

 「そうだね」

 

 ドクターパープルが腰掛けた、ボロボロのガードレールの後ろから、少女の声が聞こえた。

 

 いつだって聞き間違える事の無い、自分が師と仰ぐ少女の声音。

 

 「・・・早かったですね、ドクターミヤコ」

 「くふふ、君なら最短で道に戻れる所で行くだろうと思ってね」

 

 ミヤコのメガネは日差しによって白く光り、その表情に陰りが見えた瞬間、左目の黒く赤い瞳が覗ける。

 

 いつまでも奈落の様に底の見えない、暗い瞳の強さは、ドクターパープルが未だ尚超える事が出来ない様な恐ろしさを秘めている。

 

 「くふふ、ギンジ君に言われて追いかけたけど、大人しく捕まる気は無いんだよね?」

 「勿論でございます。そしてドクターは・・・」

 

 仮面に隠された顔は表情が見えない。

 

 だけどその奥はどことなく笑っている様にも感じる。

 

 紫と言う男はいつまでも不思議な男だが、ヘルブラッククロスによる忠誠心も見え隠れさせながらも、気がついたらミヤコの側近、護衛部下としてここに立ち続けていた。

 

 「ドクターは、私を捕まえる気なんて、ございませんよね?」

 

 冗談めかして喋ってみた事だが、ミヤコはメガネのズレを直しながら、ドクターパープルと向き直る。

 

 「くふふ、当たり前だよ、そんな事。君にはわたしの敵であれと命じたのだぁら、最後まで全うしてくれないと困るよ」

 「ふふ、勿論ですとも。そうだ、ギンジさんと我が最高傑作の結果でも見ていきますか?」

 「あっ・・・もしかしてデータ取りしてた?」

 「はい・・・」

 

 ミヤコが思い出した様にあわあわと顔を動かす。

 

 「ごめんね紫。実は・・・」

 

 ミヤコがここに来るまでの事、そしてギンジの所にはリコニスが居る事。

 

 なにやらリコニスは紫にキレ散らかしている事を、かいつまんで説明すると、紫は焦りからか仮面の顎を触る。

 

 「リコニスまで居るとは・・・困ったな・・・」

 「あーえっと・・・ごめんね」

 「いえ、とんでもない!ドクターミヤコが謝る様な事は何もございません!」

 

 今は敵同士だと言うのに、紫はかつての師であるミヤコにぺこぺこと頭を下げだした。

 

 「ささ、どうぞこちらに」

 

 紫がパワードスーツに収納していた椅子とテーブル、更にパラソルとお茶まで用意しだし、座ったミヤコには手元の端末の映像を見せる。

 

 「この怪人、強そうだね」

 「勿論です。言語能力と性欲だけは落ちてしまいましたが、戦闘の実力だけであれば、ギンジさんやオークの奴にも敗けない数値が出ております」

 「そう・・・」

 

 端末に出ている映像をすぐに見ているミヤコが、ため息混じり返事すると、紫もその後ろで控える執事の様に、ミヤコと同じ映像を見る。

 

 「まぁ、いっか。結果を見てから君に色々教えてあげるね」

 「はい、ぜひとも勉強させていただきます」

 

 映像を見ればギンジとリコニスが、歪ながらもコンビネーションを決めて、王騎士を追い込んでいる所だった。

 

 一見優勢に立ち回っている様に見えるが、王騎士の耐久力も凄まじいモノで、剣の一振りでギンジとリコニスを追い返す。

 

 地の利を活かして左右に飛び出すギンジと、一直線に飛び出している。

 

 「お手並み拝見。だよ、紫」

 「今度こそ、貴女を超えてみせる」

 

 師と弟子。しかし今は敵と敵。更に言えば今だけは上司と部下。

 

 悪の組織に居た少女と、その部下だった男の研究者同士の熱戦もここに繰り広げられていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「ゼェ、ハァ、あいつ、マジで人間だよな・・・?」

 

 疲労困憊のギンジは汗を流しながら、木々を飛び回りながら王騎士に痛烈な一撃を決めていくリコニスを眼で追いかける。

 

 見るだけでも重そうで、かつ暑そうな黄金の鎧を身にまといながら、更に体重を増加させるであろう、黄金の刀まで持っているのに、樹海の木々に重力を無視した動きで飛び回っている。

 

 「猿かなんかか?あいつ」

 

 それで居て強力な一撃は、王騎士の足元をフラつかせる程の手痛い一撃を与えている。

 

 「─!」

 

 王騎士もそれに敗けじと、漆黒の剣の面をリコニスの攻撃に合わせて、勢いと重さをそのままリコニスに跳ね返す。

 

 カウンター。

 

 ボクシングで言えば強烈で強いモノだ。

 

 それがリコニスを全身で跳ね返す。

 

 「ほらほら〜怠けてるだけなのは駄目だよ、ギンジちゃん」

 「分かってるよ!」

 

 樹海の巨木に着地して、勢いが死んだ途端にリコニスは枯れ葉に着地すると、ギンジに発破をかける。

 

 ギンジもただ見ているだけではなく、リコニスの過剰な攻撃に巻き込まれないように、攻撃のタイミングを見計らっていた。

 

 あんな全方位無差別な斬撃と、殺す事を確実とした攻撃と、周りをよく見ていない狂った戦闘方法は、ギンジとしても間合いには入りたくないと思う。

 

 リコニスの言われるがまま、ギンジも金棒に力を込めてフルスイング。

 

 王騎士の会いた胴体に、怪人としての尋常じゃない腕力による一撃がキレイに入ると、重たい金属の衝突音と同時に、白金の鎧に守られた身体が、一瞬浮いた。

 

 浮かせたその身体に、ギンジからもう一発思いきりの良い一撃が加えられる。

 

 これで疲労していると言うのは嘘、そう言われてもしょうがない程の強力な一撃だった。

 

 「オオオオッラ!」

 

 3発目が打ち込まれようと、ギンジが必死に金棒を振りかぶった。

 

 「ヒャッハー!」

 「え?」

 

 ギンジの3発目に警戒していた王騎士の真後ろから、リコニスからの甲高い超えと共に繰り出される不意打ち。

 

 黄金の刀による横薙ぎ一閃。まばゆい程の黄金の光となった剣線に、白金の鎧に黒い傷をつける。

 

 刃が擦れた事による焼き付いた様な跡が出来上がる。

 

 「オイ、何してんだよ、リコニス!」

 「生ぬるい攻撃ばっかりじゃ、こいつには通用しないでしょ!」

 

 王騎士が今度はリコニスに振り向きながら、身を捻り、漆黒の剣が大きく振り回される。

 

 しかしリコニスは自身の持つ黄金の刀を、素早く振り回して横から来る斬撃を受け止めた。

 

 肌一枚ギリギリ当たらない防御と、その判断力は怪人の能力を持っているギンジからしても絶賛出来る素晴らしい反応速度。

 

 「甘い甘い〜!」

 

 全身を使った押し返しで漆黒の剣を跳ね返すと、腰を落としたリコニスが眼を血走らせて刀を振り上げた。

 

 一瞬の反撃に、王騎士の頭が打ち上げられて、身体がのけぞる。

 

 黄金の閃が樹海の上空に出てきた事に、ギンジが呆気に取られる。

 

 (なんだ今の・・・?)

 

 レーザービームにも似た黄金の閃は、間違いなくリコニスの出した攻撃の一つだ。

 

 「アハッ、もう終わり?まだだよねぇ!!」

 

 そこへすかさずリコニスの追撃が始まる。

 

 武器を振るった腕が残像を残す様に消えて行き、続けざまに黄金の閃が二本、三本と同時に増えている。

 

 空気を斬る様な音と同時に繰り出される、リコニスの新しい攻撃に王騎士は成すすべ無く、後ろに追い込まれていく。

 

 だがその背後に居るのはギンジだ。

 

 ギンジも強くなっているが、リコニスもまた強くなっていた。

 

 その事に感心はするのだが、今はそんな事を考えている場合じゃない。

 

 視認出来ない程速い攻撃を繰り出していくリコニスが、悪魔の様な高笑いを上げながら、高速の斬撃を何度も王騎士に叩き込む。

 

 「へへ」

 

 ギンジはリコニスも強くなったいる事に、不思議と喜びながら、それでも彼女と共闘出来ている事に感謝して、金棒を強く握る。

 

 「行くぞ!」

 

 本気で叫び、本気で金棒を横薙ぎに振るう。

 

 お浮きしの仰け反った背中に、金棒での一撃が炸裂し、破壊しようと思い切りの良い攻撃が命中した。

 

 鎧の内側からは黒い衝撃が液体の様に流れ出て、王騎士の苦悶に溢れた声が聞こえる。

 

 言語は不明だが、明らかに苦しんでいる怪人の声。

 

 造られて間もない怪人の苦悶の声は、ギンジは何度も聴いてきた。

 

 だけど同じ最高傑作として、この怪人に敗けるわけには行かない。

 

 敗けそうにはなっていたが、リコニスという味方になれば心強い敵が居れば、ひとまず敗ける事は無いだろう。

 

 「どっちにしても、敗ければどっちかに殺されるからなぁ」

 

 気がつけば色んな人たちに命を狙われている事を思い出したギンジは、内心苦笑する。

 

 「──!」

 

 王騎士が苦しそうな声を上げながらも、ギンジとリコニスの追撃を腕と剣で防ぎ、リコニスの腕、ギンジの首を掴んで真上に投げ飛ばす。

 

 弱っていたとしてもまだまだ戦えるこの王騎士は、二人を戦闘不能にするまで止まらない。

 

 「───・・・!」

 

 漆黒の剣に黒い衝撃を纏わせた、漆黒の巨剣。

 

 空中で身動きの取れない二人に向けて、空をも斬り壊しそうな刃が地面を走り、樹海の木々を粉砕し、空気を裂いて、頭上に浮いたギンジとリコニスを衝撃の斬撃に飲み込ませる。

 

 「ぐおっ!?」

 「殺す・・・!!」

 

 黒い衝撃と斬撃が合わさった攻撃によって、二人して樹海の地面に落とされる。

 

 強烈な攻撃が二人を襲い、土煙と枯れ葉が舞い落ちる地獄の道。

 

 それを造ったのは王騎士。

 

 兜から覗かせる紅いの眼光が溢れ、この怪人も本気でドクターパープルの命令に応えようと、全力で応じてきた。

 

 「ハァハァ・・・動けるか、リコニス」

 「だ、誰に言ってるよ、ギンジちゃん・・・」

 

 金棒を支えに、黄金の刀を支えに、二人は煙の中に立ち上がる。

 

 「───・・・!!!!」

 

 漆黒の剣を構え直した王騎士が再び咆哮をあげる。

 

 「俺、あいつにだけは敗けられないんだ。最高傑作って言われて、俺が黙って退けるか」

 

 ギンジが煙を払って、金棒を前に突き出す。

 

 「ま、私もギンジちゃんと殺し合いしたいし、こんな所で終わってもいられないし?それにさー私も紫ちゃんwぶっ殺さないと行けなくてさぁー」

 

 リコニスもギンジの突き出した金棒に黄金の刀を這わせる。

 

 二人して構えた武器の先に立つのは、鎧の怪人・王騎士型。

 

 「バラバラに戦っても埒が開かねぇ。リコニス、手を貸してくれ」

 「・・・いいわよ、あいつをバラバラに出来るならね」

 

 ギンジとリコニスが目配せをして、二人同時に怪しく微笑む。

 

 お互い一人で戦ってこの怪人に勝てるかは不明だが、今のこの二人なら間違いなく王騎士に勝つ事が出来る。

 

 「やろうぜリコニス」

 「いいよー・・・絶対にバラしてやるわ」

 

 不思議な関係の二人が、不思議にも強力しながら王騎士との最後の戦いに突入しようとしていた。

 

 

 

続く

 

 




お疲れ様です。

今回のお話で王騎士との決着の予定だったのですが、プロットが長すぎるかも、と思い一度ここで区切りました。

次回こそ王騎士との決着!

キャラネタ書きます

佐久間ギンジ
疲労困憊しているけど、あくまでそれは怪人基準。
普通に疲労していてもアスリート以上に動き回る事が可能っちゃ可能。
こいつがおかしいだけです

リコニス
内心ギンジと共闘している事に嬉しさがあり、それを隠している。
視認できない程の速さで刀を振るう事が出来る。
こいつも初登場の時からおかしいです

王騎士
bEzm6tdE。ffff!
普段はこうやって喋っている設定でしたが、あまりにも面倒くさいので「──!」ってなりました

鈴村ミヤコ
弟子である紫の造った最高傑作とやらに、なにやら難色を示している模様。

ドクターパープル
ドクターミヤコを越えようと奮起して造った怪人が王騎士。
しかし、反応はイマイチ。
ドクターミヤコには絶対に手を出さないし、自分が勝利した暁にはギンジとミヤコを触手妖淫界迷宮(建設予定)に閉じ込めて暮らしてもらいたいと思っている。

設定ネタも書きます

第二世代の怪人とは?
ドクターパープルの造った怪人の球の改良版により、人間の意識を失わずに怪人になった強化人類の事。怪人の心臓になった人間もその世代に入る。
ソウイチロウ一派がそれ

旧世代(インスタント)とは?
ドクターミヤコ等が造った、怪人の細胞、細胞改を使って、生物+処女の生き血+細胞を使って生み出された怪人達の事。
ちなみにキラーエリート達も旧世代に入る。

・・・

次回は温泉旅行編最後の戦いになります!
王騎士との決着、ミヤコと紫はその時・・・
なお話を予定としております。

それではまた次回!もうここまで来たのだから、何年立っても最後まで書ききるぞ!!!
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