正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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皆様こんにちは。アトラクションです。
四話構成2つめのお話です。

設定とか小説としての作りはめちゃくちゃですけど、今回で正真正銘本当の意味での10話として出せました!はい拍手。

お楽しみください


10・起死回生の力とギンジの弱点

 オフィスで書類仕事をしながら眠そうな顔をしているミドリコの元へ、レンから緊急連絡が鳴る。その音に何事かとミドリコは端末を開く。

 

 「レンか?大丈夫か?」

 『ミドリコ、学校に怪人が現れた。今は、カエデが一人で戦っている』

 

 続くレンの説明にミドリコはここ最近の、不可思議な失踪事件への画展が行く。

 

 「やはり、ヘルブラッククロスの事件か・・・」

 

 オフィスの誰にも聞こえないように、小さな声で呟くと、直ぐに席から立ち上がり、オフィスを出ようとコードや書類が散らばった道を強気に進んでいく。

 

 「あれ?甘白ちゃん?」

 

 その真横を藤原が声をかけるが、フルシカト。

 

 「あーもしかして、なんかあったのかね」

 

 彼女の後ろ姿を見て何かしらの状況を察すると、藤原はそれ以上は何も言わない。

 

 「・・・ヘルブラッククロス、か」

 

 ニコチンで変色した天井を見上げて藤原は苦渋な顔をする。

 

 「くっだらねぇ」

 

 そうつぶやくと自分のデスクに座り事務仕事をすすめる。

 

 「まだギンジの携帯とかは用意していなかったな?」

 『うん。だからミドリコがギンジを、呼んできて欲しい』

 「解った。君はどうするんだ?」

 

 レンの焦りの声に落ち着いて対応する大人の余裕がある。決して内心は余裕ではないのだが、ここで自分が焦ってもしかたがない。

 

 『ケイタを家まで送ったら、私も、カエデのところへ戻る』  

 「了解したよ。頼むぞ」

 

 二人が会話を終わらせると、ミドリコは再びオフィスへ戻る。ただし自分のデスクではなく、上司である藤原のデスクへ強く踏み出す。

 

 「あれ?電話終わった?」

 「藤原さん、頼みがあります」

 

 折り言ったこの態度に面食らってしまう。

 

 「な、なんだい甘白ちゃん」

 「午後半休をください」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 今はミドリコが自分のマンションに戻り、必ずギンジを連れて来てくれる。

 

 だから強力な加勢は後でいい。

 

 今は親友であるカエデを傷つけた、目の前の怪人を倒すだけに集中しよう。

 

 二人の連携攻撃すら物ともしないラウンドシールドの、防御力に驚くも、そのまま諦めずにカエデの拳や足技、レンのビーム剣の連続攻撃を絶えず剣士の怪人に叩き込む。

 

 確かに攻撃は命中しているのに、この怪人は涼しい顔しかしていない。

 

 「くっふっふ・・・本当に、貴女達は不思議なモノですね。思わず笑みがこぼれてしまいました」

 「笑っていられるのも、今の内」

 「ハァ、ハァ、あたし達の攻撃にいつまで、余裕でいられるかしらね」

 

 余裕が無いのはどうみても負傷しているカエデの方だ。無理を押して激痛に耐えながら攻撃を繰り出している。

 

 「では、これをご覧に入れよう」

 

 二人の攻撃をキリの良い所で、後ろに飛び避けると、剣を構え、怪しいオーラが大きく広がる。

 

 「怪人剣術──」

 

 来る。怪人の大技が。二人はいつでも避けられる様に、飛び避けられた時に、深追いはしていなかった。

 

 「追撃の手を緩めたら、勝てませんよ」

 

 再び笑顔になりながら剣士の怪人は、剣を上段から廊下の地面へと振り下ろす。

 

 表面のタイルが全て衝撃と共にヒビ割れて行き、カエデとレンの足元まで広がっていくと、その足場から赤黒い斬撃の渦が現れ二人の少女を斬り裂いて行く。

 

 怪人剣術・ヘル・トランプル。この斬撃の渦による大技。誕生して3日でこの技を完成させ、防御に自信のある犬の怪人を吹き飛ばす事も実現した。

 

 故に勝利の自信を持ってこの大技を、組織が認める強敵にぶつけていく。

 

 「ぬあああ!」

 「おや、耐えますか。素晴らしい」

 

 渦の中でレンがビーム剣を振り回す。彼女の出せる広範囲かつ高威力の必殺技、大回転斬りで渦をかき消し、なおも回り続ける。

 

 「剣使いの、醍醐味は、これだけじゃない」

 

 回転の勢を殺さず、廊下を回転していく。このまま剣士の怪人へ向かってくるのか、それとも遠距離技を使うのだろうか。

 

 「・・・?」

 

 怪人の目には、敵であるヘヴンホワイティネスの片方が見えない。先程深手を追わせた神宮カエデの姿が見えない。

 

 「今よ!」

 「せえい!」

 

 大回転のビーム剣の先端に乗っていたカエデの一声で、レンがバットの様にビーム剣を振り回すと、カエデが飛んでくる。

 

 (速い!)

 

 剣士の怪人へ右拳を突き出し、弾丸、いや大砲の如くカエデは飛んでいく。

 

 「必殺!!」

 

 痛みも限界。ずっと痛みが全身に響いている。このまま戦い続ければ、きっと命も助からないかもしれない。

 

 だからこれで決める。正真正銘本当の必殺技になると、これで倒すと決めて、今の自分が出せる最大の大技を叩き込む。

 

 何度も怪人を相手に決めたトドメの為の必殺技。これで倒す。

 

 「メガトン・インパクト!!」

 

 両手のガントレットからまばゆい光が溢れ出し、爆発するほどのスチームの噴射と共に、飛ばしてもらった速度を利用した両掌底が、炸裂する。

 

 「素晴らしい力だ・・・」

 「ハアアアア!!!」

 

 左手の盾で防ぐも、その想像以上の威力に敵であっても感心する。

 

 「砕けろオォォ!」

 

 ギアをさらに早く、熱く回転させるとガントレットから限界を告げる高熱と煙の様に黒みがかったスチームが飛び出る。

 

 それでもカエデはこの強力な衝撃を発動し続ける。

 

 この防御ごと貫く勢いでカエデはさらに吐血するが、勢いは止まらない。

 

 ビシッ。

 

 固く強い盾にヒビが入る音が鳴る。このぶつかり合いにカエデが勝利する一歩を進めた。

 

 しかし、現実は無情である。

 

 ヒビを確認すると、身体に迫る勢いを後ろへ流しカエデのバランスが崩れる。

 

 「本当に素晴らしいですよ、あなた達は。ですが、詰めが甘い」

 

 剣を一振り。カエデには当たっていないように見えた。そのままカエデの横をすり抜けると、次の瞬間にはカエデの全身に刃の跡が残像となって連続で斬り刻まれていき、カエデは硬いタイルの上に倒れる。

 

 「あ、が・・・!?」

 「カエデ!」

 

 それを見るやレンもカエデを守るために攻撃に出るも、剣士の怪人が道を塞ぐ。

 

 「次はあなたの番ですよ」

 

 剣士の怪人のマントが、レンの目の前に広がって覆いかぶさろうとしたが、ビーム剣で一刀両断し、開けた視界に警戒をするも怪人の姿は見当たらない。見えるのは、うつぶせに倒れるカエデの姿だけ。

 

 「くっふっふ、今、油断しましたね」

 「!?」

 

 声が背後からした。振り向き様に刃を薙ごうと、振り回そうとした瞬間、レンの身体に予測していないキツイ衝撃が全身に巡る様に襲ってくる。

 

 剣士の怪人の代名詞でもある回転斬りがレンにも命中した。

 

 気がついたら壁に叩きつけられ、頭を強く打つがそれでもレンは何が起こっているのか解っていない。混乱にも等しい状況で剣士の怪人がレンにも剣を向けている。

 

 「・・・コレでは、あの神宮カエデの方が強く感じますね」

 

 本当に何が起こったのか。この一瞬でレンもカエデも反撃できない戦況となってしまっていた。

 

 それぐらい剣士の怪人が強いのか、それとも自分たちが弱いのか。

 

 「カハッ、ゲホッ」

 

 スーツは無事だが、レンの実体、それも中身の方に強いダメージが残る。

 

 内蔵を押し潰される様な苦しい痛み。

 

 「ドクターの造ったこの盾にヒビを入れるものだから、強敵として認め、本気を出したら、この様ですか」

 

 マントが無くなればほぼ局部を隠しただけの露出狂の様な姿で、剣士の怪人が剣を腰の鞘に収める。

 

 先程までの笑みはもう浮かべていない。心底がっかりした感じの声音で剣士の怪人はレンを睨みつける。

 

 もはや呼吸だけで、動けないカエデ。

 

 腹を抑えながらうずくまるレン。

 

 そして余裕の体制を維持し続ける剣士の怪人。

 

 「怪人剣術・イース・トゥルバレンツ」

 

 居合斬りの要領で剣を振り上げると、再び赤黒い斬撃がレンを真正面から襲う。ビーム剣でガードしてもそれは一撃を抑えるだけで、手元から弾かれてしまった。

 

 更に振り下ろしでもう一度同じ斬撃が飛んでくる。

 

 「クあっ!」

 

 切断こそされなかったものの、レンのスーツを斬り破り、実体までその斬撃が通ると強く吹き飛ばされる。

 

 硬いタイルに仰向けになりながら、カエデと同じ場所まで転がっていく。

 

 「うぐぅ・・・レン・・・」

 「カエ、デ・・・」

 

 二人は油断していたわけではない。決して自分達をおごり高ぶっていたわけでもない。

 

 「あなた達は・・・まぁ、強敵と認めたことは間違いでしたね」

 

 まだ動けるようになるまでに、時間のかかる二人へ剣士の怪人がにじり寄る。

 

 殺意の刃が、命を奪おうと迫りくる。

 

 「・・・くっそ〜・・・!」

 

 うつぶせになりながらカエデは、おおよそ令嬢とは思えない言葉を口走る。

 

 でももう身体の全部が痛くて力が入らない。ヘヴンスーツの中身は血液でいっぱいになっていた。

 

 友達を奪われた悲しみか、二人して敗けた悔しさか、それとも弱い自分にか、とにかく色々な複雑な感情が色濃く顔に出てきてしまっている。

 

 でも何を言い訳にしても、ここで自分が倒れていいワケでもない。頑張って腕に力を込めて身体を起こそうとしても、タイルにベタリと倒れてしまう。

 

 「・・・ここ、で、倒れるわけには、いかない、のよ」

 

 悪に負ければ全てが終わってしまう。

 

 「カエデ・・・」

 

 レンも同じ気持ちだからこそ、痛みに負けずに立ち上がろうと、食いしばって身体を起こす。

 

 「ふむ、志だけは立派ですね。だけどまぁ、ここで終わりです。後は佐久間ギンジを探して任務を完遂と行きますか」

 

 二人へトドメに1刺しを決めようとした剣士の怪人。

 

 ─もう駄目だ。力が入らない。ごめんね、トモカ、皆、お父様。

 

 ─ごめん、皆、シルヴァ、おばあさま、ケイタ・・・。

 

 命を容易く奪い取る凶刃が向けられる。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 自分だけが鮮明に写る真っ黒な空間。あたしはきっと死んだのかな。

 

 ここは天国?それとも地獄?どこでもないのかな?

 

 身体に痛みとか、出血とか、さっきまでの苦しさが無い。きっと死んじゃったんだ。

 

 「おーいお姉ちゃん」

 

 どこからか声がする。声の主は辺りを見渡しても、存在が確認できないし、あたしは不思議な空間の中で不気味な感覚になっていた。

 

 ごめんね、レン・・・あたし、あなたの事、守れなかった。

 

 「おーいって。お姉ちゃんよ」

 

 ・・・何よ。あれ?声が出ない?変ね、確かに喋ろうとすれば口は開くのに、喉にはモヤがかかるような、そんな変な感覚。

 

 「まだ、お前は死んでないぜ。目の前を見てみなよ」

 

 言われるがまま目の前を見てみたら、さっきまでハッキリ無かった筈の真っ白な扉が現れたのかしら。

 

 「死ぬなら、せめてこの扉くぐってみないか?」

 

 聞き覚えはあるのに、この声を懐かしい様な、聞いたことあるような、誰の声かしら、これ。

 

 「少しだけ、俺が力を貸してやる。いや、正確には、お前達の力を引き出させてやる。あとは上手くやれよ」

 

 言ってる事がわからないけど、ようするに扉を開ければいいのかしら?

 

 「そうだよー。まだ死んでいないなら、諦める前に足掻いてくれなきゃ、親友にも申し訳ないんじゃないか?」

 

 ごもっともね。だけど、もう動かなかったのよ、身体が。

 

 「出血がひどかったからね。全部見ていたよ」

 

 そう。変な奴。そういえばレンはどこにいるのかしら。

 

 「ああ、宮ちゃんも後で叩き起こす。頼むぜ、お姉ちゃん。あんたが頼りだ。少しズルいけど、傷口は止めといてやる」

 

 随分馴れ馴れしいわねこいつ。けど、何か安心というか、信用してもいいようなその声音に、あたしは黒い空間の見えない足場に一歩を踏み出す。

 

 「なぁ」

 

 扉に手をつけようとした時に、謎の声から呼び止められる。

 

 「今度は諦めるなよ」

 

 うっ・・・。確かに、悔しくて、死にそうになって怖くて、あの瞬間私は諦めちゃったかも知れない。

 

 「覚えとけよ。死ぬのは簡単でも死を受け入れるのは簡単じゃないんだ。宮ちゃんにも伝えといてくれ」

 

 言うと目の前の扉が開く。その先は真っ白の空間。でも光とかが溢れ出るとかではなく、あたしを迎え入れるような不思議な空間が広がってる。

 

 「その先まで進んだら、とにかく走れ。一直線にな。そしてあの怪人は恐らく超強い。勝てなくても、諦めるなよ。さぁ、行きな」

 

 素直に言うこと聴くしか無い。まだ死んでいないなら、あたしは戦える、まだ守れる。

 

 真っ白の空間を駆けるとどこまでも先が見えない。でも後ろを振り向くとあの黒い空間へと続く扉は消えていた。

 

 (死ぬのは、簡単。でも、死を受け入れるのは簡単じゃない)

 

 そうかもね。あたしはニッと自慢の笑顔を作ると、そのまま走り続けた。気がついたら身体は私服から、制服、制服からヘヴンスーツへと早着替えみたいに姿が変わっていた。

 

 やがてあたしの姿は、自分でも見えなくなるほどの白い光に包まれ見えなくなっていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 神宮カエデの後ろ姿を見送ると、扉を閉める。

 

 謎の声の存在は真っ黒い自分だけが鮮明に写る空間で、姿は誰にも見えないものの、安堵のため息を漏らす。

 

 「もう一回・・・いや、二回かな・・・」

 

 もう何度かはこの空間で、自分の願いを伝えては見送るを繰り返してきた。そして謎の声はここに大きな未練や、強い想い、悲しい願いを叶える為に何度も見送っては、元の場所へ送り返す手助けを行ってきた。

 

 だがその手助けは謎の声にかなりの代償、すなわち魂の消費を受けていた。

 

 最初の一回は佐久間ギンジという男に扉をくぐらせた。次は甘白ミドリコ。その後も、たくさんの人を送っていた。

 

 ある一人は娘や妻との再開を望む者。

 

 またある人は病弱な身体から何事にも強くなれると望む者。

 

 さらには見た目はスケベな女性になりたいなどと望む者。

 

 そして今送った神宮カエデも正義の為に、まだ死ねないと望む者。

 

 「さて、あと二回・・・かも?で、次の人は・・・」

 

 スカイブルーの髪をした少女。宮寺レン。

 

 「ここは・・・」

 「宮ちゃ〜ん・・・お前はここで喋れるんか」

 「・・・!?」

 

 レンの目の前には誰もいない。見渡しても、そこに誰も居ない。

 

 「その呼び方・・・」

 

 レンを宮ちゃん等と、くだけた呼び方をする者は、この時代には誰もいない筈だ。

 

 聞き覚えのある懐かしくも嬉しいとも悲しみが押し寄せるその声に、レンは謎の声へその名前を叫ぼうとするも声がでない。

 

 正確には出なくなった。謎の声がやり直すチャンスを与えた希望だからだ。

 

 未来から過去へと、全てを根本からやり直させる為に送り出した希望の光だからこそ、ここでその名前は言わせない。

 

 (シル──!──ダー!)

 

 その者の名前は言える。出てくる。叫ぶ程に呼びたいその名前。

 

 文字として頭の中に浮かび上がるのに、言葉として言おうとすると霧の様なモヤが押し寄せ、喉から出なくなる。

 

 「ごめんな。まだ、その時じゃないんだ」

  

 謎の声はレンの目の前に扉を作る、行き先は先程見送った神宮カエデと同じ場所。

 

 「その扉をくぐれ。そしたらきっとお前は、あの子の力になれる」

 

 何を言っているのかわからない。

 

 レンはその者の存在自体が見えないものの、きちんと解っている。その者が誰なのか。

 

 涙が溢れ出てくる。もう泣かないと決めていたのに、止める事のできない涙がたくさん溢れ出てくる。

 

 「ごめんな。ごめんな。宮ちゃん」

 

 謎の声はしきりにレンへ謝罪の言葉を言い続ける。

 

 「ここじゃあ、他人の名前は言えないんだ。俺も同じでな。だからあの子としか言えないんだけど、その扉をくぐりな」

 

 優しくて強くて、ときどき怖いその声はレンへとずっと謝り続けている。

 

 「お前にしか頼めないんだ。頼む」

 

 その言葉を聞いて未来で見送ってくれた家族達の事を思い出し、レンは涙を拭うが、それでも止まらない。

 

 扉を開けるとその先は真っ白な空間。目を真っ赤にしながらレンはその扉をくぐる。だけど、何度も振り返りながらやはりその声の元へと顔を覗かせる。

 

 もう二度と会えないと思っていたその人に、再び会えたのだから。

 

 姿は見えなくてもレンには解る。その人物が、かつて未来で自分に全てを託してくれた人だということを。

 

 (ねぇ!声をださせて!あなたに、沢山話したい、ことが)

 

 自分に戦いを教え、自分に家族のありがたみを教え、命の大切さを教えてくれた人へ、全てを話しておきたい。

 

 ずっと会いたかった。忘れた事は無かった。声が聴きたくて、泣いた日もあった。あの大きな手で頭を撫でて貰いたくて、眠れぬ夜を過ごしたこともあった。

 

 (・・・)

 

 レンはずっと暗闇の方へ声にならない叫び声を上げ続けている。

 

 「早く行きな、宮ちゃん」

 

 次にレンが白い空間へと進んだ時に、扉を消そうとおもったが泣きじゃくる彼女はもう動かない。

 

 「いいのかそれで?お前をなんの為に送ったと思ってる。そんなんであのお友達を守れるのか?」

 「・・・ッ!」

 

 言葉に強みが出る。

 

 そうだ、レンの今の目的はカエデやトモカ、学校の人間を助ける事。

 

 「ここでくすぶってたら、本当に取り返しがつかなくなるんだぞ。いいのか?駄目だろ」

 

 背中を押された様な気がした。

 

 「俺ができるのは、少しだけ力を与えることだ。その扉を進んで、真っ直ぐ走れよ。止まるな」

 

 勇気付けられた気がした。

 

 「頼むぞ、希望の光」

 

 それから声は聞こえなくなった。気配もしない。

 

 (・・・ありがとう)

 

 未だ止まらない涙を指で拭い、レンは白い空間へ走り出す。

 

 あの存在が何だったのか、レンは知っている。

 

 なぜここに居るのか、それは解らないが、きっと助けてくれる為にここでレンを待っていたのだろう。

 

 自分だけが鮮明に写る真っ白い空間の中で、レンは思い切り走り出す。

 

 やがて自分の姿が見えなくなるその瞬間まで、果てのない空間を走り出す。

 

 「やっと行ったか・・・」

 

 謎の声は安堵と安心の声。かつての家族の成長していない背中をとおくから眺めると、心苦しい気持ちになるのを必死で抑える。

 

 今日で二人見送った。もうあと一回しかここに人を呼び出せない。

 

 もう、この先の展開を覗く力さえその者には残って居なかった。

 

 それ程までに魂の消費が大きい。もう油断したら簡単に消滅してしまいそうだ。

 

 「頼むぞ、宮ちゃん。未来を、──」

 

 その言葉を最後まで伝えることが出来ずに、謎の声の存在は深い眠りへと落ちていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 倒れていた筈だ。間違いなく殺されかけていた筈だ。

 

 それなのに、今自分達の身体には暖かい光に包まれ、凶刃を向けていた剣士の怪人を後方へと押しやっていた。

 

 「なにが・・・起こったのですか」

 

 カエデとレンのスーツが光り輝き、出血だけは収まり、スーツも修復されていく。

 

 「・・・なによ、これ」

 「私、なんで泣いて・・・」

 

 カエデとレンにしてみても、不思議な現象が起こっていた。

 

 「まだ隠し種があったということですね?」

 

 剣にオーラを纏わせながら、剣士の怪人が立ち上がる二人に剣を向ける。

 

 「すごい、力が・・・」

 「レン、ごめんね!あたし、まだ戦えるから!」

 「私もごめん。一瞬あきらめた・・・頑張ろう」

 

 二人の謝罪は志を持っていながら、死ぬ事で諦めを見せてしまった事によってお互いが謝った。

 

 光が収まると、ヘヴンスーツに違和感がある。

 

 「軽い・・・?」

 「私のは、よりビーム剣が強くなってる・・・?」

 

 怪人の剣が二人を分断するように振り下ろされるが、それに早く反応し、カエデのハイキックが剣士の怪人の顔面に命中する。

 

 「そのスーツといい、隠し種といい、やはり面白いですね・・・貴女達は退屈しない」

 

 顔面への蹴りは間違いなくクリーンヒットしている。カエデ自身もこのまま蹴り倒すつもりでいた。

 

 「次はこっち・・・」

 

 ビーム剣を腰に構えると、ビームの先端が上下に大口の様に開き、剣士の怪人に狙いを定める。

 

 「喰らえ」

 

 文字通りビーム剣が剣士の怪人を喰らいつき、その牙で捉える。

 

 (なにこれ・・・速いし、強いを越えている・・・)

 

 レンの頭の中に浮かんでいた新たな戦術には、予想以上の効果を発揮できていた。

 

 「さーらーにー!こっちよ!」

 

 ビーム剣を上に振り上げると、剣士の怪人を吐き出すように飛び出させる。その無防備な姿へ、カエデが両手を固めて剣士の怪人を殴りつけると、硬いタイルへと激突させる。

 

 「スーツが、能力が強化されてる・・・?のかしら」

 

 先程の苦戦が嘘みたく感じられた。自分の両手をマジマジと眺めて、レンとカエデがお互いを見やり笑顔になれる。

 

 二人無事ならばまた一緒に戦えるからだ。

 

 「さすが、お強いですね。やはり強敵と認めましょうか」

 

 剣士の怪人が立ち上がり、再び居合斬りの姿勢にはいる。

 

 あの攻撃を阻止しようと、カエデが一歩踏み出すもそれは間に合わず、廊下の辺り一面の壁を容赦なく斬り崩された。

 

 その行動自体間違いなく攻撃だが、カエデとレンには当てていなかった。

 

 開けた空間となった学校の一部は、この場にいる三人が三人が全力で戦うのに十分な広さとなる。

 

 「さぁ!本気で来なさい!ヘヴンホワイティネス!」

 

 剣士の怪人もいよいよ本気を出すのか、殺意と大きいオーラを纏う剣を持ち、カエデとレンに邪悪に見えるのにどこか美しい微笑みを向けて、カエデとレンもその大きな気迫に負けまいと、激戦が始まる。

 

 おそらくさっきまでのカエデとレンであれば、この気迫に負けていたかも知れない。でも今はスーツが強く、カエデとレンの背中を押してもらっている。だから引かない。

 

 このスーツの強化状態は、なんと呼べばいいのだろうか。

 

 今は起死回生の力と呼ぼう。

 

 「行くぞ!」

 

 二人の正義と一人の悪の激突が再度始まる。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ミドリコが血相を酷いものにし、自宅の扉を強く叩く。

 

 その音に何事かとギンジは扉の覗き穴を見ると、膝に手を突き前かがみで呼吸の荒いミドリコが居た。

 

 一瞬ヘルブラッククロスの刺客を疑ったが、いつもと違うミドリコのお様子を確認するや、扉を開く。

 

 今になって思うのは、自分で鍵を開ければ良かったのではなかろうか。

 

 「オイオイ、どうしたよミドリコ」

 「すまない、ギンジ。緊急事態だ」

 

 緊急事態。詳しい内容を聞けば、カエデ達の通う学校に怪人が現れたとの事。さらに学校関係者が複数名攫われている事も加味した話に、ギンジは頭を抱える。

 

 「ギンジ!君は未来を知っているんだろう!?どうすれば打開できる!」

 「ちょっと待て、今知ってる情報をいっぱい探してる」

 

 焦るミドリコの力強い両手が、ギンジの肩へ寄せられてガクンガクンと揺らされる。

 

 今日のイベントとしてギンジが把握しているものは特に無かった筈だが、学校になんの怪人が来ているのか、そこが気になる。

 

 「学校にはなんの怪人が来ているんだ?」

 

 まさかとは思うが、ギンジの知らない怪人が襲撃に来ていたら、またゲームと同じ展開にならなくなる。それどころか対策が取れない可能性もある。

 

 前回の魔法少女や退魔警察との出会いもそうだが、ここ最近はどうしてもギンジの思い通りに進まない事も多い。

 

 「済まない、私もそこは確認していない。どうにか出来ないか?」

 「どうにかって言ってもな・・・俺の知ってる【未来】とは違う展開が来たからな・・・」

 

 お互いにうーん、と考え込み、そして早くも決断を出すギンジ。

 

 「とりあえず俺に解らない事が」

 「君に解らない事があったら何を信じて戦えばいいんだー!」

 「怒るなよ。予想していない展開、知らない展開が来たら流石に俺にもどうしようも無いぜ。んで、話を戻すが、これからやることは超シンプルな考えだぜ」

 「それは?」

 「今すぐに学校に行ってカエデとレンを助けるんだ」

 

 結局の所そうなる。けど、今のギンジにもミドリコにも貴重な二人が戦えなくなったり、最悪攫われたりしたら打つ手がなくなる。そうならない為にもギンジの出した答えとしては、今すぐヘヴンホワイティネスの手助けに向かうという事。

 

 「君の知らない未来ってなんだ?予想していない展開?いったい君は何を言っているんだ?」

 

 今その質問にギンジは答えない。

 

 「今、俺の言うことを全部聞いてると、きっとヘヴンホワイティネスを助けられるなくなるぞ?」

 「・・・そうだな、少し冷静じゃなかった。済まない」

 「いいってことさ」

 

 二人して自宅を出ると、ミドリコの車へと乗ろうとするが、ギンジがミドリコの肩を軽く叩く。

 

 「なんだ?」

 

 振り向いたミドリコの目の前で、ギンジがニヤニヤしている。

 

 「俺、新しい能力が使えるンだよね。もしかしたら車より速いかもしれないぜ」

 

 腕組みをしながらギンジを見ると、ギンジは半歩後ろに離れて、力を溜める。

 

 「見せてやるぜ、コウモリの力!」

 

 人気のない駐車場でその言動は、間違いなく街で見る痛い人だ。もしミドリコがギンジを知らない人だとしたら、秒で職務質問を行うだろう。

 

 「痛っでええ!背中裂けるのかよこれええ」

 

 ギンジの背中からギンジの身長と同じぐらいのコウモリの羽が生えてくる。洋服と背中を裂き、ギンジは苦悶の表情をしている。

 

 「それが君の新しい力なのか?」

 「おうよ・・・飛べるか試したことはないけど、これで学校までひとっ飛びで行けると思うぜ」

 

 言うと、ミドリコに両腕を引っ掛け持ち上げる。海でやったお姫様抱っこみたいな形に、ミドリコは赤面する。

 

 「お、おい!恥ずかしいだろ!やめろ」

 「暴れるなって!あと今更恥ずかしがるな」

 

 カエデとはまた違う言い合いを楽しみつつも、ギンジは羽に神経が通っている事を確認すると、いつもの様に想像で身体を動かす。

 

 するとふわりと身体が浮き、強い風圧で砂利やゴミを飛ばしながら浮遊に成功する。

 

 「ほ、本当に飛べる・・・」

 「すごい力だな、ギンジ。ときおり君が人間であることを忘れそうだよ私は」

 

 そのまま浮遊し、マンションを超えると飛び方を理解する。

 

 どんどん沈みつつある夕日を眺めて、ミドリコは今が戦いでなければな、とも考えてしまう。

 

 「学校はどっちだ!」

 「ここから9時の方向だ!」

 「おっし飛ぶぞ!しっかり捕まってろよ」

 「こ、ここか?」

 

 赤面しながらもミドリコはギンジの首に腕を回す。

 

 これでは本当にお姫様になったような、気分にミドリコは顔が発火しそうになる。

 

 「や、やっぱ、肩でいいですか・・・?」

 「なんで敬語?いいから、とにかく落ちるなよ」

 

 そしてギンジとミドリコは誰よりも高く飛び立ち、野名神高等学校へと向かう。

 

 「・・・ギンジ」

 「なんだ?」

 

 ミドリコは一つ気になることがあった。ギンジの素性も気になることだが、そこではない。ギンジの戦闘についてどうしても聞き出しておきたい事があった。

 

 「・・・君に弱点はあるか?」

 「あー大多数の戦いじゃもしかしたら無理かもな」

 「そういうことじゃない。何か、私達には言っていない、君の弱点があるんじゃないかな、と思っていてな」

 

 これはミドリコが培っている推理力と、嘘をつく人間への見抜きも兼ね備える、公安警察としての技術。

 

 「例えば?」

 「・・・そうだな、戦いに関して言えば、狙わないやつがいるんじゃないかな」

 「どういう事だ?狙わないやつ?」

 

 首をかしげながらもギンジは飛行を止めない。

 

 「君は怪人や戦闘員との戦いではよく、前線に出てきてくれているよ思う。だけど、女性戦闘員との戦いはこちらに引き付けたり、カエデに任せたりしていただろ?」

 

 パトロールの際にも、女性にぶつかったら自分から謝りに言った、という話を風邪で倒れた時カエデからも聞いていた。

 

 そこである疑問が確信に変わるモノが、ミドリコの頭の中に駆け巡る。

 

 もしかして佐久間ギンジという男は、女性に攻撃出来ないのではないか? 

 

 「まどろっこしーな。本題を言えよ」

 「・・・そうだな、では単刀直入に言おう」

 

 ミドリコはギンジの顔を見つめてハッキリと言う。

 

 「君は、女性が苦手なのか?」

 「ハ?」

 

 きょとんとし、飛行が止まる。

 

 「図星か?」

 「いや・・・」

 

 目を反らすギンジの反応を見て、ミドリコは間違いないだろうと確信する。

 

 「苦手って訳じゃないんだけど・・・」

 「では何故、女性には引き気味の対応なのかね」

 

 ギンジは少し気恥ずかしいのか、うーんと頭を撚ると、直ぐに言葉を発する。その答えはミドリコが確信しているものとは程遠い内容が帰ってきた。

 

 「あんまり女の子を殴ったり、傷つけたくないんだよな。ホラ、今の俺が本気で手を出したら肉片とかにしちゃいそうじゃん?」

 「・・・え?」

 「俺は単純に女の子を傷つけたくないだけで、手はださないって事にしてるだけだぜ。苦手とかそーゆーんじゃない」

 

 ミドリコの顔が落書きみたいな形へ崩れる。

 

 (ええ〜・・・私の推理が全否定される理由だった・・・)

 

 顔をもとに戻すと、ギンジの顔を再び見る。

 

 「よほど強い悪・・・例えばリコニスみたいな奴とかが現れたら、どうんるか解かんないけど、けど、それでも女には手を出さん。男だしな」

 「その騎士道というか、精神論は嫌いじゃないが、それで君が刺されたらどうするんだ?」

 「・・・それでも、なるべくなら手は出さない。男は女に手をあげちゃいけないなんてこの宇宙が生まれた時代から決まってんだ」

 

 その言葉を聴くとミドリコは、ギンジへの好感度が大きく上がるような想いを感じる。

 

 「なるほど、やっぱり君の弱点は女、だな。今後女が敵として現れたら、君はどうするんだ?」

 「女には手を出さないから、お前らに任せるぜ。あ、でもリコニスだけは絶対ぶっ飛ばす」

 

 いずれ決着をつけるならそうするしかないからな、とギンジが言うと再び学校へと向かう。

 

 ギンジともう少しだけ話をしておきたいが、今はカエデとレンの手助けに行くことが大切だ。雑念を振り払うと、校舎が見えてくる。

 

 「あの学校か?」

 「そうだ!ここからは地上で行こう!」

 「このまま飛べばいいじゃねーか」

 「それはそうだが、何をされるか解らない。ここは用心して地上から行こう」

 

 ミドリコの言うことももっともだ。ギンジの知らない怪人が学校に居るかも知れないなら、慎重に行動する方が利口だろう。

 

 降りてから通学路に入り、コウモリの羽をしまうと、洋服と背中が再生していく。

 

 学校を目指すギンジとミドリコの目の前に、黒い眼球の刺繍が入ったマスクをつけ、パワードスーツに身を包む、ヘルブラッククロスの戦闘員達が、道を塞ぐ様に現れる。

 

 「居たぞ!佐久間ギンジだ!あの公安の女もいる!」

 「学校って今仮装パーティーやってるんだ?」

 「あまり楽しくはなさそうだけどな!」

 

 ギンジの軽口に合わせて拳銃を引き抜くと、戦闘員達を睨みつけるミドリコ。

 

 「で?地上からは行かない方が良かったんじゃないか?」

 「・・・済まない。こればかりは私の判断ミスだ」

 「まぁ、いいけど、よ!」

 

 ミドリコの正面から掴みかかろうと襲ってきた戦闘員を、軽く蹴飛ばすとギンジはミドリコの正面に立ち、ミドリコはそれに合わせてギンジの背後を守る為のフォーメーションに変わる。

 

 「ドクターがお待ちだ!おとなしくしろギンジ!」

 

 リーダー格の男が声を荒げると、戦闘員達が一斉に襲いかかってくる。

 

 「行くぞミドリコ!捕まるなよ!」

 「ギンジこそ、私を巻き添えにしないでくれよ!」

 

 ここまで暴動じみた事を起こして街の住人が何もしないのも不気味だが、ギンジとミドリコは学校へと向かうために、夕日の通学路で戦闘を開始する。

 

 「そこをどけえええ!!!」

 

 ギンジの叫びが、戦闘員達を震えさせるが、戦意を奪うまでは行かない。

 

 最悪面倒な場合は、バーナーの力で押切ろうと考えるのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 レンに自宅まで送ってもらったケイタは、自室のパソコンで度固化市の失踪事件、いや誘拐事件についてあらゆる手段で調べていた。

 

 インターネットニュース、掲示板、学校の情報通等、自分で調べられる物はなんでも調べてみた。

 

 あまり有力な情報は得られないが、掲示板の中には犬の頭をした謎のマッスルさんが現れるという情報を元に、どこで出現していたのかに重きを置いて調べる。

 

 ケイタはキーボードと、マウスを軽快に操り次々と出てくる嘘か真かの情報を手当たり次第に調べていた。

 

 あのマッスルさんも、カエデとレンの話で聞いていた、おそらく犬の怪人とかいう者だろう。

 

 「もっと、有力な情報を・・・調べなきゃ。僕だけ何もしないなんて、絶対駄目だ」

 

 自分の恋する女の子が命を賭けて、友達を助ける為に戦っているのに、自分だけ部屋のベッドでゆっくりしているなんて、ケイタの気持ち的にもありえない事だった。

 

 「僕にも・・・何かできることがあるはずなんだ・・・菊沢を助ける、何か手段や、方法があるはずなんだ」

 

 ケイタは役に立ちたいという気持ちから、自分なりの戦いの方法を模索していた。彼女達の愚痴を聴き、怪人の弱点を探したり、戦術の提案をしたり、傷の事に心配してあげたり、やれる事は沢山あった。

 

 けど今回のはワンランク上の領域での襲撃。

 

 菊沢トモカがどこで捕まっているのか、それとも犬の怪人がここ3日で目撃されている場所。このどちらかが、特定できればきっとヘヴンホワイティネスが勝つために必要な情報を得ることができる。

 

 何度もなんども違うリンクに入り、その先に現れる情報を全部頭に入れて行く。明らかに嘘と思われる物はスルーしていく。

 

 「この情報ならどうだ」

 

 新たな情報のリンクを踏むと、筋骨隆々の身体にブーメランパンツを履いた、犬と思わしき頭部をした後ろ姿がくっきり写る。

 

 そしてその写真に他に写っていたのは、赤いデコボコが波状に形の長く、大きいコンテナ。

 

 海上コンテナとでも言うのだろうか。輸入品等を輸送する巨大な船とかに入っているアレだ。

 

 「ん・・・?船?」

 

 この写真を保存すると、ケイタは長めの前髪をいじりながら考え込む。

 

 先ずこの写真に写る筋骨隆々の奴は、犬の怪人で間違いないだろう。

 

 そこに写るコンテナ、そして今ケイタの頭に浮かんだ、船という言葉。

 

 「あ・・・もしかしたら・・・」

 

 頭の中で、ケイタはあらゆる情報を紐付けながら考える。

 

 「・・・湾岸エリア」

 

 度固化市の湾岸エリアがケイタの中でピンと来る。この写真も100%信用していいか解らないが、調べる価値だけは絶対あるはずだ。

 

 「今電話しても・・・きっと出られないよね。いいさ、僕だけで行こう!」

 

 本音はワクワク感が勝っていたかも知れない。それでもレンの為に力になりたい。正義の為に役に立ちたい。

 

 抑えきれない心で、ケイタは母親の静止を振りきり、家を出る。

 

 ケイタが走り去る背中を見つめて、一人の少女が舌打ちをする。

 

 「あ〜あ・・・逃しちゃった。ま、どこに行くのか、検討はつくんだけどね・・・角倉くん・・・」

 

 少女の顔は悪魔の様に歪む。口元は三日月の様に曲がり、その黄金の鎧とラバースーツからは得も言われぬ妖艶さを醸し出す。

 

 「ミヤコの奴が言うから、偵察に来たけど、一番捕まえないと行けないの、ああいうタイプなんじゃないの〜?」

 

 ニヤニヤと笑いながらリコニスはケイタを歩きで追いかける。

 

 正義を根絶やしにすると言わんばかりに、悪の勢いが夕日の下で広がっていく。

 

 「逃さないよ、角倉く〜ん。ヘヴンホワイティネスね目の前で、八つ裂きにしてあげるよ〜」

 

 走り出したケイタには、この速度では追いつかないだろうが、リコニスはそれでも余裕な表情で住宅街を歩いていく。

 

 たまに自分を見るゲスな目線の人物は容赦なく、刀を刺して、何事もなかった様にケイタと同じ道を歩いていく。

 

 強気な学生も殺し、話しかけてくるサラリーマンも殺し、騒ぎを聞きつけた警察も殺し、変質者が裸を出しても殺す。

 

 軽々しく命を奪い、リコニスの顔がどんどん緩んでいく。

 

 殺害できる喜びも、弱いものを追いかける楽しみも、全てリコニスにとってこれ以上無い快楽だからだ。

 

 「ミヤコ言うことに乗るのもシャクだけど・・・今だけは踊らされてもいいわ。結局のトコ、楽しければなんでもいし〜」

 

 この作戦における情報操作も、実行力も全てはドクターミヤコの作戦と兵器、そして怪人、大幹部、手下を操る裁量で繰り出される作戦だ。

 

 ヘヴンホワイティネスを倒し、佐久間ギンジを連れ戻す。

 

 その為ならば、街の一つぐらい破壊しても構わないという、末恐ろしい考え。

 

 「ま、そのうちギンジちゃんもミヤコもこの手で壊しちゃうから、それまではただの楽しみってところね」

 

 死体を築き上げたリコニスの後方ではサイレンと人々の悲鳴が響き渡る。

 

 それを背に感じ恍惚な笑みを浮かべながら、リコニスは悪魔の様な雰囲気を出しながら住宅街を歩き去るのであった。

 

  

  

 

  

 

続く

 

 

 

 

 




お疲れ様です。アトラクションです。

後書き特に書くことないのよ

キャラネタ書きます

佐久間ギンジ
コウモリの怪人の力を使ってみたら背中が裂けて痛かった。

神宮カエデ
正義の志は大きいけど今回の戦いで一瞬諦めかけてしまった。

宮寺レン
実は結構寂しがりやで泣き虫。強く振る舞いたいけど女の子なんです。

甘白ミドリコ
実は今年で27歳。まだ彼氏が出来たことがない。
ギンジの精神論が気に入った。

角倉ケイタ
レンの為に力になりたいと考える。彼もまた正義の志を持つ一人。

剣士の怪人/黒井ヒトミ
黒井ヒトミとは世を偲ぶ剣士の怪人の擬態。
実は本当に副担任になる女性をのガワだけ貰った。
剣士の怪人はミヤコの笑い方を真似てくっふっふと笑うようになった。

リコニス
弱いものイジメが大好きというやばい奴。ギンジを壊したいとか言ってるけど、実は毎日ギンジの事を考えてる。

オーク怪人/紐の怪人
「ブヒ、最近出番ないぞ」
「ホッホッホ、私を忘れるとはいい度胸ですね」

次回も頑張って書きます!ヘヴンホワイティネスやギンジ達はどうなるのか!
感想等くださりますととても嬉しくなって踊ります。うちの犬が。
アトラクションでした!
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