正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです!

今回で温泉旅行編は終わりました。最後温泉要素無かったのが悔やまれる。

もし今後温泉要素入れるなら、もうちょっと楽しんでる所とか、温泉の安心感とか入れたい所ですね。

あと、プロットに無い事を入れてしまい、本編が無駄に伸びました(自分で無駄とか言うな)

それではどうぞ!


105・すぐそこに潜む悪

 ヘルブラッククロス大幹部ドクターパープルによる、神宮温泉街の襲撃。

 

 その襲撃は複数の大幹部と戦闘員を先導させ、なんの罪の無い人たちを無慈悲に襲った。

 

 しかし偶然にもその場に居合わせた正義のヒーロー、ヘヴンホワイティネスの登場により、大幹部と戦闘員達は歴史が崩壊させられるが如く、瓦解していった。

 

 今は赤鬼、ミドリコ、ケイタの三名が動けなくなった戦闘員を捕まえて、警察に連絡している最中である。

 

 カエデとレンとも一度合流したが、まだ残党が居るかも知れないとの事で、二人は温泉街の周辺を索敵している最中だった。

 

 カエデとレンがミドリコに突き出したのは、大幹部の二人であった。

 

 その2名を知らないわけではなかったミドリコは、大幹部の二人を見て眼を丸くするほど驚いたが、いずれにしても悪の組織に所属しているのであれば、彼らを見逃すわけがない。

 

 なぜなら甘白ミドリコは公安警察の局員であり、まっとうな正義の下に生きる戦士なのだから。

 

 大物政治家を自称する鶴ヶ峰ゴロウは、怪人として身も心も怪人として、悪に染まった。

 

 巷で有名なサーカス集団の頭領である中山ピリカも、大幹部として長らく悪事にその手を染めており、どちらもヘヴンホワイティネスによって粉砕された。

 

 「よし、これで最後だな」

 

 戦闘員を全員縛り上げて抵抗できない様にして、ミドリコが一息ついた。

 

 カエデ達と別行動を取った赤鬼、ケイタ、ミドリコの三名は、ヘルブラッククロスが用意sた飛行船の奪取、及び一般市民の開放。

 

 それぞれ怪我が無いわけではないが、赤鬼の一点突破による行動で、戦闘員は全て撃破して、ミドリコも自慢のライフルの腕とロケットランチャーの無数の発射により、敵の逃げる為の足の破壊に大きく貢献した。

 

 ケイタは自分の使える魔法により、ミドリコを援護しては一般市民の退路を作りながら、適宜戦線に戻る等をして、赤鬼の背後を守る等して、戦闘に参加していたのだ。

 

 「ミドリコ、流石の銃の腕だな!ヌハハ」

 

 高らかに笑いながら、ヘヴンホワイティネスの純白の旗を、激しい戦場となったこの場所に突き立てている。

 

 この旗を建てる事で、ヘルブラッククロスの襲撃に対応して、撃滅、ないしは撃退した事を知らせる、彼らなりの勝利の証を立てているのだ。

 

 「はぁ〜・・・生きた心地がしなかったよ・・・」

 

 ケイタも身体を震わせながら、無数に捕まった戦闘員達を下に見る。

 

 「なーに言ってんだい、旦那!旦那の援護が無きゃぁ、今頃俺っち達結構やばかったかも知んねぇぜ」

 「役に立てて良かったよ。でもあの銃の雨から、守ってくれてありがとう」

 「おおよ、旦那にもしもの事があったら、レンの姉御に何されるか分かったもんじゃねぇしよ。それに、俺っちが付いてるなら、必ず皆守らないと行けねぇしな」

 

 ケイタの肩に赤く太い豪腕を乗せながら、赤鬼が男同士で語り合う。

 

 ケイタとミドリコのピンチには赤鬼が前に出て、逆に赤鬼に対処出来ない事は、ミドリコとケイタが前に出て対処する。

 

 交代しながら戦って行けば、この三人は意外と戦略的にも相性は良いのかも知れない。

 

 「カエデの姉御達も残党追いも終わった頃だろ。そろそろ合流しようや。兄貴達も来るだろそろそろ」

 「ああ、そうだな。赤鬼、いつもありがとうな」

 

 ミドリコがはにかみながら、赤鬼にお礼を述べる。

 

 大人の美しさを見せたミドリコの笑顔に、赤鬼は牙を鳴らして答えた。

 

 これからもこの二人はどんな逆境も乗り越えていける。

 

 そんな二人を見ながら、ケイタは赤鬼とミドリコと共に、カエデ達と合流を開始するのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 温泉街の襲撃の後に警察が遅れてやってきた。

 

 この事態の収集にてんやわんやする様な状態だが、それを尻目にギンジ達もカエデ達と合流し、一度神宮財閥所有の旅館に戻ってきていた。

 

 ある一人の居ては行けない人を入れて・・・。

 

 「なぁぁんでリコニスが居るのよ!」

 「えー?ギンジちゃんが一緒に温泉入りたいっえ言うから〜?」

 

 カエデも変身は解いて、今はいつものご令嬢そのモノの姿をしている。

 

 リコニスも同じく、瓶底眼鏡をかけたサマーカーディガンを着た、どこにでも居る学生の姿をしている。

 

 ミヤコが誘拐されたあの日にお互い、仮の姿のまま面識を持っているカエデとリコニスはバチバチに火花を散らしている。

 

 そしてその矛先はギンジにも向いた。

 

 「ギンジ〜?どういう事かお話してもらえるかしら?」

 「ギンジ君・・・ひどいよ、わたしが居るのに・・・」

 「兄貴・・・」

 「いやいや違うって!一緒に入ろうとは言ってない!誤解を招く言い方するなぁ!」

 

 リコニスの頭をはたき、ギンジがこの話しに終着点を見つけようとする。だが、そんな事で終わる訳が無い。

 

 「ギンジちゃんがヌルヌルのお風呂一緒に入ろうって」

 「どどどど、どういう事!?一大事や!」

 「ミヤコも動揺しすぎだろ!っていうかそんなも事一言も言ってねぇ!」

 

 明らかにそんな事は言わない事は誰にでも分かりそうだが、それでもリコニスとカエデとミヤコの言い合いはギンジに飛び火し、より一層のヒートアップをしていく。

 

 「あはは、いつもどおりだね」

 「いやしかし、いつも通りって言っても、リコニスが居るのは駄目だろう・・・」

 「ギンジは、たまに不思議。ああやって、敵まで連れてくる事あるから、不思議」

 

 ケイタとミドリコとレンがギンジを中心とした、和気藹々としているがどこか殺伐としたこの状況が、どこか可笑しくなってくる。

 

 「で、なんであんたがここに来たのよ!」

 「カエデちゃ〜ん、仲良くしようよ〜・・・さっきも言った通りで、私はギンジちゃんに付き合えって言われたから、ここに来ただけなのよ」

 「はぁ!?つつ、付き合うって・・・」

 「違うぞ!全部誤解だ!」

 「何が誤解よ!あんたって男はいつもいつもあたしをイライラさせてもー!」

 「ゲハァ!?」

 

 カエデの痛烈な膝蹴りがギンジに見事に命中して、身体をくの字に曲げてギンジが倒れる。

 

 「ギンジ君ひどいよ!こうなったら、身体のすみずみまでわたしが洗ってあげないと・・・」

 「させる訳ないでしょ!駄目よ!リコニスも早く消えて!」

 「え〜」

 「え〜じゃないのよ!だいたいあんたは敵でしょうが」

 

 カエデのツッコミも当たり前なのだが、それでもリコニスは帰る気配が無い。

 

 「あ、そうだミヤコ」

 

 痛みから立ち直ったギンジが、ミヤコに声をかける。

 

 ギンジとリコニスが王騎士と戦っている中、ミヤコはドクターパープルと遭遇して、ある重大な話しを聴いたと言う。

 

 その話しをするには皆を集めてから落ち着いて話すと聴いていたのだが、リコニスとカエデがぶつかる事で少し有耶無耶になりかかっていた。

 

 「ミヤコ、その話しを聞きたいんだがいいか?」

 「うん・・・いいけど」

 

 ミヤコが口をムッとさせながら、ギンジの後にリコニスへと視線を動かす。

 

 「リコニスはもう知ってる事、なのかな?」

 

 紫に会って聴いた話しの内容に、ミヤコは少しだけ不安そうにリコニスの顔を見やる。

 

 「何を?」

 「ああ、その感じは知らないね。じゃあ赤鬼は?」

 「へぇ、俺っちですか?知ってる事はミドリコのスリーサイズと」

 「やめんかバカ者!」

 

 顔を赤くしたミドリコが赤鬼をガンストックで殴りつける。

 

 しかし効いていないのはいつもどおりだ。

 

 「何を聴いたのよ、ミヤコ」

 

 カエデも苛立ちを全面に見せながら、ミヤコに訪ねた。

 

 「ヘルブラッククロスがこれから行おうとしている事、なんだけど」

 

 それまで陽気な雰囲気を持っていたリコニスの表情に陰りが見える。

 

 ミヤコの口調に、全員が神妙な面持ちになり、その視線がミヤコに集中する。

 

 「ヘルブラッククロスが、まだ何かしようと、言うの?」

 

 レンも訝しむ顔つきで、ミヤコを見る。

 

 いつまでも悪事を働いている悪の組織について、これからもやる事は変わらないと、レンは頭の中でそう思っている。

 

 事実、今日だって襲撃を開始しては、温泉街を襲い、市民を危険に晒した。

 

 たまたま自分達がここに居合わせたから、街の損害だけで抑えられたが、もし自分達が居なかったらと思うと、レンもあまり良い気はしないのが事実だ。

 

 そんなヘルブラッククロスが、これからまた何をしようと言うのだ。

 

 「わたしが聴いた話しを、皆に話そうと思うけど良いかな?」

 

 艶のある黒髪を揺らしながら、左の怪人の瞳が色濃く輝く。

 

 眼鏡の裏側からその禍々しい強さを見せる事で、各々がミヤコに黙って目線を合わせる。

 

 「それじゃあ、話すよ」

 「ちょっと待って」

 

 ミヤコがようやく口を開こうとした途端、その言葉を止めたのはリコニスだった。

 

 「その話し、私が聴いても良いの〜?」

 

 特に何か悪意を見せているわけではないが、それでもこの場に居る所謂作戦会議、対策にも近しい話しをしようとしている時に、自分がここに居ても良いのか。

 

 「ああ、その事なら別に大丈夫だよ。リコニスがこの話しを聴いた所で、別に一人じゃ何も出来やしないし」

 「たはーっ。ミヤコってば辛辣ぅ〜」

 「あんまりちょけるなよリコニス。ま、確かにどんな事をしでかそうとも、こいつ一人じゃ何も出来ねぇな」

 「ここで暴れても良いんだよ?」

 

 事実リコニスはヘルブラッククロスの任務においても、ブリーフィングで企てていた行動通りに動かない。

 

 個として見れば驚異なのは、その戦闘力と相手の妨害能力に非常に長けている一方で、協調性がほぼ無いに等しいと見られているからだ。

 

 乱戦においても一人で突っ込んで中心を潰しに行く、無謀かつ強力な戦闘しかしていない。

 

 ギンジがやっていたゲームにおいてもそれが仇となって、警察連中に割とひどい目に合わされているシーンがあったのを思い出す。

 

 そうでなくても、この世界におけるリコニスは、ヘルブラッククロスの目論見通りに動かなくとも、結果的には敵陣に損害を出すと言う事に成果を上げているからこそ、組織としても重宝はされているのかも知れない。

 

 「たとえ、リコニスがここで暴れても、この人数なら、今の私達なら、絶対に敗けない」

 「えーん、レンちゃんまでそんな事言う〜。リコニスちゃん泣いちゃうよ〜ふえええ」

 「嘘泣きは止めなさいよ、白々しい」

 

 レンとカエデは相変わらず敵意を出している。

 

 ミドリコも一見ただ椅子に座っている様に見えるが、その右手は足に取り付けた拳銃を引き抜く準備を整えている。

 

 かつてはリコニスの刀に腹部を刺された事もある。

 

 あの時の躊躇の無さと、恐ろしく殺意と狂喜に満ちた悪魔の様な表情を忘れては居ないと、ミドリコはリコニスの動きに常に警戒している。

 

 「変な動きするなよ・・・事と次第によっちゃあ、俺っちもお前をぶっ倒す事も出来らぁよ」

 「きゃーこわいー」

 

 リコニスの背後に立った赤鬼が少し強めに言うと、リコニスは尚もおどけて見せる。

 

 「それじゃあ話すよ・・・」

 

 場が落ち着いた事を確認して、ミヤコはドクターパープルから聴いた話し・・・これからヘルブラッククロスが行おうとしている、ある大きな作戦をギンジ達に聞かせる。

 

 度固化市の破壊の目的はヘヴンホワイティネスを壊滅させる事。

 

 魔法界に進軍しようとしている事。

 

 9月6日頃には、虹創作市へと襲撃を開始する事。

 

 それからミヤコはもっと大きな事をヘルブラッククロスが行おうとしているかも知れないという話しをギンジ達に伝えた。

 

 「ヘルブラッククロスは・・・近いうちに、この世界そのモノを手に入れようと、躍起になるって事だよ・・・」

 「・・・本当にそんな事をしようってのか?」

 

 ミヤコから聴いた話しに半ば信じがたいとは想いつつも、ギンジはミヤコの話しに耳を傾ける。

 

 「んーまぁヘルブラッククロス(うち)ならやりかねないよねぇ〜」

 

 リコニスはその話しを聴いても、特に驚くとかは無く、楽観している。

 

 「度固化市の破壊だと・・・」

 

 ミドリコもその話しについては、なかなか信じがたいと言った感じだ。

 

 「え、破壊って・・・あの破壊だよね?」

 

 ケイタもおずおずと口を開く。

 

 「そ、そんな事・・・あいつらが出来る訳が・・・」

 

 カエデもどこか不安気にギンジを見やる。

 

 「俺たちが戦ってる組織が、いよいよ本腰入れて攻撃を開始するぞって事だな・・・」

 

 ごっこ遊びでヒーローをやっている訳ではない。

 

 敵もまたごっこ遊びで悪を自称していない。

 

 「・・・そんな事したら、私達の世界が、未来が・・・壊れちゃう」

 「うん、気持ちは分かるよ。わたしもそんな大破壊には反対かな。ギンジ君と生きられる未来が無いなら、そんな事には賛同しかねるよ」

 

 レンの苦渋を飲む様な顔を見ながら、ミヤコも少し俯いてしまう。

 

 「しかし、ヘルブラッククロスが魔法界まで狙おうとしてるなんざ、度し難いぜ。俺っちの命を救ってくれたあのキレイな世界にまで手を伸ばそうってのかい」

 

 赤鬼が牙を鳴らしながら語散る。

 

 実際に魔法界にヘルブラッククロスが進撃して来た事もあるが、あれは様々なイレギュラーが重なった結果だ。

 

 元は怪人四天王の骨の怪人が、ギンジ達と同じ時に紛れ込み、ヘヴンホワイティネスの最大の危機を迎えさせるほどの強敵となって立ちはだかった。

 

 「・・・オレキエッテ帝国の皆には色々世話になったしな。サクラにもこの事は伝えとかないとまずいな」

 

 ギンジがスマホを取り出すが、それをミヤコが静止する。

 

 「まだ、伝えないでいいよ。話しの本題は、わたし達にはやるべき事が多すぎると言う事があるの」

 

 眼鏡の汚れを拭き取りながら、ミヤコが話を続ける。

 

 ヘルブラッククロスのこれから行おうとしている事に対して、こちらは人数も圧倒的に足りていない現状がある。

 

 客室の居間ではそれぞれが、苦い顔をしながらミヤコの話に耳を傾ける。

 

 「先ず一番直近にある、虹創作市の襲撃。これには柏木タツヤの奪還も関わっているし、あの男がまた組織に戻るとなったら、また強敵が立ちはだかる事になるよ・・・」

 「・・・柏木・・・ッ」

 

 ミドリコからしてもかなり面白くない話だ。

 

 「そして魔法界、ギンジ君達が行ったっていうその世界に、ヘルブラッククロスが進撃を開始したら、もっと大変な事になるし・・・」

 「そらぁ、絶対に止めさせたいわな」

 

 赤鬼も険しい表情をしている。

 

 「そしてわたし達の住む度固化市の破壊・・・」

 「そんな破壊させたら、俺の望むハッピーエンドも見れなさそうだ」

 「ううん、それだけじゃないわよギンジ」

 

 ギンジの隣でカエデが口を紡いだ。

 

 「あたし達をおびき寄せる為に街を壊すなんて、そんなの考えるだけでも怖気がするわ。それに、あたしはレンの未来を守る為に戦いに身を置く事にしたのよ・・・レンの未来の世界と同じ破壊をさせたら絶対に、絶対に・・・」

 「カエデ・・・」

 

 カエデは少し泣きそうな声をしている。

 

 度固化市を破壊されたら、きっとヘルブラッククロスの完全勝利に終わる。

 

 そうなれば守る為の未来も、ギンジの望むハッピーエンドも・・・。

 

 「・・・カエデ、私達も同じ考えだ」

 「カエデ、絶対に阻止しようね」

 

 肩を震わせるカエデに、ミドリコとレンが優しく声をかける。

 

 もうこんな大事で彼女達に心労を大きくはさせたくないと、ギンジは両拳を強く握る。

 

 元々はこの場に居る人間は、こんな戦いに巻き込まれなくても良い人達だった筈だ。

 

 ヘルブラッククロスの存在がなければ、こんな事にはならなかったと言うのに・・・。

 

 「でも、最後までやるって決めたんだから。あたし達は絶対に悪に屈しないわよ」

 

 薄眼に溜まった涙を拭き取って、カエデは強く宣言する。

 

 「ふーん、そんな事考えてたんだ、総統って」

 「リコニス・・・」

 

 今の話を聴いてもあっけらかんとしているリコニスに、カエデは睨みを効かせる。

 

 「ヘヴンホワイティネスをおびき寄せる為に破壊、って事は〜、もう打つ手が無いんじゃないかなぁ〜?」

 「何が言いたいのよ」

 「カエデちゃん達ヘヴンホワイティネスを倒す為に、世間に姿を出すって事は、今の組織の最大の敵と思われているみたいだけど、もうそういう脅しを使わないと、正々堂々と戦えないって事なんじゃない?知らないけど」

 

 自分の爪の見ながらリコニスが、何か確信めいた事を言い出す。

 

 「ま、どうするかはお任せするけど。私は正直、本能のままに暴れたいだけだしね。その為にこの組織に居るからね〜」

 

 ニタリと笑えば、暴れられるのかと警戒を強くするカエデだが、リコニスはいつもの姿になる気配は無く、ただただほくそ笑んでいる。

 

 「私達ヘルブラッククロスは、力で優劣を決める世界を創ろうとしている訳だし、それぐらいはしないとじゃない?」

 「だからそんな事あたし達がさせないわ・・・絶対に」

 「それでもやるよ、この組織は」

 

 リコニスのその言葉には誰もが頷いてしまう。

 

 ヘルブラッククロスはやると決めればとことんやり続ける。

 

 略奪も、誘拐も、破壊も、洗脳も、ありとあらゆる非人道的な行いを必ず発動しては、確実に日本と言う国を転覆しようと、その力を伸ばしに行くに違いない。

 

 現にレンの居る未来ではそれが叶ってしまっているのだから。

 

 「でもよ、何があっても俺たちは敗けるつもりは無いぜ。たとえ街が壊されたとしても、俺が信じてるヘヴンホワイティネスは絶対に悪事を止めて、ヘルブラッククロスの野望をぶっ壊し返してやるよ」

 「自信たっぷりだねぇ〜ギンジちゃん。なんでそんな先の事、ギンジちゃんに分かるの」

 

 この先何があってもギンジは自分達だったらヘルブラッククロスを撃破出来ると信じている。

 

 サングラスに隠れていても、強い眼差しをしているギンジに、リコニスを始め、ミヤコとカエデも眼を離せないでいる。

 

 「なんでかって?そんなの決まってるだろ」

 

 一度はヘルブラッククロスの怪人として生きた男は、他の誰にも無いある自信があった。

 

 今ヘヴンホワイティネスとして生きる、人間であると信じている男は、リコニスに向かって、おおよそ正義の使者とは思えない凶悪な笑顔を見せる。

 

 「俺は未来人じゃないが、未来を知ってるからな。かならず俺たちが勝つ」

 

 ギンジのお決まりの言葉に、カエデ、ミヤコ、リコニスがドキッとした表情を見せる。

 

 驚きも含んでいるが、それ以上に信頼がある事に好意的な表情を見せている。 

 

 「ふーん?下僕の癖に言うじゃない!」

 「くふふ、ギンジ君が言うなら、本当に達成出来そうだね」

 「・・・」

 

 不思議とギンジが言うなら皆がそうだと思わせる雰囲気に、リコニスが面白そうに口角を釣り上げる。

 

 ギンジと一緒に居れば、気まぐれもさほど起こさないリコニスが、少しだけ、この人達と一緒に居たいと思ってしまいそうな、謎の安心感がある。

 

 (・・・忘れちゃ駄目だね。私とギンジちゃんとじゃ、生きる世界が違う。ギンジちゃんは私が殺したいしね・・・)

 

 淡い殺意をもたせながら、リコニスはギンジの事をジッと見つめる。

 

 (あ・・・)

 

 そこでリコニスは気づく。

 

 今までギンジに向けていた感情が、何なのかを知る事になる。

 

 だけどギンジの左右に立つ二人の少女を見て、一瞬でその想いを隠す事にした。

 

 ギンジの事を考えて、ギンジの事を想う事、ギンジの為に全てを捧げて殺し合いをしたいと思う事も、全て・・・。

 

 (あーそっかそっか・・・こういう事なんだね)

 

 でもその感情が何かを知った所で、情に絆されて組織から離れるなんて事はしないし、出来ない。

 

 どこまで行ってもリコニスは、地獄から開放される事はない。

 

 どこかギンジが遠くに居る様に思えて、それでも口角を上げたままリコニスは自分の想いに蓋をする事にした。

 

 「よーっしそうと決まれば、色々作戦考える前に!」

 「温泉だね、ギンジ?」

 

 ケイタもギンジのこれから言おうとしている事が分かったのか、恐れを見せている表情をなくして明るくなっていた。

 

 「・・・ほら、リコニスも今だけは付き合えよ。同じ話を聴いた仲だろ?」

 「冗談じゃないわよ!リコニスは駄目!」

 「くふふ、そうだね駄目だよ。裸になった途端に斬り殺されるよ!」

 「・・・クヒヒ、良いよ。今回だけは組織を忘れて付き合ってあげるよ。そういえば今の私ってば、休暇中だったんだよ」

 

 だから今だけはこんな楽しそうな連中と一緒に居る事で、自分の気持ちを少しだけ出しておこうと、リコニスは思うのであった。

 

 とは言えど結局カエデとバチバチに言い合いを繰り返し、本当に戦闘になるのでは無いかと肝を冷やすギンジであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「それじゃ〜またね〜ギンジちゃん」

 「おう、またなリコニス」

 

 9月2日。

 

 一泊2日の温泉旅行も夜が近づき、各々の帰り路に付く頃、リコニスは何事も無かったかの様に、自分の組織に帰ろうと手を振っていた。

 

 見送りに来たのはギンジとミドリコだ。

 

 まだ警察達と街の人々との喧騒も聞こえてくるが、そんな街のど真ん中を平然と歩き去る後ろ姿を見て、ギンジとミドリコはほんの少しだけ寂しさも覚える。

 

 色々と狂っているが、こうして見ればただの少女となんら変わりの無い後ろ姿に、喋り方も、幼さも、あどけなさも色々混ざって、自分達のわがまま令嬢とそんな変わらないからだ。

 

 リコニスが人混みを抜けて姿が見えなくなった瞬間、ミドリコはいつもと違うギンジの様子に感づいていた。

 

 ギンジが見送りにミドリコを連れてきたのは、何か話したい事があるのではないかと、なんとなく警察の勘で思ったからだ。

 

 ジトッと見つめるミドリコの視線に気がついたギンジは、一瞬背筋を震わせるが、すぐにサングラスのズレを直しては、ミドリコに向き直る。

 

 「何か、話したい事でもあるのか、ギンジ?」

 「ああ、ミドリコには話しておかないと行けない事があってさ」

 

 こんな相談でもなんでもない事だが、それでも人としての超えては行けない一線を超えてしまったギンジは、ミドリコにだけは相談しておかないと行けないと思ったからだ。

 

 「いつの日か・・・レイナのとこの教会でさ、クソジジィ共と戦っただろ?」

 「あ、ああ。そんな事もあったな。それがどうしたんだ?」

 

 ギンジの言葉に、あの日の内容を思い出す様にして、ミドリコが小首を傾げる。

 

 「あの時、俺がジジィを殺しそうになった時に、ミドリコが止めてくれただろ?人間として生きていて欲しいからって」

 

 あの時ミドリコが止めてくれていなければ、怪人の能力を好き放題に使って、悪人を悪として成敗したならば、きっとギンジは後悔する事になる、と。

 

 自分を人間と信じて生きているギンジには、ほとんどの怪人には持っていない心がある。

 

 その心に従うならば、自分は怪人では無く人間だと、主張し続けているのがギンジだ。

 

 最近はそんな事もあまり言わなくなってしまっているが、それでも人間である事を忘れては居ないのだ。

 

 人の身は怪人でも、心は人間であると、言い続けて来て、命を奪う事をしないとミドリコに止められたから約束していたのに・・・。

 

 今日、ギンジは怪人を自分の手にかけてしまった。

 

 自分の顔がなんとなく情けない様に思えて、ギンジはミドリコから眼を逸した。青みがかった夜を受け入れた大空を見上げて。

 

 「・・・俺さ、今日怪人を殺したんだ」

 「・・・」

 

 今までだって怪人とは戦ってきたが、それは死なずに心を自分の心に同化させる事で、まだ【生きている】のだ。ギンジの心の中に。

 

 しかし今日殺してしまった怪人は、心すら粉砕し、擦り切れて摩耗した魂を自分の心にしまう様な、とても気持ち悪いままなのだ。

 

 「・・・どうして、そんな事を?」

 「・・・結局、俺も同じなのかもな。いくら自分を人間だなんだと言っても、俺は・・・」

 

 わなわなと動く自分の両手を広げて見て、拳を作ってきゅっと締める。

 

 「どこまで言っても怪人、なのかも知れない、なんて」

 

 ギンジの言葉にミドリコは何も言わない。

 

 ただ苦しい思いを吐き出す、ギンジの次の言葉を待っている状態になっている。

 

 「あの・・・上手く言えないんだけどさ。約束、守れなくてごめん・・・どう言っても俺のした事は許される事じゃないし、戦いが終わったら・・・」

 「ハァ、ギンジ。お前は何も解っていないな」

 「え・・・?」

 

 大きなため息をついたミドリコは、腰に手を当てながらギンジを見る。

 

 「相手はヘルブラッククロスの怪人なのだろう?君が認めた奴ならば、手をかけるのは駄目だが・・・最早常識の通じない様な怪物が相手ならば、そうしないと行けない事情、状況だって把握出来るさ」

 

 蒸し暑い温泉街の喧騒が、少し遠ざかる様な気分で、ミドリコはギンジと一緒に大空を見上げた。

 

 「君のそのふとした所で、他人を思いやれる優しさは素敵な所だと思うよ。勿論、本当ならば誰が相手でも命を奪う行為は到底許される事じゃない」

 

 ギンジが空では無く、ミドリコに向き直り、ミドリコもまたギンジへ向き直る。  

 

 その上でミドリコがギンジの胸に軽く拳を当てた。

 

 痛くないし、むしろ少しだけ弱々しい。

 

 「この拳は、私との約束を守れなかった罰だ」

 「・・・」

 「そして、全てが終わったら・・・」

 

 何を言われるだろうか。

 

 もしかしたら、私達の眼の前から姿を消せ、とでも言われるだろうか。

 

 不安な気持ちのまま、一瞬の静寂が何よりも恐ろしく感じた。

 

 「教会で懺悔してこい、ギンジ」

 「ミドリコ・・・」

 「私がかつて好きになった男の為だ。私の信じる正義の為に、もう一度信じてみようと思うよ。これは、警察としても、正義のヒーローとしてもだ」

 

 ミドリコの顔は晴れやかなモノだった。

 

 「だから、この事は誰にも言わないでおく。もし、どんな結末であろうと、そんな事をカエデが許してくれるとは思えないしな。ギンジは、あの神宮財閥の社員、っと言う事にもなっているしな」

 「・・・」

 「だから、約束は守ってもらう。何があっても、どんな奴が相手でも、もう絶対に殺す事は無いと。そして全部終わったら、懺悔をして・・・」

 「悔いの無い人生を歩め、ってんだな」

 「ふふっ、そうだ」

 

 今回ばかりは糾弾されると思っていたが、ミドリコには許して貰えた。

 

 どんな形であれどギンジは手を悪に染めた事には違いは無いが、それでもギンジを、今この瞬間に裁ける法なんて存在しないのだ。

 

 そもそも怪人に通じる法律なんて無いようにも思えるのだが。

 

 「それじゃあ、戻ろうか。これから色々やらないといけない事もあるのだからな」

 「ああ・・・なぁ、ミドリコ」

 「ん?」

 

 少し先を歩き出したミドリコを、呼び止めるギンジ。

 

 「・・・ありがとう」

 「ふっ、気にするなよ。私達は仲間なんだからな」

 「ありがとう・・・」

 

 ギンジは許されたわけではないが、王騎士はきっと赦されただろうか。

 

 自分の心に宿った、黒い衝撃はギンジの細部に宿る力となったが、ギンジはこの力を報いの意味も込めて、使用しないと心に決めるのであった。

 

 「さぁ、戻るぞ!きっとカエデがリムジンをつけて、カンカンになってるに違いない」

 「うへぇ、そりゃ一大事だ!早く帰ろうぜ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 9月3日、午前0時──。

 

 人が一人入れそうな大きさのシリンダーが何本も立ち並ぶ、機械的な異様な空間に、紫は小さなマントを翻しながら、静寂と暗闇が支配する研究室を歩く。

 

 「・・・」

 

 仮面の下の顔は誰にも見えない。

 

 誰にも見せた事の無い素顔だが、きっとその顔は歪に歪んだ笑みをしているに違いない。

 

 自分でも不思議とそう思えると、紫は腕をプラプラと動かしながら暗闇を歩き続ける。

 

 「師を超える事は敵わず、しかし、師に近づく事は出来た」

 

 誰にも聞こえる事も無く、その声は静寂に飲み込まれて、消えていく。

 

 「・・・まだまだ期待してますよ。ギンジさん」

 

 顎に手を当てて、紫は師であるドクターミヤコの最高傑作の、佐久間ギンジに期待を乗せる。

 

 「きっと・・・王騎士の力が、彼を強くする。お喜びください、ドクターミヤコ!」

 

 暗闇の向こう、行き止まりにあるのは小さな机。

 

 その机の上には、無数の書類が散らばっており、真ん中には釘で打ち付けた、一枚の資料があった。

 

 その一枚の紙に記されているのは、無数の数字の羅列と、ギンジの身体データに、進化の怪人としての次なる進化を促す条件がミヤコの文字によって記されているモノだ。

 

 これはカエデハウスから触手の怪人に持って帰って来させた、ドクターミヤコの研究日誌の一つだ。

 

 そんな資料のほとんどはギンジのモノばかりだったのだが。

 

 しかしどれだけ進化の条件を模索していても、ギンジはこれ以上怪人の細胞が強くならないとも記されているモノがほとんどの中、この釘で打ち付けた研究資料だけが、更なるステータスアップを望める希望が記されていた。

 

 「ククク・・・黒い衝撃は、怪人に作用する熱源と、それに応じて波動を飛ばす能力。私の仮設が正しければ、きっとギンジさんは、怪人としても、ヒーローとしても強化されて行くはず。成長が止まるならば、上を目指せるように、助力すれば良い・・・」

 

 釘で打ち付けた資料の、少し先。テーブルにくっついた壁に面する所では、もう一枚、壁に釘で打ち付けた、ドクターパープル用の研究資料。

 

 そこに記されているのは、黒い衝撃と、怪人のフェーズについての事。

 

 更に細かく記されているのは、怪人のレベルについて詳しく残された、紫のレポート。

 

 「・・・ああ、楽しみだ」

 

 黒く、光も通さない暗闇の中で、紫は期待をもう一度ギンジに乗せる。

 

 ギンジの身体と心に入ったであろう、黒い衝撃。

 

 それが怪人の強化を促せるのであれば、きっとヘルブラッククロスに所属する怪人達も強化に使える。

 

 そうして到達する先は、地獄を完璧に体現する事が出来る、強き力を持った怪人達の姿。

 

 怪人達の強くなった姿を想像して、そしてギンジも強くなる事を想像して、紫は研究者として遥かな高みに、歪な笑みを見せた。

 

 怪人達の行き着く先は──。

 

 そしてすぐそこに潜む悪の存在を、紫以外は誰も知らない。

 

 「行くぞ・・・フェーズ4の世界へ・・・!」

 

 

続く 

 

 




お疲れ様です。

終盤と言う事もあり、もっとドクターパープルを掘り下げたい&もっと悪の組織らしい壮大な事を企てたいって事で、このお話を追加しました。

元々はドクターパープルがヘヴンホワイティネスの眼の前で映像を公開する、みたいに考えてましたがそっちは速い段階でボツにしていたので、こういうのも入れる為に、温泉旅行編になりました。
まぁ、本当は作者が友人の結婚式で箱根行っただけなんだけどね。だから温泉になりました。

キャラネタ書きます

佐久間ギンジ
ミドリコには言えないと思いつつも、やっぱり正直に話した。

甘白ミドリコ
さり気なくギンジの事を好きだったと言ったが、普通にスルーされて可笑しくなった。
ギンジの犯した罪を肯定する気は無い。
相手が怪人だからOKとか、ヘルブラッククロスだからOKだとかそういう風には思っていない。今後の事は、ギンジに懺悔させる事として、この秘密は仲間として墓場まで持っていく事にした。

紫/ドクターパープル
周りにドクターパープルと名乗らせて偉ぶっている。
ギンジに入る黒い衝撃は、きっとミヤコの研究の課題になっていたに違いないと、信じている。
これによって仮設が立証されれば、自分の怪人達をより強くする事が出来ると研究している。
フェーズ4にしていく事で、本当の意味でミヤコの敵として立ちはだかる事が出来るから。
鈴村ミヤコが最後に戦う敵

・・・
次回、新章・鏡の怪人編、始まります!
9月6日、監獄襲撃のヘヴンホワイティネス視点でのお話となります!
あの時、ヘヴンホワイティネスがどうしていたのか・・・

それではまた次回!応援、感想、お待ちしております!

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