正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちは、アトラクションです。

今回から新章突入となります。

怪人四天王が一人、鏡の怪人も久しぶりに登場!そして彼女が主要となるお話になります。

それではどうぞ!


鏡の怪人編
106・怪人四天王・鏡の怪人


 

 2022年、9月6日。時刻はわからないが、もうすぐ夕方になる頃だろうか。

 

 日本と言う国の中でも、世界的にも類を見ない、平成の時代に起きた事件はこの先の歴史に残る、大きな事件となった。

 

 それは政府が建てたと言っても過言でもない、歴史的にも古くから法と秩序を守られていた虹層作市の破壊と、そこに住まう人々の洗脳と虐殺。

 

 ひとつの市そのモノを手中に収めた、ヘルブラッククロスが世に広げた大事件は、その悪の組織の存在を世間に知らしめ、またどんな国も持たない兵力である怪人の存在すらも、この世界に教える事となった。

 

 「くっそ〜・・・」

 

 その存在を噂程度にしか知らなかった男が、荒れ果てたアスファルトを歩きながら、二丁のマシンガンを持っている。

 

 無精髭を残し疲れた顔で居る男は、日本軍の制服を汚しては、足取り重く歩いている。

 

 男の名前は銀葉イオリ。

 

 虹層作市の大襲撃に合わせて政府からの要請に応じて、現場に派遣されたトップクラスの実力者だった男だ。

 

 虹層作市から少し離れた人気の無い道を歩き、彼は一つ大きなため息を放つ。

 

 2000を超える自分の部隊は、あっという間に蹴散らされ、今仲間達がどうなったのか知る術が無い以上、なんとかして政府の本拠地に戻らないと行けない。

 

 ヘルブラッククロスの戦闘員達を見たのは初めてだったが、アレらはかなり異質な精神状態にも思えた。

 

 先ず、銃を恐れない事。

 

 戦車にすら平然と前に立ちふさがり、実際に武力行使を告げた攻撃にすら怯まない。

 

 おまけに怪人と呼ばれる、これも噂程度にしか聴いていなかった、架空の生物を眼にして、イオリは逆に戦々恐々とした。

 

 仲間と共に、前だけを見て強行撤退をした事で、仲間はもしかしたら怪人に・・・女性の部下はヘルブラッククロスに連れて行かれたか・・・。

 

 考えても仕方ない事だと、そんな風には片付けずに、イオリは悔しさからサブマシンガンのグリップを強く握る。

 

 「・・・でも、あんな怪物達に、我々は勝てるのか・・・?」

 

 日本軍の技術班の粋を集めて造った兵器は、どれも通用していない様に思えた。

 

 事実、効力があるのであれば、今頃撤退なんてしていないのだから。

 

 汚れた日本軍の迷彩軍服を、身体に張り付かせながらも、イオリはひたすら、ただひたすら疲れて重くなった足を動かして、虹層作市からもっと遠くへと離れていくのであった。

 

 「このままじゃ駄目だ・・・アレと戦うには・・・もっと常識外れの戦力が必要だ・・・それも政府じゃ駄目だ。同じぐらい常識の無い怪物が必要だ・・・」

 

 イオリが苦い顔でブツブツ言いながら、沈み征く陽を見上げて・・・絶望に染まった虹層作市を背に、彼はひたすら逃げ続けるのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 9月6日の昼頃。

 

 俺、こと佐久間ギンジ(超強いウルトラハイパーさいつよ怪人)の居る場所は神宮亭に用意された、俺の小さな自室で、ミヤコが用意してくれた研究資料やらなんやらを読みながら、ヘルブラッククロスの動きに警戒している最中だ。

 

 俺たちは温泉旅行も終わってからと言うモノ、ここ数日ばかりは、毎日ニュースやオークの奴と連絡を取り合ったりして、ヘルブラッククロスの動向を逐一確認はしていた。

 

 学校に行ったカエデ、レンをケイタを見送り、ミドリコも本庁に出勤し、俺と赤鬼とミヤコは常に街の異変を確認しつつ、何かれば早急にぶっ叩きに行くと言う、いつの日かの日常を繰り返していた。

 

 ヘルブラッククロスがこれから行おうとしている事。

 

 それは俺たちの住むこの度固化市を破壊すると言う目的。

 

 その為には、虹層作市っていう聴いたことの無い街の破壊をし、更に戦力増強の為に魔法界に進撃、および侵略。

 

 最後に諸々準備を整えて、この度固化市を、俺たち諸共、もしくは破壊後に一網打尽の大作戦を考えているらしい。

 

 それがもし本当なら、俺達は今すぎに仲間達に連絡して組織を叩きに行った方が良いとも俺は思う。

 

 「はぁ・・・」

 

 俺の望むハッピーエンドの為に、色々考えていたけどまさかこkまで話が小難しくて、大事になるとは思ってなかったぜ。

 

 そりゃぁため息も出ますわ。

 

 「兄貴〜、アイス食べようぜ」

 

 のんきな声とのんきな事を言ってくるのは、最初はイロモノ、今は俺達の頼れる仲間の赤鬼先生だ。

 

 何故先生かって?気分だよ。

 

 「アイス?またあのおっぱいアイスでも食べるのか?ミドリコに殺されるぞ」

 「ヌハハ、ミドリコは俺っちにはそんな事しないぜ」

 「いつもガンストックで殴られてるじゃねぇか。アレ痛くないの?」

 「ヌハハ、痛いぜ」

 

 痛いのか・・・いやまぁアレ痛いよな。普通なら死んでるぞ。

 

 「んな事より兄貴、サクラのお嬢には連絡はついたんですかい?」

 「ああ。あいつも勿論協力してくれるってよ。サクラとレイナには魔法界絡みの諸々を任せる事にしたよ」

 「へぇ。そいで、ルカにゃぁ、何をお願いするんで?」

 「ルカは、いつもどおり意対化市の防衛を任せてる。どんな敵の数でも、今のルカなら一人でギリ街を回りきれるんだと」

 

 温泉旅行から帰ってきた俺たちは、その翌日にすぐに皆に連絡を取って、来れる奴には皆神宮亭に来てもらった。

 

 熊沢レイナ。相変わらず八頭身美人で、俺の退魔師勧誘も諦めていなかった。

 

 小町サクラ。この現代に生きる魔法少女であり、俺たちヘヴンホワイティネスにも協力的で頼れる心強い人だぜ。

 

 トレードマークは黒猫の様な杖と、桃色の髪!

 

 月島ルカ。ゲームの世界には居なかったけど、どうやらヘヴンホワイティネスの世界観設定的には存在している、無数のヒーローの一人らしい。イレギュラー的存在だけど、俺たちの味方で良かった。

 

 今も頼りになるぜ。防御には絶対の自信があるからな。

 

 オーク怪人。こいつは未だに動きが読めない、掴みどころの無い様な怪人だが、一応味方・・・?なのかな。

 

 俺には勝てないけど、めっちゃ強い。俺には勝てないけどね。

 

 そして、味方はまだまだ居た。

 

 暴力の怪人、拒絶の怪人、血の怪人。

 

 東度固化市に居を構えて、大規模なアーケード街を様々な人種で構成された、巨大な要塞を築き上げたレジスタンスだ。

 

 あ、ここで言う人種ってのは白とか黒とかって意味じゃないぜ。

 

 種族の事だ!

 

 ヘルブラッククロスの怪人。

 

 ゲヘナミレニアムの魔人。

 

 マージ・ジゴックの闇人。

 

 そしてある一定数の戦える人間の事を、超人と呼ぶらしい。

 

 うちで言うなら甘白ミドリコロケットランチャーポリスメンとか。

 

 ああ、あとケイタも一応その部類か?

 

 そしてヒーローと呼ばれる部類はかなり少ないけど、さっきも言った様に、レイナ、サクラ、ルカに加えて、カエデとレンもそのヒーローの部類に入る。

 

 なんと俺はそんなヒーローと肩を並べて一緒に戦ってるんやで!どや、すごいやろ!

 

 で、そんな頼りになる仲間達を集めて、皆でヘルブラッククロスの襲撃には気をつけて行こうなって話を昨日したばかりだ。

 

 どう転ぶかはわからないけど、絶対に全部の悪事を阻止してみせるぜ。

 

 「もう、誰かが悲しむ世界を創らない様に、俺たちがしっかりしないとだよな」

 「へい。俺っちもこの身体の力を、全部使っていきやす。兄貴、遠慮なく命令してくれよな」

 「よせよ、命令なんて。言葉は悪いかも知れないけど、俺はお願いしてるんだぜ」

 「ヌハハ、だったら兄貴のお願いにはなんでも答えねぇとな。弟分としても、舎弟としても、子分としても、手下としても頑張らねぇと」

 

 赤鬼の気合の入った鼻息と、牙を強く打ち付けるその姿が勇ましい。

 

 角もそうだけど、マジで強いからなこいつ。

 

 「おう、頼りにしてるぜ」

 「俺っちが言うんもアレですが、兄貴の事も頼りにしてますぜ」

 「はは、任せとけ」

 

 会話がそれで終わると、俺はもう一度ミヤコが用意してくれた、資料に眼を通すが・・・なるほどなるほど。ふむふむ。

 

 なんて書いてあるのかわからんなコリャ。

 

 「兄貴」

 

 まだ居たのか赤鬼。そろそろ身体鍛えるなりなんなりで、戻れよ。

 

 「アイス食べやしょうぜ」

 「・・・ハーゲン○ッツにしとけよ」

 「ジングウザイバツの高級アイス、食べちゃいやしょう」

 「カエデにバレたら殺されるぞ」

 「オナゴ達に殺されるのが怖くて、アイスが食べられるかってんでい。ほれ、兄貴、行きやしょう」

 

 赤鬼の豪腕に掴まれて、俺は容赦をまったく感じない力加減で、小部屋を連れ出されて、高級をアイスを食べる事になった。

 

 赤鬼的に言えばきっと、少しは息抜きしろって事なんだろうけど、こんなほのぼのしていて良いのかな・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 9月6日。

 

 時刻は13時を回る頃合い。

 

 ある一つの街で、爆発が起こった。

 

 その数分後、テロじみた攻撃?と思わしきニュースが、度固化市にもすぐに伝わり、政府が緊急事態であると称し、日本軍を派遣した。

 

 それと同時刻・・・。

 

 度固化野命神高等学校・屋上。

 

 いつもの昼休みを満喫している学生達とは違い、少し重い表情をして過ごしているのは、カエデとレンとケイタ。

 

 この三人はいつものお決まりの三人として、決まった時間にこの場所に昼休憩の時間を過ごしている。

 

 いつもだったらなんだか他愛の無い話をしながら、適当な事をだべったり、恋のお話をしたり、次の授業に向けた対策の会話をしたり、昨日の怪人との戦いとの話をしたりしている時間だ。

 

 とにかく美味しいお弁当を食べながら、そんな非日常に満ちた日常の事を話しているだけの時間なのだが・・・。

 

 カエデの表情はどこかソワソワしている。

 

 レンの表情は固く、明後日の方向を見ている。

 

 ケイタもあまりお弁当が喉を通らないでいる。

 

 口に含んだサンドイッチの味がペーストになって、それ以上に味が無くなっても飲み込めないでいるぐらいだ。

 

 秋を迎え入れる季節の風が、まだ強い日差しを重なって、生ぬるいモノとなって、三人の顔を撫でる。

 

 微妙に涼しくない風が、かえって三人の不安を大きくさせる。

 

 「いつかな・・・」

 

 校舎の下から聞こえる学生達の笑い声をかき消すように、ケイタが沈黙を作り出した。

 

 いつ、と言うのは間違いなくヘルブラッククロスの襲撃の開始の事だろう。

 

 本来ならば学校に居るよりも、虹層作市に向かう事の方が、こんな気分にもならない筈なのだろうが、それはまざまざと危険に飛び込むと言う事で、ギンジに止められたのだ。

 

 そしてミドリコも同じ理由で、単身で乗り込む事は控えさせられている。

 

 ミヤコが聴いた話が、手はず通りに進んでいるのであれば、今日9月6日はその襲撃が開始されて、あの柏木タツヤを奪還するという恐るべき襲撃が始まる日になるらしい。

 

 ギンジにも知りえない未来になった以上、もう頼れる情報源等存在しない。

 

 「・・・レン、大丈夫?」

 

 ケイタが沈黙の中もう一度声を出した。

 

 声は自分の恋人であるレンに向けられ、レンはケイタの声を聴いただけで、表情を柔らかくする。

 

 「うん、大丈夫」

 「今日の下校中にさ、最近出来たケーキ屋さんがあるらしくてさ、その、また帰りに皆で、行こ・・・う、よ・・・あは、ハハハ・・・」

 

 乾いた声と乾いた笑いでレンとカエデを元気つけようとするが、そんなモノはなんの慰めにもならない。それどころか重い空気感を余計に強くしてしまった。

 

 「ねぇ、ケイタ」

 

 今度はレンが声を出した。

 

 不安に押しつぶされない様に、気丈に振る舞うレンの顔を見て、カエデとケイタは少し寂しそうだ。

 

 「ごめん、やっぱりなんでもない」

 

 レンには少しだけ、今この街、自分の未来に起こりうる心配よりも、違う事を心配していた。

 

 「・・・やっぱり、言う。また、私達が、孤立させられて、各個撃破を狙われたら、どうしようかと・・・」

 「だ、大丈夫よ!今のあたし達なら、絶対に返り討ちにしてやるわ!」

 

 レンの不安に対しては、今度はカエデが気丈に振る舞ってみせる。

 

 いくら突拍子の無い事でも、あの組織ならやりかねない。

 

 だからこそ、自分達が阻止出来なかったらと思うと、辛くて苦しい。

 

 今までは阻止出来ていたのだ。だから今度も、自分達は成功する。成功するに決まっていると、カエデは信じている。

 

 だからこそ、この胸騒ぎが・・・余計に重く感じる。

 

 「・・・そろそろ、休憩が終わるわね。早く戻りましょ」

 

 カエデがふわりと立ち上がり、本物のご令嬢だと思わせる様な仕草で、お弁当の包みを持ち上げる。

 

 「同意。今日のご飯は、あまり美味しくなかった」

 「僕も、あんまり食べれなかったよ」

 

 それぞれが立ち上がり、ゆっくりと屋上から校舎に戻ろうとした瞬間だった。

 

 prrrrrrrrr!

 

 『!!?』

 

 カエデのスマホから大きな着信音が鳴り出した。

 

 着信音が鳴っただけでも、一気に心臓が鷲掴みにされる思いで、三人が一斉に飛び上がる。

 

 ひょっとしたら怪人がおどかして来るよりも、びっくりしたかもしれない。

 

 「・・・出ないの?」

 

 レンからの声で正気を取り戻して、カエデは着信を取る。

 

 『ハァ、ハァ・・・カエデか!?』

 

 着信の主はギンジだった。

 

 しかしいつもならギンジからの着信は嬉しいモノなのだが、なにやら呼吸が荒い。この状況下において、ミヤコでも暴走したのだろうか。

 

 お留守番組がいつも通りならそれで良いのだと、カエデは少し安堵もできそうなのだが・・・。

 

 「ギンジ?どうしたの?」

 『今、レンとケイタの居るか!?』

 「え、うん・・・居るけど・・・」

 『急いで戻ってこい!ヘルブラッククロスのお出ましだ!お前のオトーサンも負傷した!』

 「は・・・?」

 『敵は一体だけだが、能力がやべぇ!今赤鬼といざよいパイセンが応戦してるけど、ミヤコも敵の術にハマった!お前たちが居ないと、もしかしたら勝てねぇかも知れないんだ!戻ってこい!それまで神宮亭は俺が守るから!』

 

 ギンジの必死な訴えに続き、校舎に鳴り響くサイレン。

 

 そのサイレンにも三人が驚き、校内放送の内容にも耳を疑った。

 

 『全校生徒へ。ただちに教室に戻ってください。警察から緊急事態の通報が入りました。指示があるまで、教室に居てください。繰り返します。ただちに教室に戻ってください。警察からの・・・』

 「何よこれ・・・」

 

 一瞬で血の気が引く思いだ。

 

 自分の父親は負傷し、家も危ない。それに、このタイミングでも校内放送。

 

 「ギンジ、すぐに戻るわ・・・」

 『頼むぞ!なるべく早く・・・うおっ!?』

 

 通話越しでなにかの攻撃が入ったのか、通話はそこで途切れてしまった。

 

 「・・・」

 「カエデ・・・」

 

 レンもなにやら気が気でない表情であり、ケイタもおどおどしている。

 

 9月6日。

 

 この日、神宮カエデにとっても世界にとっても、決して無視出来ない歴史に刻まれる事件が起きる事となる。

 

 「急いで戻るわよ!」

 

 勇ましく、しかしそれで居ても不安を隠せていないカエデの顔は、苦く、重く、陰りをしっかりと残していた。

 

・・・・・・・・・・・・・・ 

 

 この私が総統より命令を受けたのは、全てが総統がお望みになった力による世界を創る事が目的と掲げられていたからだ。

 

 総統は私に命じられた。

 

 虹層作市の襲撃に駆けつける者が邪魔をする者であれば、組織の威信をかけて妨害し、殺せと。

 

 なれば私は、鏡の裏側に広がる、広大な暗闇の世界に身を映して、敵陣へと猛進する。

 

 場所は既に解っている。

 

 私が大いに敬愛する、私を造り出してくれた、親の様な存在である総統閣下に心労を祟らせる憎き怨敵。

 

 ヘヴンホワイティネスがたった今住んでいる場所へと・・・。

 

 この身体に巻き付いた包帯の様な羽衣を揺らして、私は自分の視界を遮る。

 

 同じく包帯の様な羽衣の一部分でもある。それをテープの様に伸ばして、私は自分の瞳に巻いて隠す。

 

 暗闇の中に隠した自分の瞳は別に嫌いじゃない。

 

 だけれど私は・・・自分を造って下さった総統に、この世界に生きる道標を示してくれた総統の為に、力のある者だけが生きる事を許された、優勝劣敗を明らかにする世界の為に、私は今日も総統の為だけに、この身を動かす。

 

 鏡を通じて、闇を超えて、光を跳ね返す、この私、鏡の怪人にしか出来ない事があると、総統は私を信じて送り出してくれた。

 

 「だからこそ・・・真っ先に潰すのは・・・」

 

 私が憎しみを込めて一言放った。

 

 退魔師でも、魔法少女でも、月の守護者でも、裏切り者でもない。

 

 先に潰すのは・・・この私の美しい身体に傷をつけた・・・。

 

 「ヘヴンホワイティネスを倒す・・・!」

 

 だから邪魔をされる前に、私の方から出向けば良い。

 

 どうせどこに姿を隠していても、私から逃げられないし、隠れる事も出来ない。

 

 「奴らの居場所は、こちらから探し当てているのだ。同胞の邪魔なんてさせないわ」

 

 虹層作市に向かった全怪人の邪魔なんて、私が許さない。

 

 ヘヴンホワイティネスならば全てを撃破してしまいかねない。

 

 この私を除けば、確実に僅差で敗ける可能性がある。

 

 だから、奴らの住居に侵入し、変身する前にヘヴンホワイティネスを潰す。

 

 存在その者が真実を映し出す、この私鏡の怪人の能力を持ってすれば、確実に勝利を持って帰り、総統のお望みの世界とその野望の為にに、この私が尽力出来るからだ。

 

 そうすればあの暴力の様な快楽を得られる。

 

 自分が弱い生物だと思い知らせてくれる、総統の欲望を、私の全身にぶつけてもらえる。

 

 「覚悟しろ」

 

 鏡を通じて、私は次々と奴らの住居にある鏡を全部網羅した。

 

 さぁ、その次は・・・。

 

 ヘヴンホワイティネスへの攻撃だ。

 

 私の能力ならば、非戦闘員を殺傷する事なんて容易いわ。

 

 「むお、あ、鏡じゃねぇか」

 

 !?

 

 一枚の鏡から出てきた男は、私が決して無視しては行けない男。

 

 かつては同じ力の世界を創る為に、共に戦線に立った同胞だった男、赤鬼が私と鏡越しで眼が会った。

 

 相変わらず赤い肌。惚れ惚れするほどの雄々しい一本の角。

 

 筋肉質な身体は強く、硬そう。総統には及ばないけれど。

 

 「てめぇ、なんでここに居やがる。ここはカエデの姉御のご実家なんだぞ!」

 「へぇ〜・・・って事は、そのカエデってのが、ヘヴンホワイティネスなのね?」

 

 強いには強いが、この男は馬鹿だ。

 

 「なっばっ、別にちげぇし!」

 「じゃあ、そのカエデの実家って事は、大切な人も居るのかしらね?」

 「このっ!」

 

 能力が赤鬼の怪人に知られている以上、この男は私が映る鏡を殴って破壊してきたわ。

 

 でも、破片だって残っている。相変わらず詰めの甘い事ね。

 

 真ん中が割れて、蜘蛛の巣みたいになった鏡だけじゃ、私の能力を封殺する事は出来ないわ。

 

 「やっべ・・・」

 「鏡の監獄(ミラー・プリズン)!」

 

 私が生み出す、長方形の鏡が割れた鏡から飛び出していく。

 

 身体を反らせて逃げようとしているみたいだけど、そんな事じゃ逃げられないわよ!

 

 「空砕烈拳!」

 「!」

 

 空気を操る事が出来る赤鬼の怪人は、私の能力で造られた鏡を空気圧で破壊していく。

 

 「あら、鏡その者は壊さないのかしら?」

 

 最初に殴りぬいた鏡だけは壊さないで、赤鬼の怪人は何を考えているのかしら。

 

 「ここはカエデの姉御のご実家だ!色々とパンパン壊して良い所じゃねぇんでい!」

 「へぇ・・・じゃあつまり・・・アナタ、弱みだらけの所でこの私と戦おうって言うのかしら?」

 「チッ!」

 

 モノを壊せないって言うなら、好都合ね。流石に今私が映っている鏡は、舌打ちの後に金棒で粉砕されたわ。

 

 「兄貴ぃ!兄貴ぃ!」

 

 割れて粉の様になった鏡の破片から、赤鬼の怪人の声がするわ。

 

 兄貴って、もしかしてあのドクターミヤコの最高傑作の事かしら?

 

 「俺っちがションベンしてる時に襲撃だ!兄貴ぃぃぃ!」

 「・・・」

 

 どうやら私が最初に映った鏡は男子トイレのようね・・・。

 

 「でもいいわ。裏切り者が最低二人も居るならば、やっぱり私がこの手で、全員炙り出して、殺してあげるわ!」

 

 鏡に映る暗闇の世界の中で、私は叫びながら敵襲を告げる赤鬼を追いかける事にした。

 

 そうして追いかければ、あの兄貴にも遭遇出来るし、赤鬼の怪人は馬鹿だから、私の能力の事を話す余裕なんてなさそうだしね。

 

 鏡となりうるモノの全てには、私の能力が適応される事を利用して、銀のスプーンは触れれば、切れる道具。

 

 窓ガラスは鏡の刃を飛ばす、遠距離攻撃の要。

 

 水は映った自分を、幻惑の世界へと誘う力へ。

 

 ああ、この大きな豪邸は私の独壇場ね!

 

 先にこの住居を調べておいて良かった。

 

 誰にも知らせずに調べて良かった。

 

 こうなれば、全てが私の攻撃によって、適当に徘徊しているだけでも、攻撃が成立するのだから!

 

 「どこに隠れても無駄よ。全ての映るモノは、私の眼となり、攻撃の為の武器となる。鏡の要塞(ミラー・ザイガス)は完成したのよ!」

 

 一人。また一人と、誰かが私の術にハマる。

 

 誰かは攻撃をもらい、誰かが術にハマり、誰かが苦しむ。

 

 「ヌハハ、お前の能力なんて屁でもねぇぜ!」

 「!?」

 

 同じ鏡の世界に聞こえたのは、馬鹿の赤鬼の怪人の高笑い。

 

 「・・・何をしようと言うのかしら」

 「俺っちは毎日教育番組見てるからよ!鏡は見えなきゃ効力が発揮しねぇだろうが!」

 「チッ・・・」

 

 そう、私の鏡の怪人としての能力は、目に見えないと映ると認識されない。

 

 その事を解っている赤鬼の怪人は・・・。

 

 「何をしてるの?」

 「おう!お前の攻撃を喰らわない為に、俺っちも目隠しだ!」

 

 包帯をぐるぐると自分の顔に巻きつけて、赤鬼の怪人は明後日の方向を向きながら、私に吠える。

 

 「・・・馬鹿ね」

 「え?」

 「鏡々の斬烈(ミラー・サイス)!」

 

 鏡として使えて、自分を映せるモノは全て私の眼となる事までは理解していなかったようね。

 

 鏡から飛び出す無数の刃が、赤鬼の怪人に命中していく。

 

 下手な弾丸よりも早く、そこらの刃物よりも切れ味の鋭い攻撃は、瞬きする間も無く、赤鬼の怪人を押し込める。

 

 「くっそ!前より強いな」

 「アナタも、裏切った癖に打たれ弱くなってなくて、感心したわ」

 

 この攻撃で赤鬼の怪人を殺すつもりで居たけど、そう簡単にやられなくて嬉しいわ。

 

 いたぶりがいがあるわ!

 

 「どら、かかって来いや!眼が見えなくても、お前なんざにゃ敗けやしねぇぜ」

 「その減らず口もここまでね。裏切り者には死を!」

 

 未だ目隠ししてこの私に勝とうとしているなんて、面白くなりそうだわ。

 

 そうして私は、ヘヴンホワイティネスの住居でもある、あの神宮財閥の本拠地の襲撃を本格的に開始する事にした。

 

 そして、もう一つの鏡に映る存在が、私の背後で光り出す。

 

 その鏡に映った者は、どうしてくれようか。

 

 「・・・ッ!」

 

 どこの部屋かは不明だけれど、鏡に映った者の顔を見て、私は一気に怒りが全身に走った気がした。

 

 眠そうな顔で鏡に眼を合わせて、黒髪についた癖の強そうな寝癖を治そうとしている少女も姿を見て、私は、自分が自分じゃないぐらいの怒りを感じた。

 

 のんきに大あくびまでして、私が居るという事に気づいていないのであれば・・・。

 

 今こそ死よりも苦しい、絶望の世界へと送ってやる・・・!

 

 「ドクターミヤコ・・・」

 「くふっ!?あれ、なんで・・・」

 

 背後の鏡に私が顔を覗かせると、ドクターミヤコは驚愕に溢れた顔を見せて、咄嗟に逃げようとする。

 

 だけど鏡に映ったこの私からは逃れる事なんて、不可能だわ!

 

 「鏡の監獄(ミラー・プリズン)!」

 「きゃっ・・・ギンジ君、助け・・・っ」

 

 私がドクターミヤコの見ていた鏡から、長方形の鏡の筒を飛ばして、憎き裏切り者の一人である、ドクターミヤコを捉える事に成功した。

 

 液体金属の様に広がる筒に飲み込まれる傍ら、最も怖いと感じる表情を見せてくれたけど、今更恐れてももう遅いわ!この私の、真実を映し出す鏡の世界にて、震えて絶望するが良いわ!!

 

 ・・・。こうして私のヘヴンホワイティネスに対する、復讐劇が幕を開いた。

 

 ヘヴンホワイティネスが姿を表さないのであれば、ここで彼女達の家族や使用人、神宮財閥の関係者を全員抹殺する事にしよう。

 

 文字通りの大惨事を目の当たりにした時、ヘヴンホワイティネスがはどんな顔で鏡を見るのかしら。

 

 ああ、総統閣下。私の勝利を信じて待つ、私の愛しき人。

 

 総統の紅い眼光を思い出して、私は鏡の世界で身震いする。

 

 嬉しさと恍惚。他にも色々あるけれど。

 

 「さぁ、次は・・・ドクターミヤコの最高傑作ね・・・どこに居るのかしら。どこに逃げても無駄だと言うことを、その身体に教えてあげないとね・・・」

 

 私が誰にも聞こえる事の無い、暗闇が広がる鏡の世界で、進化の怪人を探しに出る。

 

 最早この神宮亭にある反射して鏡になりうるモノは、全てが私の眼となっている。

 

 勝利を確信した私は、まだ鏡の破片を戦っている赤鬼の怪人と、その使用人かしら?を無視して、次の標的を決めた。

 

 「さぁ、出てきなさい・・・進化の怪人」

 

 

 

続く

  

 

 




お疲れ様です。

今回の章では鏡の怪人が主要となるお話も多いですが、実はカエデも大活躍するお話になります。

どこでどう活躍するかはお楽しみに。

キャラネタ書きます

鏡の怪人
総統閣下に造られた怪人。
ヘルブラッククロスの思想を盲信している。
総統にも心酔しており、初めての人は総統。
包帯の様な羽衣を持っており、白い肌と白い包帯をつけている。
目隠しの様な包帯もあるのだが、これは常時巻いている。
別に視界が遮られるとかはなく、嘘をつくと眼がギョロギョロ動かしてしまう為。
能力の詳細については次回のキャラネタで!

佐久間ギンジ
次の標的となった主人公。ところで彼の弱点は女性に本気で攻撃できない事です。鏡の怪人は女性です。つまり・・・?
そんな事も言っていられない状況になるのは次回で!

赤鬼の怪人
鏡の怪人と同じ怪人四天王だった怪人。ミドリコに一目惚れして組織を離反した馬鹿。鏡の怪人の能力についてはある程度把握はしている模様だが、その対策も結構馬鹿っぽさがあふれる。

鈴村ミヤコ
「くふふ、出番が少ないよ・・・どないなっとんじゃー」

・・・

次回はカエデ達も帰還して、鏡の怪人と激突を開始します!章の始まりはだいたい短いですが、次回からはちゃんといつもどおりの長さになります!

それでは、また次回!!

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