今回のお話はは少しだけ短いです。
鏡の怪人編もあと少しで終わりです!
それではどうぞ!
仄暗い鏡の世界には、遠く見えるモヤのかかった暗闇の向こう側に、亀裂が入った。
空間を揺るがす強力な力が、鏡の怪人を捺したからだ。
その圧倒的なまでの力で、鏡の怪人を捺し混んだのは、未来から持ってきたオーバーテクノロジー・ヘヴンスーツとの完全適合を果たした、神宮カエデ。
彼女は神宮財閥の一人娘として・・・そして正義のヒーロー・ヘヴンホワイティネスとして、悪の組織の四天王を自称する不可思議生命体・鏡の怪人に、一方的に攻撃と正義を示した。
ヘヴンスーツのファイナルフォームを引き出した事で、鏡の怪人を圧倒したカエデ。
そんな彼女の前で、身体を痛みに震わせながらも、ヘルブラッククロスの流儀、ヘルブラッククロスの理念を保とうと、それを敵であるカエデに貫こうと、鏡の怪人は美しい身体が傷ついても、立ち上がる。
「フェーズ・・・3、開放・・・」
このままでは勝ち目が無いと判断したのか、怪人としての潜在能力を開放して一発逆転でも狙っているのか。
亀裂の入った仄暗い空間に差し込む光をうっとおしく感じながら、終わりに近い自分の身体を奮い立たせる。
鏡の怪人の襲撃はまだ終わらない。
「・・・まだやる気なのね。いいわ、全力で潰してあげるわ!」
変形したガントレットはギアが無くなり、変わりに閃光を収束して解き放つ形状に変わった。
カエデのファイナルフォームによる臨戦態勢が作られると、鏡の怪人も同じく呼吸を乱しながらも、両腕を広げて自信の背後に巨大な鏡を一枚展開させた。
現れたその鏡は、今までのどんな鏡よりも暗く、角張っていて綺麗で美しくも・・・何も映さない禍々しい一面をしている。
その鏡の面は前に出ている何かを映しているのでは無く、その向こう側の世界を映し出しているのだ。
瓦礫で埋もれた暗い絶望を残した様な世界で、赤い水が溢れ出てきて、都市でもあった様な場所を水没させている。
赤い満月も太陽の代わりなのか、かつて栄華を極めた都市を絶望で包み込んだ禍々しい世界が、カエデの視界に入ってきた。
「・・・なんか、夢の怪人に連れて行かれた時の世界に似ているわね」
夏休みに寝込みを襲撃してきた夢の怪人に連れて行かれた、夢の世界は正しくこんな姿をしていた。
しかし鏡の怪人が召喚した鏡の奥に見える世界は、もっと規模がでかく、眼を凝らして見ていると、まだビルや家と思わしき建物がかろうじて生き残っているようにも見える。
「すべてを飲み込んで・・・すべてを連れていき、すべてを・・・」
鏡の怪人が吐血しながらカエデを睨む。
そして勝利を確信した様な声と笑みを乗せて、鏡の怪人は口下に流れる血液をペロリと舐めとる。
「絶望に閉ざしてやる・・・」
今神宮亭は鏡の怪人の眼となり、手のひらに転がされるミニチュアの模型の様になっている。
「
唱えた技名の直後に、鏡の怪人の背後の鏡が割れて、そこから吸い込まれる様に、暴風が巻き上がる。
「くふふ、いよいよ敵も本気あああああ」
ギンジを抱きかかえたミヤコが、その風圧に身体が吸い込まれるのを止められず、軽い少女の身体が風に持ち上げられて吸い込まれていく。
「ちょ、ミヤコ!」
カエデが天使の翼を伸ばして跳躍して空を舞うと、ミヤコの手を掴んでひとまずは事なきを得る。
今度は眼の部分に鏡を貼られたまま、身動きをしないギンジの身体が浮かび上がり、鏡の向こう側へと吸い込まれていく。
「進化の怪人は貰っていくわよ・・・!」
「そんな事・・・させないわよ!」
ミヤコを片手に抱きかかえたまま、カエデが吸い込まれる風をモノともせずにギンジをキャッチする。
「ったく重たいわね」
「カエデ、ギンジ君を重たいなんて言わないでよ」
「重たいのはあんたの方よ!バカミヤコ!」
「なにを!モンキーのくせに!」
風圧に反発しながらも、カエデは二人を抱えたまま余裕に飛び回る。
「ハァ、ハァ・・・この・・・ヘヴンホワイティネス!」
「いい加減諦めなさいよ。もうあんたじゃ、あたしには勝てないわよ」
「おのれ・・・っ」
力量を味わったからこそ、鏡の怪人はカエデの挑発に強く出られなくなっている。
「あんたにはギンジも渡さないし、仲間も傷つけさせない。あたしの家もそろそろ返してもらうわよ!」
言い終えるとカエデは二人をその両手に持ちながら飛翔。
回転を加えた速度上昇と勢いが、閃光を後から走らせて、まるで二本の尾を引くような光が、仄暗い空間の中に現れる。
そしてその閃光を背に、カエデの動きは一瞬停滞してから、その目線を鏡の怪人へと向ける。
「・・・まさか」
吸い込まれる風を利用した、向かい風とともに、カエデは全力で集めた閃光を鏡の怪人へと向けてぶつけに行くつもりだ。
「くふふ、わたしとギンジ君が無事で居られるかな・・・?」
「問題ないわよ!あたしが勝つって決めたんだから、絶対にあの怪人は倒す!倒して、みんなで帰るわよ!ミヤコ!」
ミヤコを救出してからと言うモノの、二人の間には妙な信頼も生まれている。
あのいびつで恐ろしい鏡の向こう側に行くよりかは、カエデの勝利宣言の方が何よりも信じられる。
カエデの言葉を信じたミヤコは、自分を掴む手を握る。
そして動かないギンジの顔を見やる。
愛するギンジが動かない不安はあるけど、それも鏡の怪人を撃破すればそれで良いのだ。
きっとそれで能力は解除されるのならば、本当にカエデを信じるしかない。
「行くわよ!超必殺!」
「・・・ここまで、か」
閃光を足に纏わせてカエデが思い切りきりもみ回転しながら、閃光の翼を頭の上に向けて尖らせる。
回転しながら突き進むその姿は、誰がどう見ても天使には程遠いドリルみたいな回転力を披露しながら、次第に足の閃光が全身を包みこんでいく。
「スカイフォール・ライフル!」
(・・・速い・・・強い・・・総統閣下・・・)
鏡の怪人が最後に思い浮かべたのは、敗北よりも恐ろしい、愛しの総統の怒りに溢れた顔。
(せめて一矢報いてやる!)
鏡の怪人が最後の悪あがきを披露するまでもなく、閃光の翼に包まれた正義の一撃が迫ってきた。
傷ついた身体では避ける事も出来ず、また反撃も間に合わない。
(ならば・・・進化の怪人、貴様だけでも!)
カエデの翼がその胴体に突きこまれて、鏡の怪人へと最後の一撃が命中させられる。
「吹き飛べ!」
翼から解き放たれる閃光が、仄暗い空間の亀裂にまで届き、鏡の怪人を撃破するに相応しい強力な閃光の一撃が深く、強く、新しく命中する。
防ぐ事も出来なくなった身体を大の字で回転させながら、鏡の怪人は自分が召喚した鏡の世界へと突き飛ばされて、カエデは二人を抱きしめる様にして翼を広げて後方へと舞い戻る。
「もう二度と現れるな!」
カエデの激の聴いた言葉はもはや鏡の怪人には届いていない。
カエデの最後の一撃を貰った時点ですでに意識を失っていたからだ。
「でやああ!!」
吸い込まれる力が増すが、カエデの翼による空中旋回の方が力強く、仄暗い空間の中にある、一番大きい亀裂へと飛んでいく。
恐らくだが、赤鬼の甚兵衛の一部を持っていれば、この空間の出入りは可能なはずだ。
赤鬼が言っていた『なんか色々できる』っと言う言葉を信じて、カエデはうるさい仲間と、愛するギンジを抱えて、光差し込む亀裂へと飛び出した。
「ほら、言ったでしょ。あたしは勝つって」
「くふふふ、まったく怖いよカエデのその力は・・・敵であったのを思い出させてくれるね」
「もう一回敵になってもいいのよ。今度もあたし達が勝つんだから」
「くふふふ、いいやもう敵にはならないよ」
カエデの腕にしがみつきながら、ミヤコは髪を揺らしながら眼を閉じる。
腕に抱きかかられたギンジを見ていると、きっとカエデもミヤコと同じ様に、恋をしている。
最高傑作を取り合う事ならばその勝敗はいざ知らず、武力行使で戦おうモノならば・・・。
「ヘヴンホワイティネスに、わたし個人だと勝てないからね」
妙な安心感と、普通以上の信用を乗せて、カエデ、ミヤコ、ギンジの三名は仄暗い空間から脱出に成功したのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2022年9月6日。
時刻は17時を回る頃、神宮亭は鏡の怪人による襲撃の復旧作業を最速で始めていた。
噴水からいきなり飛び出してきたカエデとその他二人に驚かれる事もあったが、使用人達にひとまず自分達の勝利を伝えて、カエデはこの襲撃に居合わせた仲間と、仮の倉庫置き場になった部屋に全員を集める事にした。
ソウジロウとヒトシは治療の為に、別室で休む事となり、ひとまずは怪我が落ち着いたら皆で話すとの事。
カエデが鏡の怪人に勝利した事実は変わらず、みんながおおいに喜び、得に赤鬼とミドリコは大きく喜んでいた。
全員が喜びひとまずの襲撃の危機を乗り越えた事に、感嘆のため息を漏らす。
ただ、一人を除いては。
「姉さん・・・まだ、兄貴は起きないんですかい?」
皆が集められた仮倉庫の端では、ギンジが簡易ベッドの上で眠らされている。
まだ彼の眼には鏡が一枚貼られていて、身動きすら取らない。
そんな姿に不安も募るのか、赤鬼がミヤコにたずねてみるが、ミヤコも無言のまま首を横に振るだけ。
「どうしよう・・・ギンジ君、まだ起きないよ」
か細い声でミヤコが心配にしている。
「どういう事だ?カエデは今回の襲撃、その大元の鏡の怪人を倒したのだろう?だったら何故怪人の能力が解除されないんだ?」
重苦しい緊張感の中、今度はミドリコが口を開いた。
「確かにあたしが倒したけど・・・」
「まだ、倒せて、居ないとかは?」
カエデが自分の手を握っては開いてを繰り返しながら話すと、隣に座るレンが小首をかしげながら口を開く。
「そんな・・・確かに倒したわよ!」
「でもさ、ギンジがまだ動かないって事は、まだその怪人はどこかで生きているんじゃない?」
ケイタが何気なく言うと、カエデが怒った様な顔をしてケイタをすくみ上がらせる。
「カエデの姉御、姉御の実力についちゃ俺っちもちゃんと分かってるが、まだ能力が解除されて居ないとすりゃあ・・・」
赤鬼が甚兵衛の破れた裾をいじりながらカエデに声をかける。
「考えられるのは2つあるぜ」
「2つ?」
赤鬼がピースサインと2つをかけた姿に、ミドリコが首をかしげる。
レンもケイタもミヤコもカエデも首をかしげる。
この場に居る全員が首をかしげる。
「先ず一つは・・・ちゃんと鏡の奴を撃破しているが、能力は死んでも解除出来ない何かがある」
「その何かってなによ」
「俺っちにもわからん。次に2つめ」
赤鬼のいい加減な言葉にはカエデはもうツッコまない。
激しい戦闘の後でツッコむ気力が無いからだ。
「で、2つめは?」
レンが赤鬼を急かす様に進めさせる。
ギンジの事を心配しているのは、カエデとミヤコだけでは無いのだ。
「へい。鏡の奴の能力と技の一つに、監獄ってぇのがありますわ。その監獄に捉えられたから、出られないとか・・・」
「そっちの方が可能性としては高そうね」
赤鬼の2つめの考えにはカエデが最速で同意を示す。
「もーカエデってば、どんだけ鏡の怪人を撃破したって事にこだわるのさ〜」
「うるっさい!倒したもん!」
ケイタのいらぬ言葉でカエデがぷりぷり怒るが、話しを元に戻す様にして、全員が赤鬼に視線を合わせた。
「で、だ。鏡の奴と俺っちは元々同門。さっきはカエデの姉御を鏡の奴の能力の領域内に向かわせる手段を出したんだが・・・」
赤鬼が説明する傍ら、カエデ以外は皆意味不明と言った顔をしている。
「いいわ赤鬼。あたしが説明するから」
赤鬼を横から押しのけて、カエデが一枚の布切れを全員に見せた。
ヒラリと揺れる布は無造作にちぎられたのか、断面から糸くずも見える上に、なんだか生きている様にも見える程揺れている黒い布。
「これは赤鬼の黒い甚兵衛の一部なんだけど、どうやらこれを持っていると、鏡の怪人の能力に干渉出来るのよ」
「くふふふ、なるほど、それでカエデは鏡の世界に侵入出来たんだね」
「そうよ。でも上手く行くかは正直賭けだったわ」
腕組みしつつ布を手元にくしゃくしゃにしながら、カエデは説明を続ける。
「たった今浮かび上がった仮説だけど、この甚兵衛を持っていれば、恐らくギンジを救出する手段になり得るんじゃないかしら。鏡の怪人の能力に干渉出来るなら、今ギンジに貼り付けられてる眼の鏡にも干渉出来る・・・でしょ、赤鬼?」
カエデの説明には全員が納得する。
確かにカエデ、ミヤコ、ギンジが噴水から出てきた事も含めて、赤鬼の甚兵衛が必要ならば、この仮説にも納得が行く。
「流石姉御だぜ!俺っちも今同じ事考えてた」
「嘘ね」
「嘘は、良くない」
「お前は嘘だな」
赤鬼がしたり顔で言うモノの、カエデとレンとミドリコは完全否定されてしまう。
当たり前だが赤鬼はここまで頭が良くない。同じ事を考えたと言うのは、カエデの言っている言葉の尻馬に乗って同調したに過ぎないからだ。
「それで、ギンジ君の鏡の世界?鏡の牢獄?には誰が行くのかな?」
鏡の怪人の能力への干渉方法は分かった。
まだ仮説だが。
その上で誰が倒れて動かないギンジの鏡に干渉するのか・・・。
「あたしは絶対に行くわよ!」
カエデは意気揚々とギンジ救出の宣言をする。
「ヌハハ、だったら俺っちも行かないとな。同門の不始末は俺っちが拭わせてもらわにゃあな」
赤鬼もムキッとした腕を見せつけながら宣言した。
「私も、行く。ギンジが居ないと、この先、恥ずかしながら、勝てない」
次はレンが言葉を繋いだ。レンの言うとおり、ギンジが居ないとこの先に待っているのは敗北と、辛い絶望の世界だ。
「くふふ、ギンジ君には会いたいけど、わたしはここで待つ事にするね。もし何かあってもギンジ君を守れる人が居ないとだしね」
ミヤコは相変わらずギンジの身体から離れない。
「だったら私もここに残ろう。ミヤコとケイタだけじゃ、もう一度襲撃があったんじゃ耐えられないだろうからな」
ミドリコはここに待機をするつもりだ。いざと言う時の防衛線に彼女は立つと決めた。
「うんうん!その方が良いよ!僕は怖い所に行くなんて嫌だよ!」
「時折・・・旦那の情けなさが笑えてくるぜ」
ケイタのビビリマックスの言葉には赤鬼が呆れ笑いを見せるが、レンも口元を抑えて笑って見せる。
「同意。たまに、ケイタはかっこ悪い」
「ええ!?そんな〜」
そうこうして、鏡の牢獄への突入組は決まった。
カエデ、レン、赤鬼の三人は突入組。
ミドリコ、ケイタ、ミヤコの三人は待機組。
「いざ、鏡の牢獄へ!」
赤鬼の高らかの宣言に、この場に居る6人が腕を上げた。
ギンジ救出大作戦・開始!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ハァ・・・ハァ・・・まだだ!」
赤い水で水没した都市は赤い月に照らされ、恐ろしさと禍々しさと怪奇に満ちた絶望一色の世界。
そんな世界で鏡の怪人は、身体を這わせてヘルブラッククロスのアジトへと向かっていた。
「まだ・・・私が生きている限り・・・進化の怪人は助からない・・・許さぬぞ・・・ヘヴンホワイティネス」
ボロボロになった身体で、鏡の怪人はなんとしても帰還を果たそうとしていた。
鏡の怪人の最後の悪あがき。
それは進化の怪人を鏡の牢獄から出させないと言う、能力の1段階上の行使。
鏡の牢獄は捉えた者の幸福と、望んでいる世界を鏡映しの様に表せて、そのまま死ぬまで牢獄に閉じ込めると言うモノ。
それをして、鏡の怪人が捉えられたのは進化の怪人だけだが、最早それだけでも良いとさえ今は思っていた。
「ハァ・・・ハァ・・・今に見てろ・・・総統閣下の寵愛を受けている私に、最後のミスなんてない。助けられない無力を噛み締め、絶望するが良いわ!」
ここまでやられても、絶命にはならないだろう。
今はアジトに戻り、ドクターパープルの治療を受ければ、きっと鏡の怪人は復活する。
「我らの正義を・・・思い知らせてくれる・・・!」
鏡の怪人はまだ死なず、まだ死ねない。
憎きヘヴンホワイティネスに一矢報いたと、今はその勝利感覚が彼女を酔わせていた。
赤い月は、ギラギラと怪しく輝いている。
それはまるで怪人の瞳の様に、真っ暗な空の中に一つだけ開いた瞳の様に・・・。
続く
お疲れ様です。
鏡の怪人はまだ生きてます!
キャラネタ書きます
神宮カエデ
鏡の怪人は本当に嫌い。彼女に勝った、彼女を倒した!
っというのはプライドで言っている。
鏡の怪人
カエデに敗れたが、まだ一矢報いた事に勝利したと思っている。
まだ鏡の怪人は死んでいない。
神宮カエデが最後に戦う敵。
・・・
次回はギンジを助ける為に、鏡の牢獄突入組がギンジの居る場所へ!
そこでは生きた屍だった男が、心のそこで望んでいた世界が広がっていた・・・そして、ついにカエデが観るギンジの心の中。
そんなお話の予定です。
良ければ評価、感想ください!
それではまた次回!