正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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皆様こんにちは、アトラクションです。

鏡の怪人編、終りまでの3話の一個目です

結構勢いだけで書いてるこの物語も、気がつけば110話し超えてましたね。

また番外編でも書こうかしら。

今回からギンジの居る未鏡市に突入したお話になります。

毎度下手くそな表現ですが、楽しんでいただければと想います。

それではどうぞ!!


112・めちゃくちゃな世界・未鏡市

 

 「さて、話は纏まったわね」

 

 仮倉庫に集められた俺っち達は、ギンジの兄貴をどうやって助けるかで話を纏めた所だった。

 

 ギンジの兄貴を助ける為に、俺っちはカエデの姉御、レンの姉御のお供をさせて貰う事になった。

 

 実際鏡の監獄なんぞに行く事は前は何度かあったが、あんなの脱出したいって気持ちがありゃあ、すぐにでも・・・そう、力づくでも出られるモンだが、兄貴は一体何に困って抜け出せないでいるんかね。

 

 そも、兄貴の救出は何よりも大切な事だからよ、俺っちは兄貴のためならこの身一つで全部解決しに行って、手助けでもなんでもやってやりてぇ。

 

 それでもよ、ミドリコを置いて鏡の監獄に行くなんてなぁ。

 

 毎度考えちまう事だが、俺っちてば、よくよく後先考えないで動く事が多いな。

 

 そりゃあ兄貴を助けるためだ。

 

 しょうがない事なんてこの先いくらでもあらぁよ。

 

 ジングウテイに残るのはミドリコと、ケイタの旦那と、ミヤコ姉さんの三人。

 

 俺っち達怪人や、姉御達みたく変身が出来ると買って訳じゃないが、ミドリコも旦那もイザって時には頼りになるし、そこらの怪人なんか相手にならない・・・多分相手にならないし、大丈夫だとは思うけどなぁ・・・不安だぜ。

 

 愛する愛する愛する、いや最早愛してるミドリコと少しの間離れる事を考えると、俺っち泣きそう。くすん。

 

 「赤鬼ー!そろそろ行くわよ!あんたも行くんでしょ!」

 

 俺っちを甲高い声で呼ぶのは、あの兄貴でさえ頭の上がらない、ヘヴンホワイティネスのリーダー・神宮カエデの姉御だ。

 

 厳しくも芯のある、素敵なレディだぜ。

 

 そんな姉御はと言うと、いつもの純白のスーツに変身して俺っちの事を待ってくださってる。

 

 そしてカエデの姉御の相棒とも呼べるお方もお隣に座って、俺っちの事を見ている。

 

 空みたいな青い髪をしているが、青いラインが肩から腰にかけて明滅している変身スーツを着用してるのは、レンの姉御だ。

 

 たまーに虎みたいな瞳を見せてくる時は怖いと思うが、怪人的にはこういう怖さと可愛さ、あとスケベな身体が好みになる奴は多いと思うんだよなぁ。

 

 ま、どんな女でもミドリコと比べたら天と地ほどの差があるけどな!

 

 ヌハハハハハ!

 

 「ぬははーじゃないわよ。さっさと準備しなさいっての」

 「へい、すいやせん」

 

 せっかく人が気分よく爆笑してたのに、カエデの姉御と来たらすーぐ叩いてくる。しかも痛い。

 

 これを毎日何度も貰ってるギンジの兄貴は流石だぜ。

 

 慣れようにも慣れる事の無い・・・母ちゃんのげんこつみたいな痛さだ。忘れらんねぇぜ、この痛み。

 

 ま、俺っち母ちゃんなんて居ないんだけどな。

 

 そもそも生物学的に、親なんてのは居ないぜ。

 

 俺っちを造ったって意味なら総統(親父)がソレに近いが、今はもう恩義も何もあったモンじゃない、敵同士ってやつよ。

 

 「赤鬼、早くして。いつまでも、ギンジが無事な保証も、無い」

 

 レンの姉御まで俺っちを睨んでくる。くすん。

 

 「ガッテン。どら、マジな気持ちでそろそろ行こうか」

 

 今、ギンジの兄貴が陥っている状況としては、鏡の怪人、奴につけられた鏡一枚によって、鏡の監獄に捉えられている。

 

 これは間違いなく、カエデの姉御は鏡の奴を撃破出来ていない。

 

 (もしこんな事言えば、俺っちの身体が粉々にされるかも知れないから、何も言わないでおこう)

 

 うん、絶対その方が良いな。

 

 そいでもって、俺っちの身体と鏡の奴。

 

 それから骨野郎と、雪の怪人も元をたどれば同じ細胞を持っていて、総統(親父)に造られた特別性と呼ばれてる怪人達は皆、お互いの能力に干渉出来るのよ。

 

 これってつまりは、俺っちの身体についている一部を持っていきゃあ、鏡の監獄という能力にも干渉出来ると言う事。

 

 入り口はあっても、出口があるか全くわからん世界に行くんだ。

 

 まぁ、過去に鏡の牢獄には行った事あるが・・・。

 

 流石に他人が捉えられている世界に入るのは初めてだからなぁ。

 

 ギンジの兄貴に脱出の意識がありゃあ完璧なんだが。

 

 「それじゃあ、行きやすか」

 

 ちぎった甚兵衛をもう一枚。それをレンの姉御に手渡して、姉御二人はそれらを利き腕に巻きつけると、俺っちも拳の骨を鳴らして、鏡の監獄への干渉を開始しようと腰を上げた。

 

 「赤鬼、頼んだぞ。現状、君しかその能力の細かい所は知らないんだ。カエデとレンをしっかりリードしてやるんだぞ」

 

 ミドリコが勇ましい顔で俺っちに言いつけてくる。

 

 「任せろい。必ず兄貴も連れて戻ってくっからよ!吉報をどーんと待ってろ」

 「ふっ、頼もしいな」

 

 ミドリコが鼻で笑う仕草が可愛くて、俺っちのもう一つの金棒がビンビンのビンよ。もーたまんねぇぜ。

 

 無事に帰ってきたら最低でも10発か?10発あるか?

 

 いやもしかして・・・ミドリコの初めては俺っちが美味しく「赤鬼!早くしなさいよ!ギンジを助けるんでしょ!」

 

 ヨコシマな事考えてたらカエデの姉御に怒られちまった。

 

 「早くして」

 「・・・うっす」

 

 レンの姉御も怒ってた。

 

 「どら、行こうず!」

 「頼んだぞ、カエデ、レン、赤鬼!」

 「くふふ、ギンジ君の身体の事は任せてね」

 「こっちがまた襲撃されたら、今度は僕達が抑えとくから!頑張って、カエデ!」

 

 俺っちが最後に気合を入れると、その後ろからミドリコとケイタの旦那、それからミヤコ姉さんにも叱咤を貰ったぜ。

 

 ヌハハ、任せとけ。俺っちはあの進化の怪人こと、ヘヴンホワイティネス・佐久間ギンジの子分だぜ?

 

 必ず救い出してやるよ!

 

 カエデの姉御とミヤコ姉さんの為にもな!

 

 そうして、俺っち達は腕を絡ませて、三人横並びになる。

 

 「行くぜ。眼を閉じて、心を落ち着かせるんだ」

 「分かったわ」

 「了解」

 

 姉御二人がすぐに動じてくれる。

 

 面倒が無くて良いぜ。

 

 実際人の監獄に入り込むなんざ初めてだが、まぁ兄貴のだから良いだろう。

 

 必ず救い出してやらぁな。

 

 心を落ち着かせながら、俺っち達は静かにギンジの兄貴の眼に張り付いた鏡の監獄に近づいていく。

 

 ・・・俺っち達の、兄貴を救う戦いが始まる気分だぜ。

 

 鏡の監獄は人によってその姿形を変えてしまう。

 

 兄貴のは一体どんな姿形の、どんな世界なんだろうな。

 

 それも気になってる俺っちが居るぜ。

 

 さぁてお立ち会い!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 『んああ〜〜っ♡♡♡』

 

 甘美な声で悶える様に身体をくねらせて、ヘヴンホワイティネスのヒーローは触手の怪人によって還付なきまでに快楽にねじ伏せられている。

 

 俺はいつも思うがこのスマホで出来るゲームが大好きだ。

 

 【正義のヒーロー・ヘヴンホワイティネス】をやっている時こそが、俺にとって一番の有意義な時間であり、仕事をしている時よりも充実しているとさえ思う。

 

 確かにこれはフィクションだ。

 

 ありえない設定、ありえない世界観で、ありえない架空のエ○ゲーに興奮して、俺はこの毎日を充実させている。

 

 「もうこれ完全敗北だろ。なのにまだゲームの終わりが見えねぇ」

 

 流石だなこのゲーム。

 

 男のニーズの何もかもを完璧にとらえている。

 

 こういうのは短くてサッと終わる様なモノも多い昨今、このゲームは全100章と言う恐るべきボリュームで、しかもまだまだ物語は序盤と言う怒涛の陵辱のオンパレード。

 

 内容も凄いんだ。

 

 先ずはおなじみの洗脳。

 

 これは地道にちっくりちっくりやりつつ、ヘヴンホワイティネスとの戦闘に入ったら、ヘルブラッククロス側の怪人達は皆容赦が無い。

 

 勝てばムフフなCG集はもろち、おっと、もちろん、まだ自分達は敗けていないと憤慨するヒーロー達が、アジトに戻れば肩を寄せ合って涙を流す。

 

 他にも説明しきれないが、触手、スライム、ローション、常識改変、寸止め、エロトラップダンジョン、○○、○○○、♡♡♡なんかもたっくさんある。

 

 それで居てキャラクターも多い。

 

 先ずは・・・。

 

 そこで俺はスマホに映るヘヴンホワイティネスのNo.1のあられも無い姿を思い出す。

 

 眼にして見ればすぐに美少女のスタイルの良い女の子が居るのだが、そのキャラクターの名前を思い出せない。

 

 キャラクターは非常に多いのだが、基本のストーリーはこの少女で進むのだが・・・。

 

 考えながら無意識にスマホ画面をタップすると、次のボイスが再生される。

 

 『んあっ♡もうやめて♡、あああ、ニュルニュルもう嫌ぁぁっ♡』

 『オヒョヒョ、こうするとすぐに果てるなぁ』

 

 触手の怪人が宇宙人みたいな顔でニヤつきながら、ヘヴンホワイティネスを触手で絡めとる。

 

 最早その身体に襲いかかる人では不可能な快楽、その気持ちよさに無抵抗になってしまっている少女は、望まぬ絶頂を与えられ続けて疲弊しきっている。

 

 『そうら、トドメだ!』

 『んっ♡やめっ・・・イヤァァアアーーッ♡♡♡』

 

 甲高い少女の嬌声が聞こえる。  

 

 そうだよコレだよコレ。

 

 コレこそが正義のヒーローが敗北する、最高のスパイスなんだよ。

 

 見た目の人間じゃなくて、醜悪な見た目の怪人にヤりたい放題される、コレこそがゲームの良い所さ!

 

 俺はいつもの6畳の部屋で布団にくるまりながら、自分でも抑えきれないリビドーが開放される気分で次の場面へと画面を動かした。

 

 『ぐぼっ♡やべ、ろ・・・ぉぼっ♡』

 

 次の場面ではスーツを着用したガンナーの女性が、タコの怪人の能力で分離した小タコの怪人によって、頭の上半分を飲み込まれていた。

 

 人差し指ぐらいの太さの、吸盤がついた触手を鼻に押し込まれて、その表情は見えないがズッチュズッチュと音を立てている。

 

 抵抗出来ない様に、そのガンナーの身体には小タコの群れが手足や身体を抑えては、身体から養分を吸い出したり、締め付ける様な快楽を与え続けている。

 

 『くっ、この・・・卑怯者・・・』

 

 ヘヴンホワイティネスの最後の一人である、青をメインカラーとした少女が変身出来ないまま、大幹部の・・・名前は思い出せないけど、狂人の少女が、青の少女を背後から刀を突きつけている。

 

 動かさない様に、そして仲間の醜態を晒させるコレ以上無い屈辱に、青い少女は悔し涙を流している。

 

 『それじゃあ〜。君にも餌食になってもらうね♡』

 

 狂人の少女が最後に楽しそうに告げると、青い少女を拘束させたまま、下卑た笑いをしている戦闘員の群れに、押し込んだのだ。

 

 『げヒャヒャヒャ!あのヘヴンホワイティネスももう方なしだなぁ』

 

 戦闘員の一人が高笑いすると、一気に血の気が引いたのか、青い少女は顔を青ざめさせて、後ろを振り向く。

 

 『お、お願い・・・こんなの、もう嫌。もう、やめて』

 『え〜?聞こえない。もっと態度良くしてもらわないとねぇ』

 

 青い少女が許しを乞うが、そんなのは俺は求めていない。

 

 狂人の少女が耳を掻きながら、青い少女に言葉を改めさせると、その少女は膝を折って、頭を地面につける。

 

 『お、お願いします・・・もう許してください』

 『やだ』

 『っ!』

 

 青い少女が土下座までして謝ったのに、その謝罪は悪名高い大幹部には通じなかったみたいだ。

 

 この命乞いにも見える恐れの表情、スマホゲームにしてはクオリティ高いぜ。

 

 だが・・・これで良い!

 

 『わ、私なら、役に立つ。あの二人よりも、持っている知識は』

 『あのさ〜もうそういうの止めようよ。最初から私達に逆らった時点で、もうだめなの。さ、殺されないだけありがたく思いなね。ばいば〜い。ヒャハハハハハ』

 

 悪魔や。この女の子は悪魔やで!

 

 失意に落とされ、涙を一筋。

 

 青い少女がコンクリートの上で正座しながら、がくりとうなだれる。

 

 変身も出来ないままの彼女を待っていたのは、後ろに並ぶ戦闘員達による性の暴力を尽くした、文字通りの地獄だ。

 

 『待っ・・・止めて、触らないで、お願い、嫌!嫌ぁぁ!』

 

 これ以上無い絶望に近いだろうな。

 

 だって人々は助けられず、仲間は眼の前で卑劣な手で堕とされて、この少女は戦闘員の手で、コレまた壮絶な性の暴力の限りを尽くされる。

 

 『あ、君の彼氏君さ・・・私が貰うね?』

 『うぅ・・・ごめん・・・ごめん・・・』

 

 ああ、もう一人居たね。ヘヴンホワイティネスの味方をしているけど、まったく戦闘が出来ない非力な一般市民君。

 

 『そんな・・・やめて・・・やめてぇ・・・』

 

 青い少女は最早号泣するしか無い。

 

 彼氏君は狂人の少女によって眼の前で取られる。

 

 これが絶望の最高のスパイスだな!

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・・。

 

 あれから何度か画面をタップし続けて、3章を進めた。

 

 3章のクリア前の所では、全員ボロボロになりながらもヘヴンホワイティネスはなんとか帰還を果たしていた。

 

 もう足腰が立たなくなるぐらいには、快楽を極められた所だとは思うが、それでも彼女達は諦めていない。

 

 だが・・・。

 

 『うっ・・・ふぐっ・・・』

 『くすん・・・ひっひっ・・・』

 『うああ・・・クソ・・・クソ!』

 

 赤い少女、青い少女、ガンナーの女性はそれぞれ悔しさから全員泣いている。

 

 ボロボロのボロ雑巾レベルにされて、最早普通の女性ならこんな姿で歩くのにも躊躇するぐらいだろうな。

 

 顔を赤くしながら、泣きながら帰路につく。

 

 もう泣くしかないぐらいにヤラれた。

 

 泣いているのはきっと悔しさだけじゃない。

 

 年相応の女性達だ・・・きっと自分の身体にされた事の重さを知りながら、ヘルブラッククロスに憎悪を燃やしている。

 

 そこからあふれる涙もあるはずだ。

 

 俺は章終わりのこの場面を観るのが大好きだ。

 

 4章からはきっともっと酷い事をされるに違いない。

 

 なのに・・・諦めないで、この涙を踏み越えて彼女達は強くなろうとしている。

 

 そんな彼女達をなんだか、心の底から応援もしたくなる気持ちもあるんだが、これはゲーム。決まっている結末は揺るがない。

 

 「はぁ〜・・・なんだこりゃ、神ゲーか?」

 

 このクオリティで全100章って、マジでか?

 

 「ありゃ、もう1時か。そろそろ寝ないと、また今日みたいに遅刻するな」

 

 セーブしてからスマホに充電器を差し込み、俺は布団にくるまる。

 

 一日1章で進めているが、このゲームは本当に楽しい。

 

 きっと待っているのはバッドエンドだけだが、それが良い。

 

 「明日も頑張らないとな。俺には俺を頼りにしてくれる人が居る」

 

 そうして俺は部屋を明かりを消して、そしてまぶたを閉じた。

 

 また明日の楽しみを待ち遠しく想いながらも、同僚達に向けた信用に感謝しつつ、俺の意識は眠りについた・・・。

 

 

 

続く

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 再び真っ暗な一枚の所に、白文字で達筆に【続く】の文字。

 

 これを見て、あたしは思い切り苛立ちが大きくなったのを覚えてるわ。

 

 まぁとりあえず壊すわよね。

 

 「でやああ!」

 「ひでぇな・・・なんだいありゃあ」

 

 浮かんだモニターみたいなモノを破壊したあたしの後ろで、赤鬼が吐き気を催している。

 

 珍しいわね、あの赤鬼がこんな風になるなんて。

 

 「カエデ、今のは、何?」

 「・・・分かんないけど、鏡の監獄に入ったギンジの姿らしいわ」

 

 レンの質問にあたしが答えると、レンも顔色を悪くしている。

 

 何がなんだかって感じだけど、確かに・・・なんか、あの・・・え、エッチなゲーム?みたいなのにあたし達が出演させられているのがムカつくわ。

 

 そうそう、あれからあたし達は赤鬼の手を借りる事で、この架空の街、未鏡市に突入する事に成功したわ。

 

 町並みはどこを見渡しても同じ。

 

 度固化市とまるっきり変わらないのに、何か違和感を感じる街の見た目に、あたし達は全員息を飲んでいたわ。

 

 そして到着してすぐに、あたし達の眼の前に現れた一枚のモニター、それを三人で見ていたら、また現れたわね、ギンジのありえない姿。

 

 「ギンジが、こんな事、するわけない。早く、探そう?」

 「俺っちも同意見だぜ。鏡の奴にゃあ悪いが、兄貴はこんなダセェ男じゃねぇ」

 

 うん、それについては同意見・・・なんだけど、何かしら、何か引っかかるのよね。

 

 ここがギンジのありえた世界を映す鏡の監獄ならば、上手く言えないのだけれど、何かを忘れている(・・・・・・・・)様な気がしてならないわ。

 

 それにあのゲーム・・・。

 

 「行くわよ」

 「へい。でも、どこにどうやって?」

 「手当たり次第よ。ここがあたし達の街同じ造り・・・かどうかは分かんないけど、もし同じならあたし達の知ってる場所全部行くわよ!」

 「情報無いし、それが良いと思う」

 「へい、行きやすか。荒事は任せてくんな」

 

 ・・・。そういえば赤鬼ってここではサングラスかけてないけど、街征く人々は気にも止めていないわね。

 

 ま、その方が都合は良いけどね。

 

 あたし達も今はまだ変身していないし、早くギンジを連れて帰らないとだし。

 

 拳を握りしめながらも、忘れている何かを考えながら、あたし達は先ず最初に一番近くの繁華街エリアにへと向かう事にしたわ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 いつも・・・不思議に思う。

 

 ギンジという存在を。

 

 私達はいつまでも、彼が、敗ける事は無いと思っている。  

 

 女の子には手を出さないし、でも人の心を守ろうとしてくれているし、何より・・・カエデと同じ様に悪を許さないという、その正義の志が、私も好感を持ってる。

 

 「ちょっと赤鬼!そっち違うでしょ」

 「あれ?繁華街エリアってこっちじゃ・・・この道を右に曲がれば速いんじゃ?」

 「え、あれ?そう?ん?」

 

 私の少し先を歩きながら、カエデと赤鬼が何やら良い合いをしている。

 

 「やっぱ違いやすよ!」

 「違くない!こっちよ!」

 

 ふふっ。

 

 なんだかこうして見ていると、二人は兄妹みたいだね。

 

 「レン、あんたの意見を聞くわよ。左よね?」

 「いやいや姉御、右ですよね?」

 

 カエデと赤鬼が私に意見を求めてきた。

 

 「繁華街エリアは・・・」

 

 ギンジの精神世界なのか、それともギンジの中にある、心の中なのか、分からないけど・・・どこか似ているこの街並みは、どことなく違和感を覚えた造りをしている。

 

 私達の慣れ親しんだ街のはずなのに、かれこれ40分以上、繁華街エリアに向かって歩いているのに、目的地に到着は出来ていない。

 

 「・・・カエデ、赤鬼、少し気になる事があるの」

 

 私は今までの徒歩の道すがらで感じていた、ちょっとした見落としがあるんじゃないかと、そう思っていた。

 

 「先ず、赤鬼」

 「はい!」

 

 良い返事、だね。

 

 「この鏡の監獄について、知ってる事を、先に話してほしい。いつまでも繁華街エリアに到着しない事と、もしかしたら何かしらの、原因を調べられるかも」

 「へい・・・そうですね」

 

 赤鬼が牙を擦りつけながら、私達に説明してくれようと、顎に手を上げて少し整理し始める。

 

 そもそも、私達はギンジが陥っているこの状況、そして鏡の監獄について知らない事が多すぎる気がしてきた。

 

 「何よレン。せっかくここまで来たのに、何か気になる事でもあるの?」

 「・・・今言った通りだよカエデ。ギンジに至るまでに、あまりにも情報が無さ過ぎる」

 「それもそっか・・・じゃあ、赤鬼。もう一度詳しく説明しなさい」

 

 突入前の情報では、入れるぐらいしか知らない。

 

 でも入れても、出られるか分からない。

 

 「えーと先ず、鏡の監獄は人の心を映し出す結界みたいなモンですわ。ここに入れられると、自分の意思が無いと出られないとかって能力がありましたわ」

 

 なるほど。

 

 「で、過去に俺っちが入れられた時は、まだ造られたばっかりだったから、驚異に思う奴も居なくてな」

 「驚異?どういう事かしら?」

 

 赤鬼がポロッと喋った驚異と思う奴・・・確かにそれは気になる。

 

 「あ、えーと・・・要はここに捉えられると、入っちまった・・・ああ、この場合はギンジの兄貴だな。兄貴が一番驚異と思う奴を見つけて、そいつを叩いて意識を持って帰させるか、記憶を思い出してもらってなんとか、自分から帰りたいと思わせる事で、鏡の監獄(ここ)から脱出出来るんすわ」

 

 つまり、やるべき事は2つ。

 

 でも片方だけ達成すればOK。

 

 1・ギンジが驚異と思う人物、モノを見つけてそれの撃破・破壊を達成する。

 

 2・ギンジを見つけて記憶を思い出させる。

 

 ・・・2の方が楽かもしれない。

 

 「その、記憶を思い出させるにはどうすれば良いの?」

 

 私はある一つの提案を頭の片隅に入れながら、赤鬼に、聴いてみる。

 

 「先ずは本人に会う事だな。俺っちの時はすぐに脱出出来たが・・・まぁ、よくよく考えると心なんてモンが無いから、脱出が簡単だったんだよな。実際、今俺っちが捉えられたらそうそう脱出は難しいと思うぜ」

 

 なるほどなー。

 

 「なるほど。それであんたは捕まんない様に、鏡の怪人の能力を真正面から壊してたのね」

 

 だから鏡を、認識してすぐに壊してたのね。

 

 「それで、まだ気になる事は・・・レンの姉御?」

 「レン?どうしたの?」

 「・・・」

 

 まだ気になる事が、たくさんある。

 

 「赤鬼が最初に捉えられた時は、鏡の監獄ってどんな世界になっていたの?」

 

 私がこんなに、考え込むのは珍しいかな? 

 

 二人とも落ち着いて話せてて、偉いね。

 

 「えーと・・・赤い水が一杯に広がるヘルブラッククロスのアジトみたいになってたな。でもアジトは崩壊してて、総統(親父)の玉座だけは残ってる、そんなやべぇ世界だったぜ」

 「怪人って皆あの絶望的な世界が共通の何かがあるのかしら?」

 

 ・・・。

 

 赤鬼が捉えられた世界では、確証が持てない。

 

 そうだ・・・。

 

 「カエデ、赤鬼。度固化市・・・ここから繁華街エリアまでの近道は」

 

 まだ、何かを見落としてる。

 

 これで確実に出来るなら・・・。

 

 「ここを左に曲がれば信号一つで繁華街エリアよ」

 「いやいや左ですって!」

 「なんでよ!逆じゃない!」

 「いやいやだって、鏡の奴が人の世界を【映す】んでっせ?全部が全部反転してるに決まってらぁよ」

 「わけ分かんない事言ってんじゃないわよ」

 

 反転・・・?

 

 「赤鬼、まだ忘れている事無い?」

 「へい。これで全部っすよ。脱出の為には、驚異となるモノを叩く、本人に会って記憶を思い出させる、そんで映しだされるモノは人いがい左右反転して・・・あっ!」

 

 見落としていたモノの正体、ついに分かった。

 

 ようやく理解も出来た。

 

 鏡、だもんね。

 

 「カエデ、道が全部逆になっていたから、繁華街エリアには、到着出来ないと言う事が、分かったよ」

 「・・・赤鬼?もしかして知ってた?」

 「えと・・・知ってはいやしたが、忘れてたと言うか・・・」

 

 ああ、赤鬼、死んだね。

 

 「それを先に言いなさいよ!!」

 「ハムカツっ!?」

 

 カエデの怒りの・・・もとい、逆ギレパンチが赤鬼の腹筋を貫いたね。

 

 あれは痛そう。

 

 「さ、流石・・・生身でも、この威力・・・」

 「ふざけんじゃないわよ!!このバカ!バカ鬼!」

 「す、すいやせん!すいやせん!」

 

 カエデが怒る・・・いや、逆ギレするのもわかるけど、今はソレも良いか。

 

 「メガトン・インパクトォ!」

 「これは愛の鞭・・・ヒレカツゥ!!?」

 

 想像以上の痛みと衝撃が襲ってきたのか、赤鬼がコンクリートを弾きながら吹き飛ばれた。

 

 南無。

 

 「行こう、カエデ。時間も有限だよ」

 「そうね」

 「ヌハハ、それじゃあ気を取り直して行きやすか!」

 

 赤鬼の頑丈さは、たまに、驚く。

 

 やるべき事は完全に理解した。

 

 平然を装いながらも焦るカエデと、陽気赤・・・バカ鬼と共に、私達は左右反転した街のコンクリートを、踏んで繁華街エリアへと突き進む事にした。

 

 もう少し、待っててね、ギンジ。

 

 必ず助けるから。カエデが。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「佐久間さん?ああ、知ってるわよ。とにかく親切な方でねぇ。めんどくさい事ぜーんぶやってくれるのよ」

 「銀ちゃんかい?そりゃモー、知ってるよ。頼りになる漢だよありゃ」

 「佐久間の兄弟を探してる?さぁ、どこで働いているかは知らないな。ぶっひっひっひ」

 「銀治君か?さぁ、あんまり話した事ないんだよねんげぇーげっげ」

 「そう・・・」

 

 (こっつ)一家と言う魔法を売っているお店を営む家族に話しを聴いてみたが、結局ギンジに関わる情報は得られなかった。

 

 あれから繁華街エリアに到着したカエデ達は、佐久間ギンジと言う男の人探しをしていたが、結局答えは得られない。

 

 「なんだか見覚えある奴らだったな。特にあの牛っぽい兜をつけた奴、ホモっぽいな」

 「私も思った。なんとなく、ケイタにはあわせたくない」

 

 赤鬼とレンがヒソヒソと話しながら、カエデは次の人物に声をかける。

 

 「そもそも現実世界に魔法が売ってるなんてな・・・怖い場所だぜ」

 「何かしら、戦闘も警戒した方が、良いかも」

 

 カエデが情報を集めている少し離れた所で、赤鬼とレンはまだヒソヒソと話している。

 

 流石に繁華街エリアまで行くと人の数も尋常じゃなく、遠くで赤鬼をジッと見つめる人もそこそこ増えてきている。

 

 とは言え、この街が異常なのか、宇宙人みたいな顔の人や、紐だけで構成された棒人間みたな住人もちらほらみかける。

 

 カエデはと言うと、たこ焼き屋を営む店主に声をかけていた。

 

 手当たり次第とは言うが、本当に無差別に話しかけている。

 

 たこ焼き屋の店主は頭にタコの被り物?みたいなモノを装備しており、無言である。

 

 無言ではあるが、カエデの質問には黙々とサインで返しながら、たこ焼きをキレイに焼いている。

 

 「職人技ね。マスター、たこ焼き3つ頂戴。それで、佐久間ギンジって男を探してるんだけど、何か知らないかしら?」

 「(お嬢ちゃん、聞けばなんでもわかるってわけじゃないぜ。銀治さんの何を知りたいってんだいのサイン)」

 「あんたもギンジの事を知ってるのね。なら、詳しい説明は省くけど、あいつが今どこに居るかわかるかしら?知ってるなら教えて」

 「(今の時間ならオフィスビルエリアで働いてるだろうなのサイン)」

 「そうか・・・サラリーマン?みたいなのやってたしね。ありがと。それじゃあそこに行くわ」

 

 そっけなく返事を返したカエデに、タコの店主は不機嫌そうな目つきと、不信感を態度に表わして、カエデにたこ焼きを3つ手渡す。

 

 「(見ず知らずのお前らに、銀治さんになんの用事だ?のサイン)」

 「あんたには関係ないでしょ」

 「カエデの姉御、何か問題事でも起こしそうだな」

 「ここで戦闘は始めたくない」

 

 タコの店主の不穏な空気を感じ取ったのか、赤鬼とレンがカエデに近寄ろうとするが、そんな二人の前に左右から刃が向けられた。

 

 「穏やかじゃねぇな。なんだ?」

 

 赤鬼が振り向いた先に居たのは、豊満なスタイルをしながらも、その身体を見せつける様に露出が多い、ビキニアーマーを装備した女性が忌むべき者を見ている表情をしていた。

 

 レンの方向にも、八頭身のモデル体型でありながらも、ネバネバとヌラついた、ナメクジをそのまま巨大化させた様な形をすた剣を向けて、ニタニタと笑っていた。

 

 「(この街の活気は銀治さんによって保たれてる。よそ者にそう勝手にされちゃ困るんだよ。ちょいと大人しくしてて貰うぜのサイン)」

 「・・・赤鬼、レン、そっちは大丈夫かしら?」

 

 タコの店主の殺気を感じ取ったカエデは、振り向かずに二人に声をかけた。

 

 赤鬼もレンもすぐに戦闘態勢に入れる状態になっており、喧嘩みたいな闘気をふっかけてきた三名に、臆すこと無く睨み合っている。

 

 「あは♡かわいい顔♡」

 「・・・ブサイク」

 「くっふっふっふ。お前、生きて帰れるとは思わない事だ」

 「ヌハハ、やってやろうじゃねぇか」

 

 そしてカエデとレンと赤鬼を囲む様にして、黒い服を来た繁華街エリアの住人達がぞろぞろと現れる。

 

 これはギャラリーとして見に来た訳ではなく、明らかな敵意をカエデ達に向けている。

 

 「(ここじゃ女も男も法律も何もないぜ。銀治さんがすべてだ。覚悟しなのサイン)」

 「・・・どうやら、世界があたし達の敵みたいね」

 「同意。ここを突破しよう、カエデ」

 「どら、いっちょ大暴れしてやりますか」

 

 鏡の監獄・未鏡市。

 

 2月16日についに、繁華街エリアにおける大乱闘が始まってしまった。

 

 我先に迫る猛者達が一斉に三人に襲いかかるが、カエデとレンは一瞬で変身すると、その変身の衝撃の余波が繰り広げられて、黒い服の住人達は一斉に吹き飛ばされてしまった。

 

 「佐久間剣術──」

 

 剣士の様な女が銀色に輝く剣を下段にかまえて、その切っ先を真上に振り上げる。

 

 変身の衝撃を切り裂いて、カエデを正確に狙った剣線は横から鈍色の鈍器が遮った。

 

 「どら、お前の相手は俺っちがしてやらぁ」

 「・・・面白い」

 

 衝撃の余波が止まると、ぶぴゅっといやらしい音を鳴らして、白濁とした粘液が飛び出すが、それはレンの青白いビーム剣によって切り離される。

 

 「・・・汚い。ひょっとして、性格も?」

 「一緒に気持ちよくなるぅ♡?」

 

 赤鬼と剣士が激突し、レンとナメクジ女も激突を開始する。

 

 「(驚いたぜ。まさか変身だけでここまでやるたぁなのサイン)」

 「邪魔するなら容赦はしないわよ」

 

 屋台がいきなり爆散し、タコの店主も戦闘態勢を整えると、間合いも関係ないぐらいの速度でカエデに肉薄する。

 

 「かかってきなさい!」

 

 繁華街エリアにおいて、望んでいない戦闘が開始されてしまった。

 

 だが・・・どんな所であろうともヘヴンホワイティネスは敗ける事は無い。

 

 その覚悟で今まで戦って来たのだから。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「(いやー完全に実力を見誤ったぜのサイン)」

 

 繁華街エリアでの大乱闘は、カエデ達の圧勝で幕を閉じた。

 

 と、言うのもここで妨害してきた三名は恐ろしく弱かったのだ。

 

 「どら、これならどうだ、どら!どら!」

 

 バックブリーカーで剣士の女の骨をボキボキと折る赤鬼は、傷一つ無い。

 

 「あ、あは・・・気持ちいい、わ・・・♡」

 「邪魔・・・小細工は効かないよ、ブサイク」

 「い、韻踏みまで、完璧・・・♡」

 

 ビーム剣によってナメクジ女は全身をバラバラにされてしまった。

 

 ビームの熱にはめっぽう弱かったらしい。

 

 「で、まだ邪魔するのかしら?時間が無いのだけれど」

 「いや・・・あの、すいませんでした。殺さないでください」

 

 タコの店主には普通のパンチ一発でダウンを取ったカエデは、タコの店主をすぐに正座させて謝罪させていた。

 

 「さっきまでサインで喋ってたくせに、なんなのよ普通に喋れるじゃない」

 「あ、はい・・・あの、すいませんカッコつけてました。かっこだけに」

 「もう一回殴ろうかな・・・」

 「許してください。別にハードボイルド気取ってた方がカッコ良いと思ってて。あ、多分銀治さんだったら、クアッドタワーで営業してますよ・・・」

 「クアッドタワーか・・・」

 「繁華街エリアにありやしたなそう言えば。どら、行きますかカエデの姉御」

 

 剣士の女をいびつにひしゃげさせながら、赤鬼は彼女をごみ捨て場に叩き捨てる。

 

 所詮幻にも近い存在なのだ。

 

 何をしても良いやの考えが働いているのだろう。

 

 「私も、そろそろ向かった方が良いと思う」

 「思わぬ情報を収穫出来たわね。それじゃ、行きましょ」

 「あ、あの本当にすいませんでした・・・」

 

 歩き去ろうとするカエデ達に、土下座して謝るタコの店主は、墨を吐き出しながら謝罪の言葉を並べている。

 

 「もういいわよ。それじゃ、あたし達はもう行くから」

 「ご達者で」

 

 タコの店主の威勢は完璧になくなってしまったが、カエデ達を見送って、繁華街エリアの復興を開始した。

 

 「銀治さん・・・大丈夫だよな・・・」

 

 最後にカエデ達の背中と、その奥にそびえ立つクアッドタワーを視界に入れて、お世話になった佐久間銀治さんへと、憂いの気持ちを醸し出す。

 

 不安なのか、それとも希望なのか。

 

 それは誰にも分からない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「佐久間先輩〜そろそろ商談開始ですよ〜」

 

 クアッドタワーの入り口エントランスで、書類を見ながら商談の準備をしている銀治に向かって、余裕そうな態度をヘラヘラ見せているのは、銀治の優秀かつ狂った部下である、畑中莉子だ。

 

 そして銀治の隣で彼を補佐しているのは、艶のある短めの黒髪が目立つ、メガネをかけた女性・鈴村都子だ。

 

 「ああ、悪い。そろそろ行くよ」

 「佐久間さん、頑張りましょうね。この商談が成功したら、あのお猿の女王にも褒められますよ」

 「そうだな・・・あいつ怖いから、あんまり褒められたくは無いんだけどなぁ」

 「くふふふ、少しわかる気がします」

 「アレに聞かれたら怒られますよ〜?」

 「アレって言い方!」

 

 三人が清楚な格好のまま、軽い談笑を終えると、すぐに商談の為の準備を始める。

 

 「くふふ、さぁ、行きますよ」

 「ほ〜ら、行くわよ先輩」

 「・・・」

 

 自分を応援してくれる二人の美女。

 

 その二人を見て、銀治は今この世界が自分の生きる場所だと、心から感じる。

 

 (もう、生きた屍じゃないしな)

 

 また過去の自分と照らし合わせてしまう。

 

 ・・・。

 

 (あれ?なんで生きた屍?俺は元々皆から居る者として、既に証明されてるじゃないか)

 

 ふと、たまに自分でも分からない事を考えてしまう。

 

 (そうだよ、元々こうだよ)

 

 スーツの襟首を正して、銀治はクアッドタワーのエレベーターへと足を運ぶ。

 

 「それじゃ、行こうぜ」

 『はい!』

 

 二人の後輩を従える様に、銀治はこの商談に挑む。

 

 サラリーマン佐久間銀治の商談伝説は、ここに始まる!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「なんだ君たちは・・・」

 

 クアッドタワーの入り口では、体躯の良い白シャツを袖まくりした、社会人の男に、カエデ達は妨害されていた。

 

 妨害と言うのはまた語弊のある言い方だが、焦っているカエデからすれば妨害でしか無いのだ。

 

 「あれじゃどっちがヘルブラッククロスか分からんぜ」

 「同意。焦りすぎて、前が見えていない」

 

 カエデが少し暴走気味になっているからか、赤鬼とレンが少し呆れている。

 

 「ここは今黒十字株式会社が、貸し切りの大商談をさせて貰っている場所です!部外者は入れませんよ!」

 「そんなのいいから入れなさいよ!」

 「あ、アポイントメントは・・・っと言うか、目上の人間に対して、なんだその態度は・・・」

 

 明らかに令嬢としての礼を失している言動に、いよいよこの社員も怒りそうな雰囲気を出している。

 

 「ギンジを助けないと行けないのよ!いいからどきなさいよ!」

 「ぎん・・・ええぇ、よりによって佐久間係長の知り合いかよ・・・あの人、色々な所で恩義を作りすぎだよぉ」

 

 “この男の名前は大久。

 

 佐久間係長の事を心から尊敬している、体格の良い男だ。

 

 営業成績もとても高く、毎晩鈴村先輩で抜いているらしい。”

 

 「でえい!この変なナレーションもいらないわよ!」

 

 モニターが出てきてギンジのありえた姿が見えたり、ナレーションが出てきたり、魔法が売ってたりとめちゃくちゃな世界には、いい加減うんざりしている。

 

 おまけに世界は左右が反転している。

 

 「・・・いい加減にしないと、警察を呼ぶぞ」

 「呼びなさいよ腰巾着!」

 「ちょ、姉御・・・」

 

 暴走が半端なくなってきいたカエデの腕を引いて、赤鬼が一旦二人を引き連れてクアッドタワーから離れる事にした。

 

 「何よ!」

 「カエデの姉御、少し落ち着いてくだせぇな」

 「同意。このままじゃ、埒が開かない」

 「・・・っ」

 

 我が身をすぐに振り返って、カエデは深呼吸をする。

 

 「こんな場所だ。しっかり対策していかないと、兄貴に会えないぜ」

 「同意。ギンジを助ける為にここに、来たんだから、カエデが落ち着いてくれていないと、全てに時間がかかる」

 

 赤鬼とレンがカエデを落ち着かせると、カエデもバツが悪そうに小石をコロリと蹴る。

 

 「兄貴を救う・・・の前に、兄貴に会わないとだめだろ?だからよ、俺っち考えたんだ」

 

 赤鬼がカエデの頭をぽんぽんと軽く叩いて、牙を見せつける様に笑う。

 

 「この世界にはどうやらヒーローが居ないらしいし、怪人は居ても、悪そのモノが居ないと見たぜ」

 「・・・何を言ってるの?」

 

 レンが訝しむ顔で、赤鬼の言葉に耳を傾けている。

 

 「簡単な事よ」

 

 赤鬼はバカで後先考えない事も多いが、これについては一瞬の思いつきとは言え、かなりカエデとレンが動きやすい作戦と考える。

 

 「要は俺っちが悪の怪人として、暴れれば、姉御達は兄貴を助けられるんじゃないか?」

 「それって・・・」

 「勿論、本気でおいたしちゃ駄目だぜ?兄貴はクアッドタワーに居るには間違いないんだ。だったら、後は兄貴を見つけやすくする手段を取ればいいのさ」

 

 赤鬼がオリハル金砕棒を引き抜いて、カエデとレンに鬼の気迫を見せる。

 

 「・・・カエデ、赤鬼の言うとおりやっても、成功する可能性は・・・100じゃないよ。それでも、やるでしょ?」

 「当たり前よ・・・」

 

 カエデはほんの少し泣きそうな顔で、赤鬼とレンを見る。

 

 「あたしだって、ギンジの事は心配なの。あたし、ギンジに伝えたい事が沢山あるの」

 

 伝えたい、ではなく伝えないといけない言葉がある。

 

 「さっきは暴走してごめん。赤鬼、頼めるかしら」

 「任せてくんな」

 「・・・分かった。赤鬼、死なないでね」

 「任せてくん・・・え?」

 

 レンの最後の冗談は、どこか冗談に聞こえない言葉であり、赤鬼は一瞬自分の命日を考えた。

 

 必要悪としいて暴れる事を申し出た赤鬼に対抗するのは、カエデとレンだ。

 

 だとすると、少しばかり戦わないと行けない事になるのかもしれない。

 

 「演舞、やったでしょ。アレ、やろう」

 「ああ・・・ヌハハ、任せてくんなぁ!」

 「やるわよ。ここまで来たら、もうギンジを逃さないんだから・・・なんとしても、ギンジを救出して、それで・・・」

 

 カエデは未鏡市の青空を見上げて、めいいっぱいの気持ちを出す。

 

 「ギンジが好きだって伝えないと行けないんだから。やるわよ!」

 

 カエデの清々しい程の言葉に、仲間としてレンと赤鬼は同じ気持ちになる。

 

 「最後までお願いね、赤鬼」

 「ガッテンだ。姉御達も頼むぜ。俺っちが適当に暴れ始めたら、後は流れだ」

 「了解。必ず、ギンジを救おう」

 

 レンが最後にそれだけ告げると、手を差し出す。

 

 「え、何よ急に」

 「ああ、そういう事か」

 

 カエデはきょとんとしているが、赤鬼はその大きな手を、レンの手の上に乗せる。

 

 「ほら、カエデも早く」

 「・・・」

 

 カエデも言われるがままに、手を差し出した。

 

 三人で円陣を組んで、手を差し出した。

 

 これはつまり、作戦結構の合図だ。

 

 「そう言えば、前にもこんな事あったわね」

 

 ギンジがミヤコの策略で孤立した時も、似たような場所で円陣を組んで、必ず助け出そうと、三人で誓いを立てた。

 

 「あの時と場所は違うし、人も違う、だけど、ギンジを助けたいって気持ちは同じ」

 「なんだかんだ兄貴も世話がかかるしな。ヌハハ」

 「そうね・・・まったく・・・」

 

 三人で苦笑し、そして一斉に手を上げる。

 

 円陣を解散して、再び三人はクアッドタワーに向き治る。

 

 今度こそ、ギンジを救出する為に。

 

 未鏡市の最後の行動を開始した・・・。

 

 

 

続く 

 

 




お疲れ様です。

鏡の怪人編なのに、鏡の怪人出て無くない?って思うかもしれないけど、まだ彼女にも出番があるんです。どこで出るかはお楽しみに

キャラネタ書きます

神宮カエデ
ついにギンジへの感情をオープンに。レンもこれでうかばれる
※別にレンは死んでません。
ちなみに、まだ何かを見落としている。

宮寺レン
未鏡市の謎のついてちゃんと考えてた。
バカな赤鬼の上手い扱い方を披露した。

赤鬼
男も女も関係ないなら容赦ないです。
バカ故に忘れている事も多く、話している内に、重要な事を思い出す事もある。
カエデとレンの為に、未鏡市にて悪役になる事を選んだ。

佐久間銀治
未鏡市において街の人々から恩義を無意識に作っている。
皆の銀治さん。
ヘヴンホワイティネスのゲームにどハマリしている。
しかし、キャラクターの名前を誰一人覚えられない。

鈴村都子
この世界でもくふふと笑っている。
ギンジにとっての驚異である事に違いはない。

畑中莉子
リコニスみたいな奴と言うか、リコニス。
ギンジにとって驚異である事に違いはない。
一回刀刺されてるしね・・・

大久
オーク怪人に似ているよね。都子先輩で抜いている。

未鏡市のヘヴンホワイティネス
銀治がハマっているゲーム。
全100章で綴られており、全編フルボイスでかつCG集は全部ラ○ブ2dによるアニメーションで彩られる。
カエデっぽい何か達が、凄惨な眼に合わされる。最後はヘヴンホワイティネスの完全敗北によって、ヘルブラッククロスが日本を転覆させて世界侵略を成功で幕を閉じる。
その後の彼女達は、ヘルブラッククロスのおもちゃとなってしまう。
DELサイツというサイトで1300円で購入可能なスマホゲーム。
PC版もあるよ!
※フィクションです
・・・

次回は赤鬼、必要悪に
そしてカエデとレンの奮闘も開始されて、ついに銀治とカエデが出会う事になるが・・・

なお話を考えてます。次回もお楽しみに!
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