正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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皆様こんにちは。アトラクションです。

 今回のお話はバトルシーンのテンポを早めに展開しているので、結構無理やり感があるな、と思いますが、勢いで書いたことに後悔は無い!

それではお楽しみください!


11・俺を信じろ!!

 夕日が差し込む暗い倉庫で犬の怪人は巨大な装置を、自慢の筋肉を見せつけるように持ち運び、所定の場所まで設置していた。

 

 「くふふ、やっぱり君がいると、大きな機材や装置を運ぶのに大いに役立つね、チワワ」

 

 その傍らで護衛の紫をつけ、ドクターミヤコは薄気味悪い微笑をし続けている。

 

 総統からの許しを得た今、ミヤコのやることに制限はない。

 

 街すら破壊してでも佐久間ギンジを連れ戻す事を許可してくれた総統には感謝しかない。

 

 無論失敗しても、剣士の怪人や、特殊部隊、今ここに運び出している広範囲洗脳マシンのデータが取れれば、いよいよヘルブラッククロスは全国へと漕ぎ出す足がかりを得られる。

 

 「ね〜あーしずっとここに居ても全然満たされないんですけど」

 

 その装置の上で、サキュバスの怪人が暇そうに気怠く漂っている。

 

 「フッあら、男漁りはいいの?怪人さん」

 

 さらに甲高い声で、サキュバスの怪人を見上げる少女が現れる。

 

 「男漁りなんて言い方、悪いよお姉ちゃんン」

 

 その少女の後ろから少し遅れて、優しそうな声音と怪人への畏怖を込めた発言をする少女。

 

 二人は女性戦闘員の特殊部隊に所属し、整ったヘアスタイルと、モデルの様な体躯、そして同じ様な顔。

 

 似ている、というより誰が見ても同じ顔に見えるその二人の少女に、サキュバスの怪人が苦言を漏らす。

 

 「だあって、あいつら皆、あーしを怖がって全然性欲を開放しようとしないのよ?マジだるくならん?」

 

 両手の爪に施されたコテコテのデコネイルを見ながら、サキュバスの怪人の表情が心底つまらないようなため息を放つ。

 

 「くふふふ、そのうちお腹いっぱい食べれるよ。それより、二人ともごめんね、ここまで来てもらって」

 「チワワ、こいつら初めて見る」

 

 腰に手を当てながら元気かわいい印象を見せつけるミヤコとは対象的に、二人の少女はクール可愛いと言った印象を受ける。

 

 『とんでもございません。我ら、ハーフムーン、いつでもドクターのご命令を受け入れる所存でございます』

 

 息がぴったり揃ったその発言と膝をつけると、深い敬礼を行う少女は双子だ。

 

 「紫ちゃーん。ハーフムーンってなんぞ?」

 

 サキュバスの怪人が瓜二つの少女を見下ろしながら、護衛の紫に質問をする。

 

 犬の怪人も聞いたこと無いようで、興味津々と言った具合だ。

 

 「ハーフムーンとは、我らがヘルブラッククロスの特殊部隊のことだよ。あそこの双子の彼女らは、そのハーフムーンの中でも精鋭の立ち位置でね、今回、万が一剣士の怪人が破れた時に予備としてドクターが要請した凄腕だよ。右に立つのが姉のニュームーン。そして左がフルムーン」

 

 本来精鋭というだけでは、個別のコードネームなどは貰えないが、彼女達の活動、勧誘や略奪等の高い成功率を認めた総統自らが彼女らに名付けたのだ。

 

 「フッ、ワタシならあのヘヴンホワイティネスを必ずや倒してみせましょう」

 「お、お姉ちゃん、ワタシもいるヨ・・・」

 

 鼻で笑うニュームーン、語尾が変なイントネーションになるフルムーン。

 

 二人はミヤコから直々に両月コンビと呼ばれている。

 

 そして犬の怪人、サキュバスの怪人、紫に、ドクターミヤコ。

 

 潮風の匂いが漂うこの倉庫で、ミヤコはメガネをくい、と直す。

 

 「それじゃあ、ここで皆は待機していてね。わたしはそろそろ研究室に戻るから」

 

 暗闇に向かって歩くミヤコは、やがてシルエットのみとなっていくも、メガネの部分だけは光り、怪しく笑みを浮かべながら研究室へと戻っていく。

 

 「さて、ヘヴンホワイティネスがここまで来るとしたら、必ず佐久間ギンジ、ドクターの最高傑作もここに乗り込んでくる筈だ。各員、ギンジだけはなんとしても捉えるんだ。それがドクターの為にもなる」

 

 紫がその場にいる怪人二人と、特殊戦闘員二人に今後の指示を出す。

 

 リーダーとしての素質もある紫の言葉に、犬もサキュバスも怪訝な顔をするが、ニュームーン、フルムーンは尊敬の眼差しを紫に向けている。

 

 怪人からすれば指示を出して欲しいのも、言うことを聴くのもミヤコだけだ。

 

 逆に両月コンビは人間である紫の指示であれば素直に聴きやすい。

 

 ドクターミヤコの命令であれば、どちらの陣営の所属する者でも、素直に聞き入れる。

 

 「では、皆、頼むよ」

 

 紫が言うとミヤコを追いかけるように、暗闇へと進んでいく。

 

 夕日の差し込むこの倉庫で、巨悪がなおも嗤う。

  

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 開けた校内で剣士の怪人の本気の剣術に恐れず突き進み、激しい攻防を繰り返していた。

 

 新たな力を手にして戦うカエデとレンの連携に剣士の怪人は押されていた。

 

 「やはり強いな、ヘヴンホワイティネス!わたくしはとても楽しいですよ」

 

 最早計画等忘れ去る程に、剣士の怪人はこの戦いを楽しんでいた。笑みはカエデにもレンにも出ていたが、明らかに大切な事を忘れているような表情はしていない。

 

 「いい加減に倒れてよ!」

 「ここでつまずいてる、場合じゃない、早く倒れろ」

 「もっと楽しもうではないか!」

 

 もはや罵倒でさえ、剣士の怪人は楽しむ事の一つでしかなかった。

 

 カエデの衝撃が空間を貫き、剣士の怪人をめがけて発射される。

 

 それに合わせてレンも走り出し、ビーム剣の形状を斧に変えて、勢いよく、力任せに振り下ろす。

 

 「くっふっふっふ!その連携も良いぞ!」

 

 盾で衝撃を防ぎ、斧は剣で防ぐ。両手で防御出来ない分、力押しにおいては敗けるのだが、冷静さを失わないままでいる剣士の怪人は、後方にある学生の椅子を蹴り飛ばし、レンに当てて隙きを突く。

 

 「させるかっての!」

 

 同じ様にカエデは教卓を投げつけ、剣士の怪人の動きを止める。

 

 教卓は当たる前に綺麗に両断され、その開けた空間に二人が居ない事に気がつく。

 

 教室も廊下も吹き抜けになったこの階層で、逃げるのは難しい。

 

 そうなると居るのは背後。剣士の怪人と同じ様に不意打ちを決めるのかもしれない。

 

 「甘いですね!」

 

 振り向きに合わせて怪人剣術の回転斬りで、背後を斬ると、剣圧と斬撃がまだ残っている柱や、生き残りの教室の壁が無慈悲に斬り崩されていく。

 

 しかし誰も居ない。

 

 「おやぁ?」

 

 静寂にも思えるが、金属やコンクリートが近くでガラガラと音がする。

 

 瓦礫にでも隠れていたのだろうか、そこへ向かってイース・トゥルバレンツを繰り出し、瓦礫は疎か、壁すら無くなっていく。

 

 「こっちよ!」

 「!?」

 「こっちからも・・・!」

 

 声がしたのは、上空、穴の空いた天井。

 

 もう一方の声は、真下。こちらも穴のあいた床。

 

 「正義連携!」

 

 カエデが天井から、レンが床から飛び出し、剣士の怪人へお互いの必殺技を決める。

 

 「必殺!ヘヴンリー・インパクト!」

 「ビーム長剣・乱舞・・・!」

 

 強化されたガントレットの高速回転による威力上昇と、形状を変えられるようになったビーム剣による連携攻撃がようやく剣士の怪人を捉える。

 

 上空の攻撃は盾で防ぐ。が、強化された彼女の必殺技についにヒビの入った絶対防壁が打ち砕かれる。

 

 「なんだと・・・!」

 

 左腕ごと弾かれ、胴体に感じたことのない巨大な衝撃が命中する。

 

 その強い衝撃に真っ黒な血液を口から吐き出すが、今度は床から、つまり剣士の怪人の背中からレンの乱舞攻撃が繰り出されていた。

 

 払い、叩き、弾き、斬り、潰し、砕き、貫き、そして飛ぶ様にすり抜ける。

 

 カエデとぶつかりそうになるが、右手同士でキャッチしあい、綺麗に着地を決める。

 

 宙を舞いタイルに落ちた剣士の怪人はそれでも、立ち上がる。

 

 「嘘でしょ・・・こつちはもうほぼ限界なのに・・・」

 「でも、諦めない、から。私は、ケイタと、一緒に帰りたいから・・・」

 「そうね・・・あたしだって、レンの未来を守りたいから、ミドリコの彼氏さんも探してあげたいしね」

 「生活がズボラ、だから無理、だってギンジが言ってた」

 「それだけは言えてる」

 

 肩で息をしながらも冗談を言える余裕を取り戻した。

 

 後はこいつを早く倒して、トモカ達を助けなければ。

 

 「素晴らしい・・・強い、強い、楽しいですよ」

 

 きっとどこかの骨も折れてるに違いないのに、ビキニアーマーを着た剣士の怪人の顔は血液に濡れた顔で笑っている。それでも剣を構えて、ヘヴンホワイティネスへと突き進む。

 

 「これで最後にしましょう!ヘヴンホワイティネス!」

 「決着、つけるわよ!レン!」

 「先手は任せて。トドメ、お願い」

 

 剣士の怪人はシンプルだが、とても速い突きの攻撃。

 

 それをレンはスライディングで避けると、ビーム剣の形状をナイフに変えて足の腱を素早く斬るが、剣士の怪人は止まらない。

 

 「カエデ!」

 「大丈夫よ・・・今度こそ負けない!」

 

 恐怖を克服し、今の強くなったこのスーツなら、勝てる!

 

 カエデの顔面すれすれにまで迫った剣の先端を身を撚る様に避けると、その回転の勢いを利用して、右足で踏みつける様にラッシュを叩き込む。

 

 「必殺!シュート・ドライブ・レイザー!!」

 

 何度も繰り出される蹴りの連続に、避けられて隙きをさらし、防ごうにも盾は無く、飛ぼうにも足が動かない。

 

 (そうか・・・腱を斬られたのか)

 

 剣士の怪人にもはやなすすべ無く、その攻撃を受け入れるだけ。

 

 「うりゃああ〜〜〜!!!」

 

 全弾その足技が命中し、剣士の怪人は吹き飛ばされる。

 

 吹き飛ばした方向は先程斬られて壊れた、壁があった場所へと。

 

 「勝てた・・・」

 

 レンが安堵の表情で、カエデに駆け寄ると、二人は強くハイタッチを交わす。

 

 その後すぐに、二人は仰向けに倒れると、元の学生服の姿に戻ってしまう。力を使い果たして、変身が解けたのだ。

 

 斬られた筈の腹部には傷はなく、でも触ると痛かった。

 

 (あの空間・・・結局なんだったのかしら)

 

 レンの同じくビーム剣の進化を感じて、カエデと同じ事を考える。

 

 (さっきまで、思い出せなかった、けど・・・シルヴァ、ありがとう)

 

 未来での恩人へお礼を心の中で済ませると、二人は現実に引き戻される。

 

 「学校、めちゃめちゃ、だね」

 「・・・そうね・・・」

 

 教室や、図書室、理科室やお手洗いを犠牲にした巨大な戦場を見て、カエデは呼吸も荒くところどころ崩れた天井を見上げて、少しだけ考えてから言葉を出す。

 

 「うちの財閥がなんとかするわ・・・」

 

 ともあれ、二人の少女はかつてない強敵との戦いに勝利した。

 

 少しだけ休んだら、ミドリコ達と合流しよう。

 

 ミドリコとギンジが今どこに居るのかは解らないが。

 

 カエデとレンは女の子なのに大の字で倒れたままなのであった。

 

 〜学校の戦い〜

 ヘヴンホワイティネスvs剣士の怪人

 

 勝者・ヘヴンホワイティネス

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 校門から見える校舎では、壁が崩れたり、瓦礫が吹き飛んでいたりとどうやらカエデ達が戦っている模様。

 

 校門に辿り着けそうなのに、戦闘員の数が多く、きっとミドリコ一人だったらたどり付けなかっただろう。

 

 「本当に、君が味方で心強いよ、ギンジ」

 「そうだろそうだろ!」

 

 ただの戦闘員、ミドリコは一対一で倒すのがやっとだと言うのに、ギンジは持ち前の暴力だったり、車をぶん投げたり、マンホールで頭をかち割ったり、たまに炎をだしたりとやりたい放題で戦闘員達を蹴散らしていく。

 

 パワードスーツで強化されている分、たとえギンジの力でも一撃で倒せない者がいるのも事実だ。それをミドリコが補佐する様な形で、トドメを刺していく。

 

 とは言え決して殺害はしていないが。

 

 「それにしても、こいつら全然諦めないな。最後の一人になるまで、とことんやっちまったほうがいいのかね?」

 「いや、そこまでは。一応彼らも人間なわけだし・・・」

 

 隊列をぶち壊し、戦闘員を蹴散らすとリーダー格の戦闘員が、手元の端末を操作する。

 

 「ミドリコ、上に気をつけな」

 「う、上?」

 

 見上げると、パラシュートにくくりつけられた箱。

 

 それがこちらにゆっくりと落ちて来る。

 

 「アーマード・ミステリー・パーソン?」

 

 何やら書かれている英語をミドリコが読み上げると、首を捕まれ、ミドリコが後ろに引っ張られる。引っ張ったのはギンジだ。

 

 「ついにおでましか」

 

 アーマード。それを読み上げた時点で理解した。おそらくこの箱の中にはヘルブラッククロスが唯一量産できる怪人が入っている。

 

 「ミドリコ、お前今から来た道戻って援護できないか?」

 「・・・何か策があるんだな。解った」

 

 言うとヒールを鳴らしながら、ミドリコが走って学校とは反対方向へと向かっていく。

 

 来た道は通学路だが、そこは戦闘員達が倒れている。見る人が見たら、きっと地獄絵図だろう。

 

 「女を逃すなんて優しいじゃないか。ギンジ」

 「まぁな。お前らも俺を見習えよ」

 「言ってろ。ドクターがお待ちだ。行け!鎧の怪人!」

 

 指示の言葉が出ると、箱を打ち破り西洋の鎧に身を包んだ怪人がギンジの目の前に現れる。

 

 「なんだ・・・あれは」

 

 遠目でミドリコが鎧の怪人を見ると、得も言われぬ不気味さに背筋が震え、鳥肌が立つ様な気がする。

 

 「さて、距離感はこのへんで・・・」

 

 ミドリコがライフルを構えようとすると、足音がする。

 

 その方向に顔を向けると現れたのは、戦闘員の一人だ。普通の人間ならこれでも恐怖の対象となるが、正義の志を持ち、より強い正義感で戦うミドリコは違う。臆さず、逃げない。

 

 「公安の女ァ・・・ヤらせろぉ!」

 「・・・まったく、仲間が援護を求めているんだ、邪魔をしないでもらおうか」

 

 ライフルをアスファルトに落とすと、拳銃とアーミーナイフを取り出し構える。

 

 「あっちはあっちでヤバそうだな・・・ま、敵が一体なら大丈夫か」

 「あいつはこの部隊でも指折りの男だ。果たして、公安の女は勝てるのかな」

 「大丈夫だろ。少なくとも、負けねーよ」

 

 まだ喋ろうとしたギンジに、鎧の怪人が拳を振り下ろす。

 

 近くで見ると3m程はありそうな巨躯に、思わず息を飲むがその動きは鎧の重さがかかる故に、遅い。

 

 「上手く避けたな。せいぜい、そいつと遊んでるといいさ」

 

 校門に腰掛けリーダー格の戦闘員がギンジと戯れる鎧の怪人を見ながら、笑っているのか肩を上下に揺らしながらギンジとミドリコの戦いを見ることにする。

 

 「クソ!こいつ本当に女かよ!」

 「女だと思って侮っているのか!」

 「胸でけーから絶対動きが遅いと思ってたのに!」

 「なんて失礼なやつだ!」

 

 元軍人での戦闘経験を活かして、ミドリコは拳銃とナイフによる格闘術でパワードスーツへ飛びかかる。

 

 戦闘員は腕力だけは自信があるのか、必死にミドリコを捕まえようと、弾丸をものともせずにタックルを決める。

 

 「くっ、なんて力だ・・・!」

 

 避けたタックルを見ると、コンクリートで固められた壁を突き抜けて、またミドリコのところまで姿を表す。

 

 「げへへへ、捕まえたら、町中でひん剥いてやるぜ」

 

 戦闘員の手元には細かくくだいたアスファルト。目潰しには最適なそれをパワードスーツでの倍速を利用してミドリコに再度突っ込んでくる。

 

 「うおおおおおヤらせろおおお」

 「バカ者が!」

 

 タックルが来る。そう思って横転で回避するも、男はミドリコの回避を読んでいた。

 

 「しまっ・・・」

 

 ミドリコの顔にめがけて、細かくなったコンクリートが投げつけられる。

 

 「げへへ、さぁて楽しませてもらおうかね」

 

 目をやられた結果、手元の武器は外されてしまった。

 

 「さーて、こんな良い身体してんださぞかし美味しいからだ、を・・・」

 

 未だ目を抑えて暴れ悶える緑ミドリコの両足を抑えようと掴むと、一気に身をよじり、腕から離れてしまう。

 

 「んだとぉ!」

 

 そのままミドリコが立ち上がると、なにごとも無かったように掌サイズの小型の爆弾を袖から用意する。

 

 「眼暗ましとはこうやるんだ」

 

 言うとミドリコは戦闘員に見えない様にピンを抜くと、次は公安のスカートに手を添えてたくし上げる。

 

 その行為に思わず凝視してしまい、動きが止まる戦闘員。

 

 だが、ミドリコは最後までスカート上げきることは無く、小型の爆弾を戦闘員の顔に向けて投げる。

 

 「はっ!?」

 

 爆弾。この至近距離で使うのであれば、ミドリコも危ういはずだがその考えは戦闘員には無かった。爆弾に驚き、逃げようとするも拳銃を拾い直したミドリコは鋭い視線で戦闘員に向ける。

 

 「動くな」

 

 この時点でミドリコの勝利は確定していた。

 

 「な、う、撃ってみろよ」

 「撃たないさ。私は人殺しにはなりたくないのでな。だからこうする」

 

 ゆっくりと近づき、ミドリコは戦闘員の股間を踏みつけるように、ヒールで押しつぶすと、絶叫が通学路に響く。

 

 痛みで倒れる戦闘員をよそにミドリコはライフルの所まで戻ると、ギンジの戦っている場所に狙いをつけるために、ライフルを構える。

 

 まだギンジと鎧の怪人の戦いは終わっていなかった。

 

 「うう・・・くぞぉ〜・・・あ・・・?」

 

 痛みで倒れた戦闘員の顔面には、コロコロと先ほどの爆弾が転がってくる。

 

 「ウソ・・・これ、不発弾じゃないの?」

 

 かなり遅れて閃光を撒き散らし、破片は運悪く戦闘員の顔面と股間に思い切り深く刺さるのであった。

 

 「・・・よくも俺の部下を!」

 

 リーダー格の戦闘員が激昂する。それを見てギンジが笑う。

 

 「な?勝つだろ?」

 

 そして空気の破裂するような音が鳴ると、鎧の怪人の膝関節に弾丸が命中し、動きが止まる。

 

 鎧の怪人をギンジが持ち上げると、校門へ向けて思い切り投げ倒す。

 

 「う、うそだろ、おい!やめろ!」

 「うるせーこのバカ!」

 

 ギンジの力で振るえば、鎧の怪人も武器になる。投げ倒された鎧の怪人は校門に胴体を凹ませ、兜の部分は学校の敷地内へと音を鳴らしながら転がっていった。

 

 「クソ!撤退するしか・・・」

 

 逃げるリーダー格にミドリコは、ためらいなく威嚇射撃をすると、リーダー格がギンジへと構えを取る。

 

 「クソ、逃げられないならせめてお前だけでも倒してやるぞ!ギンジ!」

 

 学校からなにかが飛んでくる。

 

 人の形をした何かをミドリコはスコープ越しで確認する。

 

 「なんだあれは・・・人?」

 

 今まさにギンジと戦闘員が戦おうとする直前、二人の間に色々と露わになった女性が降ってきた。

 

 全身ボロボロになったその姿を見て、戦闘員がいよいよ恐れおののく。

 

 「ひいいい!剣士の怪人が破れたぁああ!!」

 「怪人?これが?どうみても人間じゃないか」

 

 追いついたミドリコが、ギンジの後ろで怪人と呼ばれた女性を、緊張な面持ちで見る。

 

 ギンジからしても見たことのない怪人に、戦慄している。

 

 「うわああ駄目だああーー逃げろ!!」

 

 戦闘員が逃げ出すと、ギンジもミドリコも目の前に倒れ付す剣士の怪人と呼ばれた女性が気になっていた。特にギンジは視線をずらせない。傷だらけでもそのたわわな瑞々しい身体に釘付けになっていた。

 

 「ギンジ、あまり見てやるな。怪人とはいえ、その女性だ・・・」

 「・・・いや、なんか・・・うん・・・生きててよかった・・・」

 「やめんか!バカ者!!」

 

 ガンストックで頭を殴られるも、ギンジには対して効いていなかった。

 

 なぜなら佐久間ギンジも男性。女性の身体には興味津々なのだ。

 

 未知の魅力の前には健全な男子は無敵なのだ。だからマジマジと女性の、剣士の怪人の身体を見続ける。

 

 「だからマジマジと見るなーー!!」

 

 〜通学路の戦い〜

佐久間ギンジ、甘白ミドリコ

     vs

ヘルブラッククロス、鎧の怪人

 

勝者・ギンジ、ミドリコペア

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ボロボロになった校舎へ入ると、ここで激戦が繰り広げられた事が容易に想像できる。

 

 「カエデー!レンー!無事か?」

 

 ミドリコが叫ぶも少女達からの返答はない。

 

 「どこに居るんだ?」

 

 あまりにも無残な校舎を見ると、ギンジでも流石に心を痛ませる。ここで彼女達が学んでいたのに、何も知らない一般市民を巻き込む事に躊躇いを持たない悪の組織が、簡単にこんな事を行う精神がギンジには理解が出来ない。

 

 「おい、お前いい加減に起きろよ」

 「・・・」

 

 そんなギンジの背中には、剣士の怪人がおぶられていた。

 

 今はミドリコのスーツを羽織り、身体を隠す様な状態だ。

 

 「ギンジ、居たぞ」

 「おーい生きてるか〜?」

 

 ミドリコが指差した先には廊下や教室の壁がもろもろ斬り崩されており、ひとつの大きいワンフロアになっていた。

 

 そこの教室・・・正確には教室だった大広間に、カエデとレンは仰向けに倒れていた。

 

 おそらくギンジの背中で気絶しているこの見た目は、露出狂の様な怪人は、カエデとレンに破れたのだろう。

 

 「ギンジ?」

 「え、ウソ、なんであんた居るのよ!っていうか、ミドリコも来るのが遅いわ!」

 

 カエデが痛む身体を抑えながら立ち上がると、ミドリコにぷりぷり怒りながら詰め寄ってくる。

 

 「ところで、ギンジ、なんでその怪人を、連れて来たの?」

 

 レンも不思議そうに立ち上がりながら、ギンジの背で気絶している怪人を指差しながら聞いてきた。

 

 「なんかそのままにしとくのも可愛そうだなって思って」

 

 これもギンジの優しさだろうか、おんぶするギンジがどこかシルヴァと重なって見える。かつて自分がそうして貰っていた時の、レンの幼い記憶を思い出して、再び泣きそうになる。

 

 「で、そんな理由で連れて来てなんのつもりよ。あんた、あたし達がどんな想いでそいつを倒したと思ってるのよ!」

 「なんだよ、急に怒るなよ」

 

 カエデの怒りにギンジは思わず萎縮してしまう。

 

 「こいつはねぇ、この学校の人間を攫ったり、あんたを引渡せば悪事を止めるって言ったり、とにかく色々大変だったのよ!」

 

 剣士の怪人の要求はヘヴンホワイティネスを、傘下として迎え入れるか、ギンジを引き渡すという条件の変わりに、友達を帰すという条件だった。

 

 「じゃあ、それだったら俺を引渡せば、色々大変じゃなかっただろ?なんでそんな無茶を」

 「・・・あんたも、守りたかったのよ」

 

 小声で言うと目を逸らしながらごにょごにょと、最後の方は何を言っているのか解らなかった。

 

 「あんた?俺がどうしたって?なぁなぁちゃんと教えてくれよ」

 「うるっさい!」

 

 いつものやり取りにギンジはまたも殴られる。

 

 「あんたを引き渡したら、ヘルブラッククロスの思うツボって言ってんの!ただでさえあんた強いんだから!」

 「なんで逆ギレしてるんだ、カエデ」

 

 やり取りを見守るミドリコがカエデの暴走を眺めてクスリと笑う。

 

 「さて、色々辻褄を合わせる為に、こいつをそろそろ起こそうぜ」

 

 背中におぶった怪人をタイルに下ろすと、ギンジは怪人の額に手を当てると、微弱な電気を流して怪人を起こそうとする。

 

 それを不思議そうに眺める三人の女性達。

 

 「起きねぇな・・・」

 「当然よ、あたしが思い切り蹴飛ばしたんだから」

 「カエデの、必殺技、強かったね」

 「君たちをここまで苦戦させた敵なのだろう?あのオーク怪人みたいな奴だな、こいつ」

 「くっふっふっふ、ヘヴンホワイティネスは予想以上の強さでしたよ」

 「へぇ、こいつ俺も知らない怪人なんだよな。もう一回電撃やってみるか」

 

 何か変だ。ここにはギンジ、カエデ、レン、ミドリコしか居ない。気絶している剣士の怪人を除いてはこの場に居るのは四人だ。

 

 「ちょっとバカギンジ、もう一回電撃うちなさいよ」

 「ああ、そうだな」

 「結構痛いぞ。もうやめるのです」

 「レン、やはり不思議だ、誰か喋っているそうだぞ」

 「ミドリコ、私も、それを思った」

 

 四人がタイルに倒れている剣士の怪人を一斉に見る。

 

 「・・・何を不思議そうにわたくしを見ているのですか」

 

 剣士の怪人は目を見開き、四人を見上げている。だが抵抗する力は無く、スーツを布団かわりに硬いボロボロのタイルに倒れている。

 

 『起きたーーー!???』

 

 四人同時に剣士の怪人の目覚めに驚愕する。

 

 「さっきの電撃で目覚めましたよ。初めまして、佐久間ギンジ。わたくしは剣士の怪人」

 「はぁ〜・・・さっきの感覚と不安・・・的中してんじゃん。ミヤコぉぉ・・・」

 

 がっくりとうなだれてしゃがむ。ギンジの知らない怪人を、ギンジの知らない所でドクターミヤコは造っていた事実を知り、ギンジの頭の上にはどんよりした空気が漂う。

 

 ギンジから聞こえたミヤコという言葉を聴くと、カエデとミドリコが少し不穏な面持ちになる。

 

 「くっふっふ・・・なるほど、ドクターが言うように、素敵な殿方ですね・・・」

 「ハァ!?こいつのどこが素敵なのよ!」

 「ギンジの良い所なんて女性に手を出さないぐらいだぞ」

 「お前らひどくね?」

 

 次々と、主にカエデがギンジの悪い所を剣士の怪人へ熱弁していく。

 

 「いやだからお前ら、ひどくね?【ら】っていうか、お前がひどくね?」

 「そんな事より、トモカを・・・学校の関係者は、どこに居るの?」

 

 仰向けになって動けない剣士の怪人へ、レンが詰め寄る。

 

 「・・・簡単には口を割ら無さそうだけど?」

 

 そこにカエデも詰め寄る。

 

 「いや・・・わたくしは自分の土俵での戦いに負けました。知りたい事はなんでもお教えしましょう」

 「やけに素直ね」

 

 さっきまで命の奪い合いをしていたとは思えない程の返答に、カエデとレンは拍子抜けな表情になる。

 

 「この学校の関係者や一般市民はどこに攫ったの?」

 「この街の、湾岸エリアです。そこには広範囲洗脳マシンや、犬の怪人やドクターの精鋭が着々と準備を進めております」

 

 剣士の怪人の潔さにミドリコもギンジも拍子抜けな表情になる。

 

 「洗脳マシン?なんだってそんなもんを。しかもソレってあれだろ、ミヤコが造ってた兵器だよな?」

 

 訝しむ表情に変わるギンジの質問に、剣士の怪人はカエデの顔を見上げる。

 

 「何よ」

 「言ったでしょう。不本意だと。わたくしの騎士道精神に反する作戦であった為に、この情報をお伝えしておきます」

 

 言うと剣士の怪人は跳ね起きると、黒井ヒトミの姿に変身し、窓へと走り出す。

 

 「動けないんじゃ無かったのか!?」

 「またお会いしましょう、ヘヴンホワイティネス。そして佐久間ギンジ。わたくしは貴方の優しさを覚えておきますよ」

 

 剣士の怪人の軽いフットワークに驚き、カエデもレンも追いかけるのが遅れる。

 

 「ああ、それと・・・」

 

 飛び出す直前、剣士の怪人はギンジの方へ振り返り、そして順番にカエデとレンとミドリコを視界に入れる。

 

 「我らがドクターは、貴方の為ならばこの街でさえ破壊すると意気込んでおります。ご注意を」

 

 その言葉を最後に剣士の怪人は、ボロボロの校舎から飛び降りる。

 

 飛び降りた先で剣士の怪人は、振り向きながらギンジの事を思い出す。

 

 「くっふっふ・・・佐久間ギンジ・・・ドクターが言う、彼の可愛いさ。なんだかよく解るような気がしますね」

 

 一先ずの自分の役目を果たした。戦いには敗北したが、あとはミヤコ達が上手く事をすすめるはずだ。

 

 「さて、湾岸エリアだってよ。お前ら行けるか?」

 

 ギンジの問いかけにカエデとレンは頷く。ここまで疲弊していても、彼女達に退く選択肢はない。こうしている今でも、トモカや学校関係者はひどい目に合わされているかも知れない。

 

 もしそうなっていたら、カエデは3月9日のアモーレ襲撃の日を思い出しながら、トモカを助けられなかった時の事を思い出してしまった。

 

 後悔と苦痛が心を締め付ける。

 

 それはレンもミドリコも同じ気持ちで、一刻も早く助け出したい。

 

 「でも、その前に、ギンジは、何を知っているの?」

 「広範囲洗脳マシン・・・とか言っていたわよね?」

 「それを使うとどうなるのだ」

 

 女性三人からの質問責めにギンジは少し身動ぐ。

 

 「ドクターミヤコっていう、怪人とか兵器を造る専門の大幹部がいるんだ。そいつは・・・信じがたいんだけど、俺の命を助けてくれた、恩人なんだわ」

 

 ギンジは恩人を裏切ってまでヘヴンホワイティネスへの協力をするということ、ここに来るまでに、自分の身に何があったのかを説明していく。

 

 流石に転生したとか話しても信じては貰えないだろうから、そこだけは省いて説明する。

 

 未来を知っている事も関しても、今日のこの事件についてはイベントとしての知識が無いため、対策が無い。

 

 ここまで戦っているのに、通学路付近で騒ぎが起こらないのは、おそらく洗脳マシンで常識を変えられたからだろう。

 

 「問題はどうやってその洗脳マシンをぶっ壊すか、だな」

 「・・・そのあんたの話を聞いて、あたしが全部信じると思う?」

 「別に全部信用しなくてもいいさ」

 

 相変わらずカエデは、ギンジへの当たりが強い。

 

 「お友達を助けられるなら、話の全部は信用しなくてもいいさ。だけど、仲間だとは思わなくていいし、友達みたいに仲良くならなくたっていいさ」

 「ギンジ・・・」

 

 ミドリコは少なくとも、ギンジの人間らしさを知っている。他人の為に涙を流し、女性に手を出さない精神から彼を仲間と認めても良いと思っている。

 

 「だからそのかわり・・・俺を信じろ!!」

 「・・・」

 「言ってることが、カエデと同じぐらい、めちゃくちゃ。ふふ」

 

 ギンジの言ってる事がつい可笑しくなって、レンは微笑を浮かべる。

 

 「必ず!お前達の味方としてお友達助けるぜ」

 「あんたが言うことじゃないの。バカなんだから」

 

 ほんの少しだけ、カエデの口元が嬉しくて緩んだことをレンは見逃さなかった。

 

 (・・・きっと、カエデもあと少し、だね)

 

 四人がそれぞれ笑い合うと、学校を後にする。

 

 「なぁ、学校、どうするんだ、こんなボロボロで」

 「・・・財閥がどうにかするわ」

 「ワオ。財閥ってスゲー」

 

 正義の志を持った四人の戦士は、日が沈みいよいよ夜になろうとする街を後にする。

 

 さらなる戦いが待ち受けるであろう、湾岸エリアへと足を進めるのであった。

 

 

 

続く

 

 




お疲れ様です。アトラクションです。

次回で四話構成のお話が終わります。長いような速いような。

で、次回だけはめちゃくちゃ話が長くなりそうです。具体的にはバーナーの怪人とリコニスの戦いの時と同じぐらい長いです。でも頑張って書きますので、応援や感想をいただければ幸いです

キャラネタ書きます・テーマは子供の頃の夢

佐久間ギンジ
もっとおともだちを、ふやしたい

神宮カエデ
正義のヒーロー

宮寺レン
ヘルブラッククロスの殲滅

甘白ミドリコ
パパのお嫁さん

ドクターミヤコ
夢なんてない

リコニス
自分が楽しく生きていければそれでいい

小町サクラ
ママみたいなかわいい人をめざします

熊沢レイナ
おじいちゃんと結婚する

角倉ケイタ
全ての国のおんなの人と結婚する

次回も頑張って書きます!アトラクションでした!
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