正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです。

いやー公休日削られるし、書き直してプロット増えるで今週も忙しかったです。

今後もこの物語を楽しんでいただければと思います。

先週は更新出来なかったし、今週も話は短いしで、モー大変。

それでは、物語も始まります。どうぞ!


114・正義をその手に

 クアッドタワーの激しい揺れは続く。

 

 何度も繰り返される驚異的な爆発音が、何度も下の階から聞こえてくる。

 

 ある時は建物戦隊が激しく揺れて、ある時は何枚もガラスが叩き割れる音。

 

 人為的にやっているとはとても信じられないような音が、何度も続き、それらは建物内に居る人々を恐怖に陥れる。

 

 「くふふ、いよいよ死の訪れかな・・・?」

 

 都子がカエデの腕にしがみつきながら、軽い冗談のつもりで言ってみると、カエデの右腕に抱きかかえられる莉子は、それを面白そうにせせら笑う。

 

 「あはは、そうだったら面白いかもね。でもまぁ、先輩に会えないで死ぬのは嫌かな〜」

 「くふふふ、それはわたしも同じ」

 「冗談ばっか言ってるんじゃないわよ!」

 

 カエデが左右に抱きかかえる二人に注意してから、階層同士の空洞をもう一回蹴りぬいた。

 

 そうして一つ下の階に無理やり降りて、カエデは先程銀治と別れた大広間へと姿を表す。

 

 「もういいでしょ。ギンジなら、向こうで待ってるから」

 

 都子と莉子をおろしてあげながら、カエデは3人で銀治の所へと向かう。

 

 そも、ギンジの精神世界だったり、心の中であったり、なんとも不思議な場所ではあるが、この二人を助けた事でギンジが取り戻せるのであれば、安いモノだと、カエデは鼻でため息をついた。

 

 「さて、先輩の所に行かないと・・・あれ?」

 

 莉子が広間に集まった人混みを抜けながら、銀治の居ると言う広間を歩きながら、見覚えのある人を見つける。

 

 その者は銀治と一緒に居て、今この瞬間に似つかわしくない・・・言うなれば場違いにも等しい、足を魅せる服装に、黒いファーコートを羽織った女性の姿を発見する。

 

 そしてそれは都子も同じ様に目に止まったのか、目に入った瞬間に嫌な顔を見せた。

 

 「なっ・・・アレって・・・」

 

 カエデにも見えたその存在。

 

 「佐久間君、怪我は無い?無事?痛む所はある?心は?身体は?」

 「いやいや大丈夫ですって!怪我はしてませんから!あ、やめて、触んないで!嫌っ!いやーーー!」

 

 ベタベタと銀治の身体を触るのは、ひとえに今回の事件において、心配だからだ。

 

 肩を、首を、胸を、腰を、背中を、腕を、手を、指先を、鼻を、股関節を、膝を、脛を、お尻を、全部いやらしい手付きで触りながら、それぞれの部位に無事を確認してくる女性の姿がそこにはあったのだ。

 

 一見すれば、その姿は真っ黒な薔薇のようにも見える、ダークな美しさを兼ね備えた美女。

 

 社会人の中に探しても、こんなに美人な人は居ないと思えるような美女である。

 

 今行われている行動は、どうみても痴女。どうみても痴女である。

 

 こんな公衆の面前であろうとも気にせずに、銀治の身体を心配して、しかしどこか邪な気持ちを全面に押し出しているのは、黒十字株式会社の営業部統括の女。

 

 鈴村都子と、畑中莉子が忌むべき女性。

 

 「あ!おーい助けてくれ鈴村、畑中!」

 

 今もスーツを脱がされそうになっている銀治が、先程のコスプレ女と自分の部下二人を発見して、助けを求める。

 

 (は・・・?なんであたしに助けを求めないのよ!)

 

 カエデは後輩を連れてきた自分よりも、後輩二人を見つけるや否やすぐに救いの手を求めた事が気に入らない。

 

 一気にカァッっと怒りが身体を包み込んだが、カエデが動き出すよりも早く、都子と莉子が動き出した。

 

 『そこを動くな!』

 「あら、来たのね・・・悪い虫達」

 『誰が悪い虫か!』

 

 二人して普段言わないような言葉を出して、黒く美しい女性が都子と莉子にあからさまに不服そうな顔を見せる。

 

 「っていうか、あんたら全員ギンジから離れなさいよ!」

 

 カエデも佐久間銀治の取り合いに入りながら、ここぞとばかりにヘヴンスーツの力を出して、都子と莉子を引き剥がす。

 

 最後の黒く美しい女性に手を出して、胸ぐらを掴んで引っ張り上げてから、顔を見やると、どういうわけかこの世界に居る、居てほしくない女性の顔があってカエデは複雑な表情を見せる。

 

 「あたし・・・?」

 「何よ貴女。目上の人間にこんな真似して、ただでは済まない事よ?」

 

 神宮カエデと神宮楓。

 

 絶対に会うことの無い二人が、ギンジの心と精神の世界・鏡の牢獄にて相まみえる事になってしまった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「ハァ、ハァ・・・まだやるかい?」

 「ふぅ、ふぅ・・・まだ、カエデが、帰ってきてない」

 

 クアッドタワーの一階は既に瓦礫や、残骸を細かく粉砕、細断されてしまい、コンクリートが荒々しく削り取られた、大きな一室になっていた。

 

 お金と粉塵が舞い上がり、小さなガラス片が床を覆い尽くして、それでもなお赤鬼とレンの大暴れは止まらない。

 

 途中で入ってきた警察連中もガラの悪い人物が、乱入してきただけであり、そんなモノは赤鬼とレンを止める事は出来ずに、ひと振りで塵芥の様に吹き飛んだ。

 

 「・・・俺っち、心配になってきたぜ」

 「私も。どうしようか、そろそろ追いかける?」

 「理由は無いが、俺っちは暴れてないと行けないからな・・・」

 

 オリハル金砕棒を床に突き刺して腕を伸ばす赤鬼。

 

 レンもビーム剣を肩に乗せてトントンと、腕を休憩させている。

 

 かれこれ二人は一時間近く、演舞と称した戦いと破壊を阻止する、悪と正義の戦いを演じている。

 

 赤鬼の剛力から繰り出される空気を打ち出す能力は、どこにあっても健在。

 

 研ぎ澄ました力ではなく、生来授かった鬼の膂力で繰り出される一撃の重さは、シミュレーションでは味わえないモノである。

 

 一方のレンのビーム剣術は確実に悪を許さない、逃さないと言った気悪が伝わるモノで、縁起であっても油断すれば簡単に首を跳ねられてしまいそうな、鋭さが常に赤鬼の背筋を立たせた。

 

 どちらにしても逃げられない、たった一人の仲間を救い出すための戦いとは言え、お互いに手は抜けない性分なのだろう。

 

 「赤鬼、強いから、油断は出来ない」

 「そりゃあこっちもですぜ。演舞の続きと行きたいところですが、カエデの姉御が兄貴を助けられなくなっいまったらおしまいですわ。そろそろ暴れるのは止めにして、俺っちにトドメ指してくんな」

 「同意。私もそろそろ止めようと思ってた」

 

 これ以上やると本当に建物を倒壊させかねない。

 

 レンも赤鬼の言うとおりに、ビーム剣術の出力を最大にする。

 

 最大にして構えて、赤鬼にその剣先を向けた。

 

 「本気だな・・・」

 「当たり前」

 

 トラの眼をしている以上、レンは間違いなく本気である。

 

 赤鬼に恨みがあるわけでも、毛嫌いをしているわけでも無い。

 

 ただ、手を抜きたくないだけである。

 

 「斬れないから大丈夫だよ」

 「そうは見えねぇけどな。姉御が言うなら間違いなさそうだな・・・ヌハハ・・・」

 

 何故か乾いた笑いが出てしまうが、赤鬼も逃げようとはしない。

 

 斬れないと言う事は、斬るつもりは無いのだろうが、どうしても信じがたい本気の眼。

 

 「行くよ・・・」

 「俺っちも男だ・・・覚悟決めらぁ」

 

 そうしてレンが振り上げた大きなビーム剣は、天井を貫通すて、パラパラとコンクリートの破片を落とす。

 

 大上段に構えたビームが周囲をその熱で溶かして、次々と天井を壊しながら、赤鬼に向けてその刃が落とされていく。

 

 「どこまで本気なんじゃあああ!?」

 「・・・えーと、全部?」

 「殺されるうぅぅぅ!」

 「覚悟決めたんでしょ」

 

 赤鬼が次に見た景色は、青い光。

 

 青白く広がる大きなビームの壁に、赤鬼は大上段に斬り落とされた(潰された)

 

 「き、斬らないって言ったのに・・・」

 「形だけでも。悪役は倒されるさだめ・・・」

 「ご、ごもっとも・・・」

 

 壁や天井が溶け崩された影響で新たな瓦礫が赤鬼を潰す中で、レンは得にこれと言った表情を見せないまま、赤鬼には眼もくれない。

 

 こんな風でも一応二人の仲は良好である事は間違いないのだが、どうしてか毒を吐きがちなレンには赤鬼は敵わないと思ってしまった。

 

 「悪は倒した・・・それじゃあ、ギンジとカエデの所に行こう。皆で、助けに行こう、ギンジを」

 「お、おう・・・痛ぇ・・・」

 

 斬られはしなかったが、これでは話しが違う。

 

 「あの、レンの姉御、何か怒ってやすか?」

 「・・・ミドリコのお部屋、覗いたでしょ」

 「え、あ、はい・・・」

 「女の子のお部屋、覗いたら、駄目だよ」

 「ウッス・・・」

 

 レンは赤鬼とミドリコがどういう仲なのかは理解している。

 

 だが、交際に至っていないのに、そういうのは駄目だと、赤鬼に教育しようとしていのだが、上手く出来ていない毎日だった。

 

 だから一階厳重注意をしようとも思っていた。

 

 今となってはそのミドリコのお部屋があったカエデハウスは、ヘルブラックロスによって壊されてしまったのだが・・・。

 

 「それだけじゃないけど・・・」

 「へい、まだ、何か・・・?」

 「・・・いや、今はいいよ」

 

 レンから見ると、赤鬼は何か隠している。

 

 ミドリコの事ではなく、本題(・・)として聞きたい事もあるが、今はまだ良い。

 

 その内容としてはギンジを救出する事には、今は何も関係ないからだ。

 

 (・・・カエデの事、何か知ってるのかな)

 

 この世界(ここ)に来る前に、赤鬼とミドリコがカエデを観る眼がいつもと違う事に気づいていたレンは、その事も聴いておきたいのだが、本当に今でなくても良い。

 

 カエデに何かあるなら、その事は仲間として知っておきたい事だからだ。

 

 それが今後の戦いに関わる事ならば、なおさらだ。

 

 「行こう。ギンジを、助けないと」

 「へい!どんな敵が来ても、俺っちに任せてくんな!」

 

 ヘヴンホワイティネスの二人は、更地に等しいクアッドタワーのエントランスから、上の階へと突き進む事にした。

 

 これほど暴れていれば、きっとカエデもギンジを見つけているはず。

 

 すぐに合流して、ギンジの記憶を思い出させねばと、仲間ながらに心配をしながらも、早く合流したい気持ちをはやらせて、上の階を目指しに行動を開始した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 楓とカエデが出会って数分。

 

 カエデは変身を解いて、この世界に生きるギンジの心の中に居る驚異に感じられている人々を集めていた。

 

 揺れも収まって、一先ずは救助が来るまでの間は、小さな談話室にてカエデが銀治、都子、莉子、楓を集めて会話を始めていた。

 

 カエデが知った現実の中では、都子はミヤコ。

 

 莉子はリコニス。

 

 間違いなく、楓はカエデ。

 

 ミヤコが成長したらこんなにメガネが似合う、大人の女性になるのかと、内心カエデには信じがたい。

 

 リコニスの雰囲気を残しているまま大人になったら、あの三日月みたいな口元も大人になる事で、より一層ツラの深さを感じる様になる。

 

 神宮楓に至ってもそうだ。

 

 自分が少し成長したら、こんな顔とスタイルになっているのかと、少し心が踊る気分だが、本題はそこではない。

 

 もう何が来ても驚くことは無いと常々思っているカエデだったが、流石にこれには驚いた。

 

 (もう驚かないって言うのやめとこうかな)

 

 それと同時にショックも襲ってきた。

 

 この鏡の監獄、もしくは牢獄。

 

 この世界では捉えられた者の精神世界を、その心から強く映し出して、実体まで出現させる、その身を蝕むような空間だ。

 

 その世界で、ギンジにとって驚異と思われる存在がそこに居るのがベターだと言う。

 

 そんな驚異に思われる存在に、自分も入っている事がカエデにとってはショックだった。

 

 戦いに身を投じる仲間なのに・・・。

 

 調べてみただけでも、酸素もあって、勉学もあって、会社やら幼稚園など、車やスマートフォンでさえも存在している。

 

 となれば当然ネットもあって、お金もある。

 

 ソレ以外で言えば人間だってちゃんと居るが、ありえないのは異形人と呼ばれる人間では無い種族が人間の敷いたルールの中で共存している事もある。

 

 カエデ達の居る世界では、怪人、魔人、闇人、超人などを纏めて総括する時には、異人と一括にもする。

 

 どうやら未鏡市においては、そういう存在は全て異形人と呼んでいるらしい。

 

 と、すればカエデも変身出来る能力があると言う事は、異形人にカテゴライズされてしまうのかもしれない。

 

 そんなのは嫌だ。

 

 「えーと所で・・・貴女はいったい何者なのかな?」

 

 変身というモノを初めてみた都子は、非現実的なその姿に興味津々であった。

 

 「ねぇねぇそんな事よりさ〜、どうしてお嬢様ここに来てるのさ」

 

 そんな都子をよそに、莉子は混迷極まるこのクアッドタワーに到着していた楓の登場に、多少の苛立ちと、多少の興味で聴いてみる。

 

 こちらの世界では、自分の事をお嬢様と呼ばれている事から、カエデも悪い気はしていない。と言うよりも実際お嬢様なのだから問題は無いのだが。

 

 「どうしてって・・・」

 

 楓が優雅な含み笑いを見せて、その後に都子と莉子を見下したような目つきで、銀治の腕にくっついた。

 

 「佐久間君が心配だったからよ。大久から連絡は貰って、そこから事件があるって知ったから、心配で・・・だから、来ちゃった」

 

 下の階層では事件が起きているのに、ここまで平然と来られる所はやはりカエデと同じなのだろう。

 

 行動力がものすごい。

 

 「くふふ、今すぐ離れなよお猿さん」

 「そうだね〜・・・サクッと殺しそうになるかも」

 「い、いや、俺はもうなんでも良いぞ!っていうか、そんな殺気立たないでくれると助かるんだよなぁ・・・」

 

 楓が銀治にくっつき、都子と莉子が怒り、カエデはそれを無言で死んだ瞳で見つめている。

 

 「あんたら全員が離れろぉ!!」

 

 死んだ瞳をすぐに輝きを取り戻させて、カエデは思い切り女性3人を銀治から引き剥がす。

 

 ヘッドロックにも近い形で銀治の首に腕を回して、カエデが顔を赤くしながらも引き剥がした女性陣へと、ついに怒号を飛ばす。

 

 もう、こんな事で無駄に時間を食うのは納得が行かない。

 

 ギンジを取り戻して、ヘルブラックロスにノシつけて仕返しをしないと気がすまないぐらいには。

 

 それと同時に、ギンジを他の女が触ったり、近寄ったり、色目を使うのが気に食わない。

 

 「こいつ!あたしのなんで!あんた達が軽々しく触んないでよね!」

 『ハァ!?』

 

 カエデの腕に巻き込まれて、銀治は苦しそうにしているが、カエデの胸が後頭部に押し付けられて、柔らかさとフローラルな香りが銀治の脳内に入り込んでくる。

 

 懐かしいとかではなく、確実に身体が覚えているその力強さと理不尽さと、優しい女の子の香り。

 

 棘を感じない、カエデの優しさと愛情に包まれたその香りは、銀治が無言、無抵抗で受け入れてしまっているのだ。

 

 「ふああ・・・君はいったい・・・あの」

 

 銀治が恍惚とした表情で、カエデの腕から逃れると、フラフラしながらカエデの両肩を掴んだ。

 

 普段あんまりされない事にカエデも少し驚くが、銀治として変わっていても、ゴツゴツしていて大きくて温かい手のひらが、カエデの肩にズッシリと伝わってくる。

 

 これは間違いなくギンジの手であると、この人は間違いなくギンジであると。

 

 「今は時間が無いの・・・一緒に来てくれる?」

 「スゥゥゥ・・・ああいいぜ」

 「なんで今息を吸ったの・・・?」

 「スゥゥゥ・・・いや、香りがエロいから・・・あと、顔もかわいいし、スタイルも好みだし、手も白いし、唇も柔らかそうで・・・」

 「・・・」

 

 なぜだか同じギンジの筈なのに、恥ずかしげも無くこんなセクハラじみた事を言ってくる事に、憤りを覚える。

 

 「あとなにより身体が柔らかくて・・・でへへ」

 「佐久間君!それは犯罪よ!年下のヒトに、それも学生?に対してそんな!」

 「ええい、うるさいわ!俺はこの子が俺を探してくれているみたいだし、話ぐらいは聴いても良いと思ったんだよ!」

 

 などと言いながら銀治の眼は、カエデの胸にチラチラと動いてしまっている。

 

 鼻の下も伸ばして、嫌悪感を懐きそうな、明らかな性的な目線を見せつけながら、年下の女の子に向けては行けない顔をしている。

 

 まさかとは思うが、これも銀治の本性なのでは無いかと、カエデは疑ってしまう。

 

 「くふふ・・・」

 「ふーん・・・」

 

 その銀治の言動を見て、都子と莉子の顔にモヤがかかり始める。

 

 まだ顔は見えるモノの、少し暗い霧みたいなモノで陰りを見せ始めたのだ。

 

 楓も普段見ていない銀治の言動に、絶句している。

 

 好きなヒトが眼の前で鼻をほじっている所を遭遇した様な、ちょっと嫌になってしまうようなそんな感覚。

 

 ましてや彼は黒十字株式会社の営業部のエース社員だ。

 

 社会人なのだ。

 

 そんな彼が、自分と似ている少女と出会っただけで、ここまでおかしくなるとは・・・。

 

 「え、でも俺って神宮財閥の・・・アレじゃん?」

 「・・・?」

 「っ!」

 

 銀治の言葉に楓は理解が出来なかったが、カエデは理解した。

 

 理解と呼ぶよりかは、嬉しいと思う感情だ。

 

 「いいわよギンジ!」

 「あのさ、ちょっとそこのトイレ行かないか?」

 「・・・殴るわよ」

 

 これは銀治が悪い。

 

 何をしようとしているのかを察したカエデも、流石に正当防衛になるだろう。

 

 「とにかく、ギンジが記憶を取り戻しかけているなら話が早いわ!」

 

 カエデが再び変身して、銀治を抱えだす。

 

 「え、ちょ・・・」

 「説明してる暇が無いの・・・お願いだからジッとしててね」

 

 抱えられた銀治にそれだけ告げると、カエデは近くの窓を蹴破って高層から飛び降りる。

 

 顔にモヤのかかり始めた都子と莉子もそうだが、自分の成長した姿であろう楓にもこれ以上ギンジを触らせたくない。

 

 彼女らがただの人間ならば、ここから追いつく事は不可能だろう。 

 

 「うわああああ!?死ぬ!死ぬ!!」

 「あたしが支えてるから大丈夫よ!絶対に死なせないんだから!」

 

 クアッドタワーの外層を降りながら、カエデは銀治の身体をぎゅっと腕で締め付ける。

 

 「うわああ今度こそ死ぬ!カエデに殺される!!・・・え?カエデ?」

 「何!?」

 

 風を切る音で銀治の言っている事がわからなかったが、カエデと銀治は下へとどんどん落ちていく。

 

 「やられた・・・!」

 

 あまりに非現実的な存在の登場で、楓の心配している銀治が取られた。

 

 今すぐ追いかけないと、今回の事件のイザコザを使って、銀治と結ばれない。

 

 それを危険と感じた楓は壊された窓から離れて、下の階層に向かおうと走り出そうとした。

 

 「どこへ行こうと言うのかしら。ヘヴンホワイティネス・・・」

 「・・・!?」

 

 楓が振り返ったすぐ眼の前で、周りのスーツ姿の人々とは違い、身体中に怪我や打撲の痛々しい跡を残して、包帯に巻かれた様な、目隠しをした女性が呼吸を荒くしながらそこに立ちすくんでいた。 

 

 ひと目で分かる疲労感が襲っている身体で、しかしその女性は楓の眼の前で明らかな敵意を醸し出している。

 

 「言ったはずよ・・・必ず殺すと・・・」

 

 楓はその女性から眼が離せなくなっていた。

 

 「く・・・ふ・・・ふ、ふ」

 「ォア・・・ぎん・・・じ、せんぱぁ・・・い」

 

 そんな包帯を羽衣の様に着ている女性の後ろで、都子と莉子はついに顔面真っ黒なモヤがかかりながら、声も人とは想えない不気味なエコーをかけて、ゾンビのように身体を脱力させていた。

 

 「・・・ここから、逃さないと、そう決めているのよ・・・進化の怪人はどこ・・・?」

 

 その女性は楓をヘヴンホワイティネスを思い込み、そしてもう逃さないと決めた。

 

 ここまで来ているのであれば、逃がすわけがないからだ。

 

 鏡の怪人。

 

 それがこの女性の名であり、ヘヴンホワイティネスへ再度襲撃をする為に、舞い戻ってきた、驚異の存在。

 

 神宮楓の危機は、今この瞬間に始まったばかりだった。

 

 

続く

 

 




お疲れ様です。

鏡の怪人、まさかの再登場。

狙っているのはカエデ違いと言う・・・。

次回、いよいよギンジが・・・なお話です!

キャラネタ書きます

佐久間銀治/ギンジ
どちらもエロゲー大好きな社会人であると言うことを忘れては行けない。次回、主人公復活!

神宮カエデ
見知った人が居なければ、ギンジを自分のモノと豪語するまでに至った。次回、成長します

鏡の怪人
まさかの再出撃。
その後ろにはセクハラおじさんが控えている事を、彼女は知らない。

鈴村都子/畑中莉子
顔にモヤがかかり始め、ついには顔が見えなくなった。

赤鬼/レン
カエデが飛び降りた事をまだ知らない。
二人は上に、カエデと銀治は下に。

・・・

次回は主人公ついに復活&鏡の怪人戦再開!
鏡の怪人編、もう少しだけ続きます!

それでは、また次回!
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