正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちは、アトラクションです!

今回から新章・現代のレジスタンス編です!
尺の都合上カットされた鏡の怪人のその後も乗せています。

なので実際鏡の怪人編の最後でもあり、新章の始まりでもあります!

一応、そこに繋げられる様に手直しをしております。

それではどうぞ!


現代のレジスタンス編
117・9月6日の夜


 埃一つ舞うことの無い清潔感のある、真っ暗な部屋。

 

 大きく円型に切り抜かれたその部屋の中心には、階段の様に積み上げられた、部屋と同じ円型、三段分のわずかな足場と、その最上段には小さな王座も置かれていた。

 

 そんな部屋の、そんな王座。

 

 王座を取り囲むようにして、人と、人とは思えない数々の怪物達が、、王座に座る者に頭を垂れて、今かいまかと口を開き声を発するのを待っていた。

 

 北側には宇宙人の様な顔に、首から下の胴体、足先までもが様々な太さ、形状の異なる触手を垂らしている触手の怪人。

 

 その左右隣には、棒人間の様な姿なのに、人と同じ様な質感を併せ持ちながら、黒く赤い怪人の瞳を頭部に宿した、紐の怪人。

 

 ぴっちりもっこりした存在感のあるブーメランパンツを履いて、人間には到達不可能な程に筋肉が詰まった、プロレスラーや相撲マン顔負けの身体をして、顔だけはチワワの顔をした犬の怪人。

 

 3名の怪人が王座の北側で地獄の王の声を、ただ静かに待っていた。

 

 東側には座るのも、怪人達だ。

 

 一人は黒いタンクトップに、すらりとした腕を出し、カーゴパンツを履いて黒く硬そうなブーツを履いていて、とても動きやすい見た目をしている、龍の怪人。

 

 長く伸びた髪を後ろで一つに束ねて、優雅な顔立ちからは想像できないぐらいに、豊満な身体を小さく折りたたんでいる。

 

 その右隣には、少年の様な顔立ちと幼さを醸し出して、ハーフパンツと黒いローブを身に着けた、毒蛾の怪人。

 

 禍々しく、そして毒々しい羽は、呼吸でわずかに身体が動くと同時に、毒性の強い鱗粉がこぼれ落ちる。

 

 龍の怪人の左隣には、四角く纏まって、ボックスの形状にその身を変えた機械の怪人が黒く赤いモノアイを閉じるようにして、触手の怪人達と同じ様に、地獄の王の声を待っている。

 

 西側にはボロボロになった学ランの様な服に、袖の部分を無理やり引きちぎったと思われる、物理的なノースリーブを実現した、爆撃の怪人。

 

 その爆撃の怪人の背後では、オレンジ色の囚人服に身を包んだ、老人が一人と、まだ若く見える存在が一人。

 

 老人の方は、元退魔教会所属の退魔師であった老人。名を赤天。

 

 もう一人は、一見女性の様な顔にも見える、魔法の闇人、ことコンキリエが、爆撃の怪人や他の怪人と同じ様に、身体を折り曲げて声を待っている姿勢を取っていた。

 

 南側には、黄金の鎧を身に着けた少女が、この場でたった一人だけ立ち上がりながら、グラマラスなスタイルと綺麗な臍と、悪魔的に狂気に満ちた、満足感のある素敵な笑顔を見せつけて居た。

 

 その隣にはある程度の応急処置だけはしてもらったのか、切断された右腕には包帯、下半身には添え木と、股間部分には『接触禁止』と書かれた注意書きの張り紙をつけられて、さらに悲惨なのがおでこには・・・『わたくしは嘘つきのロリコンです』とタトゥーを掘られた事で、完璧に心が折られた柏木タツヤの姿があった。

 

 かろうじて生きているのだが、もはや男性の象徴である、例のモノに刀を突き立てられて、機能不全に陥った事と、治療中でもお構いなしにボロクソにされた事で、完璧に動かずにうつろな瞳をしている。

 

 中心の玉座の中、最初の一段を登った所で、最後の一人の怪人が、大怪我をしながらもなんとか膝をついて王の声を待っている様子だった。

 

 苦しそうにしている怪人の名前は、鏡の怪人。

 

 単身でヘヴンホワイティネスの本拠地に乗り込み、様々な幻術を用いて、襲撃を行うも組織の裏切り者である進化の怪人に手酷くやられ、あげく敗北が確定しているのにも関わらず、最低限の治療だけしてから再度の出撃。

 

 これを持ってしても、ヘヴンホワイティネスに勝つ事が出来ず、しかも敗北を一日で二度も経験させられた。

 

 怪我を治さずにここに来ているのは、自らの保身の為ではなく、敗北して敗けてから、気がついたらヘルブラックロスのアジトに戻されていたのだ。

 

 いつ、どうやって、誰が、手段はどうやって。

 

 それらの考えを頭の中に頑張ってまとめては見るモノの、考えがまとまらず、佐久間ギンジにぶっ飛ばされてから先の記憶が曖昧になっている。

 

 鏡の怪人は命は助かったと、一度は安堵したモノの、すぐに絶望感に苦しみ悶える事になる。

 

 ヘルブラックロスは個々の力を尊重し、混沌とした世界の中で生き抜いて行かないとならない、圧倒的強者達の世界を目指そうとしている。

 

 その世界を目指し、興りを始めている組織の中で、王とも呼ばれている総統の直属の怪人である彼女は、敗北を許されている立場では無い。

 

 流石に立場上、そう簡単に【処分】される様な怪人では無いが、それでも何かしら大きな罰がその身に落とされる事は間違いないだろう。

 

 「よくぞやってくれた・・・」

 

 中心の三段目、王座に足を組みながら両手を組んで腹に乗せた総統の声が、ついに発せられた事で、最下層の冷たい床に座る怪人達が、一斉に頭を上げた。

 

 「お前たちのおかげで、ついにヘルブラックロスは、この国に名を知らしめる事が出来た・・・」

 

 総統は嬉しいのか、表情は見えないが影のついた顔の奥で、紅い眼光を輝かせる。

 

 「それどころか、新たな協力関係におけるとある組織との連携も完璧に行われ、虹創作市の完全破壊、そして日本軍隊の先行部隊の壊滅・・・」

 

 そして柏木タツヤ大幹部の奪還に加えて、凶悪な犯罪者達の取り入れと、新たな怪人級に匹敵する戦力二名の吸収。

 

 さらに魔法の闇人こと、コンキリエからの事前の顔合わせにおける、魔法の存在の確率。

 

 今まで断片的にしか聴いてこなかったし、興味もなかったモノだが、総統はこの魔法と言う存在にも、今回の一件でその単語と現実的な考えを持ち出したのだ。

 

 「ついに我々の日本転覆計画も、現実味を帯びてきた所だ。コレも全て、お前たちのおかげだ」

 

 総統からの感謝の言葉には、いつも聴く者を不愉快に思わせて、腹を震わせる様な、まるで恐怖心を煽る様な声音があるのだが、今回はかなり上機嫌そのモノの褒める声であり、地獄より生まれた怪人達が頭を下げながらも、歓喜に満ちていた。

 

 リコニスもその例外に漏れず、かなり満足気な顔を見せては、悪辣な笑みは崩さないでいる。

 

 それどころか、いつも以上に瞳は爛々と輝いている。

 

 「さて・・・次の計画だ。ドクターパープル」

 

 お褒めの言葉もそこそこに、総統は次の計画を見せる為に、大幹部の一人であるドクターパープルを呼び出した。

 

 「ここに」

 

 影、闇、暗い・・・様々な呼び方があろう、何も無い場所からドクターパープルが姿を表した。

 

 いつもの戦闘員のパワードスーツをつけた姿を、紫色にカラーリングした、特別製を感じるスーツのままなのに、今や彼は大幹部として総統直属の部下としても動いている。

 

 「次の計画は・・・ずばり、魔法の入手、だ」

 「・・・魔法?」

 

 ドクターパープルが手元の端末かた空中にホログラムを展開させると、様々な情報を乗せた文字列が、それぞれの怪人とリコニスの眼の前に現れる。

 

 展開されたその文字と、ドクターパープルの言葉に、一番に疑問を投げたのはリコニスだ。

 

 「ああ、そうだよリコニス。魔法だ」

 

 この場でひと悶着起こそうとしているのか、リコニスに警戒を強めて言うが、気分の良いリコニスは冷たい床にお尻をつけてだらけ始める。

 

 「そんなに警戒しないでよ、紫ちゃ〜ん。ほら、話を続けなよ」

 

 総統の前でもマイペースを崩さないリコニスを見てから、総統に目配せするが、総統もさして気にしていない。

 

 「続けろ」と、そういう合図で軽く回した総統の右手を見て、ドクターパープルは次の計画の話を続ける。

 

 「今までは魔法少女と呼ばれる敵性存在の使う特殊能力でしか見たことの無かったこの魔法と呼ばれる超常のエネルギーだが、以前骨の怪人がこの情報を持ち帰ろうと動いていたが、未だに連絡が取れない。まず、間違いなくヘヴンホワイティネスか、魔法少女に撃破されたと考えるのが妥当だろう」

 

 ドクターパープルが一息に喋り、また呼吸を整える。

 

 「もし魔法少女を手に入れられるのであれば、研究したい所だが、事はそう上手くは行かない・・・そこで、通常の人とは違うエネルギーが複数検出されている場所をピンポイントに探し出して、その場所に我々が進行する、というのが次の計画だ」

 

 怪人だけの物理的な力だけでは無く、魔法を手に入れられるのであれば、より一層の組織の強化を図れるからだと、ドクターパープルは言う。

 

 「ね〜紫ちゃん、質問があるんだけど良い?」

 「構わないよ、リコニス」

 

 リコニスがあぐらをかきながらだらけ切った腕を上げて、ドクターパープルに声を出した。

 

 「その魔法のエネルギー?って言うのはどこにあるのさ。見つけたらさっさと奪っちゃおうよ」

 「もちろんそのつもりさ」

 

 ドクターパープルが端末を操作して、次のページをめくる。

 

 本が一枚めくれる様に、ホログラムも動き出して、それぞれの怪人達の眼に止まる。

 

 「・・・っ!」

 

 その中で瞳を大きく見開いたのは、龍の怪人だった。

 

 毒蛾の怪人も驚いているが、その驚愕度合いと闘志の沸き立つ気持ちは、この場に居る誰よりも大きいのは龍の怪人だ。

 

 「もう見つけているのか?」

 

 総統の質問に、ドクターパープルは仮面の奥からでも分かる様な笑みを乗せた顔をしているであろう口調で、返事を返した。

 

 「はい、勿論でございます、総統閣下」

 「ほう、流石だな・・・」

 「皆もよく聞け。これは総統閣下からの直接の命令であると!」

 

 ドクターパープルの声には、誰も逆らわずに黙っている。怪人達は次の言葉が欲しいのだ。

 

 「人とは違うエネルギーが検出されている場所、仮称だが我々はこれを龍脈と呼ぶ事にした。そして龍脈が置いてある場所こそが・・・」

 

 ドクターパープルと総統の次の計画。

 

 魔法の出どころになりえると言われている龍脈があるその場所こそが・・・。

 

 「・・・東度固化市だ」

 

 龍の怪人が硬く鋭い牙をぎしり始める。

 

 食いしばったその牙が歯茎から少し曲がる程に強い顎の力で、だけども龍の怪人の顔はとても嬉しそうに微笑んでいるようにも見えた。

 

 「過去の調査、襲撃にもあった・・・我々から愚かにも脱走した怪人や、ゲヘナミレニアム、マージ・ジゴックの残党も流れ着いたと言う、ゴミの掃き溜め・・・異人町に、その龍脈がある事は調べてある。近く、その調査と異人町も最終襲撃を開始する為の人選を行う。総統閣下の望む未来と、我々の勝利の為に、是非とも力を奮ってくれ・・・存分にな」

 

 今日はやたら長く喋るドクターパープルの姿など、最早龍の怪人には見えていない。

 

 「・・・次は、決着をつける」

 「え?何か言った、龍の姉さん」

 「・・・」

 

 龍の怪人が一言、小さく言葉を発して、毒蛾の怪人にはそれが上手く聞き取れなかった様だ。

 

 だが、龍、毒蛾、機械の怪人には苦い思い出のある異人町。

 

 三怪人の初陣と共に、ヘヴンホワイティネスと脱走した怪人達に手酷くやられたあの場所。

 

 あの異人町でやられた屈辱は未だに拭えないでいる龍の怪人にとって、大きなチャンスが来たと、彼女は頭の中で一つの大きな転機を得た気分であった。

 

 ヘルブラックロスの次なる計画は龍脈の調査及び魔法がその場で手に入るならば速攻入手。

 

 そして・・・異人町の最終襲撃と銘打った、破壊を始めるのだろう。

 

 「それでは、次の司令が来るまでは、各々メディカルチェックをさせて貰う。得に・・・鏡の怪人、君は最優先だ」

 

 ドクターパープルの言葉は仲間に向ける心配の声。

 

 しかし・・・。

 

 「待て」

 

 その背後に座る地獄の王、総統はそれを静止した。

 

 「鏡の怪人・・・貴様は・・・貴様だけは敗北で終わったな・・・」

 「はっ・・・この度は・・・」

 

 総統の声音と圧はいつものモノに戻り、怪我をしている鏡の怪人が全身を大きく震わせながら、土下座までして謝罪を述べようとするが、総統は謝罪の言葉を一喝して止める。

 

 「要らぬ!」

 

 本当に人間なのか疑わしくなる程の大声は、さっきまで闘志を燃やしていた龍の怪人の背筋まで震わせる。

 

 あまりの勢いでドクターパープルは、王座の階段から転げ落ちるぐらいだ。

 

 声だけでもこれだと言うのに、総統は身動き一つせずに衝撃波まで出している。

 

 「・・・っ」

 

 最早総統が怖くて声が出せない鏡の怪人に、総統は表情を一つも動かさずに、無慈悲な罰を与えた。

 

 「服を脱げ・・・そして、もう一度この場に居る全員に詫びろ。怪人四天王の面汚しめ」

 「・・・・・・」

 「早くしろ」

 「はい・・・」

 

 もう怖すぎて総統が何を言っているのかさえあまり耳に入っていないが、鏡の怪人はおずおずと立ち上がると怪我をしている身体に一糸纏わない姿を、怪人達に不本意ながら見せる事になる。

 

 「ああ、目隠しは外さなくて良いぞ・・・貴様の眼は、好まない」

 

 昨日までは・・・たった昨日までは寵愛を受けていたのに、この仕打ちだ。

 

 だが、これがヘルブラックロスという世界であり、総統の絶対権限だ。

 

 総統直属の怪人四天王として造られたのに、成果も出せないのでは、意味が無い。

 

 「こ、この度は・・・皆様に・・・ぐぅっ・・・」

 

 鏡の怪人が自分の裸体をさらけ出しながら、土下座をしている。

 

 そんな姿を見られて、触手の怪人にいやらしく笑われて、紐の怪人に見下されて、犬の怪人にも嘲笑されている。

 

 得に悔しく感じるのが、この場に居る怪人のほとんどが、ドクターパープルとドクターミヤコの造った怪人が居て、自分より下と思い込んでいた格下の大幹部、そして格下怪人達にバカにされているのが一番悔しい。

 

 目隠しにも濃いシミを作るぐらいに涙が溢れているが、そんなのおかまいなしに総統が追い打ちをかける。

 

 「ふぅ・・・処分か」

 「!?そ、それだけは・・・それだげゔぁああ」

 

 鏡の怪人は普段表には出していないが、総統の事が大好きだ。

 

 自分を造った怪人だと言う事もあるが、この世に居る全ての男性の中で、総統の事を愛している。

 

 あの腕、あの腰使い、あの息、あの言葉、あの顔、あの頭脳、あの力。 

 

 全てが鏡の怪人にとっての愛の象徴であり、総統が望む事はなんでもやらないと行けないのだ。

 

 だから泣いている場合ではない。

 

 処分を免れると決まったわけではないが、とにかく今は総統の言うとおりにしないと。

 

 「うぐっ・・・ヒッ・・・こ、この度はぁ・・・み、皆様の指示統括をした、の゛にぃっ・・・自分だけは、じぶ、んだけば、成゛果を出せずに・・・」

 「出せずに(・・・・)?違うだろう、出さなかったのだろう?」

 「・・・出さずに、も、申し訳ございませんでしだぁ!!」

 「『私は嘘つきで、弱者で、愚か者です』、だろう」

 「ズビビ、んぷぁ、わ、私は嘘つきで、ハァハァ、じゃ、くしゃで、愚か者ですぅぅ〜〜ヒッ、ヒグゥ」

 

 泣きすぎて鼻水も涙も顔を濡らして、鼻提灯まで作る土下座に、ヘルブラックロスとはこうであると言っても、流石に同じ怪人同士でも気の毒になってくる。

 

 「だ、そうだ。これで処分は免除しても良いと思うが、皆の意見はどうかね」

 

 総統の顔はとてつもなく狂喜に満ち溢れ、自分の手下の心を折った事でとてつもなく満足げだった。

 

 当然怪人達は誰一人笑う事なく、処分を免除すると言う意見で一致したために、鏡の怪人は土下座を強要されたまま一先ずは許される事となった。

 

 「貴様は少し、そのままで居ろ」

 「ヒッ、ヒッ・・・ヒンッ・・・」

 

 声を押し殺しながら苦しそうに泣き続ける鏡の怪人に、土下座のままで居させると同時に、総統は視線の先を、ぐったりしている柏木タツヤに向けた。

 

 「・・・さて、お前は・・・」

 

 パチン、と指を鳴らす。

 

 怪人達はその音が鳴った瞬間、リコニスと赤天、コンキリエを除いて、全員が震え上がる、あの存在が総統の背後から現れた。

 

 『我らは、怪であり、人であり、または善でもあり、悪でもある』

 

 その指を鳴らしたのは、異質な声音と、得も言われぬ生物的嫌悪感を抱く、あの怪物の登場のサインだ。

 

 いつも総統の影に居て、しかしいつでも世界のどこにでも姿を表せる、異質な怪物。

 

 それが登場したならば、怪人達はその恐ろしさに正直に下がるしか無い。

 

 勝てるイメージが見えてこない、人類史上最大かつ強大な存在には、誰も本能で逆らえない。

 

 いつもは余裕なリコニスでさえ、しかめっ面で舌打ちするぐらいだ。

 

 『命も無し、意も無し、しかし我らはいつでも、望んでいる、地獄であり、天国でもある、無意味なる闘争を、意義ある転覆を』

 

 異質な怪物は相変わらず人の身体の形をしておきながら、身体は半透明に揺らめいていて、炎の様に燃え盛る地獄を見せつけている。

 

 「・・・ああ、わたくしは、一つになるのですね・・・」

 

 ぐったりしていても、タツヤは自分の最期を悟ったのか、言葉を発した。

 

 異質な怪物からは、型や脇、腕から細かい触手が伸びていき、それらも半透明の中に、炎が巻き上がる。

 

 「柏木タツヤ。今までご苦労だったな。お前は組織の命に忠実で、組織の目標にも忠実だったよ。お前は、我が組織の中核にして、この怪物・・・意識の集合体となれ・・・お前ほどの心の強さがあれば、実に大いに役立つだろうな」

 「はは・・・短い夢の世界でしたよ。しかし、ありがとうございます、総統・・・」

 

 最期の言葉を交わして、異質な怪物はタツヤが苦しまない様に、その細かい触手でタツヤの頭を貫いた。

 

 血を吸収して、肉体を吸収して、ずぶずぶと泥沼に飲み込む様に、タツヤは異質な怪物に飲み込まれていった。

 

 飲み込んだ最後に、車椅子と衣服だけはキレイにお腹から吐き出されて、小さな破壊音を鳴らしながら、異質な怪物は総統の影に自ら沈み往く。

 

 『我らは再び、現れる。次なる神の宮殿で、この命達が、この意識達が、我らが・・・再び現れる』

 

 異質な怪物が完璧に姿を消すまでは、ひたすら謎の言葉を並べ続けて、消えた途端に、命の危機を感じる様な悪意に満ちた緊張感からは開放される。

 

 「・・・では、そういう事だ。後はドクターパープルから指示が下る。それまでは各々自由にしておくがいい」

 

 総統の言葉を最後に、この怪人達を集めた報告会は終了となった。

 

 「それでは、赤天とコンキリエはこっちに来てくれ。君たちの身体に宿る力を、採集しておきたい」

 

 ドクターパープルが怪人達を牽引しながら、円型の部屋から出ていく。

 

 最後まで鏡の怪人は土下座したまま、悔し号泣をしていた。

 

 「鏡の怪人よ、立て」

 「はっ・・・」

 

 もう肉体的にも、精神的にもボロボロの彼女だが、顔をべちゃべちゃに汚しながら彼女はヨロヨロと立ち上がった。

 

 「済まないな」

 

 人の居なくなったこの部屋で、総統がらしくない言葉を投げてくる。

 

 鏡の怪人はそれだけでも嬉しくなる気持ちもあるが、ここで調子に乗ってはいけない。

 

 鏡の怪人が震えながら、白い肌を小刻みに揺らすが、その白い肌、肩に総統の手が乗せられる。

 

 「・・・っ!」

 

 総統の手は温かい。

 

 冷徹に思えても大きく親のような存在感のあるその手が、鏡の怪人を安堵させる。

 

 「お前には、やはりこの程度の罰では生ぬるいな」

 

 しかし総統の言葉は鏡の怪人の期待を裏切った。

 

 「なっ・・・」

 「潔く処分を受け入れればよかったモノを・・・だが、良い怪人の仲間の意見を受け入れて、一度は処分を免除はしてやる・・・貴様にはもう一つの罰を与える事にしよう」

 

 肩を艶かしく撫でて、総統の息が荒くなっているのを感じる。

 

 これは・・・もう一つの罰は・・・。

 

 (もしや総統・・・こんな私を抱いてくださるのですか!?)

 「それ」

 

 鏡の怪人が、総統からの暴力的な寵愛を受けられると思ったのも、つかの間の期待だった。

 

 「何を・・・!?」

 

 たった三段しか無い王座の階段から背中を押されて、落とされた。

 

 しかし硬い床の衝撃は襲ってくることは無く、何か柔らかいモノに落とされる。

 

 布とはまた違う、肉質性の何かに、鏡の怪人は落とされたのだ。

 

 上を見上げれば、四角く切り取られた大穴が見えて、その奥、つまり王座のある部屋からは総統が見下ろしていた。

 

 いつの間にこんな穴があったのか、それは分からないが、総統の手によってこの落とし穴じみた所に鏡の怪人は落とされたのだ。

 

 「むぐっ!?」

 

 何がなんだか分からないまま、鏡の怪人の鼻には青臭さと汗臭さが混じり合った異臭を嗅ぎとって、思わず鼻を抑える。

 

 「ぶひぃ」

 「オンナァ・・・」

 「ゲゲゲ、女、女ァ!」

 「じゅるるる・・・ぶじゃああ!!」

 「ハァハァ・・・そんな、まさか・・・」

 

 落とされたのは懲罰房。

 

 女性戦闘員がミスをした時、誘拐した女性の心を折る時に使われる、最低最悪の性の肥溜め。

 

 そこに鏡の怪人は落とされたのだ。

 

 「そいつらは知っての通り、身体の疲労を精神性と引き換えに回復してくれる。人間だと壊れてしまうが、貴様ならば一月ほど居ても問題あるまいな?」

 「そん、な・・・総統・・・閣下・・・」

 

 鏡の怪人の目隠しが涙による水分を吸収しきれず、ボトりと、落ちた。

 

 見えた怪人の瞳は涙で腫らしても美しく、綺麗な形をしている。

 

 黒く赤い瞳はそのままに、美しい宝石のようにも思える鏡の怪人の瞳を見て、周りに居る懲罰房員達の鼻息が一斉に荒くなる。

 

 でっぷり太ったラバーマスクをつけた人間。

 

 ゴブリンと噂されている小人。

 

 言語もままならない異形の身体つきをした男。

 

 醜いのに、思わずうっとりしてしまいそうな良い身体をした男。

 

 他にも周りを見渡せばキリが無いほどに、ヤバそうな奴らが鏡の怪人に狙いを定めている。

 

 食い荒らされる(・・・・・・・)

 

 「では、そこでの罰は、一切逆らわずに従順にしていろ。決して怪人としての力を使うな」

 「総統〜!怪人までヤラせてくれるなんて良い人だぜ!ギャハハハ!」

 

 一人の男が下卑た笑いを見せつけながら、鏡の怪人ににじり寄る。

 

 他の男達も動揺だ。そもそも今の鏡の怪人の姿を見て、狙いを定めない男は居ない。

 

 ヘルブラックロスとはそういう組織でもある。

 

 「たす・・けて・・・こ、これ以外なら・・・」

 「もう無理だよ。怪人女の使い心地、確かめさせて貰うぜ」

 「ヒッ・・・」

 

 無数の手が伸びてきて、鏡の怪人を覆い尽くす様にして、視界が塞がれる。

 

 なんとか総統の顔を見ようと穴の上を覗こうとするが、もう既に閉じられており、ただの天井となっている。

 

 「嫌ぁぁぁぁーーーー!!」

 

 総統の命令がある以上、彼女は抵抗が出来ない。

 

 叫んでみても、鏡の怪人に叩きつけられた罰は、もうどうやっても逃れる事は出来ない。

 

 「やめて!嫌!私の身体は、総統閣下のモノなの!お願い、やめて!やゔぇ・・・ぬおお触らないで!やだぁぁぁ、やだよおお!!助けてぇ!良い子にしますから!もう期待を裏切らない様に、全部ちゃんとやりますからぁぁぁ゛あ゛あ゛!!総統閣下ーー!!」

 

 必死に、必死に叫び続けるも、手の数が多すぎて、鏡の怪人の助けを求める声が押し殺される。

 

 鏡の怪人が必死に懇願するが、その声が聞こえなくなるまで、総統は穴があった場所で静かに立ちすくんでいた。 

 

 「──っ!──!───♡」

 

 やがて完璧に音や声が聞こえなくなったら、総統は興奮冷めやらぬ呼吸を吐き出す。

 

 「さて・・・ヘヴンホワイティネスよ・・・我々は一手打ったぞ。今度も邪魔をするのであれば、容赦はせんぞ・・・」

 

 2022年9月6日。

 

 ヘルブラックロスは虹創作市の破壊を達成。

 

 そして次の計画は近いうちにすぐ実行に移す。

 

 龍脈と魔法の入手。

 

 それを持ってして、ヘルブラックロスの強化は盤石なモノになる。

 

 「ククク・・・どちらの力が勝っているか、楽しませてもらおう」

 

 総統が闇の中で言葉を発したが、それに返事を返す者は誰一人として居ない。

 

 地獄の王が、紅い眼光を再び輝かせた。

 

・・・・・・・・・・・・・・

  

 「ひでぇ有様だぜ」

 

 鏡の怪人が今現在どうなっているのかを見せられた藤原は、モニターの電源を落とす。

 

 あれは陵辱なんて言葉では片付けられない、この世の悪の一つだ。

 

 そんなモノを見せられては、流石に藤原と言えども警察という立場からか、嫌悪感が湧いて出てくる。

 

 「気に入らなかったかな?」

 

 藤原に声をかけたのは、デスクで執務を行うドクターパープルだった。

 

 「気に入るとか気に入らないとかじゃねぇよ。おじさん、ああいうのは無理だぜ」

 「ふっ、そうか」

 

 二人が居る場所はドクターパープルの研究室だ。

 

 冷房が効いていて、どことなく寒くも感じる様な研究室で、藤原が悪態をついた。

 

 「ところでよ、言われた通り見つけてきたぜ」

 

 鏡の怪人が敗北した時に、藤原は誰にも見つからずに回収を行い、それと同時平行で、怪人四天王の一人でもあった、武者の怪人の亡骸を見つけて来たのだ。

 

 ドクターパープルと邂逅した時に、お願いされていた2つのミッションのうち、一つは達成となる。

 

 相手は得体の知れない組織だ。

 

 藤原は、ヘルブラックロスの動向を探るために、ここまで来ている。

 

 しかし、ただ動向を探るだけでは、ドクターパープルから怪しまれる為、不本意だが柏木タツヤと同じ手段・・・二重スパイを行う事で、このセクハラおじさんはここまでたどり着いている。

 

 「流石だね。その怪人はどうやら仮死状態みたいだ。怪人四天王が一人も居ないのでは格好がつかないのでね、武者の怪人を復活させて総統の守護警備を命じるとしよう」

 

 藤原にお願いしたミッションは、消息不明の新怪人四天王を探すと言う事・・・そしてもう一つのミッションは・・・。

 

 「ヘルブラックロスの戦闘員となる、だよね。でも、本当に良いの?」

 「ああ。構わねぇさ。おじさん、このまま何もしないなんて性に合わないんでな」

 「そうか・・・まぁ、組織の邪魔にならなければなんでも良いよ。戦闘員としての最低限の装備や、技術は後で書類にまとめて手渡しするよ。あ、くれぐれも分かっているけど、どこかい流用したりしたら・・・」

 「・・・分かってるよ、そう何度も言うなよな」

 

 どこかに情報を流せば、殺される。

 

 それが条件。それがヘルブラックロスになると言う事。

 

 これは公安警察で生きてきた藤原の人生の中で、最も難しい任務になるだろう。

 

 (待ってろよ・・・必ず尻尾を掴んでやる。甘白、上手くやれよ)

 

 亡き人、チトセの事を思い浮かべて、自分の部下でもある甘白ミドリコの事も思い浮かべる。

 

 (おじさん、ちょー頑張っちゃうからよ)

 

 ふざけているが、実際超真面目にこの任務に動いている。

 

 金回りの良さと魅力的な誘い文句、アイドル顔負けの女性戦闘員にセクハラし放題、有給は年100日と、想像以上の待遇だが、これが最低ランクだと言うのだから、ヘルブラックロスはとんでもない。

 

 必ず・・・ヘヴンホワイティネスへの手向けになるモノを見つけ出して、彼女達の助けになると・・・藤原は覚悟を決めていた。

 

 「それじゃ、今日は帰って良いよ。私は明日もあるから残るけど。警察にはちゃんと伝えておくんだよ、『何もつかめませんでした』ってね」

 「当たり前だ」

 

 藤原とドクターパープルが鼻で笑い合うと、藤原は研究室を後にする。

 

 そんな赤いジャケットの中年を見送り、ドクターパープルは満足そうに鼻を鳴らす。

 

 「果たして・・・お前一人でどこまで出来るか見ものだよ、藤原さん」

 

 悪の本拠地で、勝ち目の無い戦いに身を投じた藤原の事を見抜いているドクターパープルは、無謀な戦いをしている愚か者に思わず心の底から笑ってしまう。

 

 「さて・・・龍脈の情報をまとめておくか」

 

 今は藤原を泳がせても良いだろうと、ドクターパープルは自分の仕事に戻るのであった。

 

 

続く

 

 




お疲れ様です

総統ってひどい事するね・・・だが、いいぞ、もっとやれ

キャラネタ書きます

鏡の怪人
身も心も色々ボロクソにされた可愛そうな怪人。
総統の事が大好きすぎて、その愛情はミヤコレベル。
DVとか受けても許しちゃうタイプ。
最後は子供みたいに泣きわめいたが、その叫びは届かなかった。

総統
この物語のラスボス
いつも偉そう。
鏡の怪人が処分を受け入れてたら、自分が相手をしてあげるつもりでいた(勿論処分を免除した上で)
鏡の怪人の愛情は知っているが、雑に扱っている。

ドクターパープル
大幹部の一人。
藤原がヘルブラックロスの接触してきた真意は分からないモノの、どうやら味方では無いと見抜いている。

藤原
いつまでも本名が明かされないセクハラおじさん。
公安警察としての勘が働いているのか、ドクターパープルからは快く思われていない事を見抜いている。

武者の怪人
ミヤコ奪還編にて、ミドリコのロケットランチャーで吹き飛んだ怪人。
神奈川県に流れついたらしく、しばらくは助けてくれた人達の恩義に報いる為、三浦辺りで農作業をしていた。
しかし、組織に徒歩で帰ろうとした際に、体に限界が来たのか、仮死状態で警察病院に保護されていた所を、藤原の手によって重要参考人の名目で度固化市に戻ってきた。

度固化市ってどこの県のどこの町なの?
度固化市は架空県にある市町村の一つ。
架空県は神奈川県と東京の真ん中に位置する都道府県。
架空県の戦国武将は神宮ダイザブロウミチタカと宮寺レンジロウヨリミツの2名が特に有名。他には宣教師カエルム、菊沢トンザエモン、
鈴村ギンショウ等が地獄谷タダノリの悪政に立ち向かう事が有名なエピソードがある。

上記の設定は番外編にて出す予定でしたが、個人的に面白くなかったので書くのやめました。

・・・

次回はリアル年数で多分約1年ぶりに暴力の怪人、拒絶の怪人、血の怪人、異人町の人々の登場!
ギンジもちゃんと出番あるよ!

それではまた次回!
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