正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちは、アトラクションです!

先週投稿出来ませんでした、すいません。

GW始まる前はすごい忙しくてねぇ、嫌になっちゃうよ。

あー5000兆円ほしい。仕事やめたい。

風邪も引くし、GWは休み一日しかないし、最高だよへっへっへ

それでは本編どうぞ!


120・銀葉イオリ

 「うっ・・・」

 

 重たい身体と重たい瞼。

 

 同じく重たい意識を起こして、イオリは眼が覚める。

 

 ゆっくり開かれて、視界に広がる光がイオリの瞳に入ってくる。

 

 「っ・・・」

 

 今この瞬間まで寝ていた。その意識になっていたイオリには、この光が痛いほど眩しい。

 

 「お、め、め、眼を覚ましたかね・・・」

 

 そんなイオリの眠る場所は病院に置いてあるような、お世辞にも寝心地の良いとは言えないベッド。

 

 そのベッドに眠るイオリに声をかける猫背で、気味の悪い喋り方をする男には、見覚えがある。

 

 「有名人・・・ぎ、ぎ、銀葉イオリ・・・まずは、わ、わ、私の名前を伝えておこう。なにせ、人間の治療の、せ、せ、専門家だからね。今後の事も兼ねて、い、い、色々と話しておこうと思ったのだよ」

 

 白衣の中のアロハシャツをパタパタと動かしながら、どもる喋り方で男はケタケタとしている。

 

 まだ意識が朦朧とはしているが、この男の言っている言葉を耳に流しながら、イオリはわずかに頷いた。

 

 まだ眠いと身体は言っていても、脳は起きている。

 

 次第にこの病室みたいな場所の、強く眩しいライトにも眼が慣れてくる事だろう。

 

 「わ、わ、私はクサイモノ・ニフター。気軽にニフター博士と呼んでくれ。私は、か、か、かつて君たち軍隊が潰してくれた組織、キセツカン・バグットールの、か、か、科学者だった者だよ。君は知らないだろうがね」

 

 そんな組織もあった様な無かった様な・・・。そんな目つきをしながら、イオリはニフター博士の顔を見る。

 

 「ああ、心配しないでくれ。も、も、もうそんな過去の事はどうでも良いんだ。な、な、なにせ、今はレジスタンスと呼ばれる場所に席を置いているからね」

 

 ──レジスタンス?

 

 なんでそんなこの現代に似つかわしくない組織の名前が出てくるのだろうか。

 

 イオリは動かない首を動かしたい気分だった。

 

 「ちなみにい、い、今は9月14日・・・君たち日本軍が、ヘルブラックロスに敗れて、一週間以上が、け、け、経過したよ」

 「・・・っ!」

 

 日本軍が敗れた。その言葉には怒りを露わにするイオリだったが、やはりこんな事では身体は動いてくれない。それどころか身体に痛みが走るだけだ。

 

 「お、お、落ち着いて。まだ、本部には襲撃はされていないし、き、き、君たちの部下も何人かはここで保護してる。全員は・・・た、た、た・・・」

 「・・・」

 

 全員は。その言葉まで聴いたら嫌でも先の言葉は読めてしまう。

 

 だからこそイオリは全部言わなくていい、と、視線で強く促す。

 

 ニフター博士もそれを見て白衣を揺らしながら、薄汚れたメガネを指で押し込む。

 

 「・・・もう少ししたら、く、く、薬は切れる。喋れる様になったら、な、な、なんでも聞きたい事を教えてあげるよ。ここに集えば、過去は敵であっても、門をくぐれば、みんな同士だ・・・」

 

 イオリの横で、ニフター博士が寂しそうに声を出した。

 

 「同じヘルブラックロスに手酷くやられた者同士だ。身体が動くまで、わ、わ、私が最後まで責任を持って治療するよ」

 「・・・」

 

 ニフター博士の口が強く震えながらも、イオリにはその責任を感じさせる重たさを、しっかりと前に出して言葉にしてくれた。

 

 元敵組織、ひいては日本に数々蔓延る悪の組織に所属していた者だろうと、今のイオリにはその言葉を頼るしかない。

 

 クサイモノ・ニフター博士の事を、半信半疑だろうと、ヘルブラックロスにやられた過去を持っている者同士、どこか信じ会えるフィーリングを感じて、イオリは再びその瞼を閉じた。

 

 「礼を言う」

 

 イオリがようやく動かせた口から出た言葉は、ニフター博士に向けた感謝の言葉だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 9月14日、昼。

 

 食欲を刺激する香ばしい醤油と油を混ぜてお湯で溶かした香りが、漂う東度固化市。

 

 東全域でラーメン祭りとなっている現状に、ギンジとカエデは驚愕している。

 

 道という道が屋台で並びながら、人混みも相まってまるで迷宮になっているとさえ錯覚できそうだ。

 

 「よくもまぁこんなクソ暑い中こんなに人が集まれるよな」

 「でも良いじゃない?ここはまだ平和の証拠よ」

 「いやまぁそうなんだけどよ」

 

 残暑の厳しさなんかを気にしない一方で、すぐ近くの人混みのブロックでは、スマホ画面を見ながらなにやら大声で話している男性のグループからギンジとカエデの耳に嫌な言葉が流れてきた。

 

 「ったくさぁ、先週起きた事件の、虹層作市のやつ、あれ普通にやばいよな」

 「あーたしかに。あまりの規模の大きさに軍隊が出撃したらしいけど、返り討ちにあったらしいじゃん。でさ、今まで半信半疑だったんだけど、怪人って実在するんだな!」

 「それな。もし人を超えた怪人になれるならなってみたいぜ。そんで強靭な身体とかがほしいよ」

 「でもさ、虹層作市の人達にゃ悪いけど、なんであの街には正義のヒーローってのは居ないんだろうな。どうせならヘヴンホワイティネスが行きゃよかったのにな」

 「いやまじそれな。意対化市のピンチには駆けつけたらしいのに、どうして行かなかったんだろうな・・・」

 「正義のヒーロー失格だな!」

 「ギャハハハハ」

 

 グサリと嫌な言葉がカエデの心に突き刺さる。

 

 あの日の事は、とてもじゃないが敵の方が何十枚もウワテだった。

 

 あの街を救えなかった事、あの街で死んだ人たちを助ける事ができて

いれば。

 

 あの男性たちの言うこともごもっともな事だ。

 

 ギンジはあからさまに嫌そうな顔をしたが、カエデはギンジの手を引っ張ってどこか屋台に行こうかと移動する。

 

 これ以上ここに居たらきっとカエデも嫌な顔をしてしまいそうだったから。

 

 「気にしないでいいわよ。ほら、ラーメン食べたいんでしょ。行くわよ」

 「おう・・・」

 

 でもムカつく。

 

 言い得ない怒りと悔しさがギンジの脳裏をぞわぞわとさせてしまう。

 

 「くそったれが・・・」

 「仮にも神宮財閥の人間なんだから、そんな口が汚い事を言わないで」

 

 流石に神宮財閥のご令嬢。社交的な言動をわきまえている。

 

 それと同時に正義のヒーローとしての心根もしっかりしていると、ギンジは改めて彼女の強さを再認識した。

 

 この瞬間までは。

 

 「でも、今は許すわ!」

 「ありがとうよ!」

 『バーカ!バーーカ!!』

 

 人混みに紛れ込んで声が聞こえない様に、好き放題言ってきた人たちに、好き放題言い返してやるのだ。

 

 正義のヒーローとしてどうなのかと言われたら、そこは微妙である。

 

 だが今はヒーローとして、ではなく一人の人間としてオフの日を満喫しているのだから、これぐらいは良いだろう。

 

 本当はきっとだめだが、ヘヴンホワイティネスの名をけなされるのは納得が行かないのも事実。

 

 ギンジからしても、カエデにしてみても、レンやミドリコ、ケイタ、ミヤコ、赤鬼・・・そしてこのヒーロー達に協力してくれている、サクラ、レイナ、ルカ、オレキエッテ帝国もバカにされているのと変わらないからだ。

 

 仲間や友達をバカにされたら怒って良いのは、どこの世界でも同じ事だろう、とギンジはサングラスの金具を指でおさえる。

 

 「そういや、東って異人町が出来てたよな」

 

 以前ギンジと赤鬼が夏休み中に出会った、ヘルブラックロスからの脱走を果たした怪人達、暴力の怪人、血の怪人、拒絶の怪人。

 

 共通の敵を見つけたことから、同じ怪人同士仲良くなったギンジは、暴力の怪人がピンチだったとき、オーク怪人の手を借りて東に駆けつけた事がある。

 

 その時にギンジがカエデの知らないところで交友関係を伸ばしていた事に、少し嫉妬したのも覚えている。

 

 「あったわね。後で行く?」

 「久しぶりにあいつらに会いたいしな。そう言えば、右往左往兄弟はラーメン屋やってるらしいぜ」

 「お馬さんの怪人だっけね?」

 「いや、確か魔人だったな。赤い方がウオーバで、青い方がサオーバって言うんだよ」

 「どっちでも良いわよ・・・」

 

 最早どっちがどっちかなんてカエデでも覚えていなかった。

 

 とりあえずラーメンを食べてから、時間に余裕があれば異人町にでも行こうか。

 

 そんな予定を立てながら、カエデはギンジの隣を歩くのが少し嬉しいのであった。

 

 ふと、ギンジは残暑の厳しさが残る青空を見上げた。

 

 「なんだアレ・・・」

 「何?何かあった?・・・ん・・・アレって──」

 

 ギンジもカエデも、青空に姿を表している、その存在に眼を丸くした・・・。

 

 このラーメンフェアに集まる人々には、その姿は誰にも見えていない様子で、明らかに空に浮かんでいれば、誰もがどよめき立つ不気味な存在なのに、この場に居る人たちは誰一人として気づいていない様子だった。

 

 「カエデ!」

 「わかってるわよ!」

 

 食事を楽しむ事よりも、その存在に対する警戒心が勝り、二人は行動を開始する。

 

 なにせ空を飛んでいるのは──。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 銀葉(ぎんば)イオリ。

 

 若くして日本軍将校、最高司令官の席につく彼は、虹層作市に起こったヘルブラックロスによる大襲撃を阻止するべく、許可が降りる範囲で持ち出せるだけの武装を用意して、街の救援に向かった。

 

 だが・・・彼らは街を救うことは出来ず、ヘルブラックロスによる人数不利、そして怪人と呼ばれる超常の存在による妨害に合い、部隊は壊滅。

 

 今は自分と共に急遽組まれた作戦、任務に着いてきてくれた仲間達は、部下は、先輩がどうなっているのかさえ分からない。

 

 イオリは敗走してからこの東度固化市で目覚めるまで、仲間が眼の前で踏み潰されるシーンを、悪夢として何度も見た。

 

 もう見たくないと思っても、軍服を剥ぎ取られ、路上で凄惨で酷い目に合った部下達。

 

 逃げ切れた者は何人居るのだろうか・・・。

 

 あの博士が言うには、何人かは東度固化市に来ている様だが・・・。

 

 「き、き、来たまえ」

 

 クサイモノ・ニフター博士が、イオリを手招きして呼び出す。

 

 「こっちは・・・車椅子、だぞ」

 「知ってる。でも、動けるだろう。も、も、もう薬の効き目は切れているはず」

 

 ニフター博士に呼ばれて着いてきた場所は、どこか鋼鉄や木材や石材を大量につなぎ合わせた様な建物の、テラスに連れてこられていた。

 

 車椅子の車輪に着いたハンドルを、まだ上手く力が入らない両手で、必死に前に押し出す。

 

 押し出したその先に見えたのは、9月14日とドーム状の窓にデジタルに表示されたテラスと、東度固化市・異人町のアーケードを見下ろす、大きな建物の一部に、イオリは居ると言うことが分かる。

 

 「なんだ、ここは・・・まるでスチームパンクの世界だな」

 

 絵物語にしてもここまで現実離れした建物は奇妙だ。

 

 見下ろしている町に見える人々は、すぐ近くに見えるこの建物をまるで視界に入れていないかの様に見える。

 

 「ふ、ふ、不思議だろう?ここは異人町・・・ヘルブラックロスに恨みつらみを持ち、または自分の所属していた組織がなくなった事で、帰る場所を失った者達の、さ、さ、最後の砦」

 

 ニフター博士が白衣を翻して、イオリに向き直る。

 

 「こ、こ、ここは人類最後、そ、そ、そして人々の最後の希望の組織によって編成された場所、要塞。わ、わ、我らが組織の名を聴いた事は、あ、あ、あるかな?」

 

 昼の日差しが厳しく入り込むドームのテラスに、ニフター博士がニタリと笑う。

 

 薄汚れたメガネが光を反射して、その奥の瞳が見えない表情は、イオリに悪寒を走らせた。

 

 「日本軍も知らない組織か・・・?」

 「ああ、そうだよ。誰も知らない組織さ・・・その名は、レジスタンス」

 

 レジスタンス。今の体調悪いイオリにも妙に響いたネーム。

 

 「も、も、最早、ある一つの組織(・・・・・・・)を除いて、ヘルブラックロスに対抗出来る組織は、こ、こ、この世界に存在しない」

 

 ニフター博士の説明に、イオリは反感を持った表情を見せるが、自分達が勝てなかった事を考えると、反論の為の言葉が出てこない。

 

 その事に悔しさを滲み出しながら、イオリは身体を震わせる。

 

 「ヘルブラックロスに対抗する、とある組織がある」

 「それが・・・このレジスタンスか?」

 「そうだが、そ、そ、それは半分正解で、半分不正解」

 「・・・どういう事だ?」

 

 葉巻でも咥えたい様な気分でこの悔しさを紛らわしたい。

 

 それでもおそらくは反対されるだろうから、イオリは普通に会話を続けていた。

 

 「そのヘルブラックロスに唯一、か、か、勝ちうる組織の名前は・・・ヘヴンホワイティネス」

 「聴いた事ある名前だな」

 「ええ、みんな知ってる、あの正義のヒーローのそ、そ、存在」

 

 イオリはたまの休日でテレビ中継で見たヘヴンホワイティネスと呼ばれているヒーローの存在を思い出す。

 

 特撮系のよくある変なモノかとも思っていたが、まさか実在すると言う話を聴くとは思ってすら居なかった。

 

 「この、れ、れ、レジスタンスは、ヘルブラックロスに対抗すると同時に、ヘヴンホワイティネスに協力する事を約束している、か、か、革命の為の組織」

 「・・・革命?何を考えているんだ?」

 「・・・」

 

 イオリに返しには、ニフター博士は何も答えない。

 

 ややうつむいたままで、ニフター博士は口を開かない。

 

 イオリは、革命と言う単語も気になっていた。

 

 レジスタンスとは何か?

 

 革命とは何か?

 

 そしてこのレジスタンスは何をしようとしているのか?

 

 ヘルブラックロスを打倒する事が目的ではある様なのだが・・・。

 

 「それを話すには・・・少し、じ、じ、時間が足りないかもな」

 「ふざけるなァ!」

 

 ニフター博士が言い終えた瞬間、イオリが怒りに身を任せる様にして、大声で叫んだ。 

 

 ニフター博士はその怒号に少し怯えたが、メガネを戻してまた元の姿勢に戻った。

 

 「俺たちは、今日と言う日になるまで、この国の正義、この国の平和の為に戦い続けていたんだぞ!時間が無いで、はいそうですかって話を終わらせるな!」

 「ぜ、ぜ、全部を話すに至るには、時間が無いと言うのだよ、同志(敗北者)よ」

 「何を・・・!」

 

 もう我慢がならない。イオリは車椅子に座ったまま、一気に怒り散らかす。

 

 「黙って聴いていれば、我が軍隊が勝てないだの、正義の組織だのと・・・いい加減な事を言うのも大概にしろよ!」

 「事実、最高戦を投資しても勝てなかっただ、だ、だろう」

 「ふぐっ!」

 

 荒唐無稽な話もうんざりしている具合だが、イオリにはもう何も言い返さないぐらいには、ニフター博士の返しが効いた。

 

 「・・・ぜ、ぜ、全部話すつもりで居たけど、もう本当に時間も無いようだ」

 「何!?」

 

 ニフター博士がそうつぶやいて、後ろを振り向く。

 

 町を見下ろせるドーム状の窓から空を仰ぎ見る様にして、身体を大きく広げて見せたニフター博士と同じ様に、イオリも空へと顔を上げる。

 

 「なっ・・・なんだアレは・・・っ!?」

 

 困惑に次ぐ困惑。

 

 空を見上げた二人の視界に見えたのは、残暑の大空を舞う様にして飛び回る、巨大な生命体。

 

 大きく翼を広げて、口から赤黒い炎を噴出させながら、飛び、舞う、大きな竜の姿。

 

 「き、き、今日も来たか・・・ヘルブラックロス」

 「アレ(・・)もなのか・・・!?」

 

 その竜の背中から何かがポロポロと落ちてくる。

 

 よく眼を凝らして見れば、それは人も形をしている、何か不可思議な存在。

 

 「・・・アレは・・・あの黒いヘルメットは・・・」

 「戦闘員・・・それも今回は超級・・・ま、ま、まずいな・・・」

 

 すぐに応戦の準備をせねばと、ニフター博士は端末を白衣から取り出して、この要塞に居る仲間達に情報共有を行おうと、行動を開始する・・・。

 

 「オヒョヒョヒョ!」

 「わんわんおー!」

 

 空を飛ぶ竜の背中から、獲物となる人間を視認したのか、奇妙な笑い声を上げながら錐揉み回転しながら降りてくる者が居た。

 

 もう片方は大空からの高所を気にせず、そして何も身に着けずにブーメランパンツとボディビルダーもうっとりしてしまいそうな筋肉の身体。

 

 何より眼を引きやすいのが、チワワの顔をした人間?とは思えない様な、嫌悪感を抱く印象の人らしき二人がこのドームめがけて落下してきたのだ。

 

 「くっ・・・まずいな。に、に、逃げるぞ」

 「えっ、逃げるって言ったって・・・うおおああああ」

 

 ニフター博士の不健康そうな身体からは想像出来ない胆力で、車椅子が押されて要塞の内部へと、脱兎の如く逃げ出した。

 

 あまりの勢いで首が持ち上がるぐらいの風圧を感じるが、ニフター博士は、イオリの体調等お構いなしに、思い切り走り続けている。

 

 「ドリル・ザ・テンペスト・サイクロン・スピニング・テンタクル・」

 「名前が長い!犬の名前にしろ!ハイマッスル・クロコダイルにしろ!」

 「それもう犬関係ねーじゃねぇか!ただの筋肉質なワニ!」

 

 長い名前の必殺技でドームの窓を突破ろうとした触手の怪人の隣で、落下の風圧をモノともしない犬の怪人が、両肩の筋肉を膨張させながら、窓に向かって急降下を果たす。

 

 窓を思い切り突き破り、膨張した筋肉から繰り出される、犬の怪人の圧倒的破壊の力。

 

 「ジャーマンシェパード・ショルダーミサイル!!」

 

 ドームどころか、テラスまで粉砕した犬の怪人の大技によって空いたいびつな形に割れた、文字通りの風穴に触手の怪人がヒタリと着地する。

 

 テラスに降り立った怪人2名。

 

 触手の怪人。

 

 犬の怪人。

 

 『龍脈の発見、及び今日こそレジスタンスの完全崩壊!』

 

 二人の怪人が大きく声を出す。

 

 触手の怪人は、無数の触手を取り出し、犬の怪人は見事は大四股踏みを見せる。

 

 『いっちょやったりますか!(待った無しだ!)

 

 二人の怪人が同時に叫び、意気揚々と要塞内部へと進撃を開始した。

 

 『軍隊の重要人物の捕獲も忘れるな、触手の怪人』

 

 小型のドローンが二人の怪人の背後から発生される。

 

 その声は、空で待機する機械の怪人の声だった。

 

 その指示を耳に流した触手の怪人は、宇宙人の様な顔をニタリと歪ませ、でろんとした舌で唇を舐めずる。

 

 「オヒョヒョヒョ、任せなさい」

 

 襲撃、開始──。 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「オイ、アレはいったいなんだ!?」

 

 車椅子に乗りながらイオリはニフター博士に怒鳴りつける。

 

 まだ体調も悪いのに、こんな状況にさらされて、不安よりも怒りが募る。

 

 「だ、だ、大丈夫だ。ここには、精鋭だって居る。おそらく、怪人相手に、まともに戦える、ひ、ひ、人が」

 「それが異人だとでも言うのか?拳銃をよこせ、俺だったら」

 「それは駄目だ。病人に戦わせる等、わ、わ、私が許さない」

 「どこまで逃げるつもりだー!わんわんおー!」

 

 二人が逃げる長い一本の道のすぐ後ろには、筋骨隆々の身体と、ぴっちりしたブーメランパンツに、チワワの顔をした怪人が、大声で吠えながらニフター博士とイオリを追走している。

 

 「こ、こ、これなら、どうだ!」

 

 手元の端末のボタンを押して、ニフター博士のすぐ真後ろには分厚い鋼鉄のシャッターが降ろされる。

 

 犬の怪人の豪腕が、ニフター博士の白衣の裾を掴む瞬間、そのシャッターが指先を弾いて、通路を遮断する事に成功した。

 

 「よし!」

 

 思わずイオリも拳を握るが、ニフター博士が車椅子を押す腕を止めて急ブレーキをかける。

 

 「おい、今度はなんだ!急に止まるな!」

 「オヒョヒョヒョ、急に止まらないと、あっしにぶつかるよぉ〜」

 

 今度は真正面、先回りしてきた触手の怪人が二人の前に立ちはだかったのだ。

 

 「ば、ば、万事休す!」

 「わん!わん!おおぉう!」

 

 背後のシャッターも筋肉で引き裂いて、犬の怪人が姿を表す。

 

 「しまった・・・」

 

 ニフター博士とイオリを挟み撃ちにするように、犬の怪人と触手の怪人が立ちふさがる構図が出来上がった。

 

 「もう逃げられないぜ。あっし達は今日こそ、この要塞を破壊して、龍脈を手に入れるんでな」

 「チワワ、龍脈はどうでも良いけど、脱走した怪人や、魔人、闇人の女タイプには、興味がある。あと、そこの男にも」

 

 犬の怪人が太い指を伸ばして、イオリへと向ける。

 

 「あっしもその男に用事がある。こちらに渡せ、クサイモノ・ニフター」

 

 触手の怪人もモザイクが掛かりそうな形の触手を伸ばして、イオリに向ける。

 

 ニフター博士に向けられた触手は、鋏の様な形をしていて、殺意を込めている。

 

 ジリジリとした緊張感が走る中、犬の怪人が踏み込んだ瞬間、足場が外れて落とし穴のトラップが作動した。

 

 「ぎゃいん!?」

 

 犬の怪人が足を踏まれた犬の様な鳴き声を発して、要塞の地下通路へと落とされて、触手の怪人の方には白い光線が飛び込んでくる。

 

 「子供だましか!」

 

 触手の怪人が光線の飛んできた方向へと振り向いたが、そこに敵の姿は無い。

 

 注意を逸らしてはいけないと、触手の怪人がもう一度ニフター博士の方へと振り向き直すのだが、くるりと向き直した拍子に、ニフター博士は触手の脇をすり抜けて、車椅子を押して逃げ出した。

 

 「やられた!罠だらけだなここは!攻撃性の高いダンジョンよりも、エロトラップダンジョンの方が、全人類幸せになるっぜ!」

 

 触手の怪人が叫びながらニフター博士を追いかけようと、触手を伸ばすが、再び光線が飛んでくる。

 

 「させ、ない・・・」

 「ぬぅ、伏兵か!」

 

 シーブルーの髪色をした女性が、ニフター博士によって造られた拳銃を二丁構えて、暗闇から触手の怪人を狙い撃つ。

 

 「い、い、いいぞ!アマナ!」

 「戦える人がまだ居るのか!」

 

 ニフター博士がイオリを運びながら、その立ち位置を入れ替える様にして現れた少女が、触手の怪人と対峙しようとした瞬間だった。

 

 もう一人の怪人が、暗闇の奥深くから現れて、アマナと呼ばれた少女を壁に叩きつける。

 

 一瞬人と見えるのかが、不明な程、その存在は細い身体をしており、やや薄暗いこの通路では、一瞬で視認するのは難しくも思える。

 

 「ホッホッホッ、犬さんも触手さんも・・・遊んでいる場合ではありませんよ。さぁ、早く追いかけなさい」

 

 棒人間の様な姿をして、頭部には不気味な黒と赤の瞳をした、怪人。

 

 紐の怪人が、アマナを絡め取り、壁に押し付けたのだ。

 

 「はやく、逃げて、博士」

 「ま、ま、任せろ!すぐに応援を呼ぶ!それまで死ぬなよ!」

 「死な、ない」

 

 ニフター博士がシャッターを降ろして、触手の怪人と紐の怪人が孤立させようと、もう一枚の悪あがきを行うが、触手の怪人が隙間に仕込ませていた細毛の触手がストッパーとなり、半分程で止まってしまった。

 

 勢いを殺されたシャッターの下半分から滑る様に触手の怪人が頭を覗かせて、ニフター博士を掴む。

 

 ニュルニュルの触手の表面は、ローションみたいにとろとろしているのに、実際に掴まれると大きな手のひらで全身を握られている様な錯覚を覚える。

 

 ふざけた見た目をしていても間違いなく、怪人としての実力を持っている。

 

 「オヒョヒョヒョ、車椅子も捕まえちゃうぞ」

 「か、か、カモーーン!!ミス・アキラ!ミス・スノーホワイト!」

 

 通路にこだまするニフター博士の声。

 

 イオリはこのままではまずいと、おぼつかない足取りで車椅子から降りて、よたよたと歩き出した。

 

 何か分からないが、あの怪人達は自分を狙っている。

 

 それに龍脈なる、不思議なワードの事も知った。

 

 意味は分からないが、それでもイオリは自分の命を守る為に、またも逃げる事を強いられる。

 

 「クソ!」

 

 無力。逃げなければならないと言う無力。

 

 自分は戦えないと言う無力。

 

 その事を本当に悔しく思いながら、イオリの背後でシャッターがもう一枚閉じられる。 

  

 逃げなければ。

 

 この要塞のどこに出口があるのかわからないけど、逃げないと。

 

 なぜこのレジスタンスと言う組織が自分の事を生かそうとしているのか、それは分からない。

 

 なぜヘルブラックロスが自分を捉えようとしているのか、それも分からない。

 

 ただ一つ言えるのは、自分が本当に無力な存在であったと言う事だけ。

 

 その悔しさを背負いながら、具合の悪いイオリは逃げ続ける。

 

 要塞を抜けて、町へ飛び出て、となりの街まで逃げる傍ら、触手の怪人はしつこく追いかけて来たのであった・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「以上が俺が出くわした事の全容だ」

 

 場所は変わって神宮亭。時刻は17時。夕日が沈み初めて、空を暗く染め始める時間帯。

 

 客間のベッドで安静にさせてもらいながら、イオリはヘヴンホワイティネスの本拠地?とも呼ぶのが正しい様な、大きな豪邸の一室に匿われていた。

 

 

 窓は修復したてでピカピカであり、カーテンも真新しさを感じさせる。

 

 その場所で、かの有名な神宮財閥に居を構えるヘヴンホワイティネス達?に、イオリは事のあらまし・・・レンに救出してもらえたところまでを話していた。

 

 「くふふ、そんな事があるんだね〜・・・ところで、ギンジ君はどこ?」

 

 この部屋に集められたのは、イオリを連れてきたレン、さっきまで爆睡を決めていたミヤコと赤鬼。

 

 「おう、死なずにここまで来たってんなら流石だがな、敵の追手がここに来てるって事は無いか?」

 

 赤鬼が首を鳴らしながら、イオリを強く睨む。

 

 最早怪人という存在には驚きもしないイオリに、赤鬼は度量を試す意味合いで恐ろしい形相を見せている。

 

 「それは、問題ない。私が、触手の怪人を撃退してからは、ヘルブラックロスは出てこなかった」

 「流石ですレンの姉御」

 

 明らかに体は赤鬼の方が大きいし、力も申し訳ないがレンよりも強そうなのに、赤鬼は自分より小さな少女に向けてへこへこしている。

 

 「ミヤコ、ギンジとカエデに連絡が取れない。ミヤコからも取れない?」

 「な、何度も試してるのに・・・出てくれないんだよぅ」

 

 泣きそうな顔でミヤコがうつむいてしまう。

 

 ミヤコもレンに叩き起こされてからギンジに連絡を取ろうとしているのだが、100回中、100回とも電話が通じない。

 

 それどころかメッセージも既読がつかないのだ。

 

 これではミヤコも泣きそうになるのも仕方がないだろう。

 

 「えっと・・・君たちは、怪人?も居るようだが、ヘヴンホワイティネス・・・なんだよな?」

 

 イオリが少し楽になった表情で、レンを始め、全員にそんな質問をしてみる。

 

 「おうよ、俺っち達ゃ、泣く子もだまり、ヘルブラックロスを黙らせる、ヘヴンホワイティネスだ!」

 「くふふ、ギンジ君、電話に出ない・・・」

 「・・・そう、こんな人たちだけど、本当はあと四人居る」

 

 レンだけはどこかソワソワした表情で、イオリに声をかけている。

 

 「じゃあ、あの噂のヘヴンホワイティネスは7人も居るのか」

 「本当なら、そう・・・あの、貴方は、えっと・・・」

 

 レンがスカイブルーの髪を揺らしながら、イオリに何か聞きたい様子。だが、うまい事考えが回らない。

 

 「なー姉御、ミドリコとも連絡が取れん・・・俺っち悲しいくすん」

 「そ、そう・・・ミドリコも、ギンジもカエデも、何をしているんだろう・・・」

 「そういや、旦那はどうしたんですかい?」

 「ケイタは・・・」

 

 ケイタは東度固化市に向かった。その事を言おうとした途端、レンはイオリから聴いていた話に、何かが結びついたような電流が走った。

 

 この銀葉イオリと呼ばれる男は、東度固化市のレジスタンスに匿われていた。

 

 しかしそこにはヘルブラックロスの襲撃が。

 

 今もなお襲撃が行われているのかは不明だが、まだ続いている可能性がある。 

 

 ケイタも今は真鍋アオハルと共に東度固化市に居る・・・筈である。

 

 っと言うよりも連絡が取れない以上は、間違いなく何かに巻き込まれているに違いない。

 

 「姉御?」

 「・・・今すぐに、東に行こう」

 「え!?今からですか?そりゃ、構いませんが・・・」

 「この人、イオリさんの事も気になるけど、まずはケイタが心配」

 「ギンジ君〜ん・・・」

 「・・・ギンジとカエデも探そうね」

 

 なんだかマイペースな雰囲気に流されそうになるが、イオリは再び東度固化市の話を聴いたら頭痛がしてきてしまう。

 

 「イオリさん、貴方にも申し訳ないけど、一緒に、来てほしい」

 「マジかよ・・・」

 「大丈夫、身の安全は保証、するから」

 

 言うとレンが赤鬼の腰を軽く叩く。

 

 暗に示した、お前がやれと言う合図である。

 

 「ガッテンだぜ。レンの姉御の命令なら、カエデの姉御とギンジの兄貴より上だ・・・」

 

 おそらく断ったら誰よりも怖いと思ってか、赤鬼はレンの指示に従う事にした。

 

 「ミヤコは、どうする?」

 「一人ぼっちだと心細いから、一緒に行く」

 「・・・えらいね」

 

 レンも年上としての自覚があるからか、ミヤコの頭を撫でてあげる。

 

 本当にギンジが居ないとダメダメなミヤコを見ていると、ちょっと可愛くも思える。

 

 「色々と聞きたい事があるけど、イオリさんの安全は絶対保証する。だから、ケイタって言う人を見つけて合流して、安全な場所まで言ったら、少しだけ、私の話しに付き合ってほしい」

 

 具合悪いところまた移動をお願いするのに、レンは次々とお願いを申し出る。

 

 イオリも最早断れないのか、軽薄に笑ってみせた。

 

 「OK、宮ちゃん。もう何でも来やがれってんだ」

 「ありがとう」

 

 レンの言葉にイオリの言葉に、お互いが頷き合う。

 

 「もうすぐ夜になるが、未だ旦那も兄貴も、ミドリコにも連絡が取れねぇ。いよいよ何かが起こってるような気がするぜ」

 「そうだね。でも、ミドリコは本当にお仕事が忙しい気もする」

 「ヌハハ、ちげぇねぇ」

 

 本庁でもまぁまぁ多忙なミドリコの事を考えると、今回はミドリコは事件とは関係なさそうだ。

 

 そもそもギンジとカエデもケイタと同じく東に居るとは考えにくい。

 

 レンは様々な考えを張り巡らせて、レジスタンスが居る場所、東度固化市へと向かう準備を始めるのであった。

 

 この先に待ち構えるのは、レンにとっても、ヘヴンホワイティネスにとっても正義を問われる大きな戦いになる事を、まだ知らない・・・。

 

 

続く

 

 




お疲れ様です。

前置きもこの辺にして、そろそろ動き出しますぜ、現代のレジスタンス編!

キャラネタ書きます

クサイモノ・ニフター博士
喋り方がやや癖のある人
元々所属していた組織は、キセツカン・バグットール。
ヘルブラックロスとの縄張り争いで負けただけだが、ヘルブラックロスに恨みを持っている。今はレジスタンスの勧誘に乗っかって、好き勝手研究等をしている。
名前の由来は臭いもんに蓋。


アマナ
本名・天元坂アマナ
シーブルーの髪色をしており、おっとり、ゆっくりした喋り方をしている。ニフター博士作、光線銃を主要武器にしている。次回はもっと出番あり。

触手の怪人
エッチの権化。R-18作品ならば王道かつ主役。最近オーク怪人より出番が多くて嬉しい。
○ーン○ブ信者

犬の怪人
もっこりダンスを練習中。主演俳優の人、ヘルブラックロスに入らないか?
○ットフリックス信者。

紐の怪人
フェーズ3の黄金形態を維持出来るか頑張っている。
○マゾンプライム信者

佐久間ギンジ
ラーメン食べれなかったそうです
ディ○ニープラス信者

神宮カエデ
ラーメン食べて嬉しそうにするギンジが見れなかったそうです
ア○マックス信者

宮寺レン
イオリの事が気になっている。
絶対にシルヴァであると確信もしているが、本人から色々聞きたいのだ。

鈴村ミヤコ
ギンジと連絡が取れないからって、電話100回はやりすぎ
メッセージも400通送っている。今度からはGPSでもつけようかと反省している。

赤鬼
レンに叩き起こされてびっくりした。
イオリを守れと命じられているので、次回はそのために行動する。

・・・

次回はレジスタンス達に行われた襲撃、ヘルブラックロスの探している龍脈と、そこにばったり出くわした、ギンジとカエデ
更には、ケイタとアオハルは雪の怪人と会う為に、異人町に向かうのだが、そこには・・・。

なお話の予定です。

次回もお楽しみに!今年のGWも楽しもうぜ!!
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