正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです。

いやー今年は暑くなるの早いですね。

なんだかんだ意味のわからない(自分で言うな)この物語も、120話超えていると言う。

最後まで頑張ります!

それではどうぞ


121・天元坂アマナ

 ある所に身長は160センチ程の少女が居た。

 

 顔立ちはあどけなさの残る、幼さが見える若い少女であり、髪の色は日本人とは思えないような、シーブルーの髪色。

 

 キセツカン・バグットールと呼ばれる悪の組織に拾われた、親なき子供。

 

 ヘルブラックロスとの縄張り争いにより撤退を余儀なくされた事で、その少女は、生き残りの組織の仲間と共に、長い逃亡生活を余儀なくされる。

 

 だが、その少女は別にそんな生活に嫌気が刺す事は無かった。

 

 生まれながらにして、戦いの技術しか叩き込まれて来なかった彼女は、どんなに底辺と揶揄されるような生活でも、自分の生き方はこれしか無いと、そう信じていたからだ。

 

 「あ、あ、アマナ」

 

 日差しが差し込む小さな部屋で、椅子に座りながら、姿勢も悪いまま前かがみで虚ろな瞳を宿す彼女に、アロハシャツの上に白衣を着用した、奇抜な出で立ちの男が、その少女、名はアマナ。アマナに声をかけてきた。

 

 「・・・博士、私は、大丈夫」

 

 彼女なりに気丈に振る舞っているつもりだが、健康状態も良くないアマナは、声をかけてくれたクサイモノ・ニフター博士に首を振りながら返事を返す。

 

 「も、も、もうすぐだ・・・我らは、もう一度ヘルブラックロスに一矢報いるぞ」

 

 ニフター博士は手にぶら下げた大量の爆弾を持ち出して、アマナに見せびらかす。

 

 「私も、行く」

 「ああ、い、い、一緒に、奴らに大迷惑をぶつけてやろう」

 「うん・・・」

 

 キセツカン・バグットールの生き残り二人。

 

 ヘルブラックロスへの反撃を開始しようとしていたその日、東度固化市での補給を開始する日に、噂のヒーロー、ヘヴンホワイティネスの活躍を目の当たりにし、おまけにヘルブラックロスの怪人が町の人々を守る姿を見て、彼らもレジスタンスと呼ばれる組織に加入する事を決断する。

 

 あの暴力の怪人がこのレジスタンスのリーダーを名乗り、日々めちゃくちゃでもたのしく過ごしている彼らを見て、ニフター博士はアマナの将来を考えると、この組織に入る事も必要なのだと、自分に言い聞かせて加入となる。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 要塞襲撃の日、時間は少しだけさかのぼって、9月14日の朝。

 

 天元坂アマナは文字の書き取りを練習しながら、ニフター博士に造ってもらった光線銃をくるくる回しながら、一息ついていた。

 

 この光線銃は太陽光を吸収し、衝撃を生み出しながら青い光を解き放つ、ニフター博士曰く証拠を残さない殺害兵器だと言う。

 

 悪の組織に拾われた少女にとって、人を傷つける行に躊躇いは無い。

 

 無いのだが、この組織に加入してから、仲間同士での理由なき交戦を禁ずると言われるルールには、最初は難色を示していた。

 

 キセツカン・バグットールでは、例え仲間であっても、自分の実力を上だと知らしめるには、襲撃を行わないといけないからだ。

 

 そう教わって生きてきた彼女には、到底理解が出来なかった。

 

 何がレジスタンス。

 

 何が正義。

 

 自分の育った組織こそが正義だと、信じて疑わない。

 

 「それはお前に教養が無いからだ」

 

 ある時、灰色の熊の顔をした魔人にそう言われた事がある。

 

 「きょーよー?」

 「そう、教養だ。頭が良くないと、わからない事だってある。ニフター博士は好きか?」

 「・・・わから、ない」

 「じゃあ、ニフター博士には嫌われたいか?」

 「それは、嫌」

 「じゃあ、ニフター博士と同じぐらい勉強が出来てると、周りの大人達と同じ考え方も出来る筈だ」

 「うーん・・・むずかしい、ね」

 「まぁ・・・そうだろうな。オレはグリズリーの魔人だ。アマナ、先ずは簡単に文字の書き取りから学ぼうや」

 「もじ??」

 「そこからか・・・」

 

 グリズリーの魔人とのやり取りは、アマナにとって新鮮なモノだった。

 

 ニフター博士と共にここに来ている以上、ニフター博士と同じ事をしないと行けない。

 

 それを学ぶ為にも、彼女はこうして光線銃をくるくる回しながら、勉強を毎日しているのだ。

 

 とは言えレジスタンスに加入して、約一ヶ月程。

 

 文字や計算、言葉使いにしてもまだまだ足りていない。

 

 「オレは少しやる事あるからよ、少し一息入れな」

 

 グリズリーの魔人にそう言われて、アマナは少し休憩を入れる事にした。

 

 そうして朝の時間が過ぎて、昼になる頃・・・今アマナ達が住んでいる要塞に、ヘルブラックロスの襲撃が開始される事となった。

 

 もう何度目かは知らないし、数える事も無いのだが、アマナはヘルブラックロスが嫌い。

 

 それだけで戦う理由になるからだ。

 

 光線銃を持ちながら、アマナは嬉々として自分の得意分野が活かせる戦いに身を走らせるのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 その戦いの結果は、自分の思い通りには行かなかった。

 

 要塞の薄暗い通路の中で、アマナはニフター博士のピンチに駆けつけて、触手の怪人、そして紐の怪人と交戦をしていた。

 

 のだが、アマナは特別身体能力が高いわけでも無いし、卓越した戦闘技術があるわけでも無い。

 

 せいぜい一般市民よりも武器を持っている分、2倍強いくらいだ。

 

 人間とは違って体を伸縮自在に伸ばせる紐の怪人と、腕の代わりになるモノを無数に伸ばせる触手の怪人。

 

 そんな二人の怪人との戦いは、アマナとニフター博士にとっては正に天敵に近い。

 

 「オヒョヒョ、少し手こずらせてくれたな・・・」

 

 触手の怪人がビチビチと跳ねる触手の束をアマナの背中に乗せて、勝ち誇った笑みを見せる。

 

 宇宙人みたいな顔がニンマリ笑う顔は、底知れぬ不気味さを見せる。

 

 「うっ・・・くぅ・・・」

 「お、お、おのれ、ヘルブラックロス・・・」

 

 ニフター博士は紐で縛られて、身動きが取れないまま、殴打され続けた様子で、もう身体にあまり力が入らないで居る。

 

 「ひあっ!?」

 

 粘度の高い液体がアマナの身体に塗りこまれて、自分でも聴いたことの無いような変な声が出てしまう。

 

 今まで感じた事の無い奇妙で、くすぐったい感覚。

 

 脇腹をつつかれる様な、変な気持ちがこみ上げてくる。

 

 「ぬっ・・・ふぅっ!?」

 「あっしは、女の子には優しいんでな。でも、その武器は・・・まぁ、なんかアレだよな。ヘヴンホワイティネスに似てると言うか・・・当たるだけでイラッとしたよ」

 

 顔に陰りを見せながら喋る触手の怪人の表情は、地獄から現世に姿を表した、使者の顔。

 

 淫靡と背徳と性欲と、人を超越した怪物、怪人の顔。

 

 人が恐怖ですくみあがる、怪人の威圧が、とてつもなくいやらしく見える。

 

 首筋に手を這わせる様に、アマナに触手が群がる。

 

 肌がピリピリしてきて、次第にくすぐられる痛みが、何か違うモノに置き換わっていく。

 

 背筋から脳へ、脊髄から全身へ駆け巡る電流みたいなモノが、アマナに恐怖を感じさせる。

 

 「博士、助けて・・・何か、ヘン・・・!」

 「お、もうクルのか。素質あるよ」

 「ホッホッホッ。これは優秀なヘルブラックロスになれそうですね」

 

 触手の怪人の横で、紐の怪人も後ろ手に組みながら、アマナの顔を見下ろしている。

 

 経験した事のない感覚が、上手く身体を動かせなくする。

 

 「嫌・・・やだぁ・・・博士ぇ、ヘンなの、ヘンなのが、来ちゃう」

 「く、く、クソ・・・やめろぉ」

 

 ニフター博士が首を締められながら、アマナに手を伸ばそうとする。

 

 「博士!アマナ!」

 「なんだぁ、増援か?」

 

 薄暗い通路に新たに女性の声が響き渡る。

 

 「女なら大好物だ・・・どうせ勝てないんだからなぁ!」

 

 触手の怪人が舌をぺろりと出して、声のした方角へと向き直して、無数の触手を展開させる。

 

 が、触手の怪人が眼の前で見たモノは、青く白く、粒や霧の様に見えるモノ。

 

 ソレが何かを見た瞬間で理解した触手の怪人が、咄嗟に危険信号を出すが、もう遅い。

 

 なにせソレは怪人にとっても人間にとっても、事前に準備していないと対処不可能な大技。

 

 凍結攻撃。

 

 「あ、しまっ──!」

 

 触手の怪人が瞬間冷凍させられ、紐の怪人も同じく凍結攻撃の方へと、両腕を伸ばす。

 

 こんな攻撃が出来るのは、あの怪人しか居ない。

 

 「こっちだ!」 

 「なんだとっ!」

 

 しかし紐の怪人の相手は、違った。

 

 レジスタンスの造った特殊な防刃スーツを身に着けて、硬く分厚い革靴を履いて、かつ凛々しい顔立ちと、スラリとしたモデルの様な体型をした女性が、天井に突き刺したナイフと、身体の重さで落下する力を利用した、飛び膝蹴りが、紐の怪人の後頭部を容赦なく蹴り潰す。

 

 「来てくれたか、ミス・アキラ、スノーホワイト」

 

 ニフター博士の拘束が緩み出して、倒れたアマナに群がる触手を急いで取り払う。

 

 「大丈夫か、アマナ」

 「うぅ・・・へ、ヘンなの・・・」

 「・・・いい、大丈夫だ。アマナ、この事は思い出したら駄目だ」

 

 駆けつけてくれたのは、小鳥遊アキラ。

 

 元公安警察の最高責任者と同じ座に立ち、公安警察、及び政府の物理的な無力感を知った事で、レジスタンスへと加入した女性。

 

 元々の戦闘能力の高さから、この要塞の警備を任されている彼女だが、ニフター博士からの救援指示が来るまでは、侵入してきたヘルブラックロスの戦闘員を制圧していた。

 

 そしてもう一人救援に駆けつけたのは、黒い着物に、アルビノの様に白い肌を出している、雪の怪人。

 

 「あらあら、来るのが少し遅かったわね」

 

 勝ち誇った顔をして、雪の怪人が高飛車な態度を見せる。

 

 だがアマナの顔が少し惚気ていて、顔が赤い。そんな顔を見て、アマナの足元にあるビチビチ動く触手を視界に入れると、ソレらもまとめて凍結させる。

 

 紐の怪人も立ち上がる間もなく、雪の怪人によって冷凍させられ、一つしかない大きな怪人の瞳がぎょろりと動いては、あっけなくその眼に光が失われていく。

 

 雪や冷気を一時的に空間、気温に関係なく召喚、発動出来る彼女の能力で触手の怪人とその一部は、確実に機能停止となる。

 

 良い意味でも悪い意味でも無垢なアマナに、ヘンな感じを味合わせようとした触手の怪人に憤りを感じる。

 

 「ニフター博士、さっさと要塞を脱出するわよ」

 

 雪の怪人がアマナについた神経毒の液体を凍らせながら、一言告げると、ニフター博士もアキラも二人して頷いた。

 

 なにせ相手はヘルブラックロス。

 

 もたもたしていたら物量的に負けになる。

 

 「だが、逃げるにしてもこの要塞にもまだ敵が居る。なんとか地の利を活かして制圧出来ているが、順次投入されている戦闘員達に、私達だけでは脱出は不可能だ」

 

 アキラの情報では、まだ要塞に居る仲間達で侵入して来ている戦闘員達とはまだ交戦が続いている状況。

 

 この要塞には空から侵入されているから脱出するならば、地上に出て外に向かうのが最適解。

 

 とは言っても仲間を置き去りにするのも駄目。

 

 敵に負けるのも駄目。

 

 「あ、あ、後は・・・地下に保管している武器や、異人達のカルテ、そ、そ、それから、私の造っている未来に向けた兵器の数々、要塞の運営に欠かせない、あの超常エネルギー保管庫も壊させては行けない」

 

 ニフター博士の言うエネルギーについてはアキラも雪の怪人も初耳だが、この要塞にまつわるモノならば、守らないと行けないだろう。

 

 だとすればやる事は一つ。

 

 「防衛、だな」

 「そうね・・・少しだけ残念だけれど、そうするしか無いわね」

 「残念?何がだ?」

 

 雪の怪人も防衛には賛成だが、これからそうしないと行けないのが、彼女にとって少しだけ苦痛に感させる。

 

 「・・・ぼーいふれんどに会える予定だったから、ね。残念・・・うっ、うえーん・・・」

 「また、泣いた」

 

 アマナも雪の怪人の癇癪を知っているのか、数秒前までクールに振る舞っていたのに、こうやって雪の怪人はすぐに泣き始める。

 

 涙が凍らないのがいつ見ても不思議だ。

 

 「さ、さ、さてそれでは・・・リーダーに連絡だ」

 

 ニフター博士がアマナの頭を撫でながら、スマホによる連絡を開始する。

 

 「あ、暴力の怪人なら、さっき拒絶の怪人の癇癪で気絶しているぞ。だから代理で私がここの指揮を取っているのだが・・・」

 『え』

 

 雪の怪人も、ニフター博士も、アマナも、きょとんとした顔をしている。

 

 「え?ってなんだ」

 「い、い、いや代理って・・・ミス・アキラがリーダーじゃなかったのか?」

 「違うが?」

 「暴力の怪人より、貴女の方が指揮、統率に向いていると思うわよ」

 「・・・まぁ、そうかも知れないが・・・もう組織の上層部に立つ事は辞めたよ。私には向かない事だ」

 

 アキラが前髪を指で払ってから、拳銃を腰から引き抜く。

 

 「さて、そろそろ行くぞ。ヘルブラックロス共にこれ以上好き勝手させるモノか」

 

 アキラと雪の怪人が横並びになりながら先陣を切って進み始める。

 

 そこで冷凍されて転がっている触手の怪人の言葉を思い出して、アキラは奥歯を噛みしめる。

 

 「さーて行くとしようか。日本の女は、敵に回すと痛い目に合うって事を、あいつらに教えてやろうじゃないか!」

 

 ヘルブラックロスの男尊女卑をどろどろに煮詰めて極まった思想にうんざりしているアキラは、怒りを込めて要塞の硬い床の踏みつける様にして歩き出した。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 東度固化市のラーメンフェアの人だかりを抜けて、ギンジとカエデは青空を飛び回る黒い竜が向かう場所へと駆け抜けていく。

 

 こうも人が多いとカエデは変身が出来ず、ギンジに腕を引っ張られながら、人混みを抜けようとどんどん先に進む。

 

 「ねぇ、ギンジ!アレって・・・」

 「ああ、間違いなくヘルブラックロスだ!でもなんでこんな時に!」

 

 ギンジが苛立ちながら声を荒げて、カエデも同じ様に苛立ちを乗せた表情を見せる。

 

 今日はせっかくギンジの食べたいモノを食べさせてやろうと思っていたのに・・・。

 

 「あの空飛んでいるやつが親玉か?だとしたらアレをぶっ飛ばせば、解決するもんか?」

 「わからないけど、東に来てるって事は、中央も危ないかもよ。アレを倒して、中央に戻る?」

 「それもアリだな・・・飯も食いてぇけど、先ずはあの空飛んでるお魚さんをぶっ叩くぞ」

 「そうね!あ、待ってギンジ!」

 

 人混みを抜けてもなお、ラーメンフェアに集まっている人々は、ヘルブラックロスの黒い竜の姿に、誰一人気づいていない様子だ。

 

 もしかして見えていない可能性もある。

 

 数々の人を抜けて、カエデはギンジに待機の指示を出していた。

 

 「なんだよ、早くしろよ」

 「わかってるわよ。ちょっとお手洗いに行ってくるわね」

 「・・・俺も一緒に行こうか?」

 「・・・殺すわよ」

 

 冗談もそこそこにカエデは急いでフェアに用意された仮設トイレに入り込む。

 

 そして五秒待たずにカエデはトイレから出てきた。

 

 ヘヴンホワイティネスの姿をして。

 

 「変身してきたのか!なんだよそれだったら行ってくれりゃ、空飛んだのに」

 「あ・・・その手段もあったわね。早く言いなさいよ」

 

 ギンジに一杯食わされたと思ったカエデは、ギンジの頭に軽くチョップをかます。

 

 「いてっ」

 「ふふ、ほら、行くわよギンジ!」

 「おう!」

 

 変身したカエデのスーツの能力を使えば、人にその姿を認知されない程素早く動く事も出来る。

 

 更にギンジも同じ様に動けるのだから、最早この場に正義のヒーローが来ているとは誰にも知られない。

 

 誰にも知られないと言う観点で言えば、空を飛んでいる黒い竜も同じだろう。

 

 「レン達に連絡はどうする?」

 「ひとまず後ででいいわ!今は何が起こっているのか、そしてヘルブラックロスがここに何しに来てるのかが重要よ!」

 「わかった!」

 

 そうして同時に走り抜けるカエデとギンジは、黒い竜の真下にある何かに向かって進撃を開始する。

 

 だんだん黒い竜に近づいていくと、ギンジとカエデは今自分達の居る場所、向かっている場所が大きな十字路、アーケード街、異人町が視界に入ってくる事に気づいた。

 

 「ん・・・あ!」

 

 異人町の入り口、駐輪場の近くではギンジとカエデの予想通り、ヘルブラックロスの戦闘員達が、二人を見つけるなり何やら騒ぎ始める。

 

 「ヘヴンホワイティネスだ!殺せ!」

 

 右腕が異常に発達した戦闘員の一人が、その指示を声高らかに出すと、戦闘員達が一斉にギンジとカエデに突撃を開始する。

 

 「邪魔すんな!」

 

 ギンジが即座に振り上げた金棒がコンクリートを叩くと、一斉に戦闘員達に、重たく見えない攻撃が振り下ろされる。

 

 「必殺!メガトン・インパクト!!」

 

 両腕を後ろに伸ばして、ガントレットに貯めた衝撃を前方に突き出して、正義の衝撃が動けなくなった戦闘員達をまとめてなぎ倒す。

 

 「やるな・・・超級戦闘員!構え!」

 

 右腕が異常発達した戦闘員が新たな指示を出すと、今度はアーケード向こう側から、ぞろぞろと形がそれぞれ違うパワードスーツを着用した、超級戦闘員達が姿を表す。

 

 真ん中を歩く、風を切りながら隊列の向こう側で構えるのは、左腕が異常に発達した戦闘員。

 

 数はざっと数えても20人程。

 

 「我々はヘルブラックロス・総統直属の超級戦闘員!」

 「早い話が精鋭(笑)だろ」

 

 ギンジが軽く鼻で笑いながら返事を返したが、誰一人としてそんな挑発には乗らない。

 

 「我々を甘くみない事だな。無論、我々もお前たちを甘くは見ていない。それが証拠に、確実にお前らを倒す為に、これだけの戦闘員を揃えているのだ。覚悟しろ!」

 

 右腕と左腕の超級戦闘員が二人同時に並んで、駆け出すと同時に、後ろに並んでいる超級戦闘員達も続くと言わんばかりに一斉に飛び出してきた。

 

 背中に翼を生やした者や、両腕にバルカン砲をつけた者や、腕が六本ある者や、全身電気の者や、両足をからめて蛇みたいになっている者・・・おおよそ人とは呼べない姿となっている超級戦闘員達に、ギンジとカエデは余裕そうな笑みを乗せて、彼らと交戦を開始した。

 

 「戦闘員にどれだけ役職つけたって、所詮ザコよ、ザコ!」

 

 ガントレットのギアを回転させて、カエデが飛び出し、ギンジも金棒を振り回して、超級戦闘員達に突っ込んだ。

 

 ギンジとカエデの戦いは、ここから3時間も続き、意外と苦戦を強いられるのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 9月14日、夕方16時。

 

 残暑の夕日が空を輝かせながら、その真下、異人町ではコンクリートが壊された後や、異人町の入り口の至る所に切り傷や、破壊の跡が強く残っている。

 

 「オラァ!」

 

 ギンジの金棒の最後のひと振りが、右腕を発異常達させた超級戦闘員の頭上から叩き落として、撃破に成功する。

 

 そのギンジの背後では、ガントレットに込めた衝撃を胴体にねじ込んで、左腕を異常発達させた超級戦闘員を上空へと飛ばして、硬いコンクリートに巨体が落ちる。

 

 「ハァハァ・・・これで最後ね」

 「んだよ、こいつら・・・マジで少し強かったぜ」

 

 大暴れに次ぐ大暴れでも、なんとか撃破した。

 

 魔法界帰還直後も超級戦闘員を蹴散らした事はあったが、ここまで一人ひとりが手強い事は無かった。

 

 やはりそれだけ総統直属の精鋭達は、奇形なパワードスーツへの適合率も高いのだろう。

 

 「行けるか、カエデ」

 「大丈夫よ。結局こいつらが何をしたいのかわからないままだけど、このまま下がるわけには行かないのよ」

 「だよな」

 

 それにしても不気味なのが、ここまで激しい戦闘を繰り広げているのに、異人町の人々が誰一人として姿を表していない事。

 

 ここには確かカエデの友達である菊沢トモカも暮らしている筈だ。

 

 普通の人間すらも姿を表さないと言う事は、みんな捕まったか、それともここでレジスタンスを構築している異人達が、全員避難で動いたのか。

 

 「五分だけ休んだら、奥に行こう。誰も出てこないってのは、嫌な予感がするぜ」

 「そうね・・・あたしも、ヘルブラックロスがここに何しに来てるのかが気になるわ」

 「そうだな・・・暴力の怪人達も心配だしな」

 

 ここ異人町には、ヘルブラックロスに反旗を翻した怪人達が暮らしている。

 

 それどころか、かつてギンジ達の協力者であるレイナとサクラが壊滅させた悪の組織、ゲヘナミレニアムと、マージ・ジゴックの残党も、人との共存を望もうとこの町で暮らしている。

 

 人間と異人と暮らし、人の構築したルールで生きている事もまた平和。

 

 その平和を脅かそうとしているのであれば、ギンジでもそれは許せない。

 

 ヘルブラックロスが何度も襲撃に来ているのは知っていたが、ここまで誰も出てこないと不安になる。

 

 「行こうぜ」

 

 休憩もそこそこに、ギンジとカエデは異人町へと進む事にした。

 

 「クックック・・・愚か者共め・・・」

 

 そんなギンジとカエデの歩いていく背を見て、倒れた超級戦闘員の一人が、苦しそうに嗤う。

 

 「も、もうじき・・・我々は、龍脈を手に入れる・・・ヘルブラックロスの、勝利で、この世界に、いや、この戦いに幕を下ろすのだ・・・」

 

 重たい右腕を這いずらせながら、超級戦闘員がその場で意識を失った。

 

 次に眼が覚める時に、ヘルブラックロスの勝利を信じて・・・。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 同じ頃、異人町北側入り口。

 

 「うーん・・・チワワって意外と、弱い者イジメも、才能あるかも」

 

 要塞の地下を新必殺技・ミニチュアダックス・スコップクロウで掘り進めて、犬の怪人は異人町の北側入り口に出てきていた。

 

 そこに出くわした、少年二人。

 

 片方は真鍋アオハル。なぜかヘルブラックロス側の指示で攻撃をしては行けない一般市民。

 

 もう片方はヘヴンホワイティネスの味方をしている、クソザコの印象を抱いていた少年、角倉ケイタ。

 

 その両名の真下から飛び出た犬の怪人は、二人を見つけるや否や即座に攻撃を開始。

 

 ケイタはその攻撃に反応出来ず、ガラス張りのお店の中へと殴り飛ばされ、アオハルの方は、ケイタを助けようと追いかけてどこかへ消えた。

 

 「特別な力も無いし、まぁ、アレで死んだだろう。チワワは弱いやつは一撃で仕留める」

 

 それが犬の怪人のポリシー。

 

 ジャリッと、素足でコンクリートを踏みながら、犬の怪人は異人町の方へと振り返る。

 

 「さてと・・・チワワ、もう一度要塞を襲撃する」

 「待・・・て・・・」

 

 犬の怪人にはその眼で見えているのか、要塞のシルエットを眼で追いながら、その直後に真後ろから声がした。

 

 「逃しはしない・・・」 

 「・・・チワワは、お前を侮っていた。今度こそ殺す」

 

 鼻血を出して、シャツを真っ赤に汚しながらも、ケイタは腫れた顔面で犬の怪人の背後に立ったのだ。

 

 身体が激痛に震えて、意識も朦朧としているが、こんな一方的にやられて、黙ったままで居るのも嫌だ。

 

 「ぼ、僕は・・・僕だって、ヘヴン、ホワイティネス・・・なんだぞ・・・」

 

 ケイタの手に握られているのは、白い魔法の本。

 

 一切の攻撃手段を持っていないケイタに、今の所勝機は見えない。

 

 それはケイタ自身もわかっている。

 

 「セントバーナード・グスタフ!」

 (逃げたら・・・駄目だ!)

 

 大きな犬のオーラを目の当たりにして、ケイタは身体に走る強く大きな衝撃が全身で感じながら、今度こそ意識を失った。

 

 骨がぐちゃぐちゃになる感触に手応えを感じながら、犬の怪人はケイタを魔法の本ごと思い切り殴り飛ばす。

 

 コンクリートに倒れたケイタはもうピクリとも動かない。

 

 「よし、チワワは要塞に向かうぞ!」

 

 弱いものイジメという名の虐殺を楽しんだ犬の怪人は、人の気配を感じない異人町を裸足で闊歩するのであった。

 

 ・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 「角倉君!」

 

 恐怖で逃げていたアオハルが、金属バットを2つ持ちながら、北側入り口に戻ってきた。

 

 そこでボロ雑巾の様に倒れている友達の姿を見て、アオハルは、急いでケイタを持ち上げる。

 

 「くっ・・・アレはいったいなんなんだ!僕の友達をこんな眼に・・・」

 

 悔しさだとか、憤りだとか、そんな言葉では言い表せない程に、アオハルはケイタの身体を頑張って持ち上げながら、どこか彼を助けられそうな場所を探す。

 

 「そうだ、病院!」

 

 最早病院で片付けられるのかは分からないが、アオハルの常識ではそうするしかない。

 

 このまま放っておいたら、ケイタは死んでしまうかも知れない。

 

 今も生きているのか、それすらも分からないが、とにかく自分の恋の為に付き合ってくれていた友達が、こんな姿になってしまったら・・・。

 

 (考えるのは後にしよう!今はとにかく病院へ!)

 

 アオハルが異人町の商店街をケイタを運びがてら歩いていると、薬局を見つける。

 

 病院とは違うが、ここで失血剤でもあれば・・・。

 

 「ちょっと君」

 

 アオハルの真後ろから、女性の声。

 

 白衣を着た女性に、腰の辺りからはモフモフしたリスの尻尾を生やした、女性。

 

 いかにも医者に見えるその姿に、アオハルは藁にもすがる思いで、一つ大きな声を上げた。

 

 「と、友達が命の危機なんです!助けてください!」

 「静かにして。大丈夫、私ならその子を助けられるよ」

 

 リスの尻尾をした女性は、意識を失っているケイタの姿を見て、すぐに行動を開始する。

 

 「ほら、こっち。ひとまず、この薬局の奥に、薬とか、応急処置出来るモノ、それから治療の為の道具もあるから。急いで、早くしないと死ぬわよ」

 「はい!」

 

 リスの女性の名前は小栗鼠山。

 

 この異人町で町医者兼薬局を営む、1児の母でもある。

 

 アオハルは未だに異変が起きているこの異人町には眼も来れず、ケイタの危機にだけ注目していた。

 

 この異人町はおろか、異人町のレジスタンスを運営する要塞。

 

 その要塞の地下に保管されている大きなエネルギーをめぐる戦いはもう既に始まっている。

 

 その間にも薬局に薬を取りに来た小栗鼠山は、重症者を見つけて治療を開始する。

 

 本当は早く戻らないと行けないのだが、そうも行っていられない。

 

 「それじゃあ治療を始めるわ。君はそこで手を洗って」

 

 小栗鼠山の指示通りに、アオハルは今にも泣きそうな顔で、血のついた手を洗う。

 

 (なんで・・・なんでこんな事に)

 

 あの犬の顔をした怪人に睨まれた時に、アオハルは少し漏らしそうになった。

 

 それほどまでに怖いと思ったし、普通に死ぬかとも思った。

 

 (なんで、こんな事に・・・)

 

 アオハルは泣きそう、というよりはもう泣いてしまった。

 

 あまりにも一般市民である彼にはショックが大きすぎた。

 

 アオハルの恋はどうなるのか、もうそんな事も考えられない程に、アオハルは憔悴し始めた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 異人町の一番大きな建物の屋上で、三人の人影が町を見渡しながら、今回の襲撃に満足感が行った表情をしている。

 

 一人は熊カボチャのエプロンをつけて、ふんわりとした髪を三つ編みにして左肩から垂らしている主婦みたいな女性。

 

 その隣にいるのは、学ランを着た小柄な少年。顔にはガリ勉みたいなメガネをつけて、手元には高性能なノートパソコンをカチカチとしている。

 

 そして最後の一人は、ネイティブ・アメリカン、アパッチの戦士の様な民族衣装を身に着けて、羽飾りのついた王冠、ドクロをあしらった杖で影をなぞっている。

 

 彼らは、ヘルブラックロスの大幹部。

 

 今日の襲撃を最後にすると言う名目で、総統とドクターパープルの指示でこの異人町にやってきた、襲撃の最高責任者三名。

 

 主婦の名は府理(ぷり)イスト。

 

 少年の名は影野カタチ。

 

 最後の一番奇抜な出で立ちをしている男の名は根黒マンサ。

 

 いずれも特殊能力を持ち、怪人化も果たした大幹部三名。

 

 「ここで死者が出れば、総統のお望みの世界を創る一助になれる。気を引き締めるぞ」

 

 夕日に照らされる中、一人声を出したのはマンサ。

 

 「あらあらマンサちゃん、一人だけで気合いを入れるのは駄目よ〜」

 

 そこに注意するように、おっとりと声を出したのは、イスト。

 

 「ふひひひ・・・ぼくの計算なら、今日の襲撃での作戦成功確率は99・9999%・・・ふひっ、ふひひひ・・・」

 

 最後に気色悪い笑い声をあげてノートパソコンをかちゃかちゃと触っている、カタチ。

 

 ヘルブラックロス大幹部三名が、夕日に嗤う。

 

 「間もなく夜になる・・・そうすれば、我々の勝利は確定となる。覚悟せよ、レジスタンス」

 

 悪意に満ちた顔で、マンサの言葉が静かに残暑の町にかき消える。

 

 根黒マンサは組織の勝利を願って、静かに微笑む。

 

 その顔は、善悪の区別を持っている者の顔ではなく、信仰を併せ持つ顔。

 

 ヘルブラックロスと言う地獄こそが絶対だと信じてやまない、大いなる信仰を信じた顔。

 

 闇を迎え入れる夕日に微笑んで、大幹部三名は心を踊らせる。

 

 一方的な交戦を心待ちにしているだけの、一心不乱の闘争心にはやる気持ちが抑えきれない。

 

 「19時になったら、作戦開始だよ、ふひひひ」

 

 カタチがそう言うと、三人はまたも静かに微笑みあう。

 

 地獄を形成するのは、今この瞬間だと、本気で信じている彼らは今か今かと全人類平等の時間が来るのを待ち続けるのであった。

 

 

 

 

続く 

 

 

 

 




お疲れ様です。

正義と悪のイデオロギーも大事になってきましたね。

キャラネタ書きます

佐久間ギンジ
だいたい長編になると出番が少なくなりがち。

神宮カエデ
ギンジとデートだと浮かれていたのに、またこうなるんかい・・・と少し残念気味。

角倉ケイタ
犬の怪人にボコられた。可愛そう。
しかし今回のお話はレンのお話でもあります。つまりの彼の負傷は、レンの覚醒に必要なピースに・・・なるか?

真鍋アオハル
アルティメット一般市民。ケイタの有様を見て気を失なわないだけすごい。

クサイモノ・ニフター博士
アマナにとって親の様な存在。

天元坂アマナ
未来技術と称した兵器の一つ、光線銃を所持。
衝撃を打ち出すことも出来て、バレル部分にギアがついている。
形状様々な光線弾丸を打ち出す事も可能な武器だが、アマナの技術では不可能。
悪の組織に所属してはいたが、性の知識は一切知らない。

小鳥遊アキラ
アマナが触手であんな事やそんな事をされているのに憤りを感じた。
公安を辞めた後はレジスタンスに転職した。
過去には藤原さんを軟禁したりした。

雪の怪人
天候操作を可能とする怪人。ぶっちゃけ怪人四天王としてまだ敵だったらやばかったかも知れない。
真鍋アオハルの事を勝手にボーイフレンドと呼んでいる。

触手の怪人
タフネスも能力もどんどん強くなっていないか?

紐の怪人
こいつもまた強くなっている。そのうち特戦隊とか作りそう。

犬の怪人
ケイタの事を思い切りボコった。セントバーナード・グスタフは彼の切り札。

府理イスト
カボチャのエプロンを身に着けた主婦みたいな女性の大幹部。
能力は不明。
名前の由来はプリーストから。でもプリースト由来の能力ではない。

影野カタチ
中学生の大幹部。
鈴村ミヤコに対抗心を燃やしているが、ミヤコ当人は彼の事を知らない。
実はミヤコに想いも寄せている。
科学者であり、ドクターパープル直属の研究班だった過去あり。
名前の由来は影の形。
能力は不明。

根黒マンサ
アパッチの衣装に身を包み、ドクロをあしらった杖を持っている褐色肌のお兄ちゃん。
能力は不明。
好きな料理は寿司、女○盛り。
名前の由来はネクロマンサー。

・・・

次回はギンジにも出番があります!
レジスタンスの人々はいったいどこへ!
ヘルブラックロスの襲撃は夜に本格的になり!
要塞に残った面々は、まだ侵入してきた戦闘員達と交戦していて!

なお話です。
次回もお楽しみに!
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