正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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アトラクションはパスタが好きです

今回のお話は2話構成!そしてどちらもミヤコメイン回!
ヘルブラッククロスの日常編とも言うべきところでしょうか。

お楽しみいただければと思います。
あ、今回は短めです!


ドクターミヤコ編
13・鈴村ミヤコ→ドクターミヤコ


 

 湾岸エリアの戦いが終わって早3日。

 

 俺たちヘヴンホワイティネスの戦い・・・と言うか俺、こと佐久間ギンジの戦いは苛烈極まる物が多かった。

 

 ゲームの展開通りのイベントに対して、中身はゲームの通りに行かなかったり、俺だけプロレス技かけられたり、どいつもこいつもドクタードクター結婚結婚将来将来と・・・。

 

 「あーうぜー・・・」

 

 ミドリコのマンションの、大掃除をしながら俺は悪態を突く。なんで痛い思いもしなきゃならないんだ。だいたい異世界転生って、こうチートありきなものだろ?

 

 無双すんぞーやったんぞーって、王様の眼の前で偉そうにふんぞり返って無理やりドカーンってやるのが異世界転生だろ?

 

 なんで俺の転生は改造されたり、燃えたり、斬られたり、死にかけたり、プロレス技かけられたりせにゃならんのだ。ふざけんな。ふざんけんぬぁ!

 

 「ちょっとギンジ!うぜーだのなんだの言ってないで、これ運ぶの手伝ってよ!重たいんだから!」

 「ギンジ、私の机も、お願いしたい」

 「ギンジ、済まないんだが、このソファ、運んでくれないか?」

 

 今の俺たちは、ミドリコの家の大掃除の待っただ中。それもお引越しの為にだ。

 

 なんでもカエデが財閥パワーを使って、ミドリコとレン、ついでに俺の為の新しい住居を建ててくれたそうな。

 

 財閥パワーってすげぇな。学校もそうだけどあと一週間は休校するそうだ。変わりに夏休みが一週間少なくなるそうだが、それについて俺は声を大にして反抗したい。まぁ俺学生じゃないんだけどな。

 

 さて、問題のモノ運びだが、こいつら自分の運び出せない大きな物を俺にばっかり頼みやがって。

 

 「で、どれから運べばいいんだ」

 「あたしのコレを手伝いなさいよ」

 

 カエデの足元に置かれているのは、ミドリコの私物の入ったダンボール。それをカエデが持ち上げると、いかにも重たそうな動作にカエデは顔を赤くする。

 

 やたらガチャガチャ言ってるけど、それ俺が運んでいいやつなの?化粧品?それとも部屋に置いてあった例のアレ?・・・どちらもヤダ怖い。

 

 「こんなの健全な女子学生に運ばせないでよね、ミドリコ?」

 「ははは、済まない」

 

 ああ、やっぱり例のアレか。うーん。しかしミドリコの趣味のものだしな。

 

 コロン。コロコロ。

 

 音がした。フローリングに何か玉の様な物が弾き、転がる金属音。

 

 「何か落としたぜ」

 「あ、ごめん」

 「あー俺が拾うからいいよ、カエデ」

 

 しゃがんだ俺の視界に見えたのは、9ミリぐらいの筒状のモノ。黄金色に先端が細くて尖っている。

 

 なんというか、拳銃とかに使用できそうな、そう、弾丸・・・。え?弾丸?これを学生に運ばせてたの?

 

 一応この人公安警察だよね?え?違ったっけ?

 

 「コレ弾丸じゃねーか!!!」

 「え!?じゃあこの箱の中身は・・・」

 

 俺の言葉に驚きカエデも箱の中身を確認する。

 

 後ろの方で、ミドリコが「開けるなー」とか言ってるけど、カエデの手は止まらない。

 

 「うーわっ」

 「中身はなんだ?・・・げぇ」

 

 箱の中身はゴツゴツとコテコテが両方揃った拳銃の数々。怪人や戦闘員と戦う為に、用意した専用カスタム銃とかかな。

 

 改めて見るとミドリコってこういう武器のカスタムとか、そういうモンが好みなんかね。変わった女だよな。甘白ミドリコって。

 

 「済まない、その箱は正規の裏ルートで入手した専用のカスタム銃なんだ。あははは・・・」

 

 変に焦りながら箱を閉めて持ち出すと、ミドリコはフローリングにスリッパを引きずりながらリビングを出ていく。

 

 「・・・正規の裏ルートってなんぞ??」

 「あたしに聴かれても・・・」

 「私、前に少しだけ、聞いたことがある」

 

 レンが頭巾を一度取り外すと、俺たちの所にやってくる。

 

 頭巾イクイップ宮寺さん可愛くない?こりゃーケイタのおぼっちゃんも恋しちゃうわ。うんうんわかるよー。(中身30歳の)おじさんにはわかる。

 

 「確か・・・かし、かし・・・かしわもちさんとか言ってたような」

 「美味しそうな名前だな」

 「かしわもちさんは、人の名前。食べ物じゃ、ないよギンジ」

 

 そーゆーのいいから。やめろ!俺のボケを潰すな!

 

 「それじゃあ、別の荷物運ぶか」

 

 カエデとレンの荷物を運び出し、引っ越しの準備を進める。

 

 いやーそれにしても新しい新居か。俺も独り暮らし長かったから、引っ越しが楽しいのは解るぜ。

 

 ミドリコの顔がホクホクしている。解るぜその気持ち。しかも人の金での引っ越しだもんな。財閥ってスゲー。

 

 「あ、ギンジ。あんた、好きな食べ物は?」

 「え?ああ、好きな食べ物か・・・」

 

 唐突なカエデの質問にちょっと言葉が詰まる。

 

 好きな食べ物か・・・。料理とかだよな、うーん。

 

 「は、ハンバーグとか・・・?」

 「なんで疑問系なのよ。まぁでもハンバーグね。了解」

 「カエデ、私は、コロッケ」

 「レンのは知ってるわよ」

 

 なんで俺の好きな食べ物なんか聞いたんだ?でもこれを聞いたら、また怒鳴られそうだから黙っとこう。

 

 カエデもレンも楽しそうに引っ越しの準備するな。

 

 レンにとっても初めての事だから楽しいのは解るんだけど、なんでカエデまでこんあ楽しそうなんだろうな。

 

 いや俺も楽しいんだけどな。

 

 俺たち四人で引っ越しも準備は夕方まで続いた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 さて、夕方から夜に差し掛かる頃、俺たちは準備を終えて家を出る。

 

 住めばミヤコ・・・じゃなくて都とはよく言ったもので、ベランダ生活も板について来たんだがな。

 

 まぁ次のカエデが建ててくれたアジト兼住居は、きっと俺の寝床も用意してくれてる筈だ。地下とか屋上は勘弁。

 

 「それじゃ、ギンジ。また後で」

 「カエデ、また向こうの、家で」

 

 ミドリコの車には色々荷物を入れすぎたせいもあってか、後部座席は座れたもんじゃない。

 

 俺とカエデは電車で隣町まで向かう事になった。

 

 「じゃ、ギンジ。サングラス、つけなさいよ」

 「おう」

 

 湾岸エリアの戦いの翌日。俺とカエデはパトロールも兼ねて、俺のスマホとサングラスを契約と購入。

 

 名義は甘白ミドリコ、お金を払ったのは神宮カエデ。こいつらなんで急に俺に優しくなったんだい?おじさん泣きそうだよふへへにちゃぁ。

 

 いや、そうじゃない。今の俺は20歳前後なんやで。若返り転生サイコー。

 

 「ふーん」

 「なんだよ」

 

 サングラスを付けた俺を見るや、カエデが顔を見回す。

 

 「別に。似合ってるな、って」

 「俺のセンスいいだろ?」

 「選んだのあたしじゃないのよ」

 「いやいやこれと決めたのは俺だぜ」

 

 俺の付けているサングラスは、銀色のフレームに濃い深茶色のレンズ。フレーム部分には本物のシルバーを使っている高級品らしく、レンズ含めかなり頑丈な作りで、真っ先にこれがいいと思った。

 

 シルバーとギンジだしな。あ、ちなみに俺は銀治って書くぜ。銀のフレームに銀だから俺もギンジってんだなんか運命を感じた。

 

 「お金払ったのはあたしじゃない」

 「払ったのは確かにそうだけど、お前レジ行く前に俺にお金渡したじゃねーか。なんだこれだけ買うの恥ずかしいって!」

 「それを買うのが恥ずかしいんじゃなくて、あんたに手渡すのが恥ずかしいって思ったのよ!」

 

 色々めちゃくちゃな事を言い合いになりそうだし、ここらへんでやめとこう。

 

 会話を一区切りで終わらせると俺たちは駅へと歩く。

 

 住宅街エリアも色々あったな。

 

 「そういえば昨日のスライムランチャーだけどさ」

 「ああ、あれね。なかなか気持ち悪い攻撃よね」

 

 あの攻撃には苦戦させられた。敵の主な戦力戦闘員だけだったが、俺とカエデとレンはかなり戦況が不利になった。

 

 スライムの拘束力も厄介だが、それに追加して直接殴りに来たり、人数的に不利になる事もあり結構ひどい目にあった。

 

 ちゃんと勝ったけどね。

 

 駅に向かいながら夕方の住宅街エリアを、俺とカエデは歩いていく。

 

 「あたしは、この街で育ったし、ミドリコもここ度固化市が地元なんだって。綺麗でいい街なのに、あんな悪の組織が幅を効かせるなんて納得が行かないわ」

 「・・・まぁそうだよな。あいつらの目的通りに俺はさせたくないし、日常を崩させたりなんかしたくないって思うぜ」

 

 途方もない戦いかも知れないが、ヘヴンホワイティネスとして戦ってる俺たちにとって、皆想いは一緒だ。敗けられない戦いがずっと迫ってきている。

 

 怪人襲撃は肝を冷やす。怪人の動く任務は、街のどこかのエリアの一部破壊は免れない。

 

 「もっと、強くならないとな」

 「そうね。あんまりボサッとしないでよ?」

 

 カエデが俺の顔を覗きながら、可愛らしい笑顔を浮かべる。

 

 「あんたの事、頼りにしてるんだから」

 

 少しだけ胸を掴まれる感じに、俺の鼓動が早くなるのを感じた。

 

 「おうよ。俺もお前の事頼りにしてるぜ!」

 「そ。ありがと」

 

 なんだよ冷たいなー。

 

 俺たちは意味のない他愛もない話をしたり、今後の為に強くなることを決意しながら駅前エリアへと進んで行く。

 

 あ、もしかして新居で食べる夕飯ってハンバーグかな?

 

 引っ越しそばならぬ、引っ越しハンバーグか。いいね、そういうサプライズの為に好きな食べ物聞いてくれたのか。

 

 ドーン!っと強い音が駅前エリアから聞こえた。

 

 遠くからでも解る人々の喧騒が、俺とカエデの耳に入る。

 

 「ギンジ!」

 「昨日の今日だぜ?勘弁しろよ。行くぞ」

 

 一瞬気怠くなったけど行くしかねぇな。

 

 駅前エリアにたどり着くと、案の定ヘルブラッククロスの怪人が暴れたいた。

 

 「あれは鎧の怪人か・・・」

 「量産が唯一できるっていう、怪人だっけね?いいわ、引っ越し準備じゃ訛りそうだったし、運動がてら倒すわよ、ギンジ!」

 

 言うと変身したカエデは一気に走り出し、俺も追いかけて暴れる鎧の怪人へと走り出す。

 

 まったく、どうしてこう、ゲームの展開にはないことばかり起こるのかね。勘弁しろって。いやまじで。

 

 痛い事覚悟して、戦いますかね。

 

 俺はとにかくカエデとレンとミドリコを守りたい。

 

 その一心で避けられない戦いに、今日もまた身を投じるのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ヘルブラッククロスの目的。それは日本の転覆し、独立国家を形成すること。

 

 総統は作り上げた計画を半年で行動に移した。さらに計画始動から1年で300人を超える組織となった。

 

 自分の行う行動や、計画。それらを織り交ぜた日本の未来を新たに創るために、総統はそれぞれの専門家を買収し、または暴力で屈服させて自分の理想へと、街を掌握していった。

 

 氷室コウガ。総統が本名を捨て、巨大な犯罪を動かす為に作った仮の名。

 

 そんな総統は今ヘルブラッククロスの総統の自室に、ミヤコを呼び出していた。

 

 「ドクター。最近のお前はどうしたのだ。あまり成果は乏しくないようだが」

 

 元々の大きい身体と低く威圧的な口調。自分の身ひとつで戦ってきた総統は弱い者を善としない。

 

 それ故に自分の立ち上げた組織の中に、弱者や敗北や失敗を連続して行う者へは容赦の無い対応を取ることが多い。

 

 押しつぶす様な恐ろしく、そして強く落ち着いた口調で頭を垂れるミヤコへ言葉を投げかける。

 

 「ハッ・・・申し訳ございません。総統閣下のご期待に添えないおろかなわたしをお許しを・・・」

 

 14、5歳に見える幼いミヤコへ総統は上半身を見せない黒い影に覆われたまま、言葉を飛ばす。

 

 「お前の技量、それも兵器開発や怪人開発においては組織を代表して言うが、正直感謝してもしきれないぐらいだ。だのに、先の戦いでは怪人三名の手痛い敗北、リコニスも敗走し、洗脳マシンは回収不可能・・・おまけにヘルブラッククロスの特殊部隊の精鋭の重症・・・」

 

 昨日もスライムランチャーを用いた襲撃も失敗した。ミヤコは成果を出すためにここ3日はまともに寝れていない。

 

 「・・・佐久間ギンジ、か?」

 「・・・ッ」

 

 ピクリ、とミヤコの身体が反応する。

 

 「何故お前ほどの者がそこまでただ一人の怪人に、そこまで固執する」

 「・・・わたしの傑作だからです」

 「それは嘘だな」

 

 傑作なのは間違いないが問題はそこではなく、ミヤコが佐久間ギンジ・・・組織名、進化の怪人になぜそこまで固執するか、を聞いている。

 

 「恋と言うものにうつつを抜かしたか?」

 「い、いえ恋など・・・」

 「ミヤコ、お前は、組織に忠義はあるだろう」

 「それはもちろん・・・」

 

 かつてドクターミヤコこと、鈴村ミヤコは組織だけじゃなく総統に大きな恩が出来ていた。

 

 「お前を助け、拾ってやったのは誰だと思っている」

 (あれは・・・1、2年前程だったかな・・・)

 

 忌々しく、思い出したくない記憶をミヤコは総統と話しながら思い出して行く。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ──約1年前。

 

 これはまだわたしがドクターと呼ばれる前の出来事。

 

 将来とか、未来とか、考えてもしょうがない事だと、当時のわたしは思ってた。

 

 「・・・学校って、つまんない」

 

 小学生の頃から、頭は良かったと思う。わたしに解けない問題は無く、天才とか神童とか色々言われて来たけど、わたしには何も響かない。

 

 ああ、今日も学校が終わる。帰るのがいやだな。

 

 地元の中学に進学したわたしは、ここでも勉強において壁はなかった。

 

 だって勉強とかって難しい文字とか数字を並べて計算っぽく見せつけたありきたりな理不尽に過ぎないのだから。

 

 黒いセーラー服のリボンを直すと、わたしは何事もなく学校を出ようと帰路に着く。

 

 まいにちつまらない。

 

 周りを見渡せば、人気のつかない所に二人の男女が向かうのが確認出来た。よくある告白とか言うものだろうか。

 

 (いいな。わたしも恋とかしてみたいよ)

 

 きっとこの時のわたしは死んだ眼をしていたのかも知れない。

 

 鈴村ミヤコ。それが私の名前。

 

 2021年時点で15歳・・・になる。

 

 勉強、出来る。

 

 運動、まぁ苦手。

 

 人間関係、自分からは広げたいとは思えない。

 

 家族、両親と兄が一人。早く居なくなればいいのに。

 

 恋人、居ない。好きになれる人もいない。

 

 生活能力、知らない。

 

 それがわたしという人間の全て。

 

 どうせなら与えられるより、造って誰かに認められたい。

 

 頭の中ではおおよそ、誰にも理解できない数式は沢山出来ている。この数式で生み出されるのは人間を超越した人間の製作図。

 

 素材がないから造る事はできないけどね。

 

 「オイ」

 

 後ろから声をかけられると同時に、頭を小突かれる。

 

 まただ。またやられた。

 

 「ミヤコ、今から帰るのか?」

 

 痛む頭に手は抑えない。痛いと認めたら負けと同じになる。

 

 「今から帰るのかって聞いてるんだよ」

 

 この人は、わたしの兄だった男。鈴村ミヤギ。

 

 勉強で勝てない事からわたしに手を出すようになった男。

 

 「お前、今から帰るならおれの荷物持ってくれよ。重くて叶わないんだわ」

 「それは・・・嫌だよ」

 「口答えすんなゴミ」

 

 教科書とかノートとか必要以上に詰め込んでいるに違いない。重さを利用して、わたしのお腹に振り回して当てて来る。

 

 「ゲホ・・・うぅ」

 「口答えすんなって言ってんのゴミがよ」

 

 周りが観ていようと関係ない。この男はわたしの頭を踏みつける。

 

 「お前本当に何を考えてるのか解かんないやつだな。あ、そうだ今日おれが帰ったら、口答えのお仕置きしなきゃな」

 「・・・」

 

 もう理由なく殴られるのには慣れた。もう理不尽に怒られるのも無慈悲な暴力にも慣れた。

 

 それでもやっぱり痛い。

 

 夏も近いのにわたしだけ春服なのも、この男や父親だった者が執拗にわたしを痛めつけるからだ。

 

 理由なんてない。いつの日か取ってつけたように、【気持ち悪い】とか、【何を考えてるのか解らない】とか、【なんでお前みたいのが産まれた】など。

 

 わたしだって産まれたくて産まれたんじゃないよ。

 

 「ごめんなさいは?」

 「・・・」

 「謝れよコラ」

 

 革靴で頭をひっぱたかれる。

 

 「ごめん・・・持って帰るよ。人が観てるから、もうやめて」

 

 校舎の下駄箱近くで肌から出るとは思えない様な、重たくも爽快な音が鳴る。今度は平手打ちをされた。

 

 「お前の方が母さんに似てるなんてな。その顔ムカつくから帰宅したら、変形するまでボコってやるよ」

 

 高笑いしながらミヤジがわたしに唾を吐いて、校舎に戻っていく。

 

 慣れていても、こんなのはおかしい。実の家族がこんなに暴力を振るうなんて。

 

 痛みでふらつくわたしに教師を始め、同じ女子も声をかけてこない。わたし、鈴村ミヤコには誰も寄添おうとはしない。

 

 重たい荷物を担ぎ上げると、帰りたくない家にゆっくり歩いて帰ることにする。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 帰るなり、働きもしない父親がわたしに酒の空便で殴ってきた。

 

 血が出てる。

 

 痛い。痛い。痛い。慣れていてもずっと痛いよ。

 

 「お前また変なの造って部屋に置きやがったな」

 

 お酒のアルコールの匂いがきつすぎて、わたしはあるだけの道具と知識で自動的に香水を振りまくアイテムを創り出した。

 

 その香りで、機嫌とか、少しでも収まればいいのにな、って思っていたから。

 

 わたしの父親はなにかの研究をしていた科学者らしい。でも病気で研究が続けられなくなって、次第に家に居ることが多くなった。苦手だった筈のお酒にも手を出し、嫌いと豪語していた暴力も振るうようになった。

 

 わたしは毎日暴力の家庭になってしまったこの家で、泣くように眠っている。そして夢に出てくる女性にいつも助けてって、懇願している。

 

 (人ってなんでこんなにかわるんだろう)

 

 優しかったであろう父親は、豹変。厳しかったであろう母親は、実の息子とまぐわう日々。

 

 わたしの人生は、どうしてこうなっちゃったんだろう。

 

 なんで家族はこうなっちゃったんだろう。

 

 「このクソガキ!!」

 

 ゴチン、と鈍い音が頭の中で重くのしかかる。

 

 鍋かなにかで頭を殴られた。

 

 (ああ、やばい。死んじゃう・・・)

 

 意識が遠のき、ミヤコはその眼を閉じた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 腕や身体が傷だらけ。

 

 「うぅ・・・ん」

 

 あれから何時間程寝ていたのだろう。わたしは重く、痛みに震える身体を無理やりお越し、暗い玄関に差し込む光を放つリビングへと向かう。

 

 「ミヤコぉ・・・お前いつまで寝てるんだぁぁ」

 

 酔っ払って見境いなく大暴れでもしていたのだろうか。わたしの父親は母親にまで暴力を奮っていたようだ。

 

 「ひどい・・・」

 「お前もよぉ、口答えしなきゃぁなぁ、こうならなくて済むんだよ、ばかがよ」

 

 血の匂いと汗臭さとアルコールの香り。それらが混ざり合って気持ち悪くなる。

 

 「ミヤギもよぉ、帰るなりおれの女に手を出そうとするからよぉ、見ろよ」

 

 顎で促したその先には、ひどい有様で倒れる兄だった者の無残な姿があった。

 

 頭を沢山殴られたのか、手元にはハンマー、錐、お鍋、本等様々だ。

 

 「ミヤコぉ、お前もこっち来いよぉお」

 「・・・っ」

 

 もう嫌だ。こんなのおかしい。ここで我慢して生きていたらいつか絶対死んじゃうよ。わたしはそんなの嫌だ。

 

 そう思ったらわたしは靴を履かずに家を飛び出した。

 

 このままじゃ殺される。

 

 「はぁ、はぁ、たすけで!だずけてぇ゛」

 

 もう怖くて、泣きながら走っていた。わたしはずっと我慢していたものが溢れ出たように喉も裂けるのではないかと思う程の大声で、目一杯叫んだ。

 

 「・・・」

 

 目の前には人が居る。もうどんな人でもいいから助けてほしかった。

 

 「お、お願いします、助けて!たずげで!」

 「君、なにがあった」

 

 漆黒とも言うのが正確だと思う程のスーツを来たその人へ、わたしはしがみつくように助けを求めた。

 

 「・・・ひとつ聞くが、君は我々に助けられた時、何ができるのかね」

 

 この状況で何を言っているのか解らなかった。

 

 だけど、この瞬間わたしはきっと自分を売るように、この人へ喚いていた。

 

 「・・・君は何ができる」

 

 帽子で隠れた瞳が紅に輝いた様に見えた。

 

 「わ、わたしは、勉強が出来ます!数式を組み換える知識や、人体研究を・・・」

 「よし。それ以上はもういい。あとは私がなんとかしよう」

 

 その言葉を聞いたら早くもおいついた父親が、息を切らしてわたしの肩を掴む。

 

 「ミィやぁコぉ・・・」

 「痛っ・・・離して!」

 

 わたしが叫んだその瞬間、父親の腕はめちゃくちゃな形に折り曲げられていた。

 

 「くぎゅおおおお!?おぶっ」

 

 腕が折られた事で狂乱する父親に、この人はお腹を思い切り殴り潰す。

 

 そのまま吐瀉物を滝の様に放出し、汚い湖に自ら顔を落として倒れ込む。

 

 「・・・名前は」

 「ミヤコ・・・です」

 「闇はお前を歓迎する。他にしてほしいことはあるかね」

 「・・・」

 

 わたしは父親がどうなったか聞いた。即答で殺したと言い放つこの人に、わたしは何か魅力的な雰囲気を放ち続けるこの人に、もう一つお願いした。

 

 「殺して欲しい人が、あと二人いるんです・・・」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 鈴村ミヤギは翌日行方不明。同じく鈴村ミヤエも行方不明。

 

 鈴村ミヤゴは路上で死亡が確認されました。そのニュースがあの日の翌日に街に流れ、いっとき話題になった。

 

 そして一家の長女である鈴村ミヤコも行方不明。父親の死因は交通事故。それで片付けられた。

 

 総統に助けられたミヤコは闇へと踏み出した。

 

 あの日、ミヤコは名字を捨てて、変わりに神が宿る頭脳と称された頭の良さをフル活用して、ヘルブラッククロスの兵器開発、作戦、そして怪人の開発。

 

 功績の多さは非戦闘の立ち位置でありながら、組織内随一。

 

 顔も可愛く、小柄で、頭も良い。計算能力はなんとコンピューターに勝つほどだ。でも何故かサイズの合っていない白衣を身に着けている。

 

 証拠隠滅、殺さないといけない二人の家族。母親はきっと辛かっただろうから情けをかけた。

 

 「わたしを拾ってくださったのは、総統閣下でございます。申し訳ございませんでした」

 

 ミヤコはヘルブラッククロスに大きな恩義と忠義がある。

 

 失敗してしまったことには、素直に受け入れ総統からのバツを受けるしか無い。

 

 「・・・佐久間ギンジを、ドクターはどうしたいのだ」

 「はい、必ずこちらへ連れ戻し、わたしとの将来を誓わせます」

 「ふっ、やはり恋をしているじゃないか」

 「・・・はい」

 

 顔を赤くしながらもドクターミヤコは頭を垂れたままだ。

 

 「何故、佐久間ギンジに恋をした?」

 

 総統は相変わらず態度を崩さずに、ミヤコへ問う。

 

 「・・・私の本名を知っており、怪人の誕生の時の記憶を失わず、かつわたしの研究に大いに貢献してくれた怪人なのです。あと、その・・・上手く言えないのですが」

 

 ミヤコは顔が熱く頭をあげられない。

 

 「初めて見た時、身体が好みで・・・顔もかっこよくて、あと声が素敵だなって。優しくて強い、あと何より、一緒にいると、お腹の下の方が熱くなるんです・・・」

 「ドクターミヤコ・・・」

 

 総統は頭を抱える。これは恋を超えた2ランク上の領域なのだが、総統はあえて何も言わない。

 

 (だがしかし、これでこいつが正常ならばそれもよしとするか・・・)

 

 そこで総統は一つの考えが頭をよぎる。

 

 「ドクターミヤコ。佐久間ギンジを連れ戻したいならば、お前に次の司令を与える」

 「はい・・・?」

 

 影で隠れた上半身、その頭部と見えるところが紅の光を2つ輝かせる。

 

 「佐久間ギンジの弱点はなんだ?」

 「はい、数々の報告で上がっているのが、女性戦闘員とは戦えないと・・・つまりギンジ君は、女性とは戦えないのでは、と報告が」

 「・・・いいだろう、お前の成果を元に戻すために、新たな指令、作戦をこの私自ら立案しようではないか」

 

 総統は誰にもその顔を見せないが、悪の組織のトップにふさわしい笑みを浮かべると、闇を色濃く見せ、ミヤコを震え上がらせる。

 

 「くふふふ・・・総統やべーですね・・・」

 

 二人の悪が嗤い、悪の広がりが再びギンジの知らない展開を作り出そうとしていた。

 

 

続く

 

 

 




お疲れ様です。
今日もキャラネタ書きます。(いよいよ後書きに書くことなくなってきちゃったよとほほ)テーマは漢字表記のお名前

佐久間銀治
銀次、銀二等候補あり。

神宮楓
加恵和とどっちにしようか悩んだ結果、カタカナ表記が楽という結論

宮寺蓮
2102年の侵略された日本においても漢字はあったそうです

甘白緑子
公安警察って実は本名で活動しないらしいんですよ。
年齢27歳を偽らず彼氏なしも偽らないのに・・・

角倉圭太
そもそもこっちの方が主人公設定だった。

菊沢友香
僕の黒歴史サムライアームズの方から名字だけ拝借したキャラ。

鈴村都子
みやここじゃないよ。ミヤコだよ。正ヒロインの予定だった。
でもワンチャン?

氷室孔賀
コウガとは世を忍ぶ仮の姿の名前。趣味はパチスロ。

次回のミヤコメイン回にはなんとオーク怪人も出ますぞ!オークオークうるさいって人にはオーク怪人を着払いで贈ります。

冗談です。
次回もお楽しみに!感想や、お気に入り登録、どしどしくれると嬉しいです!
アトラクションでした!
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