一日だけの休日で疲れが取れるかああ!!!
今回のお話はヘヴンホワイティネスがめちゃピンチになります。ならんかも。なるかも。
どっちでもいい!正義は勝つ!
それではどうぞ
17・運命の日
6月27日。
本格的に夏が始まりそうな日本。
そして度固化市の公安警察所第4のオフィスでは、甘白ミドリコが熊沢レイナと連絡を取り合っていた。
6月26日に起きた事件での確認として中央、南での警察組織同士で、情報のすり合わせを行っている。
「それは・・・本当ですか?」
結局最後まで見つからなかった五天のうちの最後の一人、黒天が無残な死体となってレイナに発見されたという。
何かの事件として見てもあまりに不自然な死に方に、また別の事件性があるとみて、連絡をミドリコによこしたという次第。
「・・・甘白ちゃーん?」
電話するミドリコの横で、ヤクザみたいな顔をした藤原が暑さにやられてだるそうな顔をしている。
「ねぇ・・・どぼじて無視すんの?おじさん汗臭い?ねぇ、ねぇ」
「あーもううるさいなこのおじさんは!糖尿が感染るから話しかけないでください!」
──糖尿ぢゃないよ。おぢさん、健康だよ。肝臓の数値は悪いけども。
あまりにも辛辣な言葉に最早言い返せない。それより暑いのだ。
あつすぎて、いつもの真紅のジャケットを脱いで、扇子を仰ぐ。
「あー君」
藤原が指をさした若手に、アイスを持って来させる。
アイスを受け取ると、藤原は再びミドリコの席にちょっかいを出しに行く。
「あーますぃろちゃ・・・あれ?」
そこに部下である甘白ミドリコはいなかった。書き置き一つだけあり、その内容に眼を通すと、藤原はしかめっ面で書き置きを机に放る。
「まーた午後半休・・・そしてあしたは有給・・・いやいいんだけどさぁ〜」
基本公安第4というのは暇な課だ。最近の組織犯罪と言えば、巷で有明なヘルブラッククロス。そしてまだ公には出ていないが、聖カエルム教会の責任者の一斉逮捕。
「こりゃあ、何か核心に迫るモノでもあったか・・・?」
15年以上も警察という職に就いていれば、勘が自然と冴え渡る。
しかしながら、命令が無ければまともに動けないのも第4という組織。自分の部下が人知れず戦っている事は理解を寄せているが、あまり勝手な行動は控えて欲しい。
「なーにがヘルブラッククロスだ・・・くだらねぇ」
自分達の仕事を増やし続ける悪の組織に悪態をつくと、藤原はデスクに戻る。
「・・・ヘルブラッククロス、か。チトセ、お前・・・いやなんでもねぇ」
自分のデスクに飾ってある、女性の写真に語りかける。
今より若干若い藤原と、同じぐらいの年齢の女性の二人が写る間に、産まれて間もない赤ん坊の写真。
「・・・おれだって行けるなら、すぐ行きてぇよ」
悔しさと苛立ちに頭を抱えた藤原に、コツンとヒールの音が鳴る。顔を上げると、そこに居るのは甘白ミドリコ。
「どこに行くって・・・?」
「いやー甘白ちゃんと草津温泉にでも行きたいなってね。げへへ」
「行くわけ無いでしょう。水虫が感染ります」
「ひでぇなぁ・・・で、何しに戻ってきたの?」
藤原が扇子を仰ぎながら椅子にふんぞりかえる。
「はい・・・実は、東度固化にある刑務所へと行きたいのですが・・・」
「なんだってあんなワケありしか集まらないブタ箱に・・・っていうかそもそも、午後半休取ったんじゃ?」
「はい。許可証発行しといてください。7月になったら行きますので」
「理由は?」
「南度固化の刑事熊沢さんからの、共同操作でして」
共同操作。それほどの事件があったのだろうか。
とは言え、おとなしくしててもらうには、言うことを聴くしかあるまい。
「藤原さん・・・発行のついでにお腹を触るのは立派なセクハラです。一度死にますか?」
「・・・お前本当に警察・・・?」
未成年に銃をもたせたり、ランチャーぶっ放したり、ライフルを白昼堂々と撃ったりしているが、ミドリコは正真正銘公安警察。
「ほらよ。機嫌は7月末までだ」
「ありがとうございます!それじゃ!」
足早に帰宅するミドリコを凝視するミドリコ。
(ああ・・・そうか・・・暑いもんね)
ストッキングの無い、スーツスカートの生足を凝視して、少し興奮する。
「夏っていいな」
「いいですね。ちなみに僕はシャツから透けるブラの色を凝視したいです」
若手の警察とそこそこのベテランの会話は、今日も酷いものだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6月28日。とうとう来た。ゲームの通りのイベントと同じ日付。
今まで俺の知ってる展開とは違う、イレギュラーも多く、戦闘は常に痛いし、出血止まんなかったりと、俺は散々な目に合ってる。
まぁでも何かしら色々あっても、最終的にカエデ達が笑って暮らせるなら、それでいいんだけどよ。
さて、今日のヘルブラッククロスの襲撃・・・というか、攻略チャートだが。
1・カエデ達と繁華街のカフェの新作スイーツを食べに出かける。
2・ヘルブラッククロス大幹部のリコニスが待ち構えてるので、変身させてします。しかし変身したスーツに対する洗脳作用のあるマシンがあるので、俺こと佐久間ギンジが先回りしてぶっ壊しておく。
3・全員ぶっ飛ばす。
4・皆で7月を向かえる。
完璧だ。特に2と3が完璧。俺もしかして天才なんじゃ。
っていうかそもそもこの作戦を立てて思うんだけど、1いらないんじゃないかな。わざわざケーキとか食べに行かなくてもいいじゃろ。ん?どうなんだい?
俺はふと、リビングにいるカエデ達に目をやる。すると元気はつらつな彼女たちは、しっかりちゃんとどのケーキを食べるのか、という話題を雑誌を持ちながら話している。
いいな、甘いモン俺も食べたいな。ミヤコに頼んだらすぐ持ってきてくれるからな・・・。いやまぁ、いいんだそんな事は。
天気もバカバカしいぐらい晴れてるし、引き止めるのは無理だな。
ここらへんはゲームの通りか。
ならば向かうのは繁華街のカフェとケーキ屋、ヘヴンホワイティネスとレンを引き裂いたあのイベント。
ゲームの内容としては、ヘヴンスーツに作用する洗脳マシンで身動きが出来なくなり、自我を保ったままヘルブラッククロスの戦闘員に犯される。
そして一瞬の隙きを見て、レンがリコニスを人質にして、カエデとミドリコを逃がすのを条件に、一人拘束されるというイベント。
その後レンが公開洗脳ショーを受けて、救出に向かったカエデもミイラ取りがミイラよろしく、捕まって・・・。
そこからヘルブラッククロスの、日常改変からの侵略を始める。
それだけは絶対に阻止しないと行けない。彼女達が今、奴らに捕まったら何をされるかなんて、俺はもう想像したくない。
「こいつらを助ける為に、俺はここまで来たんだしな。失敗はできない・・・」
様々なイレギュラーとの戦いと、ゲーム通りのイベント。それらのよくわかんない敵との戦いも超えることが出来たんだし、今更失敗はしないし、失敗するつもりもない。
それと同時に、俺の頭の中では何かの不思議な感覚。今、まさしく未来が変わるような、未来への本来の道筋が変わっている様なあの感覚がずっと頭から離れない。
「必ず・・・成功させる・・・」
両手をキツく握りしめて、覚悟を決める。
「おーっす。ケーキ屋で何食べるか決まったのか?」
あとはいつもと同じ感じで接してあげれば・・・。
「ギンジ?どうしたのアンタ、顔怖いけど。一昨日の退魔教会の事、まだ怒ってるの?」
カエデの言葉はたまに鋭い所を突いてくる。怒っている訳じゃないんだけど、顔はやばかったかも。
「なぁ、皆聞いてくれ」
嘘をついてもしょうがない。楽しい空気に水を刺す様で申し訳ないけど、俺はこれから起こる襲撃について説明しようと思う。
「今日は、俺の知ってる未来の日だ。恐らく、いや、必ず。必ずヘルブラッククロスの襲撃が来る日だ。言いづらいけど、レン」
少し威圧してしまったかも知れないけど、俺は仲間の一人に声をかける。
「もしピンチになっても、決して一人で行動しないでくれよな」
「・・・解った。襲撃の内容については、知っているの?」
もちろん知っている。だけど、それについてはある作戦を考えている。
「ああ、知ってる。だけど、レンが一番戦いづらい相手かもな。だから、そっちは俺に任せてくれ。それから、カエデ」
「何よギンジ」
ケーキの雑誌に目を通しながら、カエデは俺と眼が合う。やっぱりゲームと同じで、顔が可愛い。
そこはまあいいとして、俺は今回の襲撃において重要な事を話す。
「お前は何があっても、俺が指示するまでは絶対に変身するなよ・・・」
「はぁ?そんなんじゃ戦えないじゃない」
「いいんだ。戦わなくても、遅かれ早かれ戦う事にはなるかもだし、あとなんと言っても、お前ばかりダメージを追うのもな・・・」
いくらスーツに守られていると言っても、そのスーツの動きを止めるマシンとの戦いはいくらなんでも不利に見えるし、そのまま戦闘員達に囲まれるのも可愛そうだ。
だから俺がぶっ壊すンだけどね。
「な、ば、べ別に、ダメージの事を心配されても・・・」
「ダメージだけじゃない。精神的にも俺はお前たちの戦いが心配になるぜ」
「それは君も、だろうギンジ?」
うっ。教会で怒り狂った時に、ミドリコにたしなめられたが、そうだったな。心配してるのは俺だけじゃないしな。
「ふーん、心配してくれてるんだ・・・」
あれ?なんかカエデさんいつもと反応違くない?なんか怖いんだけど。
「それで、ギンジ。私はどうしたらいい?」
「ミドリコはいつもと同じで後方支援だ。三人で固まって行動するのは、今日に限り無しだ。お前には俺がついてるから、上空からも不意打ちにも全部俺が対応する。背中は守るさ」
「・・・ありがとう。了解した」
やけに素直だな。あとなんか一瞬眼を見開いたけど、なんか悪い事言った?
「それはそうと、ヘルブラッククロスはどこから襲撃してくるの?」
詳細な場所もちゃんと教えないとな。
「これからお前たちが行こうとしてた所・・・繁華街のケーキ屋さんだぜ」
楽しい空気をぶち壊してホントすまんなんだけど、もう少しだけこの運命の日を超える為に協力して欲しいぜ。
それにこのイベントを乗り越えれば、きっと未来は変わる。
未来・・・。未来か。
なんだろうなぁ、この不思議な感覚。
前に学校が襲撃された日も、こういう感覚に襲われたしな。今日は起きてからなんかずっとこーゆーのが頭の中で渦を巻いている気分だ。気持ちわりい。
「詳しい事は省くが、俺は目的地に先に突入するぜ。その後はミドリコの援護にまわる。んで、ヘルブラッククロスが繁華街に出てきてからが本番戦・・・つまり戦闘が始まる」
俺の話しに三人の美女が硬唾でも飲み込むのか、神妙な顔つきをしている。まぁ、こんな話しをしたらそうなるだろうな。
「ほら、いつでも戦闘の準備はしとけよ」
「あんたこそヘマしないでよ、ギンジ」
言われるまでもねーやそんな事。
俺たちは昼前にカエデハウスを出ると、不思議な感覚に見舞われながらも繁華街へと向かう。
どんなイレギュラーが来ても、全部跳ね返してやらぁ。
なんでもかかってこい。俺は、俺達は必ず勝つ。
ヘヴンホワイティネスの、輝かしい未来を手に入れる為に。
ヘヴンホワイティネス・完。正義よ、永遠であれ〜。みたいな。
そもそも大元のヘルブラッククロスを倒していないのに、そんな事にはならんだろうけどな。
「何ニヤニヤしてんの?」
くだらない事を考えてると、俺の隣を歩くカエデが、肘で小突いて来る。絶妙に力強いよ、お前。
「いいや。この先の難関を超えたら、全員で7月を迎えられるンだなって、思ってさ」
ここまで全員無事で(主に貞操)ここまで来れたのが素直に嬉しいよ、俺は。
身体張って来てよかったよ、ホント。
「ふーん?まぁ、あんたが楽しいならなんでもいいわ。あ、ケーキ食べるのはアンタは抜きだからね」
「ええ?」
さも当たり前でしょ?みたいな顔で軽く言ってくれるな。俺もケーキ食べたかったなー。
「変わりに、昼ごはんはギンジ一人で食べてきていいぞ。お金は昨日渡しただろ?」
財布はないから、五千円札をそのまま手渡されたが、高校生の小遣いかよって思ったけど、昼飯ぐらいならまぁこれでいいか。
「なんで俺だけ一人飯・・・あぁ、暇ならサクラでも誘うか」
「サクラ・・・?誰よそれ」
「ギンジ、君は一体どこまで女性と交友があるのか、聴かせてもらいたいな・・・」
「ギンジ、意外と女タラシ説、無い?」
なんだなんだこの人らは。サクラってのはレイナと一緒に戦ってくれた魔法少女様だぞ。
カエデの目つきが鋭いし、ミドリコはナイフを光に当てて、「よし」とかつぶやいている。こえーよ、なんなんだよ。
「なぁレン、なんか俺気に触る事でもしたかな」
「・・・ふふ、多分・・・」
なんだよ多分って。
「ま、なんでも良いわ。行くわよ、皆」
カエデがニッと笑うと、住宅街エリアを抜けていく。
そして目の前に広がるのは、繁華街。相変わらず活気のある人混みに、なんだか久しぶりにここに来た気分だ。
これはあの台詞を言うべきだな、転生前に一時期流行ったネットミーム!!
「テーマパークに来たみた・・・「あ、ギンジ見てみて、アレ!」
カエデが興奮気味に俺の言葉にかぶせて来る。
こんなかぶられ方したの初めてだよ。
「なんだ・・・?」
カエデの指差す先は、今流行のケーキ屋さん。先程カエデハウスで読んでいた、ケーキの雑誌のお店。
メッチャー・ゲボウマー。それがお店の名前なんだが、何語だ・・・?
あ、めっちゃゲボ美味い・・・か?んー食欲の沸かない名前だな。
でもこのお店に並ぶ女性達は全然気にしていないな。女ってたまにわからん。
「さて・・・」
本来の目的ならケーキを食べるだけ・・・なのだが、これから俺たちの運命の戦いが始まる。運命の戦いとか言ってるのは俺だけだけどね。
でも、実際運命・・・この日本の運命も、カエデ達の運命にも、そしてこの世界の未来にも、全て今日この日がかかってる。
少し先に眼を向けると、カエデ達がやる気を見せている。
その負ける気がない、という余裕故か、笑顔で話し続ける三人に、俺はこの子達が泣かないで生きていける未来を、心のそこから守りたいと思った。
戦いに出るっていうのに、呑気なもんだぜ。俺がそんな事考えるなんてな。
それぞれの配置場所に向かう為に、俺達は行動を開始する。
きっとマシンを壊せさえすれば、俺たちは今日も勝てる。イレギュラーがあっても、勝てる。なにがなんでも勝てる。
負けるつもりでここには来ていない、今日までダテに戦ってない。
「絶対勝とうな」
「当たり前よ」
「もちろん、勝つ。奴らの好きには、させない」
「私も最大限援護する。行こう、皆」
俺たちの運命の日の、運命の戦いが始まった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数時間前。時間的には早朝。
ヘルブラッククロスの研究室に長い机が置かれる。
そしてそこには、それぞれ紫、オーク怪人、タコの怪人、ハーフムーンの二人、サキュバスの怪人、剣士の怪人、女性戦闘員達が座って、ミヤコの登場を待っていた。
「流石ミヤコの精鋭達ね〜。私を呼び出しておいて席すら用意してないなんて・・・」
少し離れた場所で壁に寄りかかりながら、リコニスがつまんなそうに口を開く。
ドクターミヤコはバカ。そしてその部下もバカ。そういった意味合いを持つ、リコニスの言う【流石】の言葉に、紫のお面に苛立ちが見て取れる様になる。
「アハハハ、ごめんなさいね〜?おバカの紫ちゃんには、こんなんでも煽りになるのかしら〜?」
「相変わらず協調性の無い女だな・・・」
ため息混じりの紫の言葉に、オーク怪人も鼻を鳴らす。
どうにもミヤコ派の人材は、同じ大幹部のリコニスとはウマが合わないようで、一色即発の空気が流れる。
「よしなよ、あーしら別にヤリ合う為にここに集まったワケじゃないんしょ?」
やすりで爪をこすりながらサキュバスの怪人が、爪に一息吹きかける。
綺麗に整った爪を見て、サキュバスの怪人が研究室の扉に眼をやる。
腕組みをしながら眠る様な姿勢の剣士の怪人も、瞳を開くとサキュバスと同じ様に、扉を凝視する。
決まった一定のリズムの足音。主の気配。迎え入れるべき母なる存在の到着。
「ドクターのお越しだ」
オーク怪人が席を立つとこの研究室の扉を開く。
そして登場する、ドクターミヤコ。
相変わらずサイズの合っていない白衣に、黒もがかったセーラー服。
メガネに反射する光の奥で、その眼の怪しさを際立たせる。
暗く奈落よりも深い闇の色を宿した、ミヤコの瞳。
ミヤコが会議机に近づくと、オーク怪人が先に椅子を引き、彼女が座りやすい様に適切な行動を行う。そのままオーク怪人は座らずに、ミヤコの斜め後ろに立つ。
「同じ大幹部なんだから、君も座りなよ、オーク」
「ブヒ。立場は対等・・・というのもおこがましいですが、私はいうなれば後輩です。偉大なる先輩がの為に補佐をさせてください」
丁寧に、対等な立場であっても礼儀をわきまえるのが、このオーク怪人だ。
いつもこうやってドクターを支えて来た。だから今回もこうやって補佐をする係を、自ら申し出る。
それが生きがいでもあり、自分の存在意義として疑わないからだ。
「じゃあ、私はここに座ろ」
空いた席にリコニスが態度悪く座り始める。
向かい合わせのハーフムーン、その両月コンビと呼ばれている双子の姉妹の妹、フルムーンと眼が合うとリコニスはにんまり笑顔になる。
その笑顔は非常に悪辣で、見えない悪が奥に隠れている様な表情に、フルムーンは背筋が寒くなる。
「お、お姉ちゃン。あの人怖いヨ」
「フッ、大丈夫よ、ワタシも怖いから」
ミヤコが各員の手元に書類を配るように、オーク怪人に命じると、無言で頷き今回の作戦の資料が全員に配られる。
「さて・・・本日、6月28日の重大な任務について説明するよ」
ドクターミヤコが開口すると、椅子に座る全ての怪人、戦闘員、リコニスも一斉にミヤコの方へ視線を集める。
「作戦名は、進化の怪人奪還。・・・今から内容を説明するね」
進化の怪人。それは佐久間ギンジの組織名。
その存在を知るこの場の人物達は、その怪人の名前の入った作戦に、いよいよかと思い思いに微笑を浮かべる者が現れ始める。
リコニスもその作戦名を聞いて、ニヤリと悪魔の本性をむき出しにした笑みを浮かべる。
「奪還・・・ってことは、ヘヴンホワイティネスとも戦うのかしら?」
リコニスの挙手の無いいきなりの質問に、ミヤコは悪の形に微笑む。
「そうだね。憎き怨敵、ヘヴンホワイティネスとも戦う。できれば満身創痍で連れて帰りたいけど、それが無理なら、殺してもいいよ」
軽々しく言い放つドクターミヤコの言葉に、リコニスは再び悪魔の、いや悪魔を超えて死神の宿る様な笑顔になる。
「今回は、ほとんどの行動を女性戦闘員達に任せて、オークは陣頭指揮、サキュバス、剣士、タコは直接ギンジ君の妨害に入ってほしいな」
一番はとにかくギンジ。彼を捕まえる事が目的になる。あわよくばヘヴンホワイティネスの捕獲。
「ブヒ。そのために工作員を手配し、繁華街に例の洗脳マシンをセッティングをしている。おそらくギンジはこれを破壊して回る可能性が高い」
「くふふ、そうだね。彼は、本当に予想外も行動の連続・・・そこが好きなんだけど」
ヘルブラッククロスへと謀反を起こした問題児、佐久間ギンジ。
様々な作戦への先回り、妨害、任務内容の把握。とても彼だけでやられたとは思えない。
先んじて作戦の内容を知っていないとできない事も、ギンジの知らない怪人をぶつけても彼らは壁を乗り越えてくる。
しかし、ヘヴンホワイティネスに彼が参入した事で、ミヤコの立ち位置が危うくなったり、フェーズ2のバーナー怪人を失ったりしている。
本来予定していなかった、追加の作戦においてもコウモリの怪人を失い、思うように動けなくなったのも事実だ。
「さて、そんなギンジ君への対応だけど・・・」
再び全員の視線がミヤコに集まる。
「四肢を失わせても構わないわ。最終的にわたしの所に戻ってきてくれれば、それでいい。孤立した所を狙いなさい。その為にダミーのマシンも紛れ込ませてるしね」
ヘヴンホワイティネスへの洗脳マシンは実は用意していない。
用意しているのはギンジのDNAを入れた、対怪人洗脳マシン。これには一般市民にも通じる洗脳の波動を流しこむ。
とすればあの公安の女も上手く操れるだろうが、そっちには興味がない。
「ギンジの孤立を確認したら、すぐに作戦を開始する。この作戦は三人の大幹部の合同の作戦だ。諸君の働きにかかってる」
オーク怪人が中央に立ち、各人に使命を言い渡す。
「それじゃあ、行動を開始しましょう・・・くふふふふ」
ミヤコの笑い声が、研究室に反響してより悪としての側面を大きくしていく。
未来への歯車が大きく動きだしていく。
・・・・・・・・・・・・・・・・
昼。丁度12時を回る頃あいだろうか。
俺たちはそれぞれ作戦を開始していく。
カエデとレンはお店の中へ。すぐに出られる様に、変身しないで脱出をお願いしている。
ミドリコは俺と、店の外・・・向かいの建物の屋上でライフルを構えて貰っている。
そして俺は周りの警戒をしつつも、敵がいないことを確認したら、マシンの置いてある所へと動く。
「すぐに戻るぜ。常に、上と背後には警戒しておけよ」
「解った。ギンジも、無理はしないでくれ」
俺とミドリコが拳を軽くぶつけ、コウモリの羽でケーキ店の裏口へと回る。
「やっぱりか・・・」
裏口には、ヘルブラッククロスのパワードスーツに身を包んだ戦闘員達。店の中にはリコニスが居るはずだが、イレギュラーも想定しておかないといけないしな。一人だけ残して情報を集めよう。
「・・・あ、ギンジだ!」
「なんだと?げ、マジかよ」
多分路地裏に降りる俺は、光を背にして優雅に飛び立つ怪人にも見えるんだろうな。
「丁度いいぜバカ共。聞きたいことがあんだわ」
着地するやいなや、両手に溜めた電撃を放電すると、高圧電流に耐えられるわけない戦闘員達が、次々と倒れていく。
「うっ・・・」
一人だけ耐えた奴がいやがるな。じゃあこいつに聞こう。
首を抑え込み、壁に叩きつけると戦闘員の顔と身体を抑え込み、俺の右手で炎の球体を造り出す。脅しには十分だろう。
「お前ら、洗脳作戦でも企てたんだろうが、今回も阻止させてもらうぜ。ヘヴンホワイティネスはお前たちじゃ捕まえられないしな」
苦しいだろうがこのまま力は込めたままにする。途中で暴れられて逃げられたら嫌だしね。
「で、今回の作戦には、リコニスも一枚噛んでるんだろ」
「うぐ・・・ゲホ、我々は何も知らない。たしかにリコニス様は来ているが、それしか知らないんだ・・・」
「・・・作戦の内容は?」
「へ、ヘヴンホワイティネスの捕獲と聞いている・・・そ、それだけだ、本当だ」
どうやら嘘は言っていないな。と、すればリコニスとヘヴンホワイティネスが店内でおっ始めたら面倒だな。
これは早い所洗脳マシンを壊さないと。
「今回の作戦の要である洗脳マシンはどこにあるんだ?」
戦闘員は苦し紛れか、それとも真実か、店内の方へ指を指す。
どっちにしたって店内かよ。バックルームにつながる所には多数の戦闘員と、リコニスが待ち構えている筈だ。
一度ミドリコ達に情報提供の為に戻るか・・・?
「ゲホ、頼む、もう離してくれ。まだ死にたくない」
「ああ、悪かった・・・な!」
最後にみぞおちを狙って殴る。気絶したこいつをその場に落とすと、俺は再び空を飛ぶ。
「ギンジ、何か収穫はあったか?」
「店内にマシンがあるんだとよ。一度カエデとレンをこっちに戻せ」
屋上で警戒しながらもミドリコは二人に連絡をしてくれている。
『わかったー直ぐに戻るわ』
『同意。嫌な気配が、漂ってる』
レンの言う嫌な気配ってのは、間違いなくリコニスのことだろうな。俺もあいつキャラクターとしては好きだけど、いざ実際に対面したら憎悪が湧いた。
「ギンジ・・・?」
多分俺のが苦虫潰した顔にでもなっていたんだろうか、ミドリコが心配そうな顔をする。
「大丈夫だ。ちょっとバーナーの怪人の事を、思い出したんだ」
「そうか・・・思い詰めないで、な」
「ありがとうよ」
こういう時一人だったら、なんもかんも有耶無耶になるんだろうけど、ミドリコみたいに常に冷静な奴がいると助かるぜ。
「ここに居たのね」
カエデ達が一瞬変身したのか、ヘヴンスーツでミドリコと俺が待機する屋上に飛び越えてやってくる。
「俺が手に入れた情報を話そうと思うが、ひとまず冷静に聞いて欲しい」
洗脳マシンは店内に置いてある。
そしてそれはおそらくリコニスが守ってる。
あれを発動されたら俺たちは負ける。
「だから作戦を変更する」
「どういう事?」
カエデの目つきが鋭いよー、怖いよー。
「いいか、スーツに対応されてるって事はだ。お前たちへの対抗手段を戦闘以外で奴らが先に一枚上手になったって事だ」
「悔しいけど、ギンジの言うとおり。だけど、それと、作戦の変更について、どうなるの?」
「お前たちはこれからケーキ食べたいだろ?で、俺も事がすんだら一人で飯を食わされるんだ。そして洗脳マシンを破壊するには、外側でひと悶着起こさないと行けないわけだ」
出来ることならこいつらの幸せの時間を、俺は極力守ってあげたい。
やることは一つしかないんだ。今回においては洗脳マシンの破壊、及びリコニスの撃退、ないしは撃破。
あれ?やること2つあるじゃん。まぁいいか。
「で、一般市民も怪我をさせず、お前らが無事にケーキを食べる手段も俺は考えたのよ」
「解らないな。君は何をするつもりなんだ。追加の怪人だって確認できていないのに、どうやって・・・」
ミドリコの言うことにレンが頷き、カエデは俺を鋭い視線で見つめてくる。
「いるだろ。怪人ならここに。人間でもあり、怪人の俺なら、ヘルブラッククロスに変わって騒動に発展させられるぜ」
「つまり、あんたが店内にいる人達を追い出し、ヘルブラッククロスもおびき出すって事かしら?」
「そゆこと。流石口の悪いお嬢様。物分りが良くて助かっちゃうな」
「怪人様に褒めていただけるなんてとても光栄ですわ。このバカ」
少し煽ったらすぐこれだもんな。お嬢様仕草は可愛いのにもったいない。
「で、ギンジが騒動を起こして、おびき寄せたら君はどうするんだい?」
「その後は・・・」
俺が裏に周り洗脳マシンをぶっ壊す。
やることは単純なんだ。それでいいんだ。
「後は、俺がうまいことやっとくさ。心配すんなって」
この時もまだあの不思議な感覚が、俺の脳内にこびりついたままだが、それでも来るトコまで来たんだし、やるしかないさ。
「ホラホラ、始めるぞ」
「え?もう?」
「当たり前だぜ」
カエデの言葉に俺は直ぐに行動を開始する。
滑空し、顔を炎で隠し、燃えるコウモリの怪人として、ヘルブラッククロスを釣る餌となる。
「あーあ行っちゃった・・・こうなったら仕方ないわね。レン、ミドリコ!やろう!」
「同意。頑張ろう、カエデ、ミドリコ」
「頼んだよ、カエデ、レン」
俺たちの運命を決定つける様な戦いは、この時から既に違った方向に進んでいる事を、全く疑っていなかった。
俺たちは絶対勝てると信じていた。
なのに・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
金属が激しく擦れる音がなると火花が散る。
下では、カエデとレンが戦闘を開始した。
見事にギンジの言うとおりに、ヘルブラッククロスの面々が沢山店内から出てきた。
ここまでは彼の目論見通り。
さて、私はと言うと、カエデ、レン、ギンジに先行してもらい、屋上で常に戦況を見守る。
私、甘白ミドリコだけが出来る戦い、後方支援。銃を多様に操り、敵への威嚇射撃、戦況の報告、そして対怪人用の弾丸を用いた狙撃。
ロケットランチャーも使いたいが、ここから撃つのでは街への被害も大きくなる。
戦闘において重要な事は2つある。
一つは、常に彼女たち二人へと迫りくる、襲撃や攻撃をいち早く察知し伝える事。
二つ目は私が迷わない事。
特に二つ目が非常に重要だ。私とて、人間。戦闘員を撃つことを躊躇ってカエデ達がピンチになることもあった。
ギンジの事を言えないかもしれないが、私も正義の為にこの引き金を何度も引いて来た。
きっと一人だったら、罪悪感に押し潰されて死んでいたかもしれない。
「上手くやれよ、ギンジ・・・」
私はそう祈ると、再びスコープ越しに戦況を見守り、要所要所で引き金を引く事に集中する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ギンジの行動はたまに大胆。たまに消極的。
それが最近の私の中の印象。
佐久間ギンジ。ヘルブラッククロスの怪人でありながら、未来人である私、こと宮寺レンと同じ未来を知っている不思議な存在。
彼の言うことなら、この先に起こることを信用出来ていけるような気がしていた。
ギンジの暴走の演技に私達が付き合うと、早々にカエデがギンジを上空へと突き飛ばす。
騒ぎを聞きつけたヘルブラッククロスが、店内から踊り出てくる。
「あーれれ、ヘヴンホワイティネスじゃない・・・久しぶり〜」
「・・・貴女は」
黄金の鎧を身にまとった妖艶・・・というのが正しいのか、不思議な衣装を身にまとう大幹部リコニスが出てくる。
もう刀を引き抜いている辺り、私達の事はバレていたのかな。
「ギンジちゃんが余計なことしてくれたせいで、大変な事になっちゃった〜。あんたらで償ってもらおうかな」
「あんたこそ罪の無い一般市民を巻き込もうとして、恥ずかしくないの?それとギンジちゃんて呼ぶのやめくれないかしら」
そこはどうでもいいよ、カエデ。
「なんで〜?別に私がギンジちゃんを何て予呼ぼうが私の勝手じゃない?」
それもそうだと思うけど、そこもどうでもいい。
「なんかムカつくのよ!」
「アハッ、急にやる気になっちゃって・・・!いいわ、久しぶりにまたイジメてあげる!」
カエデが先に突撃する。新しく進化したスーツの力出、今度こそこいつを倒す。
でも、私には他にやることができたみたい。
辺りを見渡すと、戦闘員達が、私を取囲もうとしていた。
「今日こそ倒してやるぜ、ヘヴンホワイティネス!」
「それ、ザコの台詞、ってギンジが言ってた」
一斉に襲いかかる戦闘員達を前に私はビーム剣を展開すると、すぐに斬り伏せていく。
「ヘヴン1の、邪魔は、させない。退いて」
一度に複数人倒すだけではこいつらは止まらない。
その呆れた戦闘意欲だけは、認めるけど、私達に今の戦闘員じゃ勝てない。
「邪魔」
新しいビーム剣の力、ここでも発揮していく。
私の新しい力・・・シルヴァが託してくれた私の力。
正義と平和の為の力。
そしてなにより、ケイタを守る力だから。
敗けられないし、退けない戦いの為の力。
黒い絨毯とも呼べる戦闘員達が舞い上がり、私に襲いかかってくる。
「この力、惜しまない。ビーム剣術─」
ビーム剣に力を込めて、本気で戦う。もう恐れない為に、みんなでケーキを食べるために。
そして明日もケイタと一緒に居るために。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
よしよし。奴らにバレない様に上に飛ばせ!って叫んで良かったぜ。
これなら難なく洗脳マシンをぶっ壊せるぜ。
ほら、店内はもぬけのから。
俺の作戦の勝ちだな。
「・・・」
しかし妙だな。上手く事が進んでいるのにも関わらず、手薄での襲撃だったのか?
あーまぁ考えてもしかたないな。洗脳マシンは目の前にあるんだし、ぶっ壊しちまおう。
うーんと頭を撚ると、真後ろから俺を覆い尽くす影が、俺の視界に広がる。
「・・・!」
鈍器の様な、力強い何かでぶん殴られそうになった。
殺気を感じて俺は、背後からの攻撃を上手く避けると、洗脳マシンを背に、俺は立ち直る。
「テメェは・・・」
「久しぶりだな、ギンジ、いや進化の怪人」
軍服、軍靴、軍帽。
体格の良い身体に、太っていながらも全身筋肉で鍛えあげられた豚顔の怪人。
オーク怪人が現れた・・・。
最悪だ。こいつ頭いいから苦手なんだよ。
しかも設定じゃ常に任務の際は次の一手を考えながら戦う、怪人としては最強の男。
そして俺の転生したこの世界においても、名実共に最強・・・。
間違いなくこいつは強い。戦うことも、女を自分の物として扱うのも上手い。
「ドクターの下を離れてからは、色々とやってくれたな。あれから元気だったか?」
こいつの気遣いしてくれる所、嫌いじゃないけど、これが返ってやりづらさを感じさせる。
「ギンジ。ドクターはお前の事を信じている。もちろん私もだ」
「そうかい。そりゃどうも。で、こんなトコで何してんだ?まさか俺の邪魔しに来たわけじゃないよな?」
「クックック・・・邪魔、か。本当に邪魔をしに来ただけだと思うかね」
思ってたけど、なんかその言い方だと違うっぽいな。俺はなんだか逃げたくなってきた。
「聞け、ギンジ」
軍帽を直すとオーク怪人は、俺の目を真っ直ぐ見る。
「我々ヘルブラッククロスはお前を連れ戻しに来た」
言うと思ったぜ。答えは断固拒否だけどな。
「俺を連れ戻して何しようってんだ?」
「くっふっふ・・・それは貴方自身が良く解っているのでは?」
オーク怪人の裏からもう一人怪人が現れる。この笑い方と、口ぶりは・・・。
「お久しぶりですね・・・佐久間ギンジ。相変わらずの様で安心いたしました」
剣士の怪人・・・。
「あーめっちゃ動揺してるーかわいいー」
俺と洗脳マシンの間に、ヌッと現れ、ギャルみたいな奴が俺の横顔に手を添える。
「な・・・」
もう一人の怪人。ゲームに登場しないイレギュラーか!
「こうして会うのは初めてだっけ?あーしサキュバス。しくよろ」
いかにもなギャルのピースサインを作りながら、俺の目の前でまた怪人が現れていた。
サキュバスの怪人、剣士の怪人、そしてオーク怪人。
洗脳マシンは目と鼻の先なのに、ものすごく距離が遠く感じた。
店外では喧騒と激しい戦闘音。
マズイ・・・。こんなに怪人が来ているなんて。
しかもどうやら俺がここに居る事、洗脳マシンを壊す事を知っていた、もしくは解っていた・・・みたいな・・・?
作戦変更だ・・・。ここで暴れる。ソレしか無い。もっと言うと、リコニスを抑えながら、怪人との相手をカエデ達がどこまで出来るか。
・・・。色々と今の一瞬で考えたが、一つだけハッキリしている。
「『こんな狭い所では戦えないから、天井を破壊して脱出しよう。』か?」
!?
今オークの奴なんて言った・・・?
「『なんで俺の考えてる事が解ったんだこいつ』・・・解るさ」
ニヒルに笑うオーク怪人の笑顔に俺は「『寒気がした。』だろ?」
「あーたしかに。夏も近いのに、寒そうだね」
サキュバスの怪人の言葉に俺はいよいよ切羽詰まる。
俺の考えてる事がバレている。
「『この状況を打開する状況は・・・』無いぞ、ギンジ」
マズイ。本当にマズイ。洗脳マシンはもう壊さない。
とにかく、全力で、この場から「『逃げなければ』」
全て見透かされている。
「ギンジがヘヴンホワイティネスを逃がそうと、奮闘するぞ。少しだけ泳がせろ」
壁に向かって走り出した俺の後ろで、オーク怪人が笑っているのだろうか。
クソ、クソ、クソクソクソ!
全部こいつは知っていたんだ。
だからこんな不自然な形でイレギュラー展開になった。
壁を破壊して、表通りに出る。
「あ〜ギンジちゃんだ・・・おひさっ」
リコニス・・・!
でも今は戦っている場合じゃない。
「カエデ、レン!作戦失敗だ!逃げるぞ!」
「ハァ?嘘でしょ?」
「冗談じゃねぇ!早く行くぞ」
「ギンジ、何があったの?」
カエデもレンもとにかく俺の言うことを聞いてくれ。
二人の腕を引っ張ると、背中に何かが入り込んでくる感覚。
それは体内に侵入すると、やがで俺の腹から突き出てくる。
「ひっ・・・!?」
カエデの青ざめた顔。なんだよそんな嫌な顔すんなよ。
突き出た物が何かはすぐに解った。俺の後ろにいるのはリコニスだもんな。
血を纏わせた黄金の刀。それは俺に痛いとか、苦しいとかそういう感覚を持たせなかった。
何処を刺せばどうなるか、こいつは知っている。
きっと冷静になったら、すっげー痛いと思う。
「駄目だよ〜。せっかく楽しくなってきたのに逃げるなんて〜。それともギンジちゃんだけ残ってくれるの?」
「ギンジ!」
レンがリコニスにビーム剣を振るうも、それは当たらずに避けられる。
刀が抜けると、出血が酷くドバドバと出てくる。
でもって戦闘員達はこんな状況で襲ってくる。
それらをカエデがぶっ飛ばして、俺も空を飛ぶ為に羽を展開させる。
「捕まれ!」
飛ぶ瞬間に羽を何かが貫通する。
ハートの形にくり抜かれ、あるはずのない背中のどこかに痛みが走る。
それでもなんとか飛ぶことに成功する。
向かう場所はミドリコの待機する場所。
「ギンジ、無茶は、やめて。死ぬ」
「あんたバカじゃないの!降ろしなさいよ!」
「このまま地上で逃げても、いずれ全員捕まる。ゲホ、いいか、今からお前らをミドリコのところまで投げ飛ばす。俺も後で必ず追いつく・・・」
「それじゃ、ギンジが囮になる、そんな言い方・・・」
レンの言葉でカエデの顔が真っ青になる。
「頼む、そんな顔すんなよ。死ぬわけじゃないし」
〈大好きな人たち〉の一人にこんな顔させるなんて、俺はヘヴンホワイティネスのファン失格かな。
「オーク怪人が裏で全部、こうなることを解ってた。お前たちはケイタとその家族を保護しろ」
「な、あんたは」
「いいから言ったとおりにしろ!この繁華街をぶっ壊してでも、必ず追いつく!皆で逃げろ!」
あれだけの怪人の数と、どこに潜伏しているか解らない戦闘員達。
加えて俺の今の怪我。
もうあんまり羽に力が入らない。
頼むから言うことを聞いてくれ。
「その、【皆の中】に、ギンジはいるの?自分はいるの?」
「ゲホ・・・当たり前だろ。俺もヘヴンホワイティネスだぜ・・・」
やがてミドリコの居る所まで見えてきた。
ここなら・・・。
「俺を踏み台にして、ミドリコと合流しろ!行け!」
両腕に力を込めて俺は二人を投げる。俺の手を蹴るように、カエデとレンはミドリコの待機する屋上へと上手く着地してくれた。
「ギンジ!何があった、大丈夫か!」
「詳しい事は、カエデに聞いてくれ。俺は足止めに戻る!早く逃げろ!孤立せずに、全員固まってとにかくアジトまで逃げろ!」
「待って、ギンジ・・・!待ってぇ・・・!」
カエデの悲痛の叫び。それを聴くと本当に申し訳なくなる。
今だけはそれにかまっている場合じゃない。
急いで下に降りると、リコニス、サキュバス、剣士の怪人に、戦闘員達。
その後ろでオークの奴が俺を睨む。
「俺が仲間を逃がすまで、律儀に待っててくれたのか?」
「そんな訳ないだろう。ヘヴンホワイティネスも確保する。今、そんな状態のギンジ一人で、我々を倒せると思うのかね?」
クソ。本当に嫌な状況だぜ。
ん?俺じゃなく、ヘヴンホワイティネスも捕まえるのか?
・・・。
「理解したようだな。この繁華街をヘルブラッククロスが囲んでいる。逃げる先はおそらく北口から、だろうな」
そんな事まで解ってるのかよ。きついな、この状況。
「行かせねぇよ・・・!」
火柱を背後に立てると、それらがビルの屋上まで伸びる。
俺が最後の壁だ。
「死にたくないなら降伏しなよ・・・ギンジちゃ〜ん?」
「なるべく綺麗な状態で連れていきたい。ドクターの為にも、ここで貴方を捕まえる」
「キャハハハ。まだ抵抗の意思が消えてないみたいだし、もう少し痛めつけてあげよっか?」
各々好き勝手言いやがって。
つまり、目的はヘヴンホワイティネスを捕まえて、あわよくば俺を連れ戻すってことか・・・。
「いいや違うぞ、ギンジ。ブヒ」
またこいつは、俺の思ってる事を言い当てやがる。
「我々の目的は、貴様だ、ギンジ」
「そうそう、ヘヴンホワイティネスはついでよ、つ・い・で」
リコニスが俺の血で濡れた刀を、三日月みたいな口で俺に向けてくる。
「だが、どちらも逃がすつもりは無いがな」
まただ。イレギュラーの展開になるのかよ。
・・・。
イレギュラー?
まさか、この不思議な感覚・・・。
未来が今まさに、変わろうとしているかの様な不思議な感覚。
未来が変わる要因は、必ず敵側の方に問題があるとばかり思っていた。
でも違った。
この世界におけるゲームの展開が変わるイレギュラーの要因。
俺自身がそのイレギュラーだったのか・・・?
俺が居たことで未来が変わったんだ。俺が居る事で、敵の作戦は失敗し続ける。
そうなればヘヴンホワイティネスの未来が、変わっていくのは必然。
イレギュラーだからやり方を変えるじゃない、イレギュラーが俺だからこそ、展開が変わってたのか・・・!
俺がこの世界に居たからこそ、未来が変わってるんだ・・・。
【今】という未来が・・・。
「・・・覚悟決めてやるしかねぇな」
こんだけの数と、背中と腹の穴。
もう少し踏ん張らんと、あいつらが逃げられねぇ・・・。
今になって身体に走る激痛と、目の前の敵達。それらとこれから戦わないと行けないなんて、怪人冥利に尽きる思いだぜ。
「行くぞ、ギンジ・・・!」
「かかって来いよ、バカ共・・・!」
嗚呼。皆無事に逃げてくれよ。頼むぜ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日の予定ではあたし達は、本当はケーキなんか食べなかった。
いや、食べたかったけど。そうじゃなくて、食べるつもりはなかった。
でもギンジを孤立させるにはこれしかないって思ってたからかな、少し仲間はずれみたいな扱いしちゃった事を、今はものすごく後悔してる。
本当はギンジが好きだって言ってた、ハンバーグを作ってあげたいと思ってた。
そして正式にヘヴンホワイティネスの仲間として、歓迎会も開いてあげたかった。
だからギンジを一度だけ追い出す予定だったのに、あいつらのせいで予定が全部めちゃくちゃよ!
繁華街を抜ける為にあたし達は走ってるけど、通路には誰も居ない。
洗脳マシンとかが発動しているのかな。あいつらの事だから、きっとまた酷い事をしているに違いないわ。
いいや、正確には人はいる。居るけど、あたし達を居ない者として認識させられている。
「居たぞ、ヘヴンホワイティネスだ。チワワ、前に出る」
あれは・・・。ボディビルダーみたいな立派な筋肉、そして頭がチワワの顔をした犬の怪人。
「退きなさいよ!今からギンジを助けに戻るんだから!」
「カエデ、待つんだ!」
ミドリコが青い手榴弾を犬の怪人と、後から出てくる戦闘員達に投げると、眩い閃光が迸る。
「こっちだ!」
ミドリコが指を指している路地裏に、あたしとレンは駆け込む。
「カエデ、レン。ちゃんと良く聞いてくれ」
ミドリコの顔が泣きそうになってる。
レンも、あたしも、きっと今はまともに落ち着いてられないと思う。
「後ろを気にしていては、前に進めない。ギンジの事は自分に任せて、私達は早く撤退しよう」
なっ・・・。
「見殺しにするって言うわけ!?」
「違う!」
ミドリコの瞳に涙が浮かんでる。
何よ、あたしだって泣きたいわよ。
「・・・ギンジが私達に後を託したんだ。そしてこの状況。どうみても私達が不利だ」
曇る空を見上げて、ミドリコは会話を続ける。
「ギンジがどうして私を【上に】立たせているかわかるか?」
・・・。答えが出ない。
「それは私が常に戦況の確認をギンジに任せてもらっているから、だよ。今までは敵と遭遇したら、戦わないといけないと思っていた。一般市民を守るために、逃げちゃ駄目だと、私も自分に言い聞かせていたよ」
レンも泣きそうな顔をしてる。
「いつか、ギンジに聞いたことあるんだ。我々三人の内、誰か一人でも孤立したら・・・その後は一気に敗北へと話が進んでいくと」
「最初に孤立したのは、私だって、聞いた」
「その次はあたしが、ヘルブラッククロスに連れ攫われる、って聞いてたわ」
「そして今回はどういう訳か、私達全員を狙っているようだ。この意味が解るか・・・我々は今チェックの状態だ。ここで正義の灯火を私は絶やしたくない」
正義。それがあたし達の戦う理由。
それはそうだと解っていても、ギンジを、仲間を、見捨てて逃げるなんて・・・。
「カエデ。君の正義感をちゃんと知っているし、解っているつもりだ。仲間を見殺しには出来ない、というのは本当によくわかる」
「だけど、ここでギンジを、助けに戻って、道連れになったら・・・」
「全滅ね・・・」
うう。こんなの嫌だ。あいつらに良いように出し抜かれて、それでギンジが一人だけ取り残されて、さらに出血だってひどかったのに。
「それに・・・言っていただろ・・・後で必ず、追いつくって・・・」
「ミドリコ、泣かないで・・・私も、その言葉を信じる、から」
「・・・」
あたしの中で、菜箸みたいなもので、感情の何もかもが巻きこまれて、ぐにゃりと混ぜられて捨てる様な感覚に、膝から崩れそうになる。
自分でも考えてなかった。ギンジは本当に必要な仲間だったんだって、こんな状況になってから気づく。
「ギンジを助けに戻りたいのは、皆一緒だ。だけど今は全滅しない様に逃げる事が重要なんだ」
ミドリコが泣いた所なんて初めて見た。そして私も今、多分、涙を流してる。
ギンジがピンチな状況になってる事を、怖く感じる。あいつが側に居ないことが、寂しくて、それでいて不安になりそう。
「ねぇ、ミドリコ、レン・・・」
あたしは腕で涙を脱ぐ去り、二人に一つだけ聞きたい事を聞いてみる事にする。
「もしも・・・ギンジが捕まったりしたら、あたしは助けるわ。一緒に来てくれる・・・?」
「あたし『は』なんて、言い方しないで、カエデ。私も一緒に行く」
「もちろんだ。彼は私達の仲間なんだ。必ず助けよう」
今この場でヘヴンホワイティネスであるあたし達は決断した。
間違いなくギンジはあの状況と、人数不利で捕まる筈。
必ず、仲間としてギンジを助けたい。
(・・・こんなに他人の事で悩むなんて、初めてかも)
それだけあたしがギンジの事を、意識してるってことなのかな。
「どこだー!ヘヴンホワイティネス!わんわんおー!」
犬の怪人があたし達を探して街で暴れてる。
「解ったわ、ミドリコ。今は皆で逃げましょう・・・」
「ありがとう、カエデ。本当は助けに戻りたいのは、私も一緒だ。いつでも帰ってきていいように、ハンバーグを作って待ってよう」
「同意。その時はみんなで、ご飯を食べよう」
三人一斉に手を出して、円陣を組む。
「私達のギンジを必ず助けるため、今は全力で逃げよう」
私【達】の、か。
もしかしたらミドリコもギンジ事、意識してるのかな・・・。
えーい、考えるのやめやめ!
とにかくギンジの言うとおり、逃げよう。
あたしは誰がなんと言おうと、追いつくに一票いれとくわよ。
早く帰ってきなさいよ、バカギンジ。
あんたの事を信じて待ってるんだから!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「アハハ、まだ頑張るね〜ギンジちゃ〜ん」
リコニスの刃と、剣士の怪人の凶刃。
それら同時の攻撃を避けると、今度はサキュバスの怪人の遠距離攻撃、それに連携される双子と思わしき少女の連携攻撃。
「クソ・・・げポッ・・・げぇええ・・・ハァハァ」
吐血。流石に貫通した身体で、激しい戦闘は厳しい。
身体にかかる負荷も考えると、このままでは死ぬ。
「血が止まらんな・・・大丈夫かギンジ?」
「テメェ、絶対に心配してないだろ」
「お前が死ぬことは心配している。ドクターに元気な顔を見せてやれないではないか」
ギンジの身体の心配よりも、ドクターの心配をする辺りはやはり怪人と言ったところだろうか。
「怪人を無力化するこの武器で、お前を捕まえるから抵抗しないでヨ」
「フッ、どうせもうまともに動けないわよこいつ」
ハーフムーンの二人が、刺股の様な形状の、紫色の淡い光を放つ武器をギンジに向ける。
他の戦闘員も倒せる者は倒せるだけ、攻撃はした。
どうしても女性戦闘員だけは攻撃出来ず、その後のフォーメーションが女性戦闘員でのみ構成され始める。
ギンジを捕獲するためのスライムランチャー、怪人を無力化するという効果の武器。
そしてオーク怪人の的確な指示で、ギンジは防戦一方に立たされていた。
「ハァハァ・・・」
呼吸がまともに出来ない。苦しくて、血を失いすぎて、まともに思考が働かない。
想像も出来ない。
苦し紛れに文句言うぐらいしか無い。
逃げる事が目的だったが、羽は撃たれ飛べない。
炎ももう使えない。
「くぞ・・・」
後ろを向いても、戦闘員に囲まれている。
繁華街の交差点で、ギンジは絶体絶命になっていた。
(最後・・・これでもう二度と飛べなくてもいい。コウモリ、力を借りるぜ)
身体に力を込めると、吹き出す汗と血液が目に見えて解る。
このまま背中を引き裂き、コウモリの羽が生えてくる。力なく、糸を引く様に、弱々しくその羽を羽ばたかせる。
「オォ゛!」
コンクリートを踏み抜き、浮かんだアスファルトを盾に、ギンジは飛翔を行う。
「・・・!」
空を飛び撤退しようとした矢先に、そのギンジの真上にはサキュバスの怪人の姿。
「アハ、その顔マジウケる!」
人差し指と中指を唇に添えると、ハートの形をした巨大な塊がギンジの視界に埋め尽くされる。
「どけぇーーー!!」
ありったけの声量で、出せる全力で叫ぶと、炎もこれで最後と言わんばかりに発動させる。しかしこの炎の力も弱々しく、ハートのキャノン砲を破壊出来ても、サキュバスまでは届かない。
もう打つ手なしでも、ギンジはサキュバスを避けようと飛翔を繰り返す。
ビルの近くまでフラフラと飛ぶも、サキュバスは追いかけてこない。
「上、上、上」
サキュバスの怪人の人刺し指が上を向けている。
「済まないな、ギンジ。全てはドクターの為だ」
上からギンジめがけて落ちてきたのは、オーク怪人。
オーク怪人の膝がギンジの胸に命中すると、そのまま体重を乗せて急降下していく。
「終わりだギンジ」
低く、しかし確実に仕留めると言ったオーク怪人の声音に、抵抗の意思を示すギンジだが、次の瞬間には全身にかかる強い衝撃に、気を失う。
コンクリートに激突し、大の字にめり込むギンジの両手両足に、サキュバスのハートの矢が貫通し、固定される。
そしてそこへハーフムーンの二人が、ギンジの首へ刺股をかける。
「よくやった、これは全員のおかげだ」
オーク怪人の言葉に、この場にいる全てのヘルブラッククロスが、大喜びの狂喜乱舞を開始する。
「MVPは間違いなく私だよね〜。不意打ちで刺したの私だし?」
「くっふっふっ、ふざけた事を抜かさないでください。わたくしの怪人剣術が効いたのですよ」
「最終的に地面に固定したのウチだし」
「なんでもいい!ハーフムーン、首輪は完成したか?」
オーク怪人が三人の女性の言い合いを仲裁すると、両月コンビの刺股が首輪へと形状を変えて、棒から離れる。
怪人を無力化するドクターミヤコの最新兵器。万が一のミスが無いように、ギンジ以外の怪人には通用しないように設計した、対ギンジ専用決戦兵器。
「死んでないよネ?」
「フッ、なんでもいいわ。とにかくドクターの下へ連れて行くわよ」
女性戦闘員達がギンジを担ぎあげて、コンテナへと収容する。
「ドクターがあれみたらどんな顔するんだろ?」
「リコニス。余計な事はするなよ・・・?」
コンテナに収容されたギンジを、ヘルブラッククロスのトラックへと乗せられていく。
それを眺めながら、オーク怪人の隣でリコニスが悪魔の顔で笑みを作る。
その笑みを見る度に、両月コンビは悪寒が止まらなくなる。まるで本物の悪魔を見ているような、そんな気分と重なる。
「余計な事はしないわよ〜。ドクター次第だけど」
最後に一言低く呟くと、その言葉を聞き逃さなかった剣士の怪人が、剣を勢い強く引き抜き、リコニスに斬りかかる。
挑発したらそうなると解っていたからこそ、リコニスも刀を引き抜き、お互いの刃がぶつかる・・・。
事はなく、間にオーク怪人が立つ事で、お互いの攻撃が止まる。
「もうよせ。作戦は終わった。これよりアジトに戻るぞ」
雨が降ってくる。この雨は天国の悲しみなのか、はたまた地獄への歓喜の雨だろうか。
いずれにせよ、ヘヴンホワイティネス・佐久間ギンジは敗北し、捕獲された。
「ああ、そうだ。忘れていた」
オークは手元にある洗脳マシンのスイッチをオフにする。
「あと数時間もすれば、この街の洗脳も解けるだろう」
鼻を鳴らしながら言うと、端末を部下に手渡し、ヘルブラッククロスの面々はアジトへと帰還する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
絶望。
そういっても差し支えない空気が、カエデハウスに漂っていた。
ミドリコは髪をほどき、降ろした状態で頭を抱えている。
カエデもぼーっと天井を眺めている。
レンはケイタと隣同士で座り、何も喋らない。
ケイタの家族は出張中との事で、ケイタ一人だけは敵に捕まらないようにここまで保護してきた。
6月28日、現在時刻は22時を回る。
時計の針の音が、静寂をより強調し、ギンジがいつまでも帰ってこないことへ、絶望していく。
最初は玄関で待っていたカエデも、否定したくても帰ってこないギンジが殺されたのではないかと、心にぽっかり穴が空いた気分になってしまった。
ミドリコのスマホに、振動と通知音。
無表情でそれを開けると、ギンジからのメッセージで有ることを確認する。
「み、皆、ギンジからだ!」
「え、ギンジ・・・?」
ミドリコの内容に、多分一番喜んだのはカエデかも知れない。
しかし内容は10分程の動画。
メッセージに添付された内容を、この場にいる四人は、見てはいけない様な物を見に行く様な気分でそれを開く。
真っ暗な映像、しかしまもなくそれは開き、そこには無残な姿になったギンジの姿が映し出される。
下半身を黒い床に埋め込まれ、鎖に繋がれた両腕は広げる様に吊るされいる。
そして淡く明滅する紫色の首輪。
血液も拭き取られず、力なく吊るされるギンジを見て、カエデは言葉を失う。
『あ、あー。これマイク入ってる?あ、おけおけ』
可愛らしい少女の声が、スマホの動画から流れてくる。
お面を付けた黒いセーラー服の少女が、カメラ目線でもしているのだろうか、顔を近づけて一人で喋り始める。
『初めまして、憎き怨敵、ヘヴンホワイティネス・・・くふふ、わたしはヘルブラッククロスの・・・ドクターだよ』
ドクターと名乗る少女は、ギンジを背に隠す。
『わたしの最高傑作である佐久間ギンジ君、とても素晴らしいでしょ?くふふ、この撮影が終わったら、身体を直して彼とわたしは一つになるよ。くふふふ、もう邪魔しないでね・・・あぁ、そうだ。ギンジ君が君たちに伝えたい事があるんだって。それじゃ、どうぞ』
「何よコレ・・・」
カエデがわなわなと怒りを露わにする。
『・・・ヘヴンホワイティネス、俺は──』
この後に放たれた言葉は、それぞれに決意や覚悟を背負わせる。
そして、それと同時に悲しみや苦痛をも、カエデ達に重くのしかかる。
正義と悪の戦いに翻弄される彼女達は、辛くても放棄することを許されない状態である。
ましてや仲間をあんな状態にされて、逃げようとは思わない。
ヘヴンホワイティネスにとって、避けられない大きな局面が迫ってきていた。
続く
お疲れ様です。
辛いソースでお肉を食べると美味しいって事が最近わかりました。
キャラネタ書きます
佐久間ギンジ
刺されて、ボコられ、拉致られた。可愛そうな主人公。
カエデを可愛いと思ってはいる。
神宮カエデ
もう間違いないのかもしれない。ギンジが・・・
宮寺レン
久しぶりに血を見て、ちょっと辛かった。
甘白ミドリコ
祈りは届かなかった。だが・・・
最近ギンジが夢に出てくるそうです。優しく振る舞ってくれるそうです。
ヨカッタデスネー
角倉ケイタ
「一体何事・・・?」
ドクターミヤコ
ついにギンジと一つになるとまで言い出した狂人。
リコニス
バーナーを刺して、ギンジも刺した。
ドクターの用事が終わったらギンジをつまみ食いしようとしているらしい
オーク怪人
数秒先の確定未来に、相手の考えてることもわかるというチート能力。どうやって打開するのか・・・!
藤原さん
ミドリコの上司。
ミ「チトセって誰ですか」
藤「嫁さんだよ。乳揉ませろ」
ミ「やめてください、肝臓の数値が感染ります」
チトセ
藤原のデスクに飾ってある藤原さんの奥さん・・・?
さーって次回のヘヴンホワイティネスは〜
ギンジ、嘘をつく
カエデ、課金する
レン、ケイタと悪に寝返るの三本です※本気にしないでください
それでは次回もまたよんでください。感想等お待ちしております
アトラクションでした