正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはあとらくそんです

今回のお話でトータル30話!
相変わらず。。。というかいつも無理やり、ノリも軽い、伏線も微妙、意味が解らない。。。

でも、これ一話書いて、読み直してみて、(うわっだせぇな)って思ったら投稿してます。勢いだけで書いてるこの作品が誰かの暇つぶしにでもなってくれれば嬉しいです。

でもなんとか頑張って30話!30話までかけたよおおお俺やったよおお
まだまだ頑張って書きますので、応援や感想をお待ちしております。
それでは、お楽しみください!


29・夏だ!ホテルだ!夢の世界だ!

 砂の怪人を撃破して、有姪海岸には一般市民の人々が再び夏を、海を、楽しみ始める。

 

 ビーチバレーや、かき氷、海を楽しむギンジ達も、元通り。

 

 戦っていた事など誰にも知られず、彼らは常夏を心から楽しんでいた。

 

 海岸の入り口にもなる、小さな石段でギンジは夕日によって煌めく海を眺めて、座りこんでいた。

 

 砂の怪人の撃破後はカエデやミドリコ、レイナ、ミヤコに付き合っていてあっという間に時間が過ぎていた。

 

 ミドリコとはかき氷を食べて、レイナとは勧誘を断りながらもビーチバレーをしたり、カエデとは泳いだり何か食べたり言い合ったり、ミヤコにはシャワーに連れて行かれそうになったり・・・。

 

 「今日一日だけでもめちゃめちゃ遊んだな〜」

 

 砂浜を見るや他の海岸利用をしている一般市民も、荷物を片付けたり、ゴミをまとめたりとせわしなく動いている。

 

 それと同じく赤鬼とケイタは疲労しながらも、自分達の荷物を片付けている。

 

 「ギンジ」

 

 ピタリ、と。ギンジの頬に冷たい瓶が押し当てられ、一瞬心地よいが、それよりも驚いて身体を動かす。

 

 「冷て。なんだ、カエデか」

 「なんだ、とはお言葉ね」

 

 ギンジに手渡すようにつけられたソレは、サイダーの瓶。ソレを受け取るとサイダーを開けて飲み込む。

 

 「隣、いい?」

 「おう」

 

 ギンジの隣にカエデが座り、自身の手に収まるサイダーを開けて、カエデも炭酸を飲み流していく。

 

 夏の味がするそのサイダーの瓶を夕日に当てて、乱反射する美しい光をジッと眺める。

 

 「今日は色々あったけど、楽しかった?」

 「ああ、最高だったぜ。こうやって遊びに行くのも何年ぶりって感じだったしな」

 

 遠くを眺めて瓶を足元に置く。

 

 その隣でカエデはサングラスをギンジと同じ様にかけて、隣で夕日を見つめる。

 

 茶色のグラスは日の光を軽減させるが、真に美しい世界をこの視界では見通す事はできていない。

 

 きっとギンジは嫌でもいつもこの風景を見ているのだろう。サングラスによって隔たりのある、この世界を・・・。

 

 「ギンジ・・・あんたは、この世界に来れて良かった?」

 

 良いも何もないのだが、カエデは普段と違う様子でギンジに尋ねると、サイダーの二口目をつける。

 

 「まぁ・・・それなりにはな。痛い事とか、怖いことも沢山あったけど」

 

 以外にもギンジにも怖いと思う事もある。それを聞いたカエデも自分に置き換えれば、戦いというものは怖いと思う。

 

 「でもさ・・・」

 

 ギンジがカエデの方に目を向けて、サングラスが輝く。

 

 「俺、お前らと仲間になれて良かったよ。こうして一緒に遊べたり、戦えたり色々できるし。でもって、カエデを、皆を守れるのが、俺は本当に嬉しいって、そう思うんだわ」

 「・・・うん」

 

 戦いの覚悟は人それぞれ違うが、きっとギンジとカエデの戦う理由は一つに纏まりつつある。

 

 再び拳を握り、生きた屍であった男は夕日を向く。

 

 サングラスから覗けるその瞳は、揺るがぬ決意を宿していて、カエデはそれを少しかっこいいとも思えてしまっていた。

 

 「ギンジ・・・必ず、この戦いに勝つわよ」

 「当たり前だ。俺とお前が暴れれば、向かうところ敵無し・・・だぜ」

 「簡単に言うわね」

 

 苦笑しながらもカエデは「そうね」と頷く。

 

 「簡単さ」

 

 言うのは誰でも簡単だが、ギンジは違う意味も込めていた。

 

 〈大好きな人達〉と共に戦えるなら、俺はなんでもする。

 

 その気持ちも込めて、ギンジは改めて言葉を出す。

 

 「俺とお前がやるんだ。絶対簡単だ」

 

 勿論仲間も含めているのだが、今この場にはカエデしかいない。

 

 自分を助けてくれた命の恩人に、心の恩人へ、ギンジは深い感謝と、芽生えている新たな感情の様なモノもあったのだが、本人はそれに気づいていないようだった。

 

 海は赤く、しかし綺麗に波打ち、ギンジ達のビーチは終了していった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 海で遊び過ぎて、流石に皆疲れてしまった。なので夏祭りは行きたい人だけで行き、休みたい人は休む。

 

 各自別行動になるのだが、ギンジだけはカエデの父であるソウジロウが泊まる部屋へと呼び出されていた。

 

 カエデは隣に立たされており、ソウジロウのその視線はかなり鋭い。

 

 こうして見るとこの睨み目付きの鋭さは、父親譲りなのかもしれない。

 

 高級感のあるホテルの一室は、空気感も一味違う。

 

 「それで・・・俺が呼び出されたのは・・・」

 

 緊張の色が強いのか、ギンジはどこか弱気な姿勢がある。

 

 「サングラスを外し給え」

 

 人の親と話すのだから当然なのだが、今のギンジにはこのサングラスを外せない理由がある。本当は怪人であると言う事をここでバレるわけには行かない。

 

 「あーえーと、実は俺、目に怪我があって。常に隠していないといけないっていうか・・・へへへ」

 

 最後に笑ったのは間違いだったかも知れないが、緊張するとどうしても笑ってしまう。

 

 「お父様、ギンジは本当にひどい目の怪我、というか傷があって・・・醜いのよ・・・」

 

 嘘でも少し傷つく。しかしそれが決め手となってソウジロウは怒鳴り始める。

 

 まるでそれは駄々っ子の様な。色々な人間を見てきたギンジだが、これを見た瞬間、ギンジはカエデの父親であるソウジロウが親ばかである事を理解する。

 

 (まぁ、そりゃそうよな。こんな得体の知れない奴と、娘が一緒にいれば嫌になるわな)

 

 しかもほとんどの場合はカエデハウスに居るのだ。その事も聴かれると面倒な事になりそうだ。

 

 「さて・・・佐久間君・・・君は娘と、どういう関係なのかね」

 

 海でも似たような事を聴かれたが、ギンジは今度はちゃんと聞こえる。カエデも口を出すつもりは無いようだ。

 

 「俺は・・・娘さんの使用人ですよ。あまり対した事は言えないけど、そんな関係です」

 「違いますお父様、下僕です、下僕」

 「カエデは少し静かにしなさい」

 

 ソウジロウの言葉にカエデは冗談が過ぎたといった態度で、押し黙ってしまう。

 

 「正確には使用人みたいな関係ですよ。娘さんの立てた家の掃除とか色々・・・」

 

 取ってつけたような嘘だが、事実掃除関係はほとんどギンジが受け持っている。

 

 「その割には、随分距離が近い様だが・・・?」

 「そりゃあ、俺と娘さんの波長が合うからでしょうな」

 「ハァ!?あたしが合わせてあげてるんですうー!あたしと同列に思ってるの〜?これだから怪人様は・・・」

 「お、オイオイバカ!」

 「あ・・・」

 

 いつもの様に小馬鹿にしながら煽りを入れてしまった。言ってはいけないワードも入れてしっかり言ってしまった。

 

 「怪人・・・?」

 

 ソウジロウの疑問の言葉に、二人に汗が流れる。

 

 (オイオイどうすんだよ!バレるぞ!いいのか!?駄目だろ!)

 ※目線で話してます

 

 (っどどどどどっど、どうしよう言っちゃった!あんたのせいよ!)

 ※目線で話してます

 

 (俺のせいではないだろ!どう考えても!!なんで黙れって言われた時に黙ってないんだよお前はよぉ!)

 ※目線で話してます

 

 (ついつい言っちゃったのよ!あんた煽ると楽しいんだもん!)

 ※目線で話してます

 

 かわいい顔してえげつない事をはっきり言われて再び傷つく。

 

 何気に酷い事ばかり言われているが、目線で話す二人をよそにソウジロウは咳払いを行うと、ハッと元に戻ってくる。

 

 「カエデ・・・怪人の事、知っているのかね?」

 「し、知らないです」

 

 ソウジロウの質問は、いつギンジが怪人とバレてしまうのかヒヤヒヤする。

 

 父親だからって気を許しているとか、そういう問題ではない。

 

 ソウジロウはふと、ある事を思い出す。街に出ればある噂を良く耳にするからだ。

 

 「家の者に調べてもらった事があるのだが、怪人という存在はどうも眼が黒いらしいな」

 (バレてる・・・?やばいぞ・・・)

 

 今ここでギンジは正体がバレてしまうという、一歩手前まで運ばれてしまった。もし次に、サングラスを外せと言われたら・・・。

 

 「・・・私はね、娘が何か変な事に巻き込まれているのではないかと、毎日心配しているのだよ・・・」

 

 鼻でため息を吐き出すと、ソウジロウは一瞬だけカエデを見て、次にギンジを見つめる。眼を、はっきりと見ている。

 

 「ヘヴンホワイティネス、というものを知っているかね?」 

 

 確信に近づいて行くのか、それとも偶然なのか、はたまた知ってて質問しているのか、冷房が効いているにも関わらず、カエデとギンジは汗が止まらない。

 

 喉もカラカラになって、口内がパサついていく。

 

 「公にも出てきて、そして今日の昼間も、なにやら戦っていたようだが・・・」

 

 何故。何故ここまでの事を言ってくるのか。

 

 「学校でも、街でも、湾岸エリアでも、どこでも・・・カエデの行くところに、あのヘヴンホワイティネスが居るのだよ。そしてその場には怪人も・・・」

 「お父様、あたしは何も知らないって・・・」

 「お前が知っているか、知らないかなどはこの際どうでもいいのだ。怪人というあんな常識の通じない者達がもし、私の娘に危害を加えているのであれば、それは見過ごせないのだよ」

 

 父親として娘の身の安全を按じるのは当然の事で、カエデの発言から出た怪人というギンジに向けられた言葉を、ソウジロウは眉を潜めている。

 

 「さて、ここまで話したが・・・佐久間ギンジ、もう一度言う。娘とはどういう関係で、そしてサングラスを、外せないかね」

 「・・・ギンジ」

 

 父親への言い訳をどうやって絞りだそうか必死に考えながらも、カエデは、か細い声でギンジを呼ぶ。

 

 「・・・どうかしたかね。娘とはどういう関係なのかを私は聴いているのだ」

 「ごめん・・・ギンジ・・・」

 

 うつむいてしまい、前髪でカエデの表情は解らなくなる。

 

 「・・・ああ、もう隠せないかもな」

 

 今ギンジが正体をバラすだけならヘヴンホワイティネスの正体・・・即ちカエデが何をしているのか、ということだけは嘘でも守り通せる。そこがバレてしまうことの方が、今のギンジ達にとって都合が悪い。

 

 「・・・ああ、サングラス、外すよ」

 

 カエデのうっかりからこんな重い話になるなんて、誰も予想しなかった。もうこうなってはしょうがない。

 

 右手をフレームに当てて、ギンジはサングラスを外す。

 

 ソウジロウの瞳に写ったのは、傷も何もない綺麗な眼、黒い眼球、赤い瞳が茶色のグラスからその姿を現す。

 

 怪人の瞳。それがカエデによってバレてしまった。

 

 「・・・ふむ、一つ聞くが、その眼は黒いが、生まれつきではないのだね?」

 「・・・ああ」

 「赤い瞳は、手術でつけたのかね?」

 「いいや・・・」

 

 ソウジロウの強い語気は、カエデの背中をピンと張らせる。

 

 ギンジはもう言い訳もせずに、言われたことへ答えるだけになった。

 

 「では、お前は・・・噂の怪人なのかね?」

 

 怒りにも、失望にも似た声音と目付きで、ソウジロウはギンジへと質問をしていく。

 

 「・・・いいや、俺は人間だ。でも、怪人とも呼ばれてる」

 

 馬鹿げた事なのだが、それでもギンジは自分が人間だと信じている。

 

 だけどそれは事情を知る者だけ。事情を知らない一般市民の部類にカテゴライズされている神宮ソウジロウには、最早畏怖を込めた顔つきになっている。

 

 「嘘をつけぇ!」

 「お父様・・・!」

 

 怒鳴るソウジロウへカエデが前に出る。

 

 「お前は怪人だ!その人間らしからぬ黒い瞳!まちがいなく貴様は怪人だ!どうやって私の娘に近づいたかは知らないが、許さないぞ!」

 

 かつてアモーレを襲撃した怪人、炎を吹き出す怪人の顔をニュースで見たことがある。

 

 その顔は辺り一面を燃やしながら、恐ろしい顔つき、黒い眼球と赤い瞳をしていて、ソウジロウは本能から恐怖した事を覚えている。

 

 あんなのがまだ何体いるのだろうか。そしてそこに遊びに行っていたカエデは無事なのだろうか。

 

 本当にどうしていいのか解らなくなった時もあった。

 

 「こいつは、本当は良い人で、正しい行いをしている、皆の仲間なのよ!」

 「だが、怪人だろ!」

 

 否定は出来ない。いくら人間と言っても、こうなったら信じてもらえない。

 

 「怪人に良いも悪いもあるものか!怪人ならば、こいつは悪だ!」

 

 ソウジロウは取り乱している。ギンジが怪人とバレ、それが自慢の娘と仲良くしていた・・・プライドよりも心配が勝つ。

 

 それからギンジが悪だと言うことを証明するありもしない言いがかりを、沢山ぶつけられた。

 

 怪人は悪。事情を知らなければ誰だってそう言うかもしれない。

 

 どこまで行っても悪は悪。

 

 「お父様!あたしの、大切な友達なのよ!こいつに何回も危なかったところを」

 「カエデ!」

 

 ソウジロウの糾弾を静止しようとしたカエデを、ギンジが止める。

 

 名前を呼んだ事が気に食わないのか、ソウジロウは怒りがこみ上げる。

 

 「貴様の様な悪が!街を脅かす脅威が!法すら乗り越えてくる犯罪者の産物が!私の娘を、軽々しく呼ぶなぁ!!」

 

 ソウジロウが叫び、カエデを後ろに退ける。最後の最後まで、娘を守ろうとするその姿勢に、ギンジは感動すら覚える。

 

 自分の親もかつてはこうだったのか、確かめる術はもう無いが、ギンジはサングラスをつけ直すと、ソファから立ち上がる。

 

 「・・・娘から離れろ。そして、娘の友人達からも・・・何もしないと、悪い者ではないと証明出来るなら、今直ぐここから出ていけ」

 「お父様、もうやめて!やめてよ・・・!」

 

 泣きそうな顔をするカエデをそれでも後ろに退けるソウジロウ。

 

 「・・・わかりました」

 

 寂しいとか、悔しいとか、悲しいとかはない。これで関係が終わるわけではないと、そう信じてギンジは部屋を出ようとする。

 

 「もう二度と!うちの娘に近づくなァ!この、化け物!!!」

 

 立場だとかプライドとかもすべて捨て去った、父親の発言。それはギンジにとってもカエデにとっても大きなショックを与えるが、それでもギンジは振り返らずに、ホテルの部屋を出ていく。

 

 カエデからは見えないが、その表情は暗くなっていた。

 

 それと同時に、ギンジはカエデが本当に親に大切にされている事を、理解できて、なぜだか嬉しく感じる。

 

 (良かったな、お前の家族は、本当に暖かい家族みたいで・・・)

 

 少しだけ、カエデと離れる事だけは、心に穴を開ける様な喪失感が背中に重くのしかかり、ギンジは扉がしまるその時までソウジロウに罵詈雑言を浴びせられた。

 

 「お父様のバカぁぁあああ!!」

 

 今だけは娘を守る事が優先。そう断じたソウジロウは泣き叫ぶ娘の言葉をなんでも受け入れる覚悟でこうした。

 

 「解ってくれ、カエデ・・・」

 

 力ないその言葉は、カエデを余計に追い立てた。

 

 元はと言えば、それは自分の発言で、いつもの通りの発言でそうなったと言うのに・・・。

 

 父親を押しのけると、カエデはギンジを追いかける為に、部屋を飛び出して行った。

 

 (ごめん、ごめんねギンジ・・・ごめん!)

 

 いつものやり取りをしてただけなのに、こうなるとは思っていなかった。

 

 カエデは本当に自分がバカだったと大きく悔いる。

 

 (ギンジ・・・どこ?)

 

 海で遊んだ疲れからか、少しだけ眠気が襲ってくる。だけどそれよりも、ギンジが心配になる。

 

 (どこにいるのよ・・・バカギンジ!バカバカバカ!)

 

 ホテルの廊下を走りながら、カエデは我に還る。

 

 「全部・・・こうなったのあたしのせいじゃん・・・バカは・・・あたしじゃん・・・」

 

 小さくとも強いプライドが崩れかける。

 

 それでもなんとしてもギンジを探し出して、ちゃんと謝らないといけない。

 

 いくらなんでもアレは酷いと。そしてギンジが良いなら、ずっとカエデハウスに居て欲しい。

 

 これが夢であって欲しい。

 

 焦燥する気持ちと、ギンジに申し訳なく思う気持ちがカエデの胸いっぱいに広がっていく。涙を拭き取り廊下を走る。 

 

 (探さなきゃ)

 

 長い廊下をカエデは走り続ける。

 

 長い、長い、長い、長い・・・廊下を・・・。

 

 ?

 

 (あれ・・・ホテルの廊下だよね?こんなに長かったっけ)

 

 それはいつまでも終わりの見えない道を走り続ける様な、気持ちの悪い感覚が、カエデにまとわりつく様な、変な気分になる。

 

 そのままカエデは永遠とも続くかもしれない、このホテルの廊下を走り続けていった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 子供達の歓声が聞こえる。何かを応援するかの様な、黄色い歓声が飛び交っている。

 

 それよりも大きいのが川の流れる音。

 

 水を弾く様な冷たい音と風が、レンの耳に心地良く伝わってくる。

 

 「・・・ケイタ、起きて」

 「ふご」

 

 レンは不思議な場所で眼を覚ます。

 

 間違いなくホテルで眠りに入った事を覚えているのだが、ここはホテルではなく、森。それも涼しくて川のせせらぎや、小鳥のさえずりが聞こえてくる、穏やかな空間。

 

 少し先に見えるのは、テーマパークの様なお城の建物。

 

 「おはよう〜・・・ん?あれ!?どこここ!?」

 

 むにゃむにゃと寝ぼけ眼で、レンの腰に抱きつきながら、ケイタはその肌寒くも感じる涼しさに、一瞬で眼が覚めると、一面森のこの空間に驚愕する。

 

 「レンの姉御、ケイタの旦那、起きやしたかい」

 

 二人の寝てた場所では赤鬼が居たようで、川で顔でも洗って来たのか、さっぱりしている。

 

 「くふふふ〜ギンジ君・・・あ、そこはらめぇ〜」

 「起きてるでしょ、ミヤコ」

 

 あからさまな寝言を言うミヤコへ、ケイタがツッコミを入れる。するとミヤコも眼を覚ます。

 

 「・・・バレた?てへ」

 「そんな寝言は普通は言いやせんよ、ミヤコ姉さん」

 

 苦笑する赤鬼に、ミヤコはしっしっと手を振る。

 

 「さて、現状の確認と行きやしょうや」

 

 何か変な空間にいる、レン、ケイタ、ミヤコ、赤鬼の四人。

 

 「これはいったい・・・?ケイタ、どこか痛いとか、ある?」

 

 レンが警戒しながらも、ケイタに聴くと、身振り手振りで何も無いことを証明する。

 

 さっきまでここの四人はホテルに居た筈だ。

 

 赤鬼とミヤコとミドリコは、夏祭りを楽しもうと準備をしていた。途中でミドリコがギンジとカエデを呼びに行くと言うので、彼女を待っていた。

 

 ケイタとレンはせっかくホテルに来たのに、もったいないと解っていつつも、眠ってしまった。それほど海が楽しくて幸せな時間を楽しんだから。

 

 「俺っちは兄貴とカエデの姉御が心配だけど、なによりもミドリコの姐さんが心配だ・・・」

 

 赤鬼が腹を掻きながら言うと、この場に居ない仲間の事が確かに心配になる。レンはうーんと考えると、手元に何があるかを確認する。

 

 先ず、レンはいつも身につけているヘヴンスーツ。ビーム剣もここに収納されている。

 

 ケイタはスマホ。しかし電波は通っていない。

 

 次にミヤコ。彼女はメガネが無くてふらふらしている。

 

 最後に赤鬼。彼も武器を持っていないどころか、何もない。

 

 「くふふふ・・・いかにも不思議な空間だね。森の向こうのお城とか、この川、土とかもそのまんま・・・なんだろうね」

 

 ミヤコの言葉にそれぞれ、反応を示す。

 

 不思議と思っていた感覚は、風や土を踏んだ感覚、川の冷たさ、子どもたちの歓声、小鳥のさえずり、頬をつねった痛み。

 

 そのどれもが現実と思い、ケイタは顔が青くなり、レンもおとなしくしているが驚いている。

 

 「どら、ひとまずは、あのお城、行きやせんか」

 

 赤鬼が指を刺した先に見えるお城、そのお城に行こうという提案に、皆が頷く。

 

 「何があるか、解らない。私が先頭を歩くから・・・」

 

 レンの言葉を遮り赤鬼が一番前に躍り出る。

 

 「レンの姉御は一番後ろを頼んます。一番前は俺っちが守りやすんで」

 

 戦えないケイタと、視界の悪いミヤコ。それを挟む様にしておかないと、もし戦闘になったら上手く守れない可能性がある。

 

 だからこそ、隊列は赤鬼、ミヤコ、ケイタ、レンの順番にある。

 

 「なんか夢みたいな空間だね・・・?」

 「夢なら、川とか風とか、現実にあっちゃあ駄目でしょ、ケイタの旦那」

 

 ケイタの不可思議な発言に、赤鬼は否定する。その口ぶりはどこかワクワクしている様な、わんぱくさを感じるミヤコとレン。

 

 「夢・・・夢、夢ねぇ・・・くふふ」

 「何か解ったの?ミヤコ」

 

 何か知っているのか、うーむと動くミヤコの言葉に何かを期待するレンであったが、ミヤコは首を横に振るううと、フラフラと歩き始める。

 

 「・・・」

 

 綺麗な青空を見上げてレンは、ここにギンジ、カエデ、ミドリコが来ているのかどうか、その先は不明瞭で解らないが、きっとここに来ていると信じてヘヴンスーツに変身する。

 

 ビーム剣を持って、この不思議な空間を突破せねばならない。

 

 (カエデ・・・)

 

 居ない親友を思うと心が痛くなる。もちろんギンジとミドリコも心配なのだが、この状況のカエデを心配している。きっと一人でもなんとかするだろうが・・・。

 

 森を超える為に、不思議な編成でヘヴンホワイティネスは先に進むのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 んん・・・。

 

 「わーーーー!」

 「かっこいいーー!」

 「ロケットパンチだ!ミサイルだ!」

 「やらせはせん!やらせはせんぞ!」

 

 なんだ・・・。嫌に子供のような声が私の耳に入っている。

 

 今何をしていたんだっけ。

 

 そうだ、赤鬼とミヤコと、カエデとギンジを連れて祭りに行こうとしていて、それで私は皆を呼びに言ったのだった。

 

 目的を思い出した私はゆっくりと眼を開けようとする。

 

 しかし変だな、身体が妙に重い、というか硬い。

 

 「かっこいい!」

 「すてきだねー」

 「すごい・・・5倍以上のエネルギーゲーンがある・・・!」

 「プリティ・メイヤーよりかっこいい!」

 

 なんだなんだ。この私ミドリコがかっこいいだの素敵だのと・・・。

 

 ふふふ、嬉しいじゃないか。いいぞいいぞもっと褒めてくれ〜。

 

 いや、実際のところは解らないのだが、私に向けてその言葉が向けられている様な気がしたのだ。

 

 ところで眼が開かないのだが、どうすればいいのだろうか。

 

 そして身体が重い。呼吸は、出来ている。

 

 鼓動も、ある。まるでエンジンが稼働している様な、熱く早く動いている。

 

 ・・・人間の心臓ってこうだっけ?

 

 試しにこの重たい腕を動かそう。

 

 ギュオーン。変な音が鳴る。

 

 人間の腕ってこんな音なるものか?

 

 この腕を動かした時、また子供達の声が沢山連なって、私に向けて褒め称えられる。

 

 「当たらなければ、どうということはない!」

 「うおおおロボだアア!」

 「まっしーん!」

 「きゃあああすてきーー!」

 

 ・・・さっきから初代のアレが好きな子供がいるな?

 

 それはいいとして、ロボとか聞こえたな・・・どういう事だ・・・?

 

 ビコォン・・・。そんな音が鳴ると、私の視界が広がっていく。ああ、空が見える。

 

 青空・・・なのだが、声は下の方から聞こえる。

 

 ゆっくりと首を動かして、私は自分の足元を見る。

 

 すると子供達が私に向かって手を振っている。

 

 え・・・?なぜだか私、大きくなっていないか・・・?

 

 わ、私の脚って、こんなメカメカしていたかな?

 

 腕も・・・こんなゴツゴツメカメカしていたか・・・?

 

 何より、違和感があると感じていたのが、視界の高さだ。目線とも言うべきだが、今の私は・・・。

 

 「わーロボットロボットー!」

 

 子どもたちの声援が私に沢山飛び交ってくる。

 

 そう、今の私は、甘白ミドリコは。

 

 「ロボットになってるうううううう!?」

 

 名付けるなら、そう。

 

 フルアーマー・スイーツホワイト・ミドリコォンとでも言おうか。

 

 いやしかし。これは夢だろう。やたら現実味のある夢だが、まぁいい。久しぶりの海で、気合を入れてしまって寝ているのだ。そう、これは夢!

 

 夢の世界なのだ!

 

 そうでなければ私が巨大なロボットになっているのにも、説明がつかないしな!

 

 うんうん、そうに違いない、ちがいない、ちがい、ない・・・。

 

 (しかし・・・なんだろうか。この、妙な気持ちは)

 

 妙な気持ちを抱いたまま、やがてそれは不安になる。

 

 ああ、何か怖い。まるで、見えない敵から操られているような、踊らされているような・・・。

 

 しかし、私は公安警察に身を置く者。子供達の声援には答えねばなるまい!

 

 動く度にどこか聞き覚えのある音を垂れ流しながら、私はこの夢の空間でしばらく決めポーズだったり、子供達の要望を聞き入れる事にした。

 

 あ〜でもやっぱり不安だ。ギンジ、カエデ!赤鬼!助けて〜。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 7月22日、午前0時。

 

 ほとんどの利用客が寝静まる中、ホテルには異様な人影が、ひたひたと歩いていた。

 

 「・・・きゅっふっふ・・・」

 

 童子の様な衣装に、ヘルブラッククロスのお面をつけた、幼女の様な声の怪人が薄暗いホテルの道を歩く。

 

 ほとんどの人間を、向こうの世界へと送る事ができた。

 

 後は、目標を見つけて一人ひとり殺害して回るだけ。

 

 「きゅっふっふ・・・でもアレだな、人間の使うマッサージチェア、気になるよな」

 

 奇妙な笑い声で、温泉のある場所へと向かう小柄な怪人。そこへたどり着くと、マッサージチェアを使う利用客を見つける。

 

 どうせ一般市民だ。殺してしまえばいい。女なら、好きにしよう。

 

 「・・・」

 

 マッサージチェアの人物は、動かない。

 

 小柄な怪人はその者のところへと歩みを近づける。

 

 「寝ているなら・・・夢の世界へと送ってあげよう・・・きゅっふっふ・・・」

 「いや、失礼、私は眠っていない。ブヒ。初めて使うモノだったので、少し緊張していてな・・・」

 

 聞き覚えのある真面目な声。

 

 「・・・ブヒ、どうかしたかね。隣なら空いているぞ。使うといい」

 (ご、なっ、あああ、なんで、なんで!!)

 

 オーク怪人が何故かここに居た。そしてマッサージチェアを使ってしっかりマッサージを堪能していた。

 

 (まずいまずい・・・殺される・・・こっちじゃ勝てない)

 

 小柄な怪人は音を立てずに、この場から離れようとするが、のれんの向こう側から、もう一人現れる。

 

 それも、この小柄な怪人は知っている。

 

 (ばばばばばかな!し、しし、しん・・・!)

 

 進化の怪人。写真でしか見た事はないが、この怪人も相当強いと聴いている。

 

 (駄目だ。組織を捨てたこの二人を相手に、同時に戦うのはぜったい駄目!しんじゃうよぉ!)

 

 小柄な怪人はバレないように、身を隠して二人の怪人からバレない様に、とにかく一目散に逃げる。

 

 (きゅっふっふ・・・どっちにしたって、ヘヴンホワイティネスの奴らは、あちの夢の世界へと連れてかれてる。確証はないけどネ)

 

 確認はしていないが、おそらくヘヴンホワイティネスは夢の世界へと送られている。

 

 きっと、多分、おそらく、もしかしたら。

 

 確認をしないで勝手な行動をして、その相談をせずに押し進む怪人。

 

 小柄な彼女の名は、夢の怪人。

 

 組織では指折りの実力者であることは間違いないのだが、協調性がとても低く、そして新参の怪人でありながらも先輩の怪人達を差し置いて、フェーズ3という領域に立つ。

 

 能力は人を眠らせる。

 

 フェーズ2では、夢の世界へいざなう事。

 

 フェーズ3では、夢を現実とリンクさせて、殺すも生かすも自在になるという能力。

 

 彼女もまた、ドクターミヤコ抹殺を命じられてここに来た。廃棄となるはずだった怪人。

 

 (きゅっふっふ。とにかく、こんどはあちも寝よう。そして、向こう側で、好き放題しちゃろう・・・きゅっふっふ・・・)

 

 空気を抜くような笑い声を、心の中であげる。

 

 ホテルの薄暗い道を、スキップしながら、彼女はうきうきで安全な場所へと向かう。

 

 もし寝てる間に攻撃でもされれば、能力が解除されてしまう。少しの刺激も許されない夢の怪人は、極度の緊張感を持ちながら、眠りに入らないといけない。

 

 「きゅっふっふ。勝つのは、あち達だ・・・ヘヴンホワイティネス・・・!」

 

 確認をしていないのに、どこからか溢れるその自信で、夢の怪人はおおいに満ち溢れる。

 

 悪と正義の戦いは、夢の世界にまで広がるのであった

 

 

 

 

 続く

 

 

 

 




うほほい30話だよ!誤字脱字多いかもしれませんが、ご容赦ください。一度読み直してはいるんですけど、何故かあるんですよ、誤字脱字

キャラネタ書きます

佐久間ギンジ
カエデへの思いが少し変わった。
だけどカエデパパに色々言われて内心ショック

神宮カエデ
お父様があんなに激昂してる久しぶりに見た。
うっかり口を滑らせるのは癖なのかな?直せ

宮寺レン
変な空間で目覚めた。こわい

角倉ケイタ
同じく変な空間でめざめた、ちょっと冒険心が勝る

赤鬼
今回からなるべく赤鬼表記。
ミドリコの姐さんはどこだあああ

鈴村ミヤコ
夢という単語に少し思うところが有る模様。

神宮ソウジロウ
カエデのパパさん。娘を想うあまり言葉が強くなった。
おそらく娘は恋をしていたが、相手が怪人なのはちょっと・・・

オーク怪人
マッサージチェアを堪能していた。次回、出番あり

夢の怪人
童子みたいな見た目のヘルブラッククロスの怪人。
一人称をあち、とする。オーク怪人より一年後に誕生。
協調性のなさと、あまり強くない事から廃棄される予定だったが、今回処理場から呼び出されて、復帰のチャンスを貰えた。

フルアーマー・スイーツホワイト・ミドリコォン
夢の世界にてミドリコのなっていた姿。コックピットがあるとかではなく、ミドリコがそのまま人間の形をした巨大なロボになってた。
解りづらくてすいません

サクラ/レイナ
夏祭りに出ている為、夢の世界には行っていない

リコニスとその他の怪人達
「最近出番ないんですけど」

次回はいよいよサマー編ラスト!
vs夢の怪人戦、始まります!
次回をお楽しみに!楽しんでもらえるようにもっと頑張ります!
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