正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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こんにちはアトラクションです。

最近寒くなって風邪を引きました。
でも仕事休めないから辛いのよね

今回は新章・非日常に身を置く者達編(今命名した)が始まります。
まだまだ中盤は続きます。

それではどうぞ


非日常に身を置く者達編
31・赤鬼の叫びと、チャンスと、繋がり


 真っ白なタイル、研究施設だと一目で解る広い空間。

 

 そこに似合わぬ鉄格子と部屋が並び、血液の匂いが充満する気味の悪い場所へと、ボンテージ衣装に身を包んだ者がヒールをわざとらしく音を鳴らして歩いてくる。

 

 一目見ればその者は女性と見える顔立ちと、アフロみたいにボリュームのあるヘアスタイルをしているが、髪の一本ずつにパーマを当てて、ツヤが目立つ。

 

 体つきは非常に筋肉質で、健康体である事を伺える。そのしなやかな腕と脚は正しく怪人達やヘルブラッククロスの戦闘員が好みとする、綺麗で瑞々しい女性。

 

 なのに胸に膨らみはなく、どことなく男っぽさを感じる。というより胸を隠さず、出すとこは全部出している。

 

 真っ黒な唇の化粧は蠱惑的な印象をもたせ、きっと男女問わずその魅力に引き込まれるかもしれない。

 

 腰にぶらさげた革の鞭はプラプラと揺れて、むき出しの腹筋はいやらしく蠢く。

 

 「さーて、ここで哀れな一生を終えようとしている廃棄物たちよ!」

 

 大手を振ってその者は、鉄格子の奥にいる【処理】を待つだけの怪人たちに声をかける。演説でもするのか、自己紹介でもしているのかの如く、大げさに声を出す・・・。

 

 一見女性に見える彼の名は暴力の怪人。ヘルブラッククロスの怪人部隊の隊長だったのだが、総統のやり方に異を唱えたら、廃棄行きに決定させられた怪人。

 

 気に入らなければ力で示せば良い・・・その世界のあり方に暴力の怪人は嫌気が刺した。

 

 で、あれば消される前に自分も力を示せばそれでいい。

 

 一人では勝てない。なので、同じく自我を持ちながらも従うだけしか能の無い、処理を待つ怪人達を引き込もうという作戦。

 

 「初めまして!オレは暴力の怪人!女性も男性も従える女王様(♂)だよ!」

 

 その自己紹介に鉄格子の奥にだらけるだけの怪人達は、歓声をあげる。死ぬ前の最後の余興と言わんばかりに。

 

 「ここから出たくないか?ただ、使え無さそうってだけで、処理を待つだけなんて非常にバカバカしく思えないか?」

 

 その大声に歓声からどよめきに変わる。

 

 「オレだったら・・・人間だけじゃなく、怪人も従えられる!共に掴みとろうじゃあないか!力の世界を、力で奪おう!怪人達にはそれだけの権利がある!」

 

 鞭を床に叩きつけて暴力の怪人は、再びあがる歓声を黙らせる。

 

 「たーだーし!」

 

 強めの語気は牢屋の怪人達を唸らせる。

 

 「今、本気で抜け出したい奴は、ここで殺しあえ!騒ぎを聞きつけやってくる戦闘員達を蹴散らすだけの、力はあるかどうかを・・・見せてみなぁ!」

 

 血走った目で言うと少しの静寂の後、牢屋の一つから激しい戦闘音が鳴る。

 

 それに続き我こそはと名乗りを上げる者達が、光のある世界を求めて本気で殺し合いを始める。

 

 「・・・」

 

 コレこそが怪人の本領。力があるから許されるのであれば、何をしてもいいのだから・・・。

 

 結局の所暴力の怪人は、自分の力を誇示できればそれでいい。同じ力を持って、自分を切り捨てたこの組織に報復できればそれでいい。

 

 思えばあのドクターミヤコという者が造った怪人達は皆優秀と聴く。

 

 ここに居る怪人達は、他のドクターが造りあげた怪人達なのだが、いずれも何かしら問題があるらしい。

 

 (オレが上手く手綱を引いていれば、それでいいのさ・・・)

 

 従えないなら、暴力を持って従える。それでいい。

 

 やがて戦闘が終わると、生き残りはたった2名のみである事が解る。

 

 近くの端末を破壊して暴力の怪人は、その2名の怪人達を牢屋から出す。

 

 一人目は、蝶の羽の様なモノを背中に出す、おとなしそうな少女の怪人。なんの能力なのか不明だが、無傷で怪人達を殺したのは賞賛できそうだった。

 

 虚ろな瞳は怪人特有のモノと相まってとても狂気的な力強さを感じる。

 

 もう一人の怪人は周りの血液を足元から吸収して、力を蓄えるタイプの怪人の様で、非常に強そうだ。

 

 人間で言う男爵と言うのか、エレガントな雰囲気を纏わせるのだが、ヒゲは赤く、眼はやはり黒と赤。

 

 今まで溜め込んでいた鬱憤を晴らす、良い機会を得たと言わんばかりに、その怪人は暴力の怪人を見据える。

 

 「いいね〜・・・名前は?」

 

 暴力の怪人はその名前を聴く。信頼を築いておきたいからだ。

 

 「わ、私は・・・拒絶の怪人」

 

 おとなしそうで気弱な怪人の方は、拒絶の怪人。

 

 「吾輩は血の怪人である。」 

 

 拒絶、血、暴力。

 

 三人の怪人は研究所を飛び出す。

 

 「感謝するぞ・・・暴力の」

 「あ、ありがとう・・・ございます」

 「お前らは今日から、オレの右手左手だ・・・オレ達を切り捨てたヘルブラッククロスに報復して、この国も組織もオレ達がいただく事にする!」

 

 今日、ヘルブラッククロスの組織から三人の怪人達が脱走。

 

 翌日直ぐに行動を起こす為に、まずは人間を取り込んで頭数を増やそうと策を講じる。

 

 暴力の怪人は組織を立ち上げるつもりで居たのだ。

 

 ヘルブラッククロスにも、人間達の正義の組織、ケイサツにも勝る組織を立ち上げようとしていたのであった・・・。

 

 

 その為の1計画として、組織が手を焼く正義を自称する組織・・・ヘヴンホワイティネスを手中に収めようと、行動を開始する・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 夏休み真っ只中の日常は至って平和で、それぞれ思い出作りやら食事やら勉強やらに勤しんでいる。

 

 勿論それはカエデ達も同じで、勉強する必要の無いギンジ、ミドリコ、赤鬼、ミヤコはそれぞれカエデハウスで涼みながらもテレビを見たり、藤原とイロが持ってきたスイカを食べながら、夏を楽しむ。

 

 相変わらずミヤコは長袖と白衣で、赤鬼はミドリコの隣にずっと居る。

 

 最近はずっと赤鬼と会話している事が多く、ギンジを視界に入れるチャンスが少ないと、ミドリコは内心嘆いているのだが、どうにも赤鬼の発言は悪い気がしないし、女性が言われれば嬉しい単語を次々と投げてくる。

 

 「あちぃ〜」

 

 冷房が効いてても、これだけ人数が揃っていれば部屋が暑いのはしょうがないかもしれない。

 

 「暑いのは皆一緒よ!っていうかバカミヤコはいい加減ギンジから離れなさいよ」

 「くふふふ・・・カエデモンキーは解ってないなぁ〜・・・ギンジ君とくっついてると、自然と涼めるんだよ?」

 

 さもそれが当然で当たり前と言わんばかりに、ミヤコが言うと白衣の余った袖部分で口元を隠してくふくふ笑っている。

 

 「そんな訳あるかーー!」

 

 リビングのテーブルで参考書や夏休みの宿題を解きながらも、カエデはミヤコと言い合いを始めている。その傍らでケイタとレンは隣同士で、難しい問題とにらめっこを行いながら、夏休みの宿題と戦っていた。

 

 国語は二人共苦手らしい。

 

 「ミドリコの姐さん!肩を揉みましょうか!」

 「いや、大丈夫だ」

 「じゃあ、色々揉みましょうか?」

 「せんでいい!」

 

 手をわきわきと動かしながらすり寄る赤鬼に、藤原に似た何かを感じ、ミドリコはどこからか取り出したガンストックで赤鬼を殴る。

 

 「若いっていいな〜おじさんなんか、もう涙が出そうだぜ」

 

 藤原が黒いシャツだけの姿でスイカを食べながら、カエデハウスの若者達を眺めると、物思いにふける。

 

 「そういえば見ない顔がいるね?あれは・・・?」

 

 イロがミドリコににじり寄る赤鬼へと、近寄っていき自己紹介を行う。

 

 「あんたが山吹さんかい!俺っちは赤鬼の怪人!皆からは赤鬼と呼ばれてるぜ」

 「そう、赤鬼ね?」

 

 ミドリコの上司だからとさん付けで呼ぶことにしたらしい。

 

 彼らの夏休みはとても楽しくそして平和な日常であり、充実そのもである。

 

 怪人の反応も検知されずに・・・と思っていたのだが、そこへ怪人反応のブザーが鳴ってしまい、怪訝な表情をするカエデ。

 

 「何よもう。せっかく今いいところなのに」

 「何か問題事か?俺が出てもいいぜ」

 

 せっかくまともな日常のまともな夏休みを謳歌しているのだ。それを邪魔させる訳にも行かないと、ギンジは普段のカエデ達の役目を買って出る。

 

 「まぁ、姉御達は夏休みですしね。俺っちも行きやすよ、兄貴」

 「なら、私も出よう。ちょうど非番で暇だったしな」

 

 ミドリコと赤鬼が二人名乗り出て、カエデは申し訳なく思う。っというよりギンジが出るなら自分も一緒に行きたいと言うのが本音として出てくるのだが、ケイタとレンの勉強も見ていないと行けない。

 

 「じゃー何かと大変そうだし、おじさん達はもう行くわ」

 「お邪魔しました、甘白さん?」

 

 藤原とイロも怪人の反応に難色を示すが、戦闘員ならまだしも怪人が相手ではどうにもならない。

 

 「まぁー心配すんなって。ただ怪人が暴れてるだけなら、軽くぶっ飛ばしてくるからよ」

 「うーん・・・解ったわ」

 

 いつものギンジの態度を見て、腕っぷしだけなら頼りになる赤鬼と、冷静なミドリコも居るし・・・と、カエデは夏休みの宿題に戻る。

 

 少し不安なのか何かまだ言いたそうであったが、レンに呼ばれて一度その不安を拭い去ると、再び机に戻る事にした。

 

 「ミドリコ、反応はどこから来てるんだ?」

 

 ギンジと赤鬼では端末の操作が解らず、いつもミドリコに任せっきりである。ミドリコはそんなギンジに頼られていて、少し嬉しくも思う。

 

 (相変わらず、姐さんは、兄貴一筋なんかねぇ)

 

 ギンジとミドリコが二人話しながら、藤原とイロを見送るのを確認すると、再び端末を確認する仲間二人に視線を動かす。

 

 あまりミドリコの笑顔を見ない赤鬼は、ギンジと話すと心から嬉しそうな顔をするミドリコに、漢としては情けないと解っていつつも、ジェラシーが出てきてしまう。

 

 しかしそんな表情の一つも見逃さない赤鬼は、今日もこう思う。

 

 (はぁ〜やっぱり笑顔も素敵だぜ、ミドリコの姐さん)

 「おーい赤鬼、何してんだ。早く行こうぜ」

 「へい!場所はどこで?」

 「工場エリアだってよ」

 

 現実に引き戻されて、牙を鳴らしながら赤鬼はギンジの後ろに付いてくる。本当の子分の様なその姿は、ミドリコからは不思議に思える。

 

 (・・・いつも無理をさせているのかな・・・一度ちゃんと話す時間が欲しい所だ・・・)

 

 ミドリコからも赤鬼の気持ちは悪いモノではなくなっているのだが、それでも毎日の求愛発言には少し・・・いやかなり滅入る。

 

 いっその事ギンジを諦めて、赤鬼からの求婚を受けるのもアリなのではないかと、若干、ほんの少し、しょうがないから、そう思う時もある。

 

 (でも、私だって本気なんだ。ギンジからちゃんと、返事を貰いたい)

 

 いくらだけ歳をとっても、恋する乙女の気持ちだけは揺るがない。それはミドリコの恋愛感覚であり、出会いの無い彼女への僅かなチャンスでもあるからだ。

 

 「それじゃー行ってくるぜ」

 

 ギンジ達の声がすると、次にドアが閉まる音がする。

 

 「本当にギンジ達だけで行かせて良かったかな・・・?」

 「どういうこと?」

 

 カエデは未だにうーんと何かを考えこむ様な表情で言葉を告げると、ケイタはそれに反応を示す。

 

 「なんか・・・上手く言えないけど、大丈夫なのかなって・・・」

 「くふふふふ・・・ギンジ君なら上手く行くよ。信じてるなら、心配しなくてもいいんじゃない?」

 

 カエデ達の使うテーブルの横では、ミヤコがなにやらマシンを組み立て始めていた。何を造っているのかは不明だが、ヘヴンホワイティネスの協力の為のモノを造っている様だ。

 

 「うーん・・・そうかな。何か、なんだろう・・・」

 「心配なら行く?」

 「駄目。国語が解らない」

 

 ケイタの提案はレンによって即座に却下される。

 

 「バカミヤコなら何かしら解るんじゃない?」

 「くふふふ・・・カエデモンキー、わたしも国語は苦手でね」

 「絶対嘘ね」

 「くふふふ」

 

 お互い笑顔だがその目はお互い火花を散らす。

 

 カエデの不安・・・胸騒ぎは、ギンジではなく赤鬼へのモノなのだが、今はとにかく夏休みの宿題に戻ろうと決意したカエデだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 工場エリアには使われて居ない廃棄施設となった、小規模な工場が何個もあり、日夜不良や悪い奴らのたまり場になっている。

 

 噂ではウラ取引も頻繁に行われている場所らしいのだが、今はそこまで人の出入りはあまりない。

 

 一応稼働している工場はそれなりの数があるので、決して人の出入りが無いわけではない。それでも非行に走る者達の出入りは減らないのだが・・・。

 

 「例の失踪事件とかも関わってるのかね」

 

 ギンジが静かにつぶやいた事件。それは7月中旬になってから、ここでは若者達が良く失踪しているとのこと。

 

 幽霊が出る等、異世界に通じているなど、根も葉も無い噂が飛び交い、結果を確かめようとした人々が居なくなるという。

 

 「間違いなくヘルブラッククロスの仕業だろうな。何をしているのか不明だが・・・」

 

 今回はそんな工場エリアでの怪人の反応。

 

 今まで失踪した被害者は、ヘルブラッククロスが原因なのだが、今回の事件と呼ばれているのは、男女問わずさらわれている事がミドリコの頭の中にひっかかる。

 

 「でもよぉ、なんだって男もさらってんだ?フェーズ2の研究とやらはミヤコ姉さんしか出来なかったはずよな?」

 

 顎に手を添えながら赤鬼は金砕棒を背中に背負い直す。

 

 「何か妙だな・・・ミドリコ、市民の反応は?」

 

 工場エリアでの反応は、普通に働いている人間の反応しか出てこない。それを確認したミドリコはもう一つある怪人の反応は3つだけあることを見ると、眉を潜めた。

 

 「反応は普通だ。怪人が三人」

 「こっちも三人だな。相手の能力や戦術をどう使って来るか解らないが、各個撃破を狙えるならそれでもアリだけど・・・赤鬼」

 

 少しだけ間を置いてギンジが赤鬼を呼ぶ。本当に先輩と後輩と言った様なやりとりなのだが、赤鬼は直ぐに返事をする。

 

 「へい・・・俺っちが思うに、最初は様子見ですかね。ま、そんな事しないで行くとしたら、その反応の近くで大暴れってとこっスね」

 

 様子見か、大暴れ。短絡的で非常に分かりやすい作戦だが、それで赤鬼が怪人だなんだと騒がれては問題になる。

 

 怪人の出方を伺うならば先ず間違いなく様子見にしておいたほうが、情報は得やすいかもしれない。

 

 「じゃあ・・・」

 

 ミドリコの方に指を向けて、ギンジは今日のメンバー二人に指示を出す。 

 

 「俺が先に行って暴れてくるぜ」

 

 まさかのギンジが先に特攻するという作戦に、ミドリコと赤鬼はそれを静止する。一番頼りに出来る者が居なくなると士気にも関わってくる事も多い。

 

 ギンジはそれを見越して赤鬼に次なる指示を出す。

 

 「んで、赤鬼とミドリコは様子見だな」

 「何故ギンジだけで行くんだ?理由を聞いてもいいか?」

 

 訝しむ顔をしながらミドリコの目線は、真っ直ぐとギンジを見つめていた。

 

 「もしかしたら、の話しだけど・・・不意打ちも想定した方がいいかな、とは思ってな。無いとは思うけど、反応の怪人がこっちに気づいていないとも限らないしな」

 

 確かにギンジの言うとおりだと、そこでミドリコは気づく。いついかなる時も敵への警戒を怠らない様にするのは自衛隊でも習っていた事を思い出す。

 

 赤鬼はその作戦の内容に感心しており、ますますギンジへと尊敬の眼差しが強くなる。

 

 一長一短の提案からこんなにも深く考えられる・・・しかもミドリコと自分へ向けて、襲ってくるかもしれない敵への警戒心を持てという事を、ちゃんと考えている。

 

 思慮深く、そして強い。さらには仲間の事を考えた単独行動と捉える。

 

 男として必要なモノを兼ね備えたギンジに、赤鬼は敬服する思いだ。

 

 「ミドリコ、反応の怪人はどこだ?」

 「あの廃ビルの工場からだ。本当に一人でいいのか?」

 「構いやしねーよ。それに何かあったら直ぐに戻ってくるからよ」

 

 もう6月の様に自己犠牲の精神では行動しないと、心に決めているギンジは心配させないように、ピンチの時は直ぐに撤退する事にしている。

 

 もう二度と仲間であり、〈大好きな人達〉に悲しい思いはさせない。

 

 そう肝に命じているギンジはミドリコと拳を軽くぶつけると、廃ビルの工場へと歩いていく。

 

 「ミドリコは常に上空、赤鬼は周囲の警戒を怠るなよ」

 「了解した」

 「姐さんの事は任せてくだせぇな」

 

 二人の返事を聴くと満足そうに笑みを浮かべてサングラスをくいくいと直す。後は件の怪人達がどうなるか・・・。

 

 ミドリコは想い人が歩く背中を少しだけ眺めると、直ぐに指示通りの上空警戒に行動を移そうとしていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   

 

 廃ビル工場の建物内は閑散としており、人気はおろかほとんど物が置いてある気配もない。何かあるとすれば不法侵入した者達の、持ち帰られなかったゴミやらが散乱している。

 

 他にバットだったり、折れた角材だったり・・・。

 

 数えればキリが無いのでここまでにするが、ギンジは怪人達がいるであろう場所まで進んでいく。

 

 どこに居るかは解らないが、物音を頼りにすればもしかしたら発見できるかもしれない。

 

 コウモリの怪人みたく、超音波でも出せればそれは容易かもとは思ったが変わりに飛行が出来なくなるのはあまりにももったいない。

 

 「さて、どこにいるのかな〜っと」

 

 その辺の手頃な高さの木材を蹴り、ギンジは階段を登る。蹴ったのは特別意味はない。

 

 「あ・・・」

 

 割れた窓やスプレーの落書きが多数彩られた、いかにも治安の悪そうな雰囲気の屋内では、蝶の羽を生やした見た目は可愛らしい少女が、ギンジとバッタリ遭遇する。

 

 ここに女の子が居ること事態不自然だが、それよりもギンジは蝶の羽の女の子の瞳と全身の見た目で判断して、間違いなく怪人だと言うことを確認した。

 

 「お前がここの怪人かぁ〜。手荒な真似はしないから

ちょっと話そうぜ」

 

 何か異様な雰囲気を纏うサングラスのチンピラみたいな男から、怪人という単語が出てきて、蝶の羽の怪人はかなり恐れを抱く。

 

 はっきり人間でも近寄りがたい雰囲気を持っているこの男は、手荒な真似はしないと言いつつ、きっちり暴力を奮ってきそうだ。特に性的な方面で。

 

 「こ、来ないで・・・」

 

 恐れながらもふるふると顔を横に振り、少女はギンジを拒絶する。

 

 「こ、こ、来ないで!!!」

 

 力強く叫んだその言葉と同時に、少女の正面側から黒い波動が飛び出てくる。

 

 風圧とも威圧とも、打撃とも取れるその波動はまたたく間にギンジを包み、壁へと押し込んでいく。

 

 「うおっ・・・!いきなりかよ・・・!」

 

 壁に着地する様に蹴る力で、その押し込みに対して抵抗をするも、この黒い波動はそこそこギンジよりも強いらしい。

 

 (攻撃してきたって事はこいつ、黒だな。ちゃちゃっと捕まえて、洗いざらい吐かせてやろう)

 

 まとわりつく様な黒い波動に押されても、ギンジは決して退かずに炎の力で黒い波動と渡り合う。

 

 「い、いや・・・来ないで!来ないでってば!!死ね!!」

 「出会い頭になんて野郎だ・・・女は殴らねぇから安心しろよ・・・」

 「う、嘘よ!男は嘘しかつかない!き、消えて消えて消えてきえてきえてきえてキエキキエキエキエキエキエキエキエキエ」

 

 一瞬で狂ったのか、目をギョロギョロと動かし、頭もぐりぐりと動かしながら、先程よりももっと強い黒い波動が飛んでくる。

 

 「ホラーだな、あんた!」

 「キエキエキエキエキエ」

 

 彼女の名前は拒絶の怪人。

 

 一度拒絶に失敗するとこの様に狂って制御出来なかった為、廃棄行きに設定された哀れな怪人・・・。

 

 「ぎええええええんぎょええええっへっへっへっへ!」

 

 真っ赤な涙を流しながら奇声を上げて、黒い波動はますます強くなる。その衝撃はコンクリートの壁や窓をミシミシと軋ませて、今直ぐにでも破壊しようと言わんばかりだ。

 

 「こうなったら・・・これでどうよ」

 

 左手を地面に添えて電撃を流す。

 

 黒い波動を超えてコンクリートの脆い床へと電撃が流れ、それはギンジの眼の前に居る怪人へと直撃する。

 

 本当は攻撃したくなかったのだが、こうなったらもう仕方がない。怪人とは言え気絶させるつもりで打ち込んだ電撃は、一瞬で少女の動きを止める。

 

 「キエエエエエエ!?」

 

 一瞬で黒焦げになった怪人の少女を倒れる直前、ギンジは駆け寄りながらも担ぎ上げる。

 

 「さて・・・一人撃破、と」

 

 攻撃してしまった罪悪感はあるので、このまま放置はせずにギンジなりの礼儀として彼女を敵陣まで持っていこうとしていく。

 

 「気絶させちまったし、このまま交渉材料にでもなればいいけどな〜」

 

 軽い気持ちで発言して、そのままビルの廊下を進む。

 

 敵に会えればこのまま戦闘をしないでいい理由を手に入れたギンジは、工場の上へと進む。

 

 「何か聞こえたよな?」

 「また拒絶のが、暴走を起こしたのかもしれん」

 

 一言で言えば男爵というのが正しい恰幅の良い男性が、奇抜なボンテージ衣装に身を包む男?女?みたいな人物と会話をしている。

 

 (なんだあれは・・・)

 

 焦げた怪人を盾にしながらギンジはもう少し、彼らに近づいてい見る。

 

 「ところで・・・ヘルブラッククロスを潰すための、人員はそろそろ集められそうかね?暴力の」

 

 男爵の方の男は、なにやら興味の湧く言葉を出した事に、ギンジはもう一人の男の方・・・暴力と呼ばれた者へと視線を動かす。

 

 「そうだな。だが、人の勧誘ってどうやるんだ?手当たり次第声をかけてはいるんだけどなぁ・・・皆喧嘩売ってくるから、全員喧嘩になっちゃうんだよ。まぁ、オレ暴力の怪人ってだけあるから、そこらに居るチンピラちゃん達なんか瞬殺できるんだけどさ」

 

 ボンテージに身を包んだアフロパーマみたいなヘアスタイルの男は、怪人・・・暴力の怪人と言っていた。

 

 そして拒絶と言うのは、この焦げた女の怪人だろう。とすれば最後の怪人は・・・。

 

 「そろそろ血が足りないでな。吾輩はそろそろまともに戦えなくなるぞ・・・」

 「血液なら直ぐに手に入るって!ヘルブラッククロスを乗っとる時にさ、こう、戦闘員とかボコボコにしてよぉ」

 

 血液がモチーフとなる怪人ならさしずめ、血の怪人とでも言うのか。

 

 ヘルブラッククロスを潰す、乗っ取る・・・等、怪人だと言うのにここまで離反的思想が強い発言をしている彼らに、ギンジにとってこれまたなかなか無いチャンスを得た気分になる。

 

 思い切って声をかけてみようと思い、ギンジは二人の後ろから近づいていく。

 

 「なぁ!」

 

 ギンジが声をかけた時、二人は何気ない声掛けに驚き飛び下がる。

 

 「何奴・・・!?」

 

 男爵怪人男が、ギンジに警戒を示し血液で刃を作ると、暴力の怪人に手渡し、自身も手を血液で固める。

 

 「いやーそう警戒しないでくれ。あ、俺佐久間ギンジ。親しみを込めてギンジでいいぜ。そんで・・・」

 

 いつもの自己紹介をして、ギンジはサングラスを外す。怪人同士ならば普通に伝わりやすい、この自己紹介を行う。

 

 「その眼は・・・」

 

 暴力の怪人がギンジを見て驚く。

 

 手元でダウンする仲間である拒絶の怪人も気になるが、フレンドリーに接して来るこの男、ギンジが怪人である事を見ると、彼もまたチャンスを、大きなチャンスを得た様な気持ちに心を踊らせる。

 

 「・・・この後、時間はどのぐらいあるんだ?」

 

 ギンジは不敵な笑みを浮かべて、二人の怪人と対面する。

 

 「暴力の怪人だ」

 「・・・吾輩は血の怪人」

 「俺は組織名じゃ、進化の怪人とかって呼ばれてた。つもる話しもありそうだし、ちょっとお互い情報交換と行こうぜ」

 

 拒絶の怪人を持ちながら、ギンジと暴力、血の怪人は隣に有る小さな部屋へと移動をする。

 

 そんな出会いを果たした彼らのビルの真上には、怪しく漂う飛行船の姿があった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「な、なんだアレは・・・」

 

 ミドリコの眼に映るのは、飛行船。

 

 「なんでい、あいつらあんなモノもってたのかよ。ったくズルいぜ」

 

 その隣で赤鬼もミドリコと同じ様に空へと視線を動かすと、飛行船の大きさに舌打ちをする。

 

 そこから見えるのはただの飛行船ではない。黒い十字架のマークをつけたエンジン部分に、ミドリコは表情をしかめる。

 

 真夏の空の飛行船は著しい怪しさを醸し出す。

 

 二人が空に注視している真後ろでは、一際物々しい装備に身を包んだ戦闘員が一人、音もなく接近していた。

 

 接近していたのだが・・・。

 

 「動くな」

 

 視線をひとつも動かさずに、後ろに拳銃を向けるミドリコに、戦闘員が驚く。

 

 「あぎっ」

 

 戦闘員はすぐに赤鬼によって頭から持ち上げられ、苦悶のうめき声を上げるが、装備の重さに身体を引っ張られて、頭から上は怪力に持ち上げられる。

 

 「今は姐さんと一緒なんだ。邪魔すんじゃねぇ!」

 

 頭を掴んだまま投げ飛ばし、戦闘員は工場エリアの端まで転がっていく。

 

 「ここで敵の襲撃か・・・ギンジの兄貴を呼びやすか?」

 「いや、ここで待機だ。あまりビルの中で戦闘音が聞こえないし、ギンジの方でもなにかあるかも知れない」

 「それでしたら、姐さんは兄貴の所へ向かった方が・・・」

 「いや・・・私達はここでたいっ」

 

 一瞬。本当に一瞬だった。

 

 赤鬼にもミドリコにも気づかれず、もう一人の戦闘員が、ミドリコを抱き止めて空を舞う。

 

 ジェットパックを背中に付け、強靭な身体をアピールできる様なパワードスーツ。

 

 「しまった・・・!?」

 「はははは!公安の女ゲットだぜ!アジトにつれてってめちゃめちゃにしてやるぜ!」

 「くっ・・・下衆が!」

 

 不意打ちで持ち上げられた時に銃を落としてしまった様で、今のミドリコにはナイフしか手元にない。

 

 しかしここでこいつを攻撃して落ちてしまったら、きっと命は助からない。そんな高さまで来てしまっている。

 

 「飛行船でマワされる覚悟、しとけよしとけよ〜!ぎゃははは」

 「このぉ・・・!」

 

 一気にさらわれる不安と恐怖がミドリコを支配する。

 

 飛行船へと飛び込まれ、ミドリコはいよいよ本気で抵抗がしづらくなってくる。

 

 内部にはまだ同じ格好をした戦闘員達が、ミドリコを迎え入れるような光景に、彼女の抵抗力を徐々に奪っていく。

 

 「こんのボケカスゴミクズがぁ!俺っちの女だぞ!!!降りて来いやこのボケがぁ!殺すぞオラァ!」

 

 下では怒り狂った赤鬼が金砕棒を振り回し、辺りにぶつけながら罵詈雑言をとにかく撒き散らす。

 

 「そうだ!兄貴!兄貴なら空を飛べらぁ!」

 

 ギンジが飛べる事を思い出して、赤鬼は急ぎ廃ビル工場へと向かうのだが、新しい戦闘スーツに身を包む戦闘員達が、次々と空から降りてくる。

 

 まるで赤鬼の妨害をしているかの様に。

 

 そしてギンジという最大の敵がいない事を、見計らったかの様なタイミングでの襲撃。

 

 「誰かに見られてたかぁ?」

 

 赤鬼は戦闘員達ににらみを効かせるが、彼らからは返事がない。

 

 ここにいる全ての戦闘員は、おそらくは上級戦闘員と呼ばれる者達だろう。今までの戦闘員よりも強いスーツを持つ事を許可された選りすぐりの戦士達。

 

 「誰から知った?ああ?」

 

 それでも戦闘員達は誰も答えない。

 

 「ああ、そうかい。全員殺される覚悟あるんだよなぁ??」

 

 握る金砕棒は怒りで先端まで震えて、赤鬼の闘志が伝わってくる。

 

 「姐さんを助けねぇといけねぇんだ!兄貴に報告もして、姉御達にも、旦那にも、姉さんにも・・・」

 

 そこで赤鬼は気づく。怪人の反応や、ここでこのタイミングでの襲撃。

 

 さらにはギンジがいないタイミング・・・。

 

 (まさかたぁ、思うが・・・姉さん、誰かとつながってないか・・・?気のせいか?)

 

 赤鬼の脳裏ではミヤコの顔が浮かび、顔の中心から渦を巻いて闇に飲まれていく。

 

 毎朝誰かと通信をしていて、聞けばギンジ達にさらわれた時も、誰かと通信をしていたらしい。

 

 特別な友達等、ミヤコには居ない。そして学校にも行っていない天才ミヤコには毎朝通信を出来る人が居るとは思えない。

 

 つまり・・・可能性があるとすればヘルブラッククロスに、今のミヤコの状況を知ってなお、通信でのやり取りを行える内通者が居ると言うこと。

 

 この全ては赤鬼の推測でしか無いのだが、そう考えてしまうとひっかかりが大きくなっていく。

 

 頭の悪い赤鬼だが、何か、得も言われぬ嫌な予感がよぎるのだが、一先ずは目の前の戦闘員を撃破して、ミドリコをいち早く助けないと行けない。

 

 「気になる事は、帰ってから聞けばいいやな。どら、ぶっ殺してやるから、全員横一列に並べやコラ」

 

 怒りの血管が浮かびあがり、金砕棒を持ち上げて上級戦闘員達へと突っ込む。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 戦闘員達が文字通り簡単に殺されて行く中、紫は廃ビルの屋上で、モニターを展開して赤鬼の戦闘内容を確認する。

 

 「空気を破裂させて、次の一撃を追加で出して、さらにリーチを伸ばす。なるほどなるほど・・・」

 

 能力に感心しながら紫は下で大暴れしている赤鬼を見下ろし、その強さにゾクゾクと背筋を震わせる。

 

 「【指示】通り、邪魔者を孤立させたけど・・・果たして、上手く行くかな。いつも突拍子ないからなぁ・・・そこが【師匠】の魅力でもあるが。ふへへ」

 

 表情の見えない仮面の奥で下卑た笑いを浮かべるが、一瞬でそれを取り払い、紫、ことドクターパープルは上級戦闘員のデータも観測していく。

 

 「・・・面白い事になりそうだ。もしバレたら、【寝返る】つもりでいるよ・・・」

 

 どちらに転んでも紫はとてもこの状況を楽しんでいた。ヘルブラッククロスの科学者はこうでなくては、と。

 

 ドクターミヤコではないが、こういうデータの観測こそ、そして観測に至る道のりこそ、科学者としての欲に負ける・・・というものかもしれない。

 

 「くく・・・ギンジが、公安の女を救出できたら、次の段階、か」

 

 誰にも聞こえない様に呟くと、紫は裏切り者である赤鬼の怪人の戦いへと再び観測に戻るのであった。

 

 

続く

 

 

 




お疲れ様です。

どどどどどどうしよう後書きには、もうキャラネタしか思い浮かばない・・・っと思ったので、今回はゲームの設定についてお話できればと思います。軽くだいたいこんな感じ〜って感じのふわっとしたのをどうぞ

正義のヒーローヘヴンホワイティネス
プレイヤーはヘルブラッククロスの1戦闘員で、怪人カードを使いながらヘヴンホワイティネスと戦う。怪人カードは0〜9のカードを組み合わせて、三枚まで合わせた数字の合計で、ヘヴンホワイティネスへのダメージを与えたり出来る。
触手の怪人のカードと、犬の怪人のカード組合わせたりすることで、様々な必殺技が楽しめる!cg集は全てアニメーションで動き、怪人を強化したり、兵器を造ったりして正義のヒーローを堕とせ!

魔法少女サクラ
基本的にはADVのゲームなのだが、日常編では情報を集めて戦闘ステータスを強化していき、非日常編ではマージ・ジゴックと戦うシーンがある。rpgの様に探索もある。
生意気な元気小娘を堕とせ!

退魔警察・レイナ
基本選択肢式のADVゲーム。
選択肢の幅は広く、最低でも4周は必要な程、cg集が多い。
お爺さんに触られたり、ナルミが人質になったり、触手と・・・だったり。そんなゲーム。全てアニメーションでヌルヌル動く。

※上記3つのゲームはフィクションです。本気にしないでください。

さて次回は、赤鬼の身に迫る危険、ギンジの身に迫る危険、ミドリコの身に迫る危険、そして暴力の怪人達との対話は成功するのか!?

また次回!!!
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