正義のヒーローヘヴンホワイティネス   作:アトラクション

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お疲れ様です、アトラクションです。

お肉美味しい!お肉最高!

お肉が美味しい秋の季節ですが、この世界ではまだ夏です。

暑い季節で、熱い話になればいいなと思います。強引な作りではあるのですが・・・!
それではどうぞ!


34・決戦!サン・アンフェール

 意対化市から帰還し、ギンジ達はミドリコをリビングに呼び出していた。

 

 色々と報告する事はあるのだが、今は彼女の復活を期待して、元気付ける為に、お酒を買ってきてあげた。

 

 「なんでお酒を・・・?」

 

 キッチンテーブルに座りながら、ミドリコはお酒を買ってきてくれたギンジ達へお礼を言うのも一瞬で、直ぐに疑問の声を出す。

 

 「・・・元気無いかと思ったからよ、これで元気出してくれればいいなーってな」

 

 ギンジの心使いに感謝して、ミドリコは赤いラベルの元気が出るお酒を飲んで見る事にする。

 

 色は薄い黄土色でありながらも、強いアルコールの香りがして、香りだけでも度数が高いお酒だというのが、年齢的にも飲めないカエデ達にも解る。

 

 ミドリコは香りに満足して元気になり、みるみる内に顔に生気がやどり始める。

 

 「あ、ものすごい回復して来た顔してる。良かったね、ミドリコ」

 

 こんなにいいお酒なら少し飲んでみたくもなるが、カエデはまだ未成年。飲めないのである。お酒は成人してからが当たり前である。

 

 「それでよ、ちょっと話したい事があるんだけど・・・」

 

 お酒を飲む前にギンジ達が神妙な顔になりながら、ミドリコに意対化市で遭遇した事を報告しようと、ギンジがミドリコの向かいに座る。

 

 それに合わせてカエデ、レンも座る。

 

 「俺たち、意対化市で・・・」

 

 真宵町に到着するなりそこに所属する悪の組織、サン・アンフェールに襲われた事や、それらの悪の組織と戦う正義のヒーローと出会った事・・・そして月島ルカという正義の志を持った人に協力する事を、全て話す。

 

 するとミドリコの顔がコロコロ表情が変わるが、あらかたの話しは理解して、直ぐに返事を返す。

 

 ずっと泣いていたのか、目元は擦れて赤いミドリコは、笑顔に戻りギンジとカエデとレン。仲間達へと、いつもの毅然とした態度を見せる。

 

 「悪が蔓延るなら見放すわけには行かないな。いいだろう、私も協力させて欲しい」

 

 きっと赤鬼もここに居れば、喜んで協力を申し出ただろう。

 

 ミドリコは赤鬼が自分にしてくれた様に、その行動を絶対に忘れない様にと覚悟を決めたのだ。

 

 もう弱音を吐いている場合じゃない。泣き言も言っていられない。

 

 「・・・彼の死を無駄にしないためにも・・・いや、私の心に生きているからこそ、正義の役割を全うしないとな」

 

 もうミドリコには赤鬼の覚悟うぃ受け入れる事が出来た。

 

 それはきっと大人としての余裕か、はたまた正義の志を持つ彼女なりの新しい覚悟か。

 

 無理をしてでも受け入れる事が多い若者達とは違い、直ぐ受け入れようとするミドリコの精神力は非常に強かった。

 

 (済まない、赤鬼・・・君の覚悟、塞ぎ込んだまま、何も受け取らないかも知れなかった・・・)

 

 決意を宿した大人の女性は強い。ギンジはミドリコの強さを垣間見えた様な気がした。

 

 「さーってそれじゃあ、ルカに連絡するわよ!」

 

 いつ決戦が始まるとも聴いていないのに、こちらで進めようとするカエデの行動力には驚くが、レンもギンジもミドリコも悪は野放しにはしておけない。

 

 そう思うとどうしてもヘルブラッククロスにも敗けられないし、同じ正義のヒーローとはできるだけ協力もしておきたい。

 

 「ぶっ飛ばすって約束したしな。俺もやれる事はなんでもやってやるぜ。ルカの想いを助けてやろうぜ」

 

 拳を掌に打ち付けて、ギンジは何故か外に出ようとする。

 

 「どこか行くの?」

 「おう、少しな!ちょっとそこまで・・・だけど」

 

 少し不審な思いを寄せるレンへと、ギンジはそれだけ伝えるとカエデハウスから出る。軽く散歩するぐらいの気持ちで、ギンジは赤鬼と戦った高台の公園へと脚を進める。

 

 真夏の夜はまだまだ続きそうだが、今日は月が輝いていて、ほんの少しだけ涼しい。

 

 「悪の組織ってどうやって潰すか解かんねぇからな・・・頼れる仲間に、俺も連絡しようかね」

 

 スマホを取り出してギンジは、頼れる協力者であるサクラにメールを送る。もし気づくのが遅くても、サクラにも生活がある。

 

 無理強いだけはしないが、諸々の事情を伝えて連絡の折返しを待つことにする。

 

 「よし。次は・・・」

 

 熊沢レイナへと直接電話をする。レイナにもサクラと同じく生活があるのだが、悪が絡んでいるのであれば協力はしやすいかもとギンジは思う。

 

 『もしもし、ギンジか?どうかしたかな』

 「1コールで出るなんて、流石だな」

 

 電話連絡を行おうとして、コールをかけたのだが、レイナは一瞬で出た。

 

 『まぁ、ギンジからの連絡ならば、出ないわけには行かないからな。それで用件は・・・ついに退魔師になる決心がついたのかな?』

 

 相変わらずの退魔師勧誘だが、今回の用件は違う。

 

 「その話しはまた今度で。で、急で悪いんだけど頼みたい事があってさ・・・」

 『君の頼みなら是非も無い。なんでも言ってくれ。ぬ、脱げばいいかね?』

 「どうしてそうなる!脱ぐな!」

 

 レイナのスタイルはモデル体型並みである。その事を実際に海で見て知っているギンジは、きっと脱いだらスゴイというのは容易に想像できるのだが、今は違う。

 

 下心が無いわけではないがとにかく違う。

 

 「ちょいとヘルブラッククロスとは違う、別の悪の組織とぶつかってよ・・・」

 

 サクラにメールで送ったのと同じ様な内容を諸々話して、話しを聞いたレイナは了承してくれる。即断即決とも言える様な彼女の言動は、口の悪い令嬢や、無口なビーム剣術使い、所構わずロケットランチャーを発射する女達とは大違いだ。

 

 かと言って嫌いではないのだが。

 

 『日程が決まったら教えてくれ。意対化市については色々知っているからな・・・』

 

 かつてレイナは如月ナルミという、相棒を連れてゲヘナミレニアムの魔人との戦いに赴いた事が有る。

 

 それ故に色々とトラウマのある場所でもあるのだが、それでもレイナはギンジに協力すると言ってくれた。この感謝は後で何かお礼をしないと行けないだろう。

 

 「ありがとう、レイナ。詳しい事はまた連絡する。うん、うん、あーオッケー・・・いやそれは嫌だ」

 

 最後の最後までレイナは退魔師勧誘を勧めて来たが、これだけは断って、ギンジは電話を切る。

 

 夏の夜空は熱気を上げて、綺麗な空を展開させる。

 

 この高台の公園は遮るモノが無く、星空が良く見える。

 

 (皆で、星とか見るのも風情があって楽しいかもな)

 

 ヘヴンホワイティネスの面々で、こんな綺麗な星空を見に行くのもきっと楽しいかもしれない。

 

 「・・・よし、後一人!」

 

 星空を眺めるのもそこそこに、さらなる協力者を呼ぶ為に、ギンジは一度カエデハウスに戻ることにする。

 

 その協力者というのは、ギンジが知る中では現状、最高の戦力になる人物。

 

 「呼ぶならミヤコが居ないと駄目かもな・・・」

 

 戻りながらギンジはドクターミヤコの協力も得ないと行けない。しかし彼女は今は寝不足と研究、更にはギンジ達の装備関連のメンテナンス関連で深い眠りについている。

 

 協力者を呼ぶなら、翌日・・・更には早朝がいいだろうとギンジは考え、今夜は少し早めに寝る事にした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「くふふふ・・・早朝に呼び出すなんて、ギンジ君もついに我慢できなくなった?」

 

 早朝。まだ夜明けの光が登り初めてすぐの時間。正確には、4時近い。

 

 夏というのは夜が明けるのも早く、直ぐに暑い空気が舞い上がるそんな時間帯。

 

 「お前に少しだけ協力してほしくてよ」

 

 ギンジのすぐ隣であらぬ妄想を口にしながら、くねくね動くミヤコをよそに、カエデハウスの屋上に二人で出てくる。

 

 眩しい日差しが入り始めるさなか、ミヤコは軽く身体を伸ばすと、ギンジの顔を見つめる。

 

 サングラスをかけたいつもの見慣れたギンジの横顔は、思わず直視ができなくなるほどかっこいいとさえ思う。このまま予定等全部取っ払って、一緒に居たいとミヤコは考えてしまう。

 

 「ほれ、捕まってろ」

 

 これから向かおうとする場所は、繁華街エリア。

 

 ギンジはミヤコに手を伸ばすと、顔を逸らしてその手を握ろうとする。

 

 「これから空飛ぶからよ、落ちないようにしてろよ。あ、言っとくけど、変なとこ触るなよ!」

 

 もし飛んでる時に何かされれば事故りかねない。

 

 釘を刺したギンジは、ミヤコの手を引っ張り上げて、お姫様抱っこに近い状況になる。

 

 背中から肩へと回るギンジの腕の硬さ太さと熱を感じて、顔が熱くなっていく。

 

 見上げればギンジの顔がそこにはあり、昔絵本で呼んだおとぎ話の王子様をこの眼で見たような気分に、さながら自分はお姫様になった様だ。

 

 嬉しい。こうしてもらえる事が。

 

 必要とされて、これからの目的の為に、自分を頼りにしてくれているのが、本当に嬉しい。

 

 (・・・本当に、好きになり続けちゃうな)

 

 心の中でそう呟くと、ミヤコは全身がさらに熱くなるのを感じていく。もうこの気持ちが抑えられない・・・そうなってお互いが溶け合えればいいのにと、しばらくはそう思い続ける。

 

 この瞬間をずっと独り占めしていたい・・・。

 

 好きになる。このときめきが、ずっと増え続ける。お腹が熱くなる。頭が焼けそうな程、ギンジから眼を離せなくなる。

 

 「じゃあ、飛ぶぞ。しっかり掴まってろよ」

 「ほわぁ・・・え?あ、うん!はい!」

 「元気な返事だな・・・」

 

 一瞬このままでも夢見心地になっていたが、現実に引き戻されてミヤコはギンジの首に腕を回す。

 

 匂いを、身体の汗を、肌の感触・・・どれをとっても今のミヤコには発情する為のクスリにしかなっていない。

 

 (はぁ〜〜・・・駄目だよ。全部、全部全部ぜんぶぜんぶ・・・)

 

 抑えきれなくなりそうな、理性の上限を簡単にブチ破る本能が、脳内を焼き切って、しかしそれでも嫌がるかもしれないから、ミヤコはなんとか耐える。

 

 耐えようと思って、でも我慢できなくなって。

 

 「ミヤコ、具合悪いか?」

 「へぇ?ら、らいじょーふでしゅ・・・」

 

 顔がどんどん熱くなって、赤くなっていくミヤコを、飛び立つ前のギンジは、少し心配になる。もし体調が悪いなら、あまり無理はさせたくない。

 

 昨日も寝不足だったミヤコの身を心配するギンジの事が、どんどん好きになる。

 

 恋をすると人は馬鹿になる。それは天才科学者・ドクターミヤコも例外では無かった。

 

 「無理すんなよ?・・・じゃあ、飛ぶぞ」

 

 コウモリの羽を展開させて、ついにカエデハウスの屋上から飛び立つ。

 

 ふわりと浮いて夏の風を感じる。肌にまとわりつくような、暑い空気は一人の少女を狂わせるには十分なスパイスになる。

 

 それだと言うのに、なんども近づこうとしている顔が凛々しくて、かっこよくて、無理やり襲おうとは思えなくなる。

 

 少し強く腕に食い込むギンジの指を、右手で愛おしく触れると、今はこれで我慢しとこうと思うミヤコだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 早朝の繁華街。人の出入りが激しいこの街も、早朝だと閑散としている。

 

 決して人が居ないわけではない。サラリーマンや、朝からオープンするお店の準備等で働くスタッフ、犬の散歩をする老人や、辺りを見渡せばそれなりには人がいる。

 

 そんな中、グラサン男と、白衣をセーラー服の上から着た少女は、未だ取り壊されてから、再建設を行われていない、元ショッピングモール・アモーレの裏路地へと脚を運んでいた。

 

 ここはかつて、ギンジとヘヴンホワイティネスが邂逅した場所。ここでギンジは裏切りの為の一歩を踏み出した、歴史の動いた場所。

 

 「ミヤコ・・・さっきから大丈夫か?」

 

 ギンジの少し後ろを歩くミヤコは、興奮さめやらぬ顔で、内股しせいに項垂れながらも、呼吸を荒くひょこひょこ歩いている。

 

 普段人に見える程汗をかかないミヤコが、頬から顎下へと、雫を落とすぐらいにはその汗が見て取れる。

 

 「くっ・・・ふふふ!大丈夫、大丈夫。軽く、い、いやなんでもないです・・・はぁーはぁー・・・くふふふくふふふ・・・っ」

 「明らかに大丈夫じゃなさそうだけど」

 「駄目!今、優しく触られたら、きっともう、今度こそ・・・暴走しちゃうよぉ」

 

 この小さな少女は何を言っているのか。

 

 荒い息使いでなにやら話すミヤコに、本能的な恐怖・・・甘く可愛く全てが溶けてしまうような恐怖が、一瞬だけギンジの背中に走り、ミヤコから離れる。

 

 「いて」

 

 離れた背後には、硬い何かがありそれにぶつかってしまう。

 

 「なんだ・・・?」

 

 振り向いたギンジの視線には、軍服に身を包み、鼻息を強く出す豚顔の大男・・・。

 

 「ブヒ。リゾートホテル以来だな、ギンジ。そして」

 

 ギンジを押しのけて、大男は向こうにいる少女、ミヤコへとゆっくり歩き出す。

 

 近づくと膝を折りながら頭を下げる。

 

 「くふふふ・・・久しぶり、オーク怪人。無事な様でなによりだよ」

 「はっ。このオーク怪人、ドクターミヤコを奪われた罪で、ヘルブラッククロスから除名されておりますが、今でも貴女への忠誠に違わぬ働きを、これからもずっとしていく所存です」

 

 ギンジの背後に現れたのはオーク怪人。

 

 元・ヘルブラッククロス初の怪人大幹部で、6月30日には音楽堂にてドクターミヤコを守護る、最後の盾となった強敵。

 

 ドクターミヤコが敗北して、ヘヴンホワイティネスに捕虜にされた事を罪として、ヘルブラッククロスから除名されてしまった孤立無援の状態となっている。

 

 「グッドタイミングだぜ。オーク!」

 「・・・私に何か用か?二人とも取り込み中ではなかったのか?」

 「くふふふ・・・ギンジ君てば、お外で、その・・・シタいらしくて・・・」

 「なんだと!?どこまで進んだんだ!教えろギンジ!」

 「話がややこしくなるから黙ってろ・・・」

 

 ギンジが探していた協力者は、まさしくこのオーク怪人。本当にここに現れてくれてタイミングがよかった。

 

 だと言うのに、ミヤコがまた変な事を言い始める。

 

 「ほ、本当はね・・・外で、強引にサレそうで・・・」

 「本当か!?合意ではない事は許されんぞ!どこまで進んだ!」

 「よーしお前ら二人共ぶっ飛ばすから、少し黙れコラ」

 

 金棒を出現させて取り出すと、ギンジは本当に脅しをかけようとするも、ミヤコがスカートをあげようと手を出す。

 

 「ぼ、暴力的なのがお好みなら、いいよ?いっぱいぶって・・・?」

 「ギンジ貴様!SM系までやってるのか!?どこまで進んだ!」

 「うるせええええ!!!」

 

 金棒がオーク怪人の頭に突き刺され血の噴水を吹き上げると、ギンジはミヤコの手を取りながら説教する事になる。

 

 その手を握られて、ミヤコは先程言っていた暴走のスイッチが入ってしまった・・・。

 

 「いやああああ!!!!」

 「くふふふふ!!!!」

 

 うつ伏せに倒されてしまい、背中に乗ってきたミヤコは、ギンジの首の後ろに舌を這わす。

 

 「ほう・・・主従逆転か・・・興味深い」

 「いいから助けろこの豚野郎!・・・あっ♡」

 

 ゾクリと身体が震える所を、柔らかくて小さな舌が這い回る事で、ギンジは高く可愛い声が出る。

 

 「ギンジは実はドMと・・・」

 

 丁寧にメモに書き記すオーク怪人に、再び金棒を投げつけてミヤコの暴走への抵抗手段をなくしたギンジは、路地裏で絶叫を上げる事になるのであった。

 

 「くふふふ・・・もう、逃げられないよ。オーク、そっち抑えて」

 「了解です、ドクター!」

 「アホしか居ねぇのかヘルブラッククロスはぁあああ!!!!」

 

 それから暴走を止める為に、そして話の本題に入る為に昼頃まで戦う羽目になったギンジは、心底疲れてしまった。

 

 ──でも女の子にここまで言い寄られるなんてのは、無かったことだし、嬉しくはなったな。うん。いや、ほーーーーんの少しだけな?強引なのは嫌だけど。顔が可愛いから、そのうち本気になったらどーすんだバカ。

 

 そのままお昼頃・・・。

 

 「ごめんなさい、ギンジ君が可愛い声だすからつい・・・」

 「ブヒ、ドクターが謝る事なんてありません。こいつが意気地なしなのが悪いのです」

 「お前らなー・・・」

 

 普通に戦うよりも、いつも以上に疲れてしまったギンジは、へたりとそこに座り込む。

 

 ミヤコは顔がつやつやとしており、元気そのもになった。

 

 オーク怪人も軍服のズレを直して、軍帽の埃を落とす。

 

 「話の本題に入ってもいいか?」

 「くふふふ。式はいつ開く?」

 「お前本当に黙ってろ」

 

 そろそろ収集が点かなくなって来るので、ここらで本当にふざけるのをやめてもらう。

 

 「ブヒ。私に何か用があるらしいが、何用だったのだ」

 

 オーク怪人の毅然とした態度は、どこか以前よりもトゲが無い雰囲気を持たせる。

 

 「ちょっと悪の組織をぶっ潰そうと考えててよ」

 

 月島ルカの戦いの話を説明して、ミヤコもこの話に賛同してくれる。

 

 サン・アンフェールとの戦いとは本来関係無いし、誤解を恐れず言うのであれば気にしなくてもいい筈だった。

 

 そもそもヘルブラッククロスとも、何度か小競り合いを起こしている敵対組織である為、ミヤコは二つ返事で答え、オーク怪人は少し考え込む。

 

 「一つ聴きたいのだが、どうしてギンジがそこまで、そのムーン・パラディースとか言う自称正義の組織の為に、力を貸してやろうと言うのだ?」

 

 怪人として、人間らしさを捨てている者はそれなりに多い。

 

 ギンジのやってる事は、会ったばかりの友達の為に、力を貸すというお人好しにも近い行動をしている。

 

 それを見て聴いてオーク怪人は、どこか自分には無いモノを持っているギンジへと、純粋な疑問が出来てくる。

 

 「どうしてって、言われてもな」

 

 サングラスを掛け直して、オーク怪人と眼を合わせる。

 

 ギンジはここまで怪人として生きているのに、自分を人間と信じて疑っていない。たまたま自分が戦える力があるから、それを暴力ではなく、何かを守れる力として振るっているだけ。

 

 誰かと助け会えないまま死んだからこそ、転生したこの世界では誰かを助けられる、助けてもらえる、助け合える世界にしたい。

 

 ヘヴンホワイティネスに協力するのもそれが動機で、理由である。

 

 ならば・・・ムーン・パラディースに協力するのも、これが理由になる。

 

 「別に。困ってたら助けてあげたいだろ。オークだって、ミヤコが困ってたら、理由なしに手助けするだろ?」

 「・・・ふん」

 

 軍帽でその眼は見えないが、オーク怪人は納得が行った様で、深呼吸をしながら鼻を鳴らした。

 

 「私は、何をすればいいのだ」

 

 真っ直ぐと見つめる黒く赤い瞳は、ギンジへと向けられる。

 

 「とりあえず、都合よく話するには場所を変えようぜ」

 

 オーク怪人という協力者を探すミッションは達成した。一度カエデハウスに戻り、細かい事はそこで話そうとするギンジだったが、オーク怪人は首を横に振る。

 

 「くふふふ、どうしたの?」

 「いえすみません。ヘルブラッククロスのアジトを探しておりましてね」

 

 オーク怪人がこの路地裏に居て、偶然ギンジ達とぶつかったのには、そういう理由があった。

 

 しかしオーク怪人がどこを探しても、光を通さない闇の路地裏が一切出てこないという。

 

 以前カエデとギンジがパトロールで探した時も、道がなくなっており何かの店が出来ていた事を思い出す。

 

 「もし見つかれば、もう一度組織の動向を探ろうと思ったのですが・・・思うように行かず、申し訳ありません」

 

 ドクターミヤコの抹殺。そんな総統のミッションにより、オーク怪人はそれに理解を示せず、除名されている。

 

 ドクターミヤコを守るのであれば、組織の動向は常に頭に入れておかないといけない。

 

 「くふふふ・・・オークは、わたしが組織に戻るなら、君も戻るのかな?」

 

 ミヤコの発言はギンジに警戒心を持たせる。もちろんミヤコからすれば戻りたい等とは思ってもいないのだが。

 

 「貴女が戻るのであれば、私はついて行きます。今は共に行動は出来ませんが、必ず貴女の下についていくのは、怪人として当然の事」

 

 どうしてコレほどまでに忠誠心が高いのか。

 

 「それに、この繁華街から離れるとしたら、その時は紫が出て来た時だけです。奴は何か怪しい」

 「・・・そうだね」

 

 オーク怪人の発言に、ミヤコは笑わずに返答をすると、何か違和感を感じたギンジだが、それは直ぐに忘れる事にする。

 

 「サン・アンフェールは意対化市にいるのだろう?殲滅の為に向かうのであれば、それは構わないが・・・ギンジ、ドクターその際どこに置いておくのだ?」

 「俺たちのアジトの予定だけど・・・」

 

 オーク怪人の心配の種は、ミヤコ抹殺に動く戦闘員や怪人達の行動。それを阻止する為にギンジに任せていたのに、件の殲滅ではまさかの置いてけぼりをさせようと言う。

 

 「でも、見つからない場所だし、わたしも妨害電波ぐらいは・・・」

 「駄目です!ギンジから離れてはいけません!貴女を抱く事が許される唯一の男なのですぞ!」

 「本当にぶっ殺すぞ」

 「とにかく!ドクターも作戦に参加させるのだ、ギンジ。そうでなかれば安全は保証されないし、私も参加せんぞ」

 

 悪の組織を潰す為の作戦の話をしに来たのに、なんだか話がややこしくなってしまった。

 

 「解ったよ・・・ミヤコも作戦には連れて行く」

 「ブヒ、それでいい。む、そうだ、これを渡しておく」

 

 軍服から端末を取り出し、ギンジに見せる。画面にあるのはチャットアプリ、ライーン。よく若者達が連絡の用途に使うよくあるアプリだ。

 

 「ふりふりすると連絡先が交換されるぞ」

 「なんでそんな使い方知ってるんだ」

 「IDの方がいいか?それともQRコードか?いや、電話番号か?」

 「ふりふりでいい!貸せ!」

 

 奪い取るとそのまま自分の端末とオークの端末をふりふりして、お互いの連絡先を交換する。

 

 【さすらいの叉焼横綱さんが、あなたとお友達になりました!】

 

 写真のアイコンはドクターミヤコ。しかも怪人になる前の、綺麗な人間の白い眼をした時のモノだ。

 

 「細かい作戦が決まったら追って知らせてくれ。私はしばらくここに居る」

 

 言うとオーク怪人は最後にミヤコへ敬礼をして、ギンジへと笑みを投げると路地裏の奥へと歩いていく。

 

 「・・・必ず来てくれよ。お前の力が必要なんだ」

 「ブヒ、心配はいらん。ドクターがいるなら必ず行く」

 

 未知の強敵と成り得るサン・アンフェール。それを倒すためにはとにかく戦力を広げておきたい。

 

 手を振って見送ると、ギンジとミヤコは空腹でお腹が鳴る。

 

 「・・・何か食べるか」

 「くふふふ。わたしのはちみつ漬けとかいかが?」

 「・・・」

 「・・・え?だめ?」

 

 もうめんどくさくなって悲しい目で見つめるギンジへ、ミヤコは素になった反応を見せる。その小顔をかしげる動作がやはり可愛らしく、ドキンと鼓動が早まる気がした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 月島ルカは、夏休みを利用して居なくなってしまった仲間や、守れなかった友人の墓参りに来ていた。

 

 一人ひとりそれぞれの思い出を、懐かしむかの如く彼女はお供え物を置いていく。

 

 「・・・これで最後かな」

 

 もうこうやってお墓に来る事は、これで最後になるかもしれない。

 

 いつか決着を付けようとして、今日まで長引いてしまった。一人で戦っていたのだから、時間がかかるのは仕方ないが、それでもあまり悠長には出来ない。

 

 「あとは・・・」

 

 一枚の手紙を持ってルカは真宵町に戻る。

 

 決戦に出る報告を、墓石の全部に伝えて来た。

 

 病院に居る仲間二人にも、決戦を伝えた。カナミは動かなかったが、少しだけ指先が動いた。

 

 ナズナは快楽の波に揉まれながらも、こんな身体にしたあいつらを全部やってけてくれと鼓舞してくれた。

 

 残るは・・・。

 

 「シズハ・・・今から行くからね」

 

 ルカは夏空の下でより強い決意を宿した瞳で、霊園を力強く歩いてく。

 

 真宵町の住宅街エリアの、ほんとに小さな家に着くとルカは呼び鈴で呼び出すと、いつもの様にシズハの母親が出てくる。

 

 戦いの事情は知らないにしても、友達であったルカが来てくれると、嬉しく思ってくれているらしい。

 

 「こんにちは!あの、シズハは・・・」

 「いつもの感じよ。ずっと泣いているわ」

 「・・・っ」

 

 シズハがさらわれた時、助けに行くのが遅れた事を思い出してしまう。今まで忘れていた訳ではないが、悲惨な状態になるまでボコボコにされてごみ捨て場に置かれていた彼女を思い出し、怒りと屈辱がこみ上げる。

 

 目的を一瞬忘れそうになったが、ルカは手紙をシズハに渡して欲しいと、シズハの母親に手渡す。

 

 「・・・必ず、読んでくださいって、伝えてください」

 

 ルカはそれだけ告げると、シズハの家から離れていく。もう二度と会えない彼女へ、精一杯謝罪と、今までの戦いに関する感謝を込めて、さらには自分が決着をつけに行くという内容のモノ。

 

 「・・・必ず、僕は・・・勝つから」

 

 その目線はもう迷いは無く、真っ直ぐ先を見つめていた。

 

 ヘヴンホワイティネスと協力し、サン・アンフェールを倒す。

 

 その最後の戦いにおいては、死んでもいい。勝つ為に、絶対敗けない為に、月島ルカは自分の正義の為に、自分の命を賭けて戦いに挑もうとしていた。

 

 人々を怖がらせ、悲しい気持ちにさせ、自分達の私利私欲で仲間が一人ひとりひどい目に合わされた。

 

 「この報いは・・・必ず受けてもらうぞ、サン・アンフェール!」

 

 月島ルカの最後の戦い、最初で最後の命を賭けた決戦は、刻一刻と迫っていた。

 

 そうと決まれば、決戦の日程を決めて、カエデ達に連絡を送る。

 

 ありがたい事に、彼女達はいつでも協力してくれると言う。

 

 (彼女達は強い。きっと僕よりも)

 

 ならば、死ぬほど強い覚悟で共に戦わねば失礼になる。

 

 死にたくはないが、死ぬかもしれない覚悟を改めて強く持ち、ルカは決戦の日程を決めるのであった・・・。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 真宵町の外れにある高級感のある宮殿。太陽を模した形をした宮殿の高部には怪しくも神々しい光を宿して、夜の真宵町を明るく照らしていた。

 

 サン・アンフェールの本拠地・・・。

 

 ここに宣戦布告を送りつけようとしたギンジの指示で、ミヤコからの通信インフラの妨害と、ルカの手書きの果し状を送りつけ、タイヨーズは怒りを顕にしている。

 

 側近の美女を全員殴り殺す程には、その怒りの色が強く出ていた。

 

 兵隊達を全て迎撃と警護に向かわせて、タイヨーズは王座にふんぞり返っているだけ。

 

 長く腹にまで届きそうなヒゲを撫でると、次はその瞳に宿した悪しき太陽の光が輝く。その姿の背後からは朝日の様に清らかなのに、邪悪な力が宿る後光。

 

 「我ら太陽の化身に逆らうか、月に踊らされた愚かな人形共め」

 

 その声は広間に響かず、おそらくは誰にも聞き取れない。そんな小さな声でもはっきりと殺意を込めた発言に、また側近の美女が震える。

 

 もう一人いた美女が宥めようとして殺されている。それを見た生き残りの側近はもう余計な事は言わない。

 

 「お前・・・何を震えてるんだ?太陽を前にして、寒いのか?」

 

 熱が出る。人体を簡単に焼く熱が。

 

 その熱に煽られて、美女がまた一人泣き叫ぶことも出来ずに焼け死ぬ。

 

 焼け焦げた死体を踏み砕き、タイヨーズは再び王座に座る。

 

 「来るなら来い・・・ムーン・パラディース」

 

 決戦の日が始まっていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 宮殿の外では、見張りの兵隊をぶっ飛ばして、ギンジがルカと並び立っていた。

 

 「本当に今日でいいんだな?っていうかもう来てるんだけどよ」

 「ああ・・・今日でいい。今日が、ムーン・パラディースの最後の戦いの日だ!」

 

 ルカの言葉にギンジが頷く。

 

 その背後では、カエデ、レン、ミドリコ、ミヤコが合流して、さらにはサクラとレイナ、一番後ろにオーク怪人が出てきていた。

 

 集まった面々はそれぞれ理由はあれど、ギンジの協力としてここに来てくれた。

 

 憧れの人々がここに集い、ルカは泣きそうになるが、今はまだ違う。泣く時ではない。

 

 甘白ミドリコ。

 

 宮寺レン。

 

 神宮カエデ。

 

 佐久間ギンジ。  

 

 月島ルカ。

 

 ドクターミヤコ。

 

 オーク怪人。

 

 小町サクラ。

 

 熊沢レイナ。

 

 ・・・。

 

 ヘヴンホワイティネス、魔法少女、退魔警察、元ヘルブラッククロス、そしてムーン・パラディース。

 

 悪の組織を潰す為の戦いに、ここまでの同士が揃った。

 

 佐久間ギンジとは何者なのか・・・。

 

 ここまでの戦力を集めて、自分の為にここまで協力してくれる男に、ルカは深い感謝と尊敬を込めて、横目でチラリと見る。

 

 サングラスの奥から覗ける瞳は、人間のソレではないというのをなんとなく解ったのだが、今はどうでもいい。

 

 豚顔の怪人とも面識が有る所を見ると、やはりギンジ個人は只者ではないと思う。

 

 「よっしゃ!オラ、さっさと突撃しようぜ!」

 

 ギンジがはしゃぎ初めて、カエデがチョップのツッコミを入れる。

 

 「いいわよそんな事言わなくて!っていうかなんでオーク怪人まで居るの!?」

 「ブヒ。ギンジがどうしても言うから来てやったのだ。あんなに土下座されれば・・・仕方ないだろう」

 「してねぇよ土下座なんか!」

 

 オークの小ボケにすぐにツッコミを入れるギンジだが、その後ろではレンが何やら笑い始める。

 

 「そういえば、ギンジは、私達と初めて会ったときも、土下座してた」

 「懐かしいわね。コンクリートを破壊した土下座ね」

 

 カエデとレンがわいわいと話し始めて、アモーレの戦いの時の思い出に、ミドリコも混ざりながら和気藹々とし始める。

 

 「まったくカエデったら〜緊張感ないんだから〜」

 「ふふ、まぁ良いじゃないか。ギンジ達らしい」

 

 そこへサクラとレイナが混ざり更に会話は混沌とし始める。

 

 「くふふふふ・・・あの時、ギンジ君が離れちゃって、わたし、すっごい寂しかったんだよ?」

 「ブヒ。ドクターはいつもギンジの身を案じていましたからね」

 

 なんなのだろうか、彼らは。

 

 不思議な繋がりなのに、それぞれ結束力が高く感じる。それなのにこの余裕。

 

 少しだけ緊張で張り詰めた糸が解けて、ルカはこわばった思いが抜けていく。

 

 「長話してる場合じゃねーし、そろそろ行こうぜ!ルカ!」

 

 ギンジが混沌とした会話に区切りをつけると、ルカを大声で呼ぶ。

 

 「お前の戦いだ!俺たちが好きに暴れる為に、開戦のゴングを鳴らしてくれ!」

 「ぼ、僕でいいのかい?」

 

 好きに暴れる事に許可はいらないでしょ、と隣でカエデがギンジの頭を叩き、再び言い合いを始める。

 

 その様子を見るとカエデとギンジの距離感が近い事に、少しだけ得も言われぬ感覚が胸の中で広がるが、一瞬でそれを消していく。

 

 「それじゃあ・・・皆、僕の戦いの為に、来てくれてありがとうございます」

 

 ルカはムーン・パラディース最後の一人として、今日まで戦ってきた。今日はその戦いに決着を付ける日。

 

 敵の層は暑く、もしかしたらボスであるタイヨーズの下に到達出来ず、死んでいたかもしれない。

 

 「必ず、勝ちます!暴れてやりましょう!!!」

 

 ルカの言葉に、協力者達が士気を高める。

 

 「ふふん。ヘルブラッククロスを潰す前の前哨戦って感じだわ!」

 「同意。ここまで来たら、こんな所で、敗けられない」

 「油断するなよ、二人とも。それからギンジもな」

 

 カエデの言葉にレンが同調して、ミドリコが釘を刺していく。

 

 もう仲間を失う訳には行かないと意気込んでいるミドリコに、カエデとレンはニッと笑うと3人で頷きあう。

 

 「よーし、上から爆撃しちゃおう!」

 「私も新必殺技を引っさげて来たのだ。本気で行こう」

 

 サクラとレイナは既に悪の組織を潰した経験がある正義のヒーロー。

 

 二人の女性達もギンジへと協力を飲んで、ムーン・パラディースとの戦いに参加してくれた。

 

 こんなに心強い同士は1000人の味方を付けた気になる。

 

 「くふふふ・・・わたしはお月さまも魔法も退魔師も興味ないけど、今回はギンジ君の頼みだからね。協力してあげる。ほい、ポチッと」

 

 ボタンを押したミヤコが宮殿の電子ロックを解除させて、鉄柵が開かれる。

 

 「流石です。ドクター・・・」

 

 鉄柵が開かれた事で、宮殿の中から兵隊達が慌ただしく出てくる。

 

 「なんだお前らはぁ!」

 「ブヒ。【お前】?誰に向かってその口を開いたぁ!!!」

 

 オーク怪人が地面を蹴り出して突っ込むと、複数の兵隊達が吹き飛ばされる。

 

 そこへイノシシの姿をしたサン・アンフェールの幹部がオーク怪人と激突をして、オークの巨体がミヤコの下へと押し返される。

 

 「ブシシシ!なんだぁ、ムーン・パラディースは動物園でも始めたのかぁ?」

 「チョトツ・・・!」

 

 突撃に続こうとしたルカの表情が険しくなる。

 

 「そんな小娘に従うこぶたちゃんはこのチョトツ様がいじめてやるぜブシシシ」

 「【小娘】・・・?貴様、ドクターを愚弄したな」

 「こぶたはいいのかよ・・・」

 

 おどけて見せたチョトツの態度よりも、ミヤコを馬鹿にされたオークが怒り始める。

 

 「くふふふ。勝てるよね?」

 「無論です」

 

 兵隊達が引き続き襲い来るが、オーク怪人の左右からカエデとレンが飛び出て、兵隊達をなぎ倒す。

 

 「邪魔よ!」

 「退いて。リーダーが通れない」

 

 その上空からはギンジが金棒を振り下ろし、隕石の如く落下して宮殿の入り口に大破壊を発生させる。

 

 そこに続いて次はロケットランチャーが次々と発射される。

 

 「悪は許せないのでな!ここで潰させてもらうぞ!」

 

 ロケットランチャーはまだまだ変えがあるのか、背中、腰、肩にとりつけており、いうなればランチャーアマゾネス・甘白ミドリコと言うべきか。

 

 「ルカ!カエデ!宮殿に行くぞ!」

 「解ったわ!行くわよギンジ!」

 「何ボサッとしてんだ!ルカ、早く来い!お前の戦いだぞ!」

 

 ルカはこんなに心強い仲間に背中を押されている。

 

 ムーン・パラディースの最後の戦いは始まったばかりだ。

 

 「行ってきて、リーダー。後から、私も、追いつく」

 

 レンの言っていたリーダーとはルカの事であった。

 

 ギンジ、カエデ、ルカがレンの言葉に力強く頷くと、彼らは兵隊達を蹴散らしながら宮殿へと攻め入る。

 

 「おーい!私達は上から行くね〜」

 「ギンジ!月島君!また後で!」

 

 サクラの魔法で浮きながらレイナは下にいるギンジ達にそう告げると、宮殿の屋上へと進む。

 

 「あわわ、こっちにもなにか居たみたい」

 「私達なら問題ない!正義の味方の為に協力しに来たのだ!」

 

 サクラとレイナの目の前に立つのは、赤いコートを着た半裸の男。

 

 陽の色を宿す剣を携えて、男は二人の侵入者を迎撃に向かう。

 

 「俺はサン・アンフェール幹部・ゾネ。見たことしか無かったが、魔法少女と退魔警察だな?」

 

 ゾネと名乗った男は剣を二本引き抜いて、サクラとレイナの攻撃を軽々と弾く。

 

 「兵隊は弱いと聴いていたが、幹部は違うみたいだな」

 「油断しないで行きましょ、レイナさん」

 

 レイナが破邪の剣を展開し、サクラはステッキにまたがったまま魔法の準備を整える。

 

 「ここで絶対に止めるぞ!こいつは強いみたいだしな」

 

 レイナの言葉に気迫を感じ、ゾネはニヤリと剣の先を二人の女性に向ける。

 

 「俺は実力が本格派なんでな。お前らみたいのと戦えるなら、思う存分やれそうだぜ。がっかりさせてくれるなよ」

 

 宮殿の入り口ではオーク怪人がチョトツと豪腕を絡ませ、力の押し合いが始まっている。お互い拮抗した力に、ミヤコは余裕そうに戦いを眺めている。

 

 「ミドリコ、あの兵隊、任せてもいい?」

 

 レンが指差した先にいるのは、腕をライフルに改造したであろう兵隊のリーダー格。狙いをこちらに定めて、今にも銃を発射しそうな雰囲気だったが、ミドリコはそれをランチャーで妨害する。

 

 「私がミヤコの防衛に回る。レンも宮殿へ!」

 「了解。無理しないで、ね」

 「君もな!」

 

 あらかたの兵隊達は倒され、今度はレンが宮殿へと走り出す。

 

 宮殿に入ると既に兵隊達はボコボコにされて、いたる所に倒されている。

 

 「ほほほ・・・まだ侵入者が居るのですか」

 

 女性の様な声音だが体つきは男。

 

 怪しくも美しい着物の様な服装で、大きく胸元を開けた芸者の様な達振る舞いの男がレンの目の前に立ちはだかった。

 

 腕を覆う大きな袖から、大きな扇子を二つ構えてレンの目の前に現れる。

 

 「初めまして。わーしはソル・レヴェンテ。一応幹部でやらせてもらってます」

 

 ビーム剣を二本、デュアルの形状に変えるとレンはソルと名乗った男へ問答無用で攻撃を開始する。

 

 「ほほほ・・・お強い女性ですね」

 「何か、芸ができるなら、今のウチ、だよ」

 「あなたがバラバラになる芸なら、わーしは出来ますよ」

 「ほざいてろ」

 

 ギンジから学んだ喧嘩口調を言うと、ソルは顔に血管が浮かび上がる。

 

 「友達が、平和を望んでるの。邪魔しないで」

 

 本当はレンは自分の未来を守るために戦っている。だけど友達になったルカの未来を守るのも、今の自分の使命なのだ。

 

 正義の為に、彼女は戦に身を投じた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 「ムーン・カッター!」

 

 ルカの必殺技が兵隊を倒し、その後ろでギンジは興奮する。

 

 「すげー技だな・・・カエデもなにか飛び道具ないの?」

 「あたしは無いわよ。近づいて攻撃する。それだけ!」

 

 単純で分かりやすい戦い方に、ギンジとカエデは笑い合う。

 

 「ルカ、大ボスのタイヨーズってのはどこに居るんだ?」

 「宮殿の最上階!あいつは太陽の化身とか言ってるから!上の方がお好みなんだよ!」

 「なるほど。太陽だからか・・・頭悪いんじゃね?」

 「あたしもそれ今思った!」

 

 走りながらギンジは炎で兵隊を焼き払う。

 

 カエデも衝撃で兵隊を打払い、ルカのサポートに回る。

 

 ルカの背後に迫る兵隊はカエデが倒し、カエデの背後に迫る兵隊はギンジが倒す。

 

 そしてギンジに迫る敵は・・・ギンジ自身が倒す。

 

 「ニャハハハ・・・暴れ過ぎだ」

 

 細い通路にて走るルカ達の前に、ネコの様な見た目をした怪人というのが正しいのか解らない見た目をした怪物が現れる。

 

 「ガット!?馬鹿な、倒したはず!」

 

 この怪物はルカが最後の一人になった時に、苦戦しつつもなんとか倒した敵性存在。

 

 一人で倒すのも苦戦した覚えのある怪物だが、ルカ、ギンジ、カエデは臨戦態勢に入るが、ガットと呼ばれる怪物はニタリと嗤う。

 

 「やるぜカエデ!」

 「立ちふさがるなら容赦しないわよ!」

 

 ガットが爪を出して、彼も戦闘態勢に入る。

 

 「二人とも、そいつは手強い。ボスのタイヨーズが信頼する側近で・・・」

 「大ボスの足元に這いつくばる子猫ちゃんが、本当に手強いのか?」

 「きっと弱いだろうから、ギンジとルカは先に行っていいわよ」

 

 完全に舐めてかかっている侵入者に、ガットが怒りを顕にする。

 

 「いいわよ、ここはあたしに任せてちょうだい!」

 「そ、そんな簡単に・・・」

 

 カエデの自信満々な態度に、ルカはなんだか不安の方が強くなるが、ギンジはカエデを信じてガットを通りすぎる。

 

 「カエデ、頼むぜ」

 「勿論よ!」

 

 そのまま先に駆け出すギンジを見て、ルカも先に進もうと走り出す。

 

 しかしそれをガットが爪で阻止するが、カエデのガントレットが爪を弾き返す。

 

 「ニャーン・・・お前から先にねこねこにしてやる!」

 「ネコより犬の方が好きなのよ、あたし・・・」

 

 カエデの衝撃の拳がガットの分厚い胸筋に当たり、細い通路の壁にぶつかると奥の部屋へと転がっていく。

 

 「ニャアアア!?なんだこの力は」

 

 痛みで悶絶しながらも、ガットは血反吐を吐き出す。

 

 「ほら!ルカ!」

 

 カエデは立ち止まったままのルカへ振り向き、ニッと笑顔を見せる。同じ女性のルカから見ても憧れのヘヴンホワイティネスの笑顔は可愛いと思えた。

 

 「ここはあたしに任せて!ギンジを頼むわよ!」

 

 ガントレットのギアを回して、カエデも自分の戦いに入る。

 

 「あなた達の正義の為に、全力を尽くして行くのよ!ムーン・パラディース!」

 

 カエデの強い言葉に、また背中を押される。

 

 ルカは急いでギンジが走った方向へと走り出す。

 

 (そうだ・・・僕はこの戦いに決着をつけるんだ。戸惑ったり、悩んだりして、足を止めている場合じゃない!)

 

 決意をしていたのに、足がすくんでいたのかも知れない。

 

 ここまでギンジ達が繋いでくれたのだ。もう止まれないし、退く事はできない。

 

 そういう領域まで来た戦いなのだ。

 

 (皆・・・僕は、必ず勝つよ)

 

 先に旅立った仲間へ、ルカはまた同じ決意を飛ばす。最初に比べてより強く、より重く。

 

 正義と悪の決着は、あと少しの所まで進み始めていた。

 

 佐久間ギンジという男は不思議だ。

 

 強くてあらっぽいのに、勢いだけで発言して、そして誰よりも仲間が多い。

 

 一人になってしまったルカは、目的の為にありもしない希望にすがりながら、なんとか戦っている生きた屍みたいになっていた。

 

 しかし、そんな生きた屍を救ってくれた男は、今の自分には持っていないモノをたくさん持っている。

 

 仲間も友人も。正義の志も、優しさも全て・・・。

 

 「佐久間君・・・君はすごいね」

 「おうよ俺はいつでもすごいんだよ!この先も期待してていいぜ!絶対力になるからよ」

 

 二人が走る道は警備が薄くなっている。

 

 「そろそろ大ボスが近いってことだな!やろうぜ、ルカ!」

 「ああ・・・!」

 「お前の正義を勝たせるんだ!必ず出来るぜ!強い必殺技持ってるしな!」

 

 ギンジの期待の言葉にルカは、本当に背中を押される。

 

 (本当に不思議な人だ・・・)

 

 大きな光に包まれた気分のルカは、ギンジの隣を走る。

 

 走るその先には太陽のマークを模した鉄扉が見える。

 

 「あそこだな!」

 

 ムーン・パラディースとして、決着をつけに来た。

 

 月島ルカの本当の意味での最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

続く   

 

 

 

 

 




お疲れ様です。

最後戦いとか言ってるけど、ヘヴンホワイティネスの戦いはまだまだ続きます。このムーン・パラディース編が終われば重要なピースは揃うんや!

キャラネタ書きます

佐久間ギンジ
ミヤコに襲われたりカエデにチョップされたりと不遇な主人公。

神宮カエデ
ギンジの事好きなのに、なんか暴力的な事もおおい。
現在、幹部のガットと交戦中

宮寺レン
友達であるルカの未来を守るために、この戦いに参加している。
正義のヒーローの味方をする正義のヒーローです
現在、幹部のソル・レヴェンテと交戦中

甘白ミドリコ
この戦いが終わったら元気の出るお酒を飲もうとしている。
赤鬼の様に自己犠牲にならないように頑張ろうと思う。
現在、ミヤコの防衛入っている。

小町サクラ/熊沢レイナ
ギンジの連絡で参加した正義の味方。
現在、幹部のゾネと交戦中

オーク怪人
ドクターミヤコの為だけに動いている一流の戦士。
音楽堂のときよりも少し雰囲気が柔らかくなった。
現在、幹部のチョトツと交戦中

チョトツ/ゾネ/ソル・レヴェンテ/ガット
それぞれサン・アンフェールの幹部。
暴力的でシズハをボコしたのはチョトツ
ゾネは科学者でもあり、淫紋をナズナにつけた
ソルはいたぶるのが趣味で、カナミの眼の前で一般市民を嬲った。
ガットはルカに倒されたが、以前はルカの仲間を攫ったりしていた。
サン・アンフェールの目指す弱肉強食の世界倫理に感動しており、それを実現しようと全力で動いていたが、ルカ一人に苦戦していた。

ヘルブラッククロスとは敵組織同士小競り合いをよく起こしていた。

次回はオーク怪人の主役回!オーク怪人ファンは喜べぇええええ!

ちなみに次回からは○○vsシリーズになるので少し更新は早くなるかと思います。
感想や応援等いただけましたら幸いです。
それでは、また次回!
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